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ロストアイ

ノベルバユーザー330919

三度目の正直



「今、何か居ましたわよ!?」


 両手の隙間からこっそり覗いていたリアが、距離を取りながら私に聞いてくる。そして私は今、ドアを背にして、しっかりと開かぬように閉ざしていた。


「何かって? 何も居なかったけど」
『ぎぇえええ!?』
「叫び声が聞こえますわよっ!」


 リアがガタガタと震えている。顔色も段々と悪くなっている。さらにその後ろでジルニク君も青褪めて震えている。ガタガタとしている二人をよそに、とりあえずしらばっくれてみる。


「さあ? 私には何も聞こえないけど」
「それに、扉が激しく叩かれてますわよ!?」


 ガタガタ震えていたのは私だった。……仕方ない。隠しても無駄なようだから観念するか。

 私は押さえていたドアの取っ手を離した。しかし、待てどもドアが開くことも無い。

 しかも、バンッ! バンッ! と激しく叩かれていたのに、今は静かになっている。

 いつまで経っても開く様子が無いため、仕方なくこちらからドアをカラカラと開けてみた。


「う……」


 鼻につく異臭がする。つーんとするな。そう思いながらも、ドアをくぐり入ってみる。うむ。丸焦げだった。内部を見た感想は、これ。


「酷い有様ですわ……」


 私に続いて鼻を上品に抑えながらリアが入室。部屋の惨状に可愛い顔を顰めている。


「いやー、ちょっとやり過ぎたかも」


 改めて部屋の中を見回してみるが、あちこち燃えるものが多かったのか、茶黒い焦げ跡が目立つ。なかでも、一際目立つのが入口傍にある山の物体だ。予想はつくけど。


「……言わんこっちゃねーな」


 大分顔色が良くなったジルニク君も、遅れて入室。そして、ある程度惨状を確認し終えた二人の視線にめった刺しにされる。さすがにちょっと反省。


「……全く。一体何があったというの? それに、確実に誰かの声が聞こえましてよ?」


 疑り深い、二つのじとーっとした視線にどう答えようか迷っていると、何やら、背後でボコッとでもいうような音がした。


「チッ……」


 思わず舌打ちを溢してしまった。女の子らしからなかったな。反省。

 振り向かずに舌打ちをした私を見ることも無く、先程まで何か言いたげな視線を送っていた二人が、巻き戻しのように青褪め始めた。なんなら、今度こそガタガタと震えている。

 そして、さらに後ろでバリバリと音もし始めた。聞き覚えのある音だ。二人の顔もさらに青を通り越して白くなっている。


「――びど、いじゃな、い、があ……」


 何もせずに突っ立っていると、後ろから、しわがれたガラガラ声が聞こえた。誰かは分かっている。わざわざ魔法で燃やしてやったというのに。なんという不死性だろうか。


「ひぃっ……!!」


 ついにリアが腰を抜かした。ジルニク君は……あっ、目の色合いのせいで気付かなかったけど、立ったまま白目剥いて気絶してるよ! ……ん? 白目で気絶? ……。…...ああ! そういえばそんなやついたな。なんだ、成仏してなかったのか。

 私がジルニク君と白目男子を結び付けてすっきりと納得していると、肩にぽんっと軽く手が置かれた。


「よう、ごぞ……」
「『洗浄ウォッシュ』」
「あばばばばばばばばっ!?」


 とりあえず、置かれた手が黒焦げで、制服が汚れるので魔法で綺麗にする。調節を間違えたのか、それとも効果範囲が広かったのか、余分なものまで洗ってくれたようだけど。


「……せ、ぱ?」


 ガタガタと、腰抜かして震えていたリアが驚愕の表情に変わり、小さく声を漏らす。余程驚いたのか、呆気に取られて震えも治まったようだ。ジルニク君は……未だ帰らぬ人のようだ。


「……ぷはあ! ……いやー、さすがに死ぬかと思ったよ。ハッハッハッ!」


 今度こそ後ろを振り返り、そこに居た人物を確認する。今朝から散々な目に遭ったというのに、まるで何も気にしていないかのよう。


「そのまま消し炭になっていれば、この世も安泰だったろうに……残念です」
「いやースマンね。いきなりで驚かせてしまったようだな!」


 私の発言を軽く流し、頭をなでなでしようとしてくる。どうやら、燃やしたのは、私が再会に驚いてやったただの照れ隠しだと曲解した模様。……事実を言っただけなのに、解せぬ。

 ひらりと、迫るクレイ先輩の魔の手を躱し、距離を取る。躱し技について定評がある私。日常的に逃げる機会に恵まれたもので。……嬉しくない。

 そしてこの変態め。普通に登場すればいいのに、あんな状態で扉の向こうに潜んでいるから乙女に燃やされるのだ。

 そうして華麗に躱す私に距離を取られ、出した手が宙を彷徨う。なんだか寂しそう。いや、そんな顔しても懐柔されませんが。さっきまでの危ない光景は忘れてませんから。近づかないでいただけます?


「そんな目で見ないでくれよ。君たちが訪れるのを待っていたのだから」
「あれがですか? ……やはり消し炭と焼失、どちらにしますか?」
「それは、選択の余地がないねー」


 おーこわいこわいとばかりに肩を竦めて、対して怖くなさそうな顔でにっこりと私達を見ている。その顔、ムカつくな。


「クレイ先輩、なぜ、このようなところに……?」


 正気に戻ったリアが先輩に質問する。ジルニク君は……未だ精神世界で迷子のようだ。……逞しくなって戻って来いよ!


「ん? おかしなことを言うね。ここに来たのは君たちが話を決めたからだろう?」
「そうですわ。ですが、ここにいらっしゃるとは思いませんでしたの」
「そうなのかい? 割とここにいると思うけど」
「そうなんでしたの?」


 ……ん? なんか話が噛み合っているようで、噛み合ってない気がするぞ。

 未だ宇宙へと旅立ち、神秘から帰還出来ないジルニク君に無責任な応援をしていたら、先輩がなんだか変なことを言い出し始めた。

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