最弱属性魔剣士の雷鳴轟く

相鶴ソウ

25話 乗り物酔い。辛い。

 三大将軍ファリオスが四魔王アリスを追い払うよりも一週間ほど時を遡る。


「ふぁ〜暇だなぁ」

「もう二週間はこうしてるか?」

「そうだな」


 俺達は雪山合宿の目的地であるテリア山を目指し、二百を超える馬車で移動している。


 この二週間、特に何もなく順調に進んできた。
 朝起きて飯食って馬車に揺られ、飯食って寝る。
 流石に飽きてくる。


 大魔森では無いとは言え、多少魔物は出る。
 が、幸か不幸かドラゴン騎士団が護衛についているためその魔物もあっさり倒される。


 つまり、なんのトラブルもピンチもなく一日がすぎるわけだ。


「あとどれぐらいなんだ?」

「一週間とかじゃない?」

「一週間か…… ところでエヴァ、ここ二週間飯食ってる時と寝てる時しか喋ってないけど、どうした?」

「…………」

「酔ってんのか?」

「…………ん」

「あー、そうか。悪い」


 と言って背中をさすってやる。


「よし、暇だから確認事項でもしておくか」


 と言い出したのはレイグだ。


「おーやろぅぜやろぅぜ」


 ガイナがやる気だ。
 やっぱり二週間はもじっとしているのはきついみたいだ。


「それじゃあ、着いてからの予定だけど……」

「確か各チームに別れてキャンプを張り、三ヶ月間の修行だよな」

「でもそれってサボれるんじゃないかしら?」

「それは無理だね、マナ。食料やテントの必要な物は支給されるが、消耗品は一週間分しか支給されない」

「あ、そっか」

「そう、焚き火をしようにも枝がいる。そうすれば必然的に何もしないわけにはいかない。食料もしかりだ」

「魔物との戦闘は避けられないってわけか。ところで食料って魔物の肉とかになるのか?」

「まぁそうだね」

「なんだか嫌ね、魔物の肉って」

「絶品らしいぜぇ」

「誰か食べたことあるか?」


「「「「…………」」」」

「無いみたいだな」


 魔物の肉か。魔物も種類が多いが、ゴブリンとかの肉は嫌だなぁ。人型ってのは流石に抵抗がある。


 そんな事を考えているとき、ガタンと音を立てて馬車が止まった。
 どうやら今日はここまでらしい。


「よーし!今日はここでキャンプを張る! 全員準備にかかれ!」


 外からアラン団長の声が聞こえる。
 さて、俺たち氷の姫イエロ・プリンセッサもやるか。




二週間後、魔族領、古城にて。


「………帰ったわよ 居ないの?」

「アリスか」

「ええ、今帰ったわ」

「どうだった?」

「あと一歩のところでバンリとガウィンを殺しそこねたわ」

「お前の奴隷は?」

「ファリオスとかいう三大将軍に邪魔されたわ。その時に傷を負って、今は治療中」

「そうか、痛手だな」

「そうね。あの二人、奴隷とはいえ底知れない力を感じる」

「それで、アルバレス領はどの程度落とせた?」

「三分の一ほどかしらね」

「そうか、まぁ今回のアルバレス領襲撃はこちらに注目を向けさせるためのただのフェイク。本命は今頃終わってるんじゃないか?ククク」





 約一週間後、俺達はテリア山に到着した。


 テリア山はハングル公爵領に囲まれており、雪が低くても三十センチは積もっている極寒の雪山だ。修行に利用する人は結構多いらしいく、定番の修行スポットになっているとかなっていないとか。


「よーし、全員いるな。これからチームに分かれて三ヶ月間この山で過ごしてもらう。移動中の三週間もどかしかった人もいるだろうが、この山では好きに暴れてくれ! というか、死ぬ気でやらないと死ぬからな。この山に生息してるのはどれもニ級、一級を超える魔物ばかりだ。……では行け!」


 千人が一斉に動き出し、かなりごちゃごちゃしている。
 反応は十人十色、いや、千人千色でワクワクしている者も居れば恐怖に顔を引きつらせている者も居る。

 俺は小さい頃から三級程度の魔物はよく見てきたので、魔物には慣れてる方だ。
 ガイナもレイグも家が戦闘家なので特に恐怖は感じていないらしい。エヴァは無表情だが、若干顔を引きつらせているところを見るに少し怖いみたい。マナに至っては膝が震えている。寒さのせいじゃないだろうな。


「しかし雪山だけあって寒いな」

「ああ、このコートは極寒地でも活動できるって売り文句だったが、嘘だな」

「ま、マナがいる限りは大丈夫か」

「あんまり当てにしないでよ?」

「エヴァもいるしな」

「寒いのは専門外……」

「とりあえず、ベースキャンプの場所を決めよう。これから三ヶ月はここで過ごすことになる。行こう」

「おー!」

「いっちょやるか」

「少し楽しみだ」

「…………ん」





 出発から一時間。俺達はベースキャンプに最適な場所を求め歩いていた。


 雪山とはいえ一公爵領レベルの広さがあるのでここまで二、三チームしか見かけていない。


「一時間は歩いたか」

「ああ、吹雪いてないのが幸いだな」

「そろそろ決めないとな。こういう時はどういうことに注意するんだ?」

「まぁまずは森の近くがいいな。テリア山は山と名こそ付いているが、基本平原と森が組み合わさった地形が段々に積み上げられてる地形になっているから、平原にも森にも近い位置が好ましい」


 流石はガイナ。
 こういうのはガイナに聞くに限る。


「へぇ知らなかったわ」

「僕もだ」


 ガイナの言った条件を満たす場所を探し歩き、俺達は遂にピッタリの場所を見つけることができた。


 位置的にはテリア山を上から見て左下。
 騎士団達が待機している本部からは普通に歩いて三時間ってところか。
 二方向を森に囲まれた場所で近くに川も通っていることからここにしたのだ。


「しかし、雪山の川って凍ってるか超冷たいイメージがあるけど温かいんだな」

「本当だね」

「それは私知ってるわよ。確かテリア山って昔は火山だったのよ」


 マナが山頂の方を眺めながら話す。


「で、よく噴火が起きたせいで困ったハングル公爵が帝国に助けを求めた所、三大将軍である冬将軍が来て雪山に変えたらしいわ。だからここを流れる川は山の中にあるマグマに熱されて温水になってるのよ」

「へぇ、なるほどな」

「しかし、たった一人でこの山を、しかも火山を雪山に変えたのか?」

「らしいわよ」

「マグマを雪で……なんて魔力量だ」

「ん、どうやったら雪がマグマに勝てるんだよ?」

「あー、クロトは知らねぇか。例えばなレイグ、マナ、手伝ってくれ」

「ん?」

「いいわよ」


 よし、と手を叩いてレイグとマナを向かい合わせる。


「水柱と火柱をだいたい同じ魔力量でぶつけてくれ」

「水術 水柱」

「炎術 火柱」


 レイグから放たれた水柱が、マナの火柱にぶつかりジュッと音を立てて火を消していく。
 水が火に強い。当たり前だ。


「こんな風に魔力量が同じなら勝つのは属性的に強いほうだ。じゃあ今度はマナ、魔力量を上げてくれ」

「わかったわ、炎術 火柱」

「水術 水柱」


今度はマナの放った火柱がレイグの水柱を焼き尽くした。


「すごい、同じ魔術なのに……」

「属性相性が悪くても魔力量が上回れば勝てるんだ」

「なるほど、つまりマグマを鎮めるほどの雪を降らせた冬将軍の魔力は凄まじいって事だな」

「ま、そういうこった。戻ってキャンプ張ろうぜ」

「「「「おう!」」」」


 俺たちが戻ろうとした時左側からバキバキと木を引き裂くような音がしたと思ったら本当に木が引き裂かれており、そこから白い毛に覆われた二足歩行の豚がこちらを見ていた。


「早速、戦いか」


 俺はテンペスターを抜き構える。


「あれはホワイトオークだ。気をつけろ、二級魔物だ」

「行くぞ!」

「「「おう!」」」




ーあとがきーーーーーーーーーーーーーー
25話読んでいただきありがとうございます!

3日間も空けてしまいすいませんでした。
が、皆様のおかげで200PV&100いいね達成しました!!
本当にありがとうございます。

正直たかだか25話程度で100いいねは行かないと思ってたので本当に嬉しいです!
毎回コメントくれたりいいねしてくれたり、本当に感謝しかないです!
本当は全部返したいのですが、次の人がコメントしづらいのかな、なんて思ったので、最近は返していません!が、ちゃんと読ませてもらってます!

毎回一応各キャラ達に言ってはもらってるんですが、質問等あればいつでもしてくださいね!
質問用の枠作っておきます!そこのコメント欄に質問等してください!
やっぱり、質問されるとあ、作品に興味持ってくれてるんだなってのがわかるので!
勿論質問がなければちゃんと伝えれてるんだなーって安心もしますが!

またもし、質問があればよろしくお願いします!

そして私Twitterをやってて、多分あらすじ?のところに書いてるんですが、もしよかったらフォローしてやってください。
これに関することしか喋ってないので!

長々とすいません!今日は私からでした!

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