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ロストアイ

ノベルバユーザー330919

ゲーム終了



 ――数時間にも及ぶ襲撃が唐突に止んだ。

 辺りの気配を探るが、特に殺気立った気配が見つからない。……どうやら、あらかたの魔獣は倒してしまったようだ。

 それに気付くと、急にどっと疲れが舞い戻ってきた。……久々に死闘を演じたな。


『お疲れ様です。強敵はもう居ません。後は残りの生徒でも十分でしょう』
「そうじゃないと、やってらんないよ、ほんと」


 全く冗談じゃない。しのぎ切ったからまだ良いものを……。プログラムじゃなく現実だったら、とっくの昔に死んでたな。

 反応がギリギリ間に合う絶妙なタイミングが何とも懐かしくて憎い。

 自分の姿を見下ろすと、制服は破けてボロボロ、そこら中から血がにじみ出ており、通常ならそろそろ出血多量で死んでいる頃だろう。全く、丁寧な造りだ。

 自分のボロボロな姿を見ているうちに、なんだか足元がふらふらとし始めて、視界も定まらない。ドサッという鈍い音がやけに大きく、近くで聞こえた。


『予想よりも、重傷ですね。やはり、腕が鈍ったのでは?』
「う、るさ、ぃ」


 声も上手く出ない。気力が無い。

 ――頬に当たる面が冷たくて気持ちいい。

 このまま眠ってしまいたい――。

 手足も重くて動かせないようだ。ずっと身体強化を使っていたから、もう少し休まないと回復が追い付かず、大変なことになってしまう。


『限界ですね。安心して下さい。残りの魔獣は直に倒されることでしょう。ログアウトすれば、身体は元通りですが、精神疲労は戻りません。ここは、そのまま休んでいましょう』


 うささんの声だけがはっきりと聞こえる。

 そうか。

 なら、後は他の人に任せてゆっくりと休もうかな。……周りは相変わらず血生臭いままで、休むには不適格だけども。

 暫く、寝っ転がりながら休憩をする。落ち着いたことで、様々な疑問が浮かび上がる。

 まず、記憶を探る限り、こんなゲームは聞いたことが無かった。

 うささんも知らなかったことを見るに、世には出ていないゲームなんだろう。

 次に、――魔獣だ。

 確かに、一見現実の魔獣と大差ないように見えるが、それは違う。よく見れば、ほとんど同じ動きしかしていない。

 しかも、最初に対応できれば、その後の対処が容易い。それを見破られると踏んでの数での攻めになったということだ。

 実際、かなりの数を倒したが、現実であればせいぜい死なないように逃げ切れるかどうかといったところだ。

 そして、うささんの話によると、集団で固まっているグループと、個人で動いているグループとで分かれているようなのだ。

 どういった基準かは分からないが、おそらく、分け方によってテストされている内容は違うのではないか。

 そうなると、そもそも他のグループとの合流自体が不可能だったのではないか。

 ということになる。

 あちこち移動しながら魔獣を倒して進んでも、全く密林地帯から抜け出せない。

 ――完全にはめられたな。

 最初から、見られている内容が違っていたなら、そもそも、合流自体不可能で、魔獣も結局はそれぞれで倒さないといけなかったわけか。

 実質、逃げることなんて不可能だったな。残念。

 辺りが静けさに包まれる中、適当に考察していると、聞きなれた声が頭に響いた。どうやら、全てのテストが終了したようだ。


『は~い、お疲れさま~。よく頑張ったわね。全ての魔獣が現時刻をもって、全滅となったの。しばらくしたらログアウトしちゃうから、よろしくね~?』


 寝っ転がってからさらに数時間。精神的にも大分落ち着いてきた。これなら、現実に戻っても、身体への影響はそれほどでもないだろう。

 ゲーム自体、身体感覚をそのままに楽しめるようになったためか、現実とのギャップに脳が異常をきたすのだ。

 なので、基本的に長時間のログインはよろしくない。戻った時に、最悪ショック死しかねないためだ。

 ログアウトするにしても、随時、ログアウトしても問題ない生徒からだろう。

 私はダメだ。おそらく最後まで後回しにされる。こうも重傷のボロボロだと、戻った時に脳がパニックを起こすのだ。

 なので、ゆっくりと瞑想する心地で随分と昔に思える講堂内に居た自分の姿を思い浮かべる。

 こうすることで、戻った時にパニックが起きないようにするのだ。

 そうして、目を瞑ったままでいると、次第に身体がふわふわと浮かんでいるような心地になる。

 ――そろそろログアウト出来そうだ。


 ふわふわに身を任せていると、次第に現実の感覚に戻っていく。

 どうして分かるのかって? ――周りで戻ってきた生徒たちの騒めきが聞こえるようになったからだ。

 そして、一瞬、ふっと重力を取り戻したかのように、自分の重さを感じた。

 ――どうやら、戻ったようだ。

 ゆっくりと目を開けると、明かりの点いた講堂内だった。すでに拘束具は外されている。

 ゆっくりと首を動かすと、ゴキゴキと良い音が鳴った。あ~やっと戻ってこれた~。


『やっとお目覚めですか。時間が掛かりましたね』
「いや、むしろ早いほうだと思うけど?」
「お身体に問題はございませんの?」


 横から聞こえた声に反応すると、ちょっと逞しい顔つきになったリアと目が合った。心配させてしまったようだ。


「大丈夫大丈夫。そんなに遅かった?」
「ええ、あなたが最後ですわ。あなたより前に目覚めた方より1時間も目を開けられませんでしたの」
「マジか」


 それは知らなかったな。

 もう一度周囲を見渡してみるが、最初の混乱状態はどこへやら、雑談するくらいには皆に余裕が戻っているようだ。

 そんなことを考えていると、いつから立っていたのか、気配を感じ取ることが出来なかったママが壇上に居た。


「は~い注目しなさ~い。これから説明会を始めるわよ~」


 ひどく遠回りしたが、どうやらやっと、説明会が始まりそうだ。姿勢を正すと、ママの一言一句を聞き逃さないように耳を傾けるのだった。

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