最弱属性魔剣士の雷鳴轟く

相鶴ソウ

22話 迫る“死”と抗う“生”

 魔族領、とある古城にて人影が四人。ボロボロのテーブルを囲んでいる。そのうちの一人はクロトたちと邂逅した不死不滅のフロリエルだ。


「さて、そろそろ作戦を実行に移す時かもしれん」

「ちょっと待ってくれよ」

「どうした?」

「あいつらにやり返さなきゃ気が済まねぇ」

「できるのか? 確かにあの不死不滅のフロリエルが小僧共2人にやられたとあってはわしら四魔王のメンツも丸つぶれじゃ、だが一度負けたお前さんをそう簡単には信用できまい」

「くっ……」

「リヴァの言う通り、出来るのか?」

「あの黒氷の女は力を制御できていなかった! 雷男の方なんて問題ですらなかった! 次は……次は行ける」

「フロリエル君 口調が崩れてるわよ」

「ひぇひぇひぇひぇひぇ、これは失礼」

「じゃが、フロリエル一人を行かせるのは危険じゃのぉ。相手も警戒し、対策しておるじゃろう」

「私も共に行きましょうか」

「確かにお主の異能なら小僧程度なんでもないとは思うが、貴重な戦力をそっちにばかり使う事はできん」

「フロリエル 少し我慢しろ」

「この屈辱を晴らさずじっとしてろと言うんですか?」

「とりあえずその話はあとだ。アリス、お前の巨人は何体出せる?」

「今のところ十体同時が限界よ」

「十体か……サイズは?」

「だいたい二十〜四十メートルね」

「十分だ。リヴァ、お前の兵は?」

「今のところは三千万程は居るかの」

「よくそこまで集めたな」

「増やすのは簡単だからのぉ」

「よし、今の兵力と俺たち四人がいればあの程度の国はたやすく落ちるだろう」

「でも注意は必要よ。あの三大将軍とやらはかなり危険だし、学生の中にもフロリエル君を倒すほどの者がいる。先にそいつらだけでも消さないと」

「確かにそれも一理ある」

「学生は一ヶ月後、雪山に行くらしいわ」

「ひぇひぇひぇひぇひぇ、私に行かせてください」

「うむ……リヴァ、お前も行け」

「了解した」

「リヴァ、お前の兵を少しばかり残してくれ。同時進行で攻める。それから、学生の方は騎士団の奴らも来るだろうから全滅させる必要はない。ただ、黒髪の雷使いと黒氷使いは消せ、今後障害になる可能性は高い」

「了解」

「ひぇひぇひぇひぇひぇ、学生狩りと行きますか」





「さて、この前も軽く話した雪山合宿についてだ」


 雷化・天装衣ラスカティグローマを獲得してから約一週間たったある日、アラン団長から雪山合宿についての説明があった。


「今回行くのはこのエルトリア城からエルネア公爵領に沿って北上し、更に上に抜けた所にそびえ立つテリア山だ。馬車で行くが、なにせこの人数だ 移動時間としては一ヶ月を見ている」


 一ヶ月か、きつい旅路になりそうだな。


「準備は各々勝手にしてくれ。とにかく三ヶ月間雪山で生き抜けばいい。ちなみにこの山は強力な魔物がゴロゴロいる。この合宿で死ぬやつも少なくはない。その事を覚えておけ、解散」


 雪山合宿を楽観視していた生徒達はアラン団長の最後の言葉で固まってる。そこまでビビるか……
 ミノタウロスとフロリエル もう命の危険を感じたのは二度目だ。ま、そのおかげでここまで強くなれたんだが。


「……クロト」

「ん?どうした エヴァ」

「みんなが呼んでるよ」


 と言われエヴァが指さした方を見ると三人が早く来いと言わんばかりに見ていた。


「あ、悪い」


 と、俺は小走りでみんなの所に向かう。


「よし、クロトも来たことだし、行くか」

「ん? 行くってどこに」

「買い物よ?」

「雪山合宿はチームで行動するらしいからね。きちんと準備しておかないとチーム全滅だよ?」

「あー、そうか」

「じゃ、行きましょ」


 俺たちは学園を出て国民区に向かった。





 その夜。


 エルトリア城より西へ三週間ほど行った先にあるアルバレス公爵領。海辺に広がり、魔族領と大魔森の両方を押さえつけるほどの兵力を持つ武闘公爵だ。


 そして大魔森との境にある巨壁『フォルトゥレス』。
 大魔森から稀に現れる魔物の侵入を阻止するために建てられたこの壁は、交代で兵士が一日中見張りをしていた。


 そして、ある日の夜。
 フォルトゥレスの上に兵士が二人。一人は中年ぐらいのおじさんで、もう一人は青年だ。


「ふぁ〜暇だなぁ〜」

「文句言うな、俺たちが暇なのはいい事なんだから」

「そうですけど〜」

「しかし、この壁フォルトゥレスを越えてくる魔物なんてなんて、この仕事を三年はやってるが、まだ一度もない」

「ガウィン先輩でも無いってことは相当稀なんすね。でも、それだけ魔物も恐れてるってことじゃないんですか?」

「確かにアルバレス領は武闘で有名だが、魔物はそこまで高度な知性は持っていないし、中にはこの領を沈められるほどの力を持つ魔物もいる」

「うーん、まぁ襲ってくるよりいいじゃないですか」

「うむ、そうだな」


 カラン、コロン、オォォォ……


「ひ…………な、なにか聞こえましたか?」

「いや? 特に何も」


 カラン、コロン、オォォォ……


「ほ、ほら!」

「あぁ、何か……いるな」


 二人が見ている先はフォルトゥレスより南、大魔森。
 そして、木の影から音の正体が出てくる。


「あ、あれは……」


 森から現れたのは大量の“人”だった。ただ普通の人と違うのは皮膚は土のような色をしていて、所々肉が爛れ腐っているということだ。


「……アンデット」

「だけじゃないっすね」


 全身白骨状態に革の腰当てを着け、弓や剣を持った連中もいる。


「スケルトンか。単体なら俺達だけで追い払えるがこの数では……」

「三百は居ますね……」

「しかも見えてるだけで、だ。森の中にはもっと居るぞ」

「ど、どうしますか?」

「この壁は十メートルはある。簡単には越えられまい。ここは俺が様子を見ておく、すぐに知らせてくれ」 

「は、はい!」


青年は壁を降り、兵舎の方へ駆け出す。


「……さて、どうしたものか」

「ガウィン隊長! 我々も戦います」


 壁のあちこちにいた兵士達が集まってくる。全員集めても数十人。


「よぅし! この壁は見た目より頑丈だ。奴らがどう攻めてくるかは知らんが、登ってくるものは叩き落とせ。だが、スケルトンの弓には注意しろ。行け!」

「「「は!」」」


 それを上空から見つめる二つの影。


「ふっ……あんな数十人程度の兵で我らが主戦力『死人軍』に勝てるものか」

「何体連れてきたの?」

「千程度だ。まだここを落とすつもりはない。が、それなりに被害を出し、俺たちの恐怖を教えてやる」

「そう……それにしても、一年前死にかけていた子供とは思えないわ」

「ふ……それまではただの夢見るガキだったからな……今はそんなことはどうでもいい。少し、俺も手を出すか 爆炎術 豪炎丸」


 手のひらに作った豪炎の球を兵舎付近に投げる。


 爆発音が響き渡る。轟轟と燃える炎はすぐに燃え広がり、兵舎をあっという間に火だるまに変える。


「よし、あとは死人軍だけで十分だろう。行くぞ」

「ええ」




ーあとがきーーーーーーーーーーーーーー
22話読んでいただきありがとうございます!

そして昨日出せず申し訳ありません!
うまい書き方を模索しながら書いていたら朝になってました……

今回かなり焦って書いたので誤字脱字等多いと思います。
また、見直して修正します!

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