最弱属性魔剣士の雷鳴轟く
27話 やっぱり懸念点は魔力量
「はぁぁぁぁぁぁ!」
「ウォォォォ」
俺の拳とホワイトオークの拳がぶつかり小さな稲妻がバチバチと弾ける。
「雷術 雷崩拳」
雷の速度を利用したフルパワーの拳。
バチッという音と共に高速でホワイトオークの懐に飛び込み一撃入れる。
ゴンッと鈍い衝撃音が響き、雷が貫通してホワイトオークの向こう側にまで雷が迸る。ホワイトオークはジュージューと音を出して焦げているが、それでも倒れない。
「やっぱり雷崩拳じゃ、雷撃ほどの威力は見込めないか」
「ウォォォォ」
ホワイトオークが俺をホールドしようと両手を広げるが、悪いがこっちは雷だ。お前ごときに捕まるほど遅くない。
右足に力を入れ一気に踏み込み空へ飛び出す。
耳元で風がビュービュー唸る。がそれよりも自分の体から発するバチバチと言う雷の音の方がうるさい。
「飛びすぎたな。でも、これで決める!」
手のひらに魔力を集中させる。
「雷砲 進化 『雷撃大砲』 雷術 雷撃大砲」
普段雷砲で作り出している数倍のでかさの雷丸を作り出し、電圧を上げる。弱い稲妻で雷の道を形成。ホワイトオーク目掛けて真下に放つ。
これは雷砲のように雷丸からエネルギーを放出するのではなく雷丸そのものを打ち出す技。故に破壊力は何倍にも跳ね上がる代わりに軌道が逸れやすい。そこを電磁誘導で相手に確実に当てる。
巨大雷丸が雷の道に沿ってホワイトオークに直撃。まさに雷が落ちたような威力の爆発が起きる。
下の方が雪煙に覆われ、ホワイトオークもエヴァ達も見えなくなる。
「この爆発は過去最高レベルだな」
と同時に俺も落下を始める。あ、これやばいんじゃ……
途端景色が目まぐるしく変化する。耳元で風が唸る。
やばいやばいやばい……
ボフ…………
「ぶへ、下が雪で良かった」
俺は雪を払いながら立ち上がる。
「クロト!」
「へへ、相変わらずやるなぁ」
「そんな奥の手持ってるなら早く行ってくれよ」
「でもこれ……」
マナが指さした方を見るとさっきまではなかった巨大なクレーターが出来ていた。雪が全て吹き飛び、えぐれた地面が見えている。
その中心で焦げたホワイトオークが倒れている。
「あ、やりすぎたか」
その時バチッと音がして雷化が解けた。
魔力切れで頭がフラフラする。
「あれ、おかしいな。まだ数分しかたってないはず」
ボフっと尻餅をつきながら考える。
十分は持つはずだ。いくら魔力が切れかけていたとはいえ、今日はいつもより長めに魔力を吸収した。
まさか、雷撃大砲のせいか……
確かに魔力が続く限り雷化が続くなら魔術を使って魔力を消費したら時間も短くなる。今更こんな当たり前のことに気づいた。
だめだ。そんなんじゃ話にならない。
なにか考えないと。しかも切れたら本当の魔力ゼロで戦えない。
対策が必要だな。
「…………何か、来る」
「ん、エヴァ? 何かって…………!?」
はっきりわかる。でかいのがあと、三秒で……
「グウォォォォォォォ」
マジかよ。
「う、嘘だろ」
「ホワイトオーク、三匹目だぞ……しかもでかい。親玉ってところか」
「もうクロトも魔力切れよ、勝てないわ」
「いきなりこんなピンチになるなんて……」
だめだ、テンペスターを振るのでさえも厳しい今の状況でホワイトオークもう一体は……勝てない。
「やれるだけはやろうぜ。クロトのおかげで俺たち四人は少し回復できた」
「あ、ああ クロトのように一人でかっこよく、は無理だが、力を合わせれば……」
「……だめだ。この状況で向かっていけるのはレイグとガイナだけだ、よく見ろ」
少し後ろの方でマナが腰を抜かして震えている。エヴァもさっきから痛いほど俺の肩を掴んでいた。
「諦めるしか、ないか」
「俺たち二人じゃどうにもできん……」
「もう諦めるのか? 帝国の学生ってのは案外根性無しなんだな」
ガイナ達が諦めそうになったその瞬間、森から数十人の人影が飛び出してきた。
文字通り、木の上から飛んできた。
その内の一人が俺達とホワイトオークの間に降りてきた。
「な、なんだ?」
「誰だ」
俺はろくに動かない体で立ち上がろうとする。
「……ク、クロト。魔力が切れてるのにそんな無理しないで」
現れたのは真っ白のコートに矢筒を担ぎ自分の身長ほどある弓を持っている女の人達だった。
十歳ぐらいの少女から二十代ぐらいの女性もいる。全員同じコートで弓を構えている。
俺達とホワイトオークの間にいるリーダーらしき人物がちらっと振り返る。見た感じ二十代半ばってところか。真っ黒な髪をポニーテールにしている。
「ま、名乗るのは後にしよう。今はこいつをやるのが先だ」
リーダーの女性が手で合図すると同時に全員が一斉に弓を構え矢を放つ。
「あいつの皮膚を矢なんかで……」
ひゅっと弧を描き、次々とホワイトオークに突き刺さる矢。テンペスターでも浅い傷しか作れなかったホワイトオークの皮膚に矢が次々刺さってる。
「この山を専門に狩りする私達が奴らの厄介な皮膚の対策をしてないわけ無いだろ?」
「なんなんだ、お前らは」
俺とリーダーらしき人物が話している間にホワイトオークは呆気なく倒れた。俺達の奮闘が嘘のようだ。
「私達はハンター隊主にこの山で狩りをする狩人さ。そして私がハンター隊の隊長で、ハングル公爵のアイリス・ハングルだ」
ハンター隊……って公爵!?
「ふ……女なので驚いたって顔だな。十二公爵の中には結構いるんだぞ? 女公爵。そんな事で驚くなんてお前さては田舎者だな?」
いやいや、公爵が男とか女とか俺は知らないし、そんなことよりこんなところで公爵に会えるなんて……
俺は驚いて振り返るとガイナ達がなんの不思議もなさそうな顔でこっちを見ていた。
ああ、いろんな意味で頭がフラフラする。
「ま、まぁ女公爵なのは別にそこまで驚かない……ちょっと驚いたが。それよりなんで公爵様が隊長なんだ?」
「ま、その事についても後で話してやる。とりあえずお前らのキャンプまで連れて行け。最近の若い奴らの動きを見てるとこっちがイライラする……シエラ、オークの死体の後処理をしておいてくれ」
「……」
傍らで控えていた金髪の少女に指示を出すと、少女は無言でうなずき、ハンター隊の元へ向かう。それからすぐに少女の命令でハンター隊がオークの死体処理に取り掛かる。
「さて、行こうか」
「ああ」
「……クロト?」
「大丈夫だ、信用できる」
「とにかく行こうぜ。俺たちもそうだが、クロトは限界のはずだ」
ーあとがきーーーーーーーーーーーーーー
27話です!!
30話ぴったりで第一章を終わらせたいので、これからちょっと長くなるかもですが、読んでいただけたら嬉しいです!
アイリス「読んでくれて感謝する
ハングル公爵、そしてハンター隊隊長のアイリスだ
グッド、コメント、フォローよろしく頼む
ではまた!」
「ウォォォォ」
俺の拳とホワイトオークの拳がぶつかり小さな稲妻がバチバチと弾ける。
「雷術 雷崩拳」
雷の速度を利用したフルパワーの拳。
バチッという音と共に高速でホワイトオークの懐に飛び込み一撃入れる。
ゴンッと鈍い衝撃音が響き、雷が貫通してホワイトオークの向こう側にまで雷が迸る。ホワイトオークはジュージューと音を出して焦げているが、それでも倒れない。
「やっぱり雷崩拳じゃ、雷撃ほどの威力は見込めないか」
「ウォォォォ」
ホワイトオークが俺をホールドしようと両手を広げるが、悪いがこっちは雷だ。お前ごときに捕まるほど遅くない。
右足に力を入れ一気に踏み込み空へ飛び出す。
耳元で風がビュービュー唸る。がそれよりも自分の体から発するバチバチと言う雷の音の方がうるさい。
「飛びすぎたな。でも、これで決める!」
手のひらに魔力を集中させる。
「雷砲 進化 『雷撃大砲』 雷術 雷撃大砲」
普段雷砲で作り出している数倍のでかさの雷丸を作り出し、電圧を上げる。弱い稲妻で雷の道を形成。ホワイトオーク目掛けて真下に放つ。
これは雷砲のように雷丸からエネルギーを放出するのではなく雷丸そのものを打ち出す技。故に破壊力は何倍にも跳ね上がる代わりに軌道が逸れやすい。そこを電磁誘導で相手に確実に当てる。
巨大雷丸が雷の道に沿ってホワイトオークに直撃。まさに雷が落ちたような威力の爆発が起きる。
下の方が雪煙に覆われ、ホワイトオークもエヴァ達も見えなくなる。
「この爆発は過去最高レベルだな」
と同時に俺も落下を始める。あ、これやばいんじゃ……
途端景色が目まぐるしく変化する。耳元で風が唸る。
やばいやばいやばい……
ボフ…………
「ぶへ、下が雪で良かった」
俺は雪を払いながら立ち上がる。
「クロト!」
「へへ、相変わらずやるなぁ」
「そんな奥の手持ってるなら早く行ってくれよ」
「でもこれ……」
マナが指さした方を見るとさっきまではなかった巨大なクレーターが出来ていた。雪が全て吹き飛び、えぐれた地面が見えている。
その中心で焦げたホワイトオークが倒れている。
「あ、やりすぎたか」
その時バチッと音がして雷化が解けた。
魔力切れで頭がフラフラする。
「あれ、おかしいな。まだ数分しかたってないはず」
ボフっと尻餅をつきながら考える。
十分は持つはずだ。いくら魔力が切れかけていたとはいえ、今日はいつもより長めに魔力を吸収した。
まさか、雷撃大砲のせいか……
確かに魔力が続く限り雷化が続くなら魔術を使って魔力を消費したら時間も短くなる。今更こんな当たり前のことに気づいた。
だめだ。そんなんじゃ話にならない。
なにか考えないと。しかも切れたら本当の魔力ゼロで戦えない。
対策が必要だな。
「…………何か、来る」
「ん、エヴァ? 何かって…………!?」
はっきりわかる。でかいのがあと、三秒で……
「グウォォォォォォォ」
マジかよ。
「う、嘘だろ」
「ホワイトオーク、三匹目だぞ……しかもでかい。親玉ってところか」
「もうクロトも魔力切れよ、勝てないわ」
「いきなりこんなピンチになるなんて……」
だめだ、テンペスターを振るのでさえも厳しい今の状況でホワイトオークもう一体は……勝てない。
「やれるだけはやろうぜ。クロトのおかげで俺たち四人は少し回復できた」
「あ、ああ クロトのように一人でかっこよく、は無理だが、力を合わせれば……」
「……だめだ。この状況で向かっていけるのはレイグとガイナだけだ、よく見ろ」
少し後ろの方でマナが腰を抜かして震えている。エヴァもさっきから痛いほど俺の肩を掴んでいた。
「諦めるしか、ないか」
「俺たち二人じゃどうにもできん……」
「もう諦めるのか? 帝国の学生ってのは案外根性無しなんだな」
ガイナ達が諦めそうになったその瞬間、森から数十人の人影が飛び出してきた。
文字通り、木の上から飛んできた。
その内の一人が俺達とホワイトオークの間に降りてきた。
「な、なんだ?」
「誰だ」
俺はろくに動かない体で立ち上がろうとする。
「……ク、クロト。魔力が切れてるのにそんな無理しないで」
現れたのは真っ白のコートに矢筒を担ぎ自分の身長ほどある弓を持っている女の人達だった。
十歳ぐらいの少女から二十代ぐらいの女性もいる。全員同じコートで弓を構えている。
俺達とホワイトオークの間にいるリーダーらしき人物がちらっと振り返る。見た感じ二十代半ばってところか。真っ黒な髪をポニーテールにしている。
「ま、名乗るのは後にしよう。今はこいつをやるのが先だ」
リーダーの女性が手で合図すると同時に全員が一斉に弓を構え矢を放つ。
「あいつの皮膚を矢なんかで……」
ひゅっと弧を描き、次々とホワイトオークに突き刺さる矢。テンペスターでも浅い傷しか作れなかったホワイトオークの皮膚に矢が次々刺さってる。
「この山を専門に狩りする私達が奴らの厄介な皮膚の対策をしてないわけ無いだろ?」
「なんなんだ、お前らは」
俺とリーダーらしき人物が話している間にホワイトオークは呆気なく倒れた。俺達の奮闘が嘘のようだ。
「私達はハンター隊主にこの山で狩りをする狩人さ。そして私がハンター隊の隊長で、ハングル公爵のアイリス・ハングルだ」
ハンター隊……って公爵!?
「ふ……女なので驚いたって顔だな。十二公爵の中には結構いるんだぞ? 女公爵。そんな事で驚くなんてお前さては田舎者だな?」
いやいや、公爵が男とか女とか俺は知らないし、そんなことよりこんなところで公爵に会えるなんて……
俺は驚いて振り返るとガイナ達がなんの不思議もなさそうな顔でこっちを見ていた。
ああ、いろんな意味で頭がフラフラする。
「ま、まぁ女公爵なのは別にそこまで驚かない……ちょっと驚いたが。それよりなんで公爵様が隊長なんだ?」
「ま、その事についても後で話してやる。とりあえずお前らのキャンプまで連れて行け。最近の若い奴らの動きを見てるとこっちがイライラする……シエラ、オークの死体の後処理をしておいてくれ」
「……」
傍らで控えていた金髪の少女に指示を出すと、少女は無言でうなずき、ハンター隊の元へ向かう。それからすぐに少女の命令でハンター隊がオークの死体処理に取り掛かる。
「さて、行こうか」
「ああ」
「……クロト?」
「大丈夫だ、信用できる」
「とにかく行こうぜ。俺たちもそうだが、クロトは限界のはずだ」
ーあとがきーーーーーーーーーーーーーー
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