ロストアイ
説明会@その2
今度こそ、やっと説明会が始まるようだ。
真面目に開会の宣言がされ、現在、ちょうど教室について説明を受けているところだ。
……そして、詳細を省いて総合して話をまとめると、こうだ。
まず、先程の半日にも及ぶゲームについては、集団能力、あるいは個人能力など、性格的なことも含めてテストしていたようだ。
教室に入る前の試験だそうだ。
教師すべてが生徒を見ており、その中でも、この生徒はぜひうちにということで、後でスカウトの書が送られるらしい。
そのスカウトの書を受け取れば、どんなに倍率の高い教室でも無条件で受講可能になるそうだ。
……まあでも、生徒が教室見学の際に入りたいと思わなければ、それは成立しないけど。
そのために、まずはそれぞれの適性や判断能力、個人と集団になったときの行動などを見られていたというわけだ。
ま、スカウトの書を貰わなくとも、入りたければ基準を満たせば良いだけだから、気にしない生徒も多いけど。
そうして、教師からのアプローチは以上で、次に生徒が教室見学をすることになる。部活見学や入学前の学校見学のようなものだ。
教室見学はなんと、一ヵ月も期間があるらしい。
共通以外でもかなりの数が存在するため、判断するには相応の時間が必要ということだ。
ただし、定員も決まっているため、早めに決断しないと教室に入れなくなってしまう。
スカウトの書を持っている生徒はそれに関係なく入れるみたいだけど。
今日は一通り教室の仕組みの説明や、これから生活する寮について、そして、内部に存在する街の利用方法についてなど、これからの生活に欠かせない情報を纏めて説明してくれるらしかった。
「――大体の概要は説明いたしましたが、何か質問はございますか?」
ママだと間延びするからか、今まで説明していたモノクルの女教師が講堂内の生徒へ問いかける。
しかし、分かりやすい説明だったからか、特に疑問の声が上がることは無い。
「質問は無いようですね。それでは、寮へと案内いたしますので、制服の胸ポケットに入っている学生証を確認して下さい」
言われた通りに右の胸ポケットに手を入れてみる。固い感触があり、取り出してみると、いつ取られたのか、自分の顔写真付きのカードだった。
表面には、写真と最初に受付で入力した項目が全て入っている。裏面にはまだ空白しかない。
「そのカードは大切な学生証であると同時に、皆様の生活費ですので、くれぐれも失くしてしまわないようにお気を付け下さい。そして、裏面の空白を光に翳すと、皆様の寮と部屋が浮かび上がりますので確認して下さい」
裏面を天井の明かりに翳すと金色の文字が浮かび上がった。3Dで浮かび上がっている内容を確認すると、特A寮ー2ー204と出ていた。
「ワタクシは特A寮ー2ー205ですわ。いかがでして?」
「あ、私の近くの部屋じゃない? よろしく」
「ええ、どうぞよしなに」
おそらくリアと同じ寮で、しかも部屋も近そうだ。幸先が良くて何よりである。
これで、ボッチ生活にはならなそうだ……。
「そうだ、教室見学も一緒に行かない?」
「そうですわね。一緒に教室を回りましょう」
とんとん拍子に話がまとまる。
良かった……これで、迷子にならなくて済みそうだ。
そんなことを考えていると、生徒が学生証を確認したと判断したのか、モノクルの女教師が話を続ける。
「それでは、確認も出来たかと思われますので、寮ごとに移動を行って頂きます。それでは呼ばれた寮の生徒は案内係の指示に従い、速やかに移動を行ってください。寮則については、それぞれで説明があることでしょう。くれぐれも移動中にはぐれてしまうことが無いようにお願いいたします。それではまず、魔A寮の生徒はあちらの方が案内いたします。続きまして――」
次々と生徒が講堂から退出していく、特A寮はまだ呼ばれない。だんだんと数が減っていき、最終的には、白服の生徒はいなくなり、講堂には赤服の生徒しか残っていない。
「――最後に、特A寮。残りの生徒すべてになりますね。このまま講堂に残っていただきます。しばらくしたら、担当の者が居らっしゃいますので、それまで、待っていて下さい」
それだけ告げると、モノクルの女教師もさっさと退出してしまった。
そうして残ったのは生徒だけとなる。
――それから何十分待ったかは知れないが、誰も来ない。
「ねえねえ、待ってろって言ってたけど、誰も来ないよ? おかしくない?」
「そんなはずはありませんわ。他の生徒は案内人が居たんですもの。ワタクシ達だけ、放置だなんて、そんな……」
沈黙に耐えきれず、こそこそとリアと密談を交わす。
しかし、誰もかれも沈黙を保っていたままだったためか、声がやけに響いた。
それが引き金だったのか、私とリアの後ろの席の一人の男子生徒が前の座席を蹴り、立ちあがった。
「――ふざけんな。あの女教師を連れ戻して、寮まで案内させてやる」
堪忍袋の緒が切れたのか。そのまま男子生徒は出口へ向かっていった。
皆も同じ気持ちなのか、誰も止めるそぶりは無い。
「あっ……」
「どうかいたしましたの?」
真っ赤な炎のように逆立った赤い髪の男子生徒を見送っていると、突然気配を感じたのだ。あのままいくと……。
「チッ、なんで俺がこんなことをがっ!?」
退出しようと扉に手を掛けた男子生徒が外側から開かれたせいで、顔面に直撃を食らい吹っ飛んでいった。
「あら? 遅れてしまったかしら?」
吹っ飛んだ男子生徒を気にする様子もなく、一人の若い女性が入ってきた。
にっこり照れた笑顔の女性と、吹っ飛ばされて悶えている男子生徒をよそに、微妙な空気が講堂内に漂うのであった――
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