悪役令嬢の影武者を嫌々演じて十年、憎っくき本物に『ざまぁ』したけど? 本当の悪役はアイツだった……!?

鼻血の親分

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 ミーアが露骨に虐められてから僕はシェリーを無視する様になった。腹ただしい思いがある。だが元々彼女とは随分会話を交わしていない。子供の頃の「親睦会」は貴族院へ編入してから行っていなかったし、すれ違い様に会釈する程度だったので、これまでと然程変わりはない感覚だった。

 僕はそれでシェリー悪役令嬢が傷ついてるなんて思ってもいなかった。むしろ傷ついて自業自得だと感じてほしかった。

 だが……

 それから間もなくの事だ。思いもよらない出来事が起こった。生徒会室に決して訪れる筈のないシェリーが突然訪問してきたのだ。

「あっ⁈」

 一同驚きを隠せない。

 彼女は背筋をピンと伸ばして斜めに構え、腕組みしながら上から目線で威圧する。そして口元は微笑を浮かべていた。

「ご機嫌様でございますわ。エリオット様?」

 な、何の用なんだ⁈ い、いかん、動揺する。落ち着け! 落ち着くんだ!

「……これは珍しい。で、僕に何か御用ですか?」

 辛うじて微笑を浮かべ対抗する。

「今日は卒業パーティーの件でお伺い致しましたの。王子様? 婚約者であるわたくしの入場をエスコートして頂けますよね?」

 そんな事を聞きに態々ここへ来たのか? ま、まあ良い。丁度良い機会だ。はっきり断ろう。

「ああ、その事だが……今回はやらないつもりだ」
「仰ってる意味が分かりませんが。やらない? 正気ですか?」
「卒業パーティーは卒業生のために行うべきだ。僕たちが特別な脚光を浴びる必要はないと思ってね」
「おーっほほほほほ……これはおかしなお話ですわ。わたくしたちこそ特別な存在だと思いますが。だって貴族の頂点、ロイヤルファミリーですよね? それに第一、第二王子様の時もしっかり婚約者をエスコートしてましたけど? エリオット様はその伝統を貴方の一存でお辞めになるのですか?」
「ああ、そう考えている」
「とても信じられませんわ。その件、理事長である我が父に承諾得てますの⁈」
「シュルケン公爵にはこれからお話するところだ」
「ふーん。お父様が何て言うかしらねえ?」

 僕は段々と腹が立ってきた。感情的になるのはマズいと思いながら、つい彼女を責めたくなった。

「理事長もご理解頂けると思う。それに君の事もご報告しなければならない」
「ーーは? わたくしの事?」
「君は厳粛なる貴族院でワインを飲んで、此処にいるミーアを何度も何度も虐めてるとね」
「……なっ⁈」

 その瞬間、ミーアは咄嗟に涙を浮かべながら僕の腕を掴み、背後へ隠れる素振りを見せた。如何にも恋人の様にだ。そして僕は感情に流されて彼女を虐めたシェリーをこの場で断罪したくなり、敢えてその演技を続けていく。すると、

「王子様、お好きにどうぞ。それとエスコートの件もかしこまりました!」

 シェリーは怒りを露わにそう言い放って生徒会室から出て行った。

 正直、少しホッとした気分だ。

 だがまあ、これで僕の気持ちも理解されたであろう。少しは自覚してくれたのならこれで良い。

 さて、次なる手を打つ為に僕は宮廷へ戻った。ある人物と会わなくてならないのだ……

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