前世は皆に恐れられた優しき英雄、今世は出来損ないの英雄

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七話 勝負の始まり

 急いで戻ると、海が一人待っていた。幸いにも元々自分がいた所より離れたところにいた。
(僕がいなくなった所より離れててよかった〜)
などと心底ホッとしていると無事バレずに戻ってこれた。
「お〜い...海ぃぃ〜」
と呼ぶと海はいきなり呼ばれビクッとなった後こちらを向いた。
「星夜か、びっくりしたじゃないか」
「ごめんごめん、向こうにいたのに全然きずいてなかったから、僕から声かけたらあそこまでびっくりするなんて思わなくて」
と会話をしていると、八雲に春風、美鶴がやって来た。
「あ、二人とも早いな」
「たまたまだよ」
と八雲の言葉に僕は答えた。
少しした後電車も来てみんなで乗り込んだ。みんなで色々話していると海が
「星夜改めて僕のお願いを聞いてくれてありがとう...今日はよろしく」
「いいよ、長い付き合いなんだし...ただし僕はこのお面をつけるけど」
と海の言葉に付け足す形で言った後、お面を見せた。
「狐のお面か?よくできてるな」
と八雲が言った。
「あと、これも身につけるから」
「何でそんなに身につけるの?そのままでいいじゃない」
春風が聞いてきた。
「学年順位が二位の海と戦ったのは誰だってなって僕だってわかったらめんどくさい事になるからさ」
と説明するとみんな納得したらしく頷いた。そんなたわいもない話をしていると学園が見えてきた。
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 今日は一学期に一度の学年合同実習の日のためホームルームが終わったあとみんな着替え始めた。
「なぁ海、俺と勝負しようぜ負けると思うけど、どこまで出来るか試したいんだ」
とクラスの男子が話しかけてきたそれを見ていた他のみんなが「あー、ずるいぞ!俺とも勝負してくれよ」「俺も俺も」「私もー」と男女問わず集まってきた。
「ごめん、もう他の人に僕からお願いして戦ってもらう事になってるんだ」
海がそう言うとクラスのみんなが「えぇ〜」と残念そうに言った。
「それじゃあ....僕行くね、また後で」
と言って海は教室を後にした。その後僕もクラスのみんなが騒いでいる中こっそりと教室を出て行った。
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 海の後を急いで追うと、階段の所で海が待っていてくれた。
「海も大変だね、も・て・も・て、で断るの大変でしょ」
「やめてくれよ、からかうのは」
と僕がからかうと、海は嫌そうな顔をした。そんな話をしながら歩いていると、特別訓練所についた。
「...今更だけど何で特別訓練所を使おうと思ったの?」
と僕の質問に海は少し真剣な顔になって
「僕と本気で戦ってほしいけど...他の人もいる中で星夜は、加減をすると思ったから」
と海は言った。フードの着いたパーカーを着て深くフードを被り左手に狐のお面を持ち海の方を向いて僕は
「そんなに本気の僕と戦いたい...?そして本気の僕に勝ちたい...?」
けっして大きな声では無かったが強い意志を持って海に聞いた。そして静かに海を見据えながら、お面をつけた。
「っ...!そうだよ、勝ちたいよ!順位が上がるって言われていい機会かもしれないと思ったんだ、だから校長先生にお願いしてここを使う許可をもらったんだから」
海の確かな覚悟を聞いた僕は、海に見えないお面の中で笑った後に、いつも通りの声音で
「...じゃあ、始めよう....観客も集まり出したしね」
僕の言葉に海は入り口を見た。そこには次々に生徒が入り始めていた。おそらく、一学年の中で一気に二位になった海がどのように戦うのか気になったのだろう。海は僕と向き直ると「そうだね」と一言だけ言って右手に聖剣を出した。海の聖剣は小さいダガーの形をしていて、腰には昨日の刀が付いていた。
「...その刀は使わないの?」
と聞くと「最初はね」と答えた。おそらく刀を使わずどこまで出来るのか試したいとゆうことだろう。その言葉を聞いた後僕も右手に夜美を呼び出した。夜美を腰に付けると、こちらも準備が整ったことを柄頭に手をやって表した。それを見た海は僕の動きをじっとうかがいながら、右に一歩また一歩と歩き出した。それに合わせ僕も右に一歩海と目線を離さず柄頭に手を置いたまま円状になるように歩き出した。数秒後動きを見せない僕にしびれを切らした海が最初に仕掛けてきた。
「はああああぁぁ.....」
海は身体を魔法を使い強化して消えるように移動した。
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 僕は、魔法を使い移動速度を体がついていける早さまで早くした。そして星夜の背後に回り込んで、聖剣を素早く振りかざした。今この場所にいる中で誰も僕の動きを見えている人はいない.....そのはずなのに僕が切ったのは星夜ではなかった。ただの.....そうただの、氷の柱だった。
「なっ.....!なんでっ........。カッ...!!」
僕が疑問の声を上げた瞬間、体が宙を舞ったかと思った途端に体に激しい痛みが襲った。痛みに耐えながら自分が立っていた付近に目を向けると、星夜が聖剣を抜いて立っていた。

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