最弱属性魔剣士の雷鳴轟く

相鶴ソウ

11話 不可抗力なんだから仕方ない

 エルトリア帝国騎士団区、イザベラ宅に一人の男が来ていた。
 赤い髪をオールバックにし、普段身に付けている赤い鎧とは違い、ただのシャツを着ている。用心のため剣こそ下げているが、別に戦闘目的でやってきたわけじゃない。


「久しいなぁ、イザベラ」

「この間会ったばかりじゃない。あなたから訪ねて来るなんて珍しいわね」

「面白いガキを見つけてなァ……お前の拾い子だろ?」


 男――ドラゴン騎士団団長、アラン――は手に持っていた一枚の紙をイザベラに渡す。アランに言われたからか、目を落とすとすぐにクロトの名前を発見する。


「クロトね。ええ、そうよ」

「やっぱりか。全く、恐ろしいガキだぜ。メンツを見てみろ」

「確かにすごいわね。例のあの子エヴァリオンにエルネア公爵家長女。……え、このレイグ・フィルトルトって王子直属の騎士家系の子じゃないの?」

No.3ナンバースリーはベルガラック男爵家の長男だ。形式上リーダーは氷の嬢ちゃんになってるが、このチームの中心は間違いなくアルフガルノだろうよ」

「本当にすごいメンツね ガイナ君、マナティアちゃんと友達になったって話は聞いたけど、この二人はまたどうして……?」

「氷の嬢ちゃんが王子に絡まれてたのをアルフガルノが守ったんだ。その様子を見てフィルトルトも寝返ったってわけだ」

「ふふ……やるわね あの子」

「ああ、氷の嬢ちゃんとアルフガルノが模擬戦するのを見たが……あの雷術、先代国王を見てるようだったよ」

「あの子は雷で世界を変えるわよ?」

「ふっ……そんな気がするな」


 その後アランはイザベラと軽く話をして帰っていった。本題は別にあったため、そっちに話が移ったのだ。
 イザベラはクロトの活躍に期待しつつご飯の準備を始めた。





 エルトリア学園寮、氷の姫イエロ・プリンセッサ男子二号室にて。
 俺はベットの上にあぐらをかきながら頭をクシャクシャとかく。


「いくら成り行きとはいえ、これはまずかったな」

「…………ん? なんで?」

「いや、同じ部屋に男女二人ってのはな……」

「私は気にしないよ?」

「俺がするんだよっ!!」


 ……時は数時間前に遡る。





 模擬戦を終えた俺達は寮の登録をするためエルトリア学園寮に来ていた。家に帰る学生もいるが、中には地方から来ている子もいるため、一チームに付き男女二部屋ずつ、合計四部屋与えられる事になっている。
 寮の場所はエルトリア学園から徒歩三十分程で、立地としては全く悪くない。


 が、ここでイーニアスに喧嘩を売ったツケが回ってきた。
 イーニアスは王族の権利を使い、部屋を六部屋陣取っていた。そのしわ寄せで俺達に与えられるはずの部屋が二部屋になってしまい、他に空き部屋もなかったため、渋々二部屋を借りるしかなかった。


 マナは家がすぐ近くだからと家に帰ることになったが、エヴァが問題だった。マナはエルネア家に泊めると言ったがエヴァが嫌がった。
 仕方なく俺の部屋に相部屋することとなり、男子一号室はガイナとレイグ。二号室が俺とエヴァ。そしてマナは自分の家に帰るという結果になった。





「まぁ仕方ないか……俺もなるべく気をつけるからエヴァも気をつけてくれよ?」

「……なにを?」


 だめだこいつ。
 俺は頭を悩ませつつも布団に潜る。


「色々だ。風呂とか着替えとか お前も見られたら嫌だろ?」

「……うーん」


 本当に大丈夫なのか、この子……


「ありがとう。クロト」

「……なんだよ急に」

「物心付いた頃からハルバード家の道具として育てられ、親から愛情なんて貰えなかった。十歳の時、皆を殺して皆から氷の悪魔って呼ばれて、ずっと罵られ、虐げられてきた
けど、クロトはそんな私のために怒ってくれて、剣を抜いてくれて、私を仲間だって言ってくれた。嬉しかった。本当に、嬉しかった」


「……気にするなよ、仲間だろ。当たり前のことだ」

「……ふふ、うん!」





「ふぁぁぁ……」

「お、起きたか。おはよう」

「おはよぉー」

「今日は学園休みだから氷の姫イエロ・プリンセッサの皆と親睦でも深めに行くか」

「うん!」


 俺は着替えを済ませテンペスターを腰にさす。
 エヴァは既に着替え終わり早くしろと言わんばかりに腕を組み待っている。


 俺はイザベラさんに買ってもらった黒いズボンに白いシャツ。薄めのロングコートにテンペスターと言った服装だ。
 対するエヴァは黒のチェックが入った赤いミニスカートに肌色のセーターを着ている。


 準備を終えた俺達は隣の部屋にいるガイナとレイグを呼び、マナがいる中央区エルネア公爵領に向かう。


「それにしても中央区は俺達とは縁のない感じだよな」

「なんだい? 急に自分の矮小さに気が滅入ったのかい?」

「うるせぇな、レイグ。それよりお前、大剣置いてきたのかよ?」

「街中で戦闘になることなんて想定したくないよ。それに、魔術が多少は使えるからね、剣がなくてもどうにかするさ」

「そうか……あーそうだ、クロト ちょっと話がある」

「ん? なんだ? ガイナが真剣な顔して話があるなんて、明日は嵐か?」

「るっせぇな、とりあえずちょいと顔貸せって」

「わかったわかった。わかったからそんなに睨むなよ」


 俺は冗談を飛ばしつつガイナに近づく。
 ガイナは俺に肩を回し、みんなと少し離れ小声で聞いてくる。


「で、エヴァ嬢とはヤったのか?」


俺は無言でガイナを殴る。


「いてぇ、なにすんだよ。気になるだろ?」


 そんなことを言っているガイナに俺はテンペスターを数センチ抜き殺意を飛ばす。


「わ、悪かった。謝るからそれしまえって……」

「ったく……してねーよ。馬鹿じゃねーのか。俺らなんだと思ってんだよ」


 俺はテンペスターを鞘に戻しエヴァの隣に戻る。


「……ベルガラック君、何だって?」

「い、いや、何でもないよ。ただの世間話だ」

「そっか! あ、あのさ、クロト。マナちゃんを呼びに行っている間、先に国民区の大通りに行っててもいい?」

「なんで?」

「そ、その……エルネア公爵領って元ハルバード公爵領だから行きづらいっていうか……」


 あーそうか、昨日マナの提案を断ったのもこれが理由か。


「悪い、嫌なこと言わせて。だったら俺もついて行こうか? 一人で時間潰すのも大変だろ」

「……ほんとに? 来てくれるの?」

「ああ、エヴァがいいなら」

「じゃあ行こ!」

「おう。…………ガイナ!」

「ん?なんだ?」


俺は少し前を歩くガイナに声を掛ける。


「ちょっと諸事情で先に大通りに行ってる。マナと合流したら来てくれ!」

「ん?一緒に……はっはーん。了解されたぜっ!!」


 あのにやけ顔、絶対誤解したな。後で斬っておかないと……


 何はともあれ俺とエヴァは国民区大通りに、ガイナとレイグはマナを呼びにエルネア公爵領に向かった。



ーあとがきーーーーーーーーーーーーーー
11話読んでいただきますありがとうございます!

今回は戦闘でも、説明でもない日常的な話でした!
こういうの苦手なので今後うまくかけたらなぁと思ってます!


エヴァ「……読んでくれて、ありがと

よかったらグッドとかして……」

カンペ『もっと長く』

エヴァ「……」

カンペ『お願い!もうちょっと長めに!』

エヴァ「……」

コメント

  • 相鶴ソウ

    コメントありがとうございます♪

    ですよね!
    私自身日常回が好きなのでちょくちょく挟んでいきたいと思ってます!

    ホントですか!じゃあこれからも続けていきます!
    マンネリしないように少しずつ工夫を加えていきますので楽しみにしてくれると嬉しいです!
    ※ネタに走ることもしばしば……笑

    1
  • コング“シルバーバック”

    今回の話も面白かったです!
    ほのぼの日常回はいいですよね〜

    あとがきでキャラクターが話すの、結構好きです!
    なのでこれからも続けていただけると嬉しいです!

    3
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