最弱属性魔剣士の雷鳴轟く
19話 あれだけ飲んだらお腹タプンタプン
「すっかり夜だな」
「……だね」
「だね……っじゃねーよ!! 昼間、夜は魔族が出るから危ないって確認したばっかりだろ」
「あ、あはは」
俺達は今国民区大通りにいた。時間はもう夜更け。張り紙通りに町人たちは家に引きこもっており、人はほとんどいない。
なぜこんなことになっているのかと言うと数時間前に遡る…………
◇
魔族出現の張り紙を見た後、寮に帰ろうと歩き出した俺をエヴァが止めた。
「ねぇ、クロト」
「ん?」
「ちょっと行きたいところがあるんだけど……」
「ん、そうか じゃあ先に寮に帰ってるな」
「…………」
「な、なんだよ」
「…………」
盛大なジト目で俺を見つめるエヴァ。
「わ、わかったよ。一緒に行こう」
「ん!」
ぱぁっと顔を輝かせるエヴァ。わかりやすい。
「で、どこに行くんだ?」
「トピオカ」
「トピオカ?」
「しらないの?」
「知らん」
「……私もよく知らない」
「なんだそりゃ……」
「マナが言ってた。今女の子の間で流行ってるって」
「へぇ 鳥かなんかか?」
「飲み物!」
「生き物じゃないのか、てっきりペットか何かかと……ま、とりあえず行ってみるか」
俺達はトピオカを求めて国民区大通りに来ていた。
「あれじゃないか?」
「……ん!」
商人達が開いている露店の合間にカフェのような建物があり、そこの看板にデカデカとした字で『トピオカあります!!』と書かれていた。
中に入ると正面にカウンターがあり、そこから左に行くと席があった。まばらに客もいる。
感じの良い女の店員がいらっしゃいませ、と声をかけてくる。
メニューを見るとトピオカとは果物を絞ったジュースの中に黒い玉を大量に入れた飲み物だった。
「う、なんか気持ち悪いな」
「見た目で判断しない」
「す、すいません」
「トピオカのミルクティー下さい」
さっさと注文してやがる……
はぁ、仕方ない。付き合うか。
「はい!そっちのお兄さんは?」
「あ、俺は普通のココアで」
「はーい、じゃあ銅貨二枚になります」
俺は店員さんに銅貨を払う。
「あ、私が払うよ」
「気にするな」
「んー」
なにか言いたげな顔をしていたエヴァだが、トピオカが来ると小走りで席に向かった。
「んーー!!」
「美味しいのか?」
「美味しい!」
「ミルクティーが?」
「うん!」
「トピオカ関係ないじゃん!!」
「え、えへへ……ほんとだ」
しかし見れば見るほど気持ち悪くなってくる。
俺はなるべく見ないようにしながらココアを飲む。結構熱いな。
すると一分もしない内に……
「美味しかった! トピオカはなんかもちもちしてたよ、味はよくわかんない!」
「早!」
「さて、全味制覇しないと」
と言ってカウンターに向かうエヴァ。
え、いま全味制覇って言った?
ちらっとメニュー見ただけでも二十種類以上はあったぞ……
大丈夫かな……嫌な予感しかしない。
数分後、トピオカを五個持ったエヴァが帰ってきた。
「いくらなんでも一気に五個は多いんじゃないか?」
「……ん?」
なんの話? というように俺を見てくる。
このあと何も起きませんように……
◇
結局全味制覇を果たしたエヴァだが、完全に日は沈み、大通りは真っ暗になっていた。
普段ならもっと活気があるだろうが、魔族のせいで誰もいない。
「仕方ない、急いで帰るぞ」
「ん!」
俺達は早足で寮に向う。
が、世界はうまくできているらしく、無事に寮にたどり着いた。……なんてことにはならなかった。
五分ほど歩くと突然上から黒い塊が降ってくる。黒い影、と言ったほうが正しいか。
その影はくるくると周り次第に人型になって地面に着地する。
「おや? 私のせいでもうこの街で〈心臓狩り〉は出来ないと残念に思ってたんですけどねぇ……ひぇひぇひぇひぇひぇ」
紫の髪に赤い派手なフロックスーツ、青白い肌に真っ赤な目が目立っている。黒いマントまとった姿は吸血鬼のようにも見える。一目見ただけでもただの人間ではない。すなわち……
「お前が、魔族!」
俺はテンペスターを抜き構える。
「おやぁ?私の事は知っているのにわざわざ夜で歩くとは……おばかさんですねぇ。私の名はフロリエル・ラーテン。どうぞよろしく……って今から死ぬんでしたねぇ……ひぇひぇひぇひぇひぇ」
「気色の悪い笑い方だな! 黒帝流 絶剣狼」
俺は一気に距離を詰めテンペスターを振り下ろす。
「お?」
フロリエルが反応する間もなく斬りかかる。
腕を斬り裂き血が吹き出す。そのまま剣は抵抗もなく腕を斬り落とす。
「う……おのれ……」
何人も殺しまわってる割には随分反応速度が遅い。それにいくらテンペスターの切れ味が鋭くても、こんなに簡単に腕を落とせるのか疑問だが、フロリエルは腕を抑え、苦しんでいる。
「なーんて言ったら少しは面白いでしょうか? ひぇひぇひぇひぇひぇ」
「な、なに……」
切り落とした腕から煙が出たかと思うと、そのまま霧散して空中に消えた。
代わりに腕の傷口に煙が集まり、新たに腕が生えてくる。にわかには信じられない光景だが、吹き出した血も斬り落とした腕ももう跡形もない。完全に再生しきっている。
「これが私の異能 『超再生』。私の意識とは関係なく傷を負うとすぐさま再生します。残念でしたねぇ……あなたじゃ私は殺せませんよ」
「な、そんなのなしだろ……」
俺はエヴァの元まで下がり小声で話しかける。
「エヴァ、足止めしながら逃げよう。町の兵士も騒ぎに気付けば助けてくれるはずだ」
「だ、だめ……」
「エヴァ?」
「ト、トイレ!」
「はぁ? あんなにトピオカ飲むからだろ!? てかトイレ行ってなかったのかよ」
「し、仕方ないじゃない! 魔族に襲われるなんて聞いてないもの!」
「張り紙読んだろ!」
「ひぇひぇひぇひぇひぇ。仲間割れとは余裕ですねぇ……もう最期だと言うのに」
「誰の最期だ。もう一度行くぜ……黒帝流 絶剣狼」
再び接近し今度は脳天から心臓にかけて振り下ろす。腕を斬り落とした感じを見るに肉体の強度自体はそこまで強くない。そしてこれは推測ではあるが、全部位が同じ再生速度ではないかもしれない。特に急所、急所ならいくらか再生も遅くなるはずだ。それを二つもやられたら足止めぐらいにはなるだろう。
「ひぇひぇひぇひぇひぇ。愚かですねぇ」
フロリエルはテンペスターを人差し指と中指で挟んで止める。
「な、素手で……」
「確かにスピードはそれなりにあるりますねぇ。でも……軽すぎますよ」
「うぉぉぉぉぉ雷帝流 稲妻剣」
俺はそのままテンペスターに雷を流し体重を込める。雷を付与された武器は貫通力、切断力が上昇する。感電なんかも見込めるが、今はこの切断力に賭ける。
「ひぇひぇひぇひぇひぇ。やりますねぇ……でも、その程度の攻撃じゃぁ私は倒せないですよ? 闇術 衝撃」
テンペスターを掴んでいない方の手から放たれた闇の衝撃波が俺を吹き飛ばす。
背中から地面に落ち、肺から空気が漏れる。
「ぐ、ごほっごほっ」
「弱いですねぇ。ひぇひぇひぇ……」
「氷術 氷の弾丸」
「……おっと」
エヴァが作り出した数十の氷の矢がフロリエルを襲う。
が、軽く手で弾き余裕の表情でこちらを見る。数も勢いも精度も低すぎる。トイレ我慢してたら当たり前なのか。
「はぁ、二人揃って期待はずれ。もう殺しますかねぇ」
「させるかよ……」
俺はなんとか立ち上がる。
テンペスターは……あいつの足元にあるな。エヴァは……トイレが限界そうだな。プルプル震えてる。
「エヴァ」
「……ん?」
「さっさとトイレに行ってこい。少しだけ時間を稼ぐ」
「…………わ、わかった!」
エヴァが後ろに走る。俺一人をここに残す事を懸念している様子だったが、今の自分ではかえって足手まといになると判断したのだろう。素直に言う事を聞く。
本当はそのまま逃げろ、なんてかっこいいこと言いたいんだが、生憎こいつに俺一人で勝てると思い上がるほど馬鹿じゃない。万全の状態のエヴァと力を合わせれば逃げるぐらいはできるだろう。
「ひぇひぇひぇひぇひぇ。私が逃がすとでも?」
フロリエルは再び黒い影に変化しエヴァを追おうとする。
「雷術 雷拳」
俺はカウンターに近い構えで影を殴る。
影は何度か地面をバウンドし、また人型に戻る。
「う……ひぇひぇひぇひぇひぇ。いいでしょう、まずはあなたから殺します」
「やってみろよ! 雷術 雷砲」
手を向かい合わせ雷丸を生成。雷砲を放つ。が、フロリエルは上に飛び、簡単に避ける。雷砲は虚しく空を裂き、地面に着弾して爆発が起きる。
道がえぐれたが、多少は許してほしい。
「ひぇひぇひぇひぇひぇ。そんな単調な攻撃は当たりませんよぉ?」
「へ、馬鹿が。最初からお前なんて狙ってねーんだよ。雷術 雷装衣」
雷砲が地面に着弾した時の爆発でテンペスターは宙へ舞う。俺はそれめがけて上へ飛ぶ。
そう、雷砲の狙いはフロリエルに当てることではなくテンペスターを空中へ打ち上げること。
テンペスターを両手でつかみフロリエルを見下ろす。
フロリエルは俺より低い位置にいる。そして空中。これだけ好条件が揃っていれば、あるいは……
「ひぇひぇひぇひぇひぇ。なるほどぉ、やりますねぇ……しかしあなたにこの超再生を超えるほどのダメージを与えられますか?」
俺はテンペスターに全魔力を注ぐ。刀身に雷が纏われ、バチバチと細い稲妻が走る。
「これで、決める。雷帝流…………」
俺の全魔力がこもった一撃だ。『超再生』相手でも多少は効いてくれよ……
「……雷鋼剣」
俺はテンペスターを振り下ろす。
「ひぇ、ひぇひぇひぇひぇ……闇術……」
激しい光と落雷の音。国民区に雷が落ちた。
ーあとがきーーーーーーーーーーーーーー
19話読んでいただき、ありがとうございます!
新たな敵、フロリエルが登場しましたね。
ここからどう展開していくか、お楽しみに!
あ、あと遂に100PVを突破しました!
読んでくれたすべての方々に感謝です!
そして、これからもよろしくお願いします!
今回は記念すべき100PVと言うことで、私から話ししたいなと思います!
まず、この作品を書こうと思い、設定等を考え出したのが、GW明けぐらいですかね。
で、書き溜めていって、15日ぐらいからぼちぼち書き始め、初投稿は18日ですね。
たったこれだけの期間で100PVいけたのは皆様のおかげです。ありがとうございます。
毎話毎話グッドやコメントくれる方!本当にありがとうございます!
これからも『最弱属性魔剣士の雷鳴轟く』をよろしくお願いします!
(そろそろタイトルの略が欲しくなってきた)
「……だね」
「だね……っじゃねーよ!! 昼間、夜は魔族が出るから危ないって確認したばっかりだろ」
「あ、あはは」
俺達は今国民区大通りにいた。時間はもう夜更け。張り紙通りに町人たちは家に引きこもっており、人はほとんどいない。
なぜこんなことになっているのかと言うと数時間前に遡る…………
◇
魔族出現の張り紙を見た後、寮に帰ろうと歩き出した俺をエヴァが止めた。
「ねぇ、クロト」
「ん?」
「ちょっと行きたいところがあるんだけど……」
「ん、そうか じゃあ先に寮に帰ってるな」
「…………」
「な、なんだよ」
「…………」
盛大なジト目で俺を見つめるエヴァ。
「わ、わかったよ。一緒に行こう」
「ん!」
ぱぁっと顔を輝かせるエヴァ。わかりやすい。
「で、どこに行くんだ?」
「トピオカ」
「トピオカ?」
「しらないの?」
「知らん」
「……私もよく知らない」
「なんだそりゃ……」
「マナが言ってた。今女の子の間で流行ってるって」
「へぇ 鳥かなんかか?」
「飲み物!」
「生き物じゃないのか、てっきりペットか何かかと……ま、とりあえず行ってみるか」
俺達はトピオカを求めて国民区大通りに来ていた。
「あれじゃないか?」
「……ん!」
商人達が開いている露店の合間にカフェのような建物があり、そこの看板にデカデカとした字で『トピオカあります!!』と書かれていた。
中に入ると正面にカウンターがあり、そこから左に行くと席があった。まばらに客もいる。
感じの良い女の店員がいらっしゃいませ、と声をかけてくる。
メニューを見るとトピオカとは果物を絞ったジュースの中に黒い玉を大量に入れた飲み物だった。
「う、なんか気持ち悪いな」
「見た目で判断しない」
「す、すいません」
「トピオカのミルクティー下さい」
さっさと注文してやがる……
はぁ、仕方ない。付き合うか。
「はい!そっちのお兄さんは?」
「あ、俺は普通のココアで」
「はーい、じゃあ銅貨二枚になります」
俺は店員さんに銅貨を払う。
「あ、私が払うよ」
「気にするな」
「んー」
なにか言いたげな顔をしていたエヴァだが、トピオカが来ると小走りで席に向かった。
「んーー!!」
「美味しいのか?」
「美味しい!」
「ミルクティーが?」
「うん!」
「トピオカ関係ないじゃん!!」
「え、えへへ……ほんとだ」
しかし見れば見るほど気持ち悪くなってくる。
俺はなるべく見ないようにしながらココアを飲む。結構熱いな。
すると一分もしない内に……
「美味しかった! トピオカはなんかもちもちしてたよ、味はよくわかんない!」
「早!」
「さて、全味制覇しないと」
と言ってカウンターに向かうエヴァ。
え、いま全味制覇って言った?
ちらっとメニュー見ただけでも二十種類以上はあったぞ……
大丈夫かな……嫌な予感しかしない。
数分後、トピオカを五個持ったエヴァが帰ってきた。
「いくらなんでも一気に五個は多いんじゃないか?」
「……ん?」
なんの話? というように俺を見てくる。
このあと何も起きませんように……
◇
結局全味制覇を果たしたエヴァだが、完全に日は沈み、大通りは真っ暗になっていた。
普段ならもっと活気があるだろうが、魔族のせいで誰もいない。
「仕方ない、急いで帰るぞ」
「ん!」
俺達は早足で寮に向う。
が、世界はうまくできているらしく、無事に寮にたどり着いた。……なんてことにはならなかった。
五分ほど歩くと突然上から黒い塊が降ってくる。黒い影、と言ったほうが正しいか。
その影はくるくると周り次第に人型になって地面に着地する。
「おや? 私のせいでもうこの街で〈心臓狩り〉は出来ないと残念に思ってたんですけどねぇ……ひぇひぇひぇひぇひぇ」
紫の髪に赤い派手なフロックスーツ、青白い肌に真っ赤な目が目立っている。黒いマントまとった姿は吸血鬼のようにも見える。一目見ただけでもただの人間ではない。すなわち……
「お前が、魔族!」
俺はテンペスターを抜き構える。
「おやぁ?私の事は知っているのにわざわざ夜で歩くとは……おばかさんですねぇ。私の名はフロリエル・ラーテン。どうぞよろしく……って今から死ぬんでしたねぇ……ひぇひぇひぇひぇひぇ」
「気色の悪い笑い方だな! 黒帝流 絶剣狼」
俺は一気に距離を詰めテンペスターを振り下ろす。
「お?」
フロリエルが反応する間もなく斬りかかる。
腕を斬り裂き血が吹き出す。そのまま剣は抵抗もなく腕を斬り落とす。
「う……おのれ……」
何人も殺しまわってる割には随分反応速度が遅い。それにいくらテンペスターの切れ味が鋭くても、こんなに簡単に腕を落とせるのか疑問だが、フロリエルは腕を抑え、苦しんでいる。
「なーんて言ったら少しは面白いでしょうか? ひぇひぇひぇひぇひぇ」
「な、なに……」
切り落とした腕から煙が出たかと思うと、そのまま霧散して空中に消えた。
代わりに腕の傷口に煙が集まり、新たに腕が生えてくる。にわかには信じられない光景だが、吹き出した血も斬り落とした腕ももう跡形もない。完全に再生しきっている。
「これが私の異能 『超再生』。私の意識とは関係なく傷を負うとすぐさま再生します。残念でしたねぇ……あなたじゃ私は殺せませんよ」
「な、そんなのなしだろ……」
俺はエヴァの元まで下がり小声で話しかける。
「エヴァ、足止めしながら逃げよう。町の兵士も騒ぎに気付けば助けてくれるはずだ」
「だ、だめ……」
「エヴァ?」
「ト、トイレ!」
「はぁ? あんなにトピオカ飲むからだろ!? てかトイレ行ってなかったのかよ」
「し、仕方ないじゃない! 魔族に襲われるなんて聞いてないもの!」
「張り紙読んだろ!」
「ひぇひぇひぇひぇひぇ。仲間割れとは余裕ですねぇ……もう最期だと言うのに」
「誰の最期だ。もう一度行くぜ……黒帝流 絶剣狼」
再び接近し今度は脳天から心臓にかけて振り下ろす。腕を斬り落とした感じを見るに肉体の強度自体はそこまで強くない。そしてこれは推測ではあるが、全部位が同じ再生速度ではないかもしれない。特に急所、急所ならいくらか再生も遅くなるはずだ。それを二つもやられたら足止めぐらいにはなるだろう。
「ひぇひぇひぇひぇひぇ。愚かですねぇ」
フロリエルはテンペスターを人差し指と中指で挟んで止める。
「な、素手で……」
「確かにスピードはそれなりにあるりますねぇ。でも……軽すぎますよ」
「うぉぉぉぉぉ雷帝流 稲妻剣」
俺はそのままテンペスターに雷を流し体重を込める。雷を付与された武器は貫通力、切断力が上昇する。感電なんかも見込めるが、今はこの切断力に賭ける。
「ひぇひぇひぇひぇひぇ。やりますねぇ……でも、その程度の攻撃じゃぁ私は倒せないですよ? 闇術 衝撃」
テンペスターを掴んでいない方の手から放たれた闇の衝撃波が俺を吹き飛ばす。
背中から地面に落ち、肺から空気が漏れる。
「ぐ、ごほっごほっ」
「弱いですねぇ。ひぇひぇひぇ……」
「氷術 氷の弾丸」
「……おっと」
エヴァが作り出した数十の氷の矢がフロリエルを襲う。
が、軽く手で弾き余裕の表情でこちらを見る。数も勢いも精度も低すぎる。トイレ我慢してたら当たり前なのか。
「はぁ、二人揃って期待はずれ。もう殺しますかねぇ」
「させるかよ……」
俺はなんとか立ち上がる。
テンペスターは……あいつの足元にあるな。エヴァは……トイレが限界そうだな。プルプル震えてる。
「エヴァ」
「……ん?」
「さっさとトイレに行ってこい。少しだけ時間を稼ぐ」
「…………わ、わかった!」
エヴァが後ろに走る。俺一人をここに残す事を懸念している様子だったが、今の自分ではかえって足手まといになると判断したのだろう。素直に言う事を聞く。
本当はそのまま逃げろ、なんてかっこいいこと言いたいんだが、生憎こいつに俺一人で勝てると思い上がるほど馬鹿じゃない。万全の状態のエヴァと力を合わせれば逃げるぐらいはできるだろう。
「ひぇひぇひぇひぇひぇ。私が逃がすとでも?」
フロリエルは再び黒い影に変化しエヴァを追おうとする。
「雷術 雷拳」
俺はカウンターに近い構えで影を殴る。
影は何度か地面をバウンドし、また人型に戻る。
「う……ひぇひぇひぇひぇひぇ。いいでしょう、まずはあなたから殺します」
「やってみろよ! 雷術 雷砲」
手を向かい合わせ雷丸を生成。雷砲を放つ。が、フロリエルは上に飛び、簡単に避ける。雷砲は虚しく空を裂き、地面に着弾して爆発が起きる。
道がえぐれたが、多少は許してほしい。
「ひぇひぇひぇひぇひぇ。そんな単調な攻撃は当たりませんよぉ?」
「へ、馬鹿が。最初からお前なんて狙ってねーんだよ。雷術 雷装衣」
雷砲が地面に着弾した時の爆発でテンペスターは宙へ舞う。俺はそれめがけて上へ飛ぶ。
そう、雷砲の狙いはフロリエルに当てることではなくテンペスターを空中へ打ち上げること。
テンペスターを両手でつかみフロリエルを見下ろす。
フロリエルは俺より低い位置にいる。そして空中。これだけ好条件が揃っていれば、あるいは……
「ひぇひぇひぇひぇひぇ。なるほどぉ、やりますねぇ……しかしあなたにこの超再生を超えるほどのダメージを与えられますか?」
俺はテンペスターに全魔力を注ぐ。刀身に雷が纏われ、バチバチと細い稲妻が走る。
「これで、決める。雷帝流…………」
俺の全魔力がこもった一撃だ。『超再生』相手でも多少は効いてくれよ……
「……雷鋼剣」
俺はテンペスターを振り下ろす。
「ひぇ、ひぇひぇひぇひぇ……闇術……」
激しい光と落雷の音。国民区に雷が落ちた。
ーあとがきーーーーーーーーーーーーーー
19話読んでいただき、ありがとうございます!
新たな敵、フロリエルが登場しましたね。
ここからどう展開していくか、お楽しみに!
あ、あと遂に100PVを突破しました!
読んでくれたすべての方々に感謝です!
そして、これからもよろしくお願いします!
今回は記念すべき100PVと言うことで、私から話ししたいなと思います!
まず、この作品を書こうと思い、設定等を考え出したのが、GW明けぐらいですかね。
で、書き溜めていって、15日ぐらいからぼちぼち書き始め、初投稿は18日ですね。
たったこれだけの期間で100PVいけたのは皆様のおかげです。ありがとうございます。
毎話毎話グッドやコメントくれる方!本当にありがとうございます!
これからも『最弱属性魔剣士の雷鳴轟く』をよろしくお願いします!
(そろそろタイトルの略が欲しくなってきた)
「ファンタジー」の人気作品
書籍化作品
-
-
1
-
-
15254
-
-
34
-
-
1359
-
-
0
-
-
3087
-
-
89
-
-
1168
-
-
147
コメント
相鶴ソウ
ありがとうございます!
自分もセンスが……
コング“シルバーバック”
100PVおめでとう!
略称かぁ……ん〜〜
あ、僕センス無いんだっけ……