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ロストアイ

ノベルバユーザー330919

うささん革命@その3



 ――詳細は省くけど、なんだかんだと最後の課題をクリアしました。色々あったけど。ええ。

 ……遠回りに変な修行して結局感覚を掴めず。気分転換に変身グッズでもと探してみれば長く困難な道のりに足を取られ、最終的には変身グッズを手に入れて変身してみたらあら不思議、あれほど掴めなかった感覚が容易く分かるようになるし。

 変身グッズを手に入れるために必死で行った長く苦しく辛い道のりもうささんに聞けばある程度短縮してむしろ苦労も少なくクリア出来たかもしれないというのに……。


『詳細を省くと言いながら大まかに要点をまとめていますね。余程、根に持っているのでしょうか』


 ハッハッハッ。

 ……そんなわけなかろう。……決して。決して歯ぎしりして地団太踏んで壁に穴を開けたいほどに頭にきている訳ではないから! ……ほんと。

 それで?

 そんなことよりもさっさと実体化して欲しいんだけど。時間かかるんでしょ? 色々な都合で今はゴスロリ幼女だからちょっとした冷たいツンツンモードだから。


『了解致しました。それでは依代をお持ちください』


 持つだけなの?

 なんか改造とかしなくてもいいの?

 時間かかるって改造するからじゃなかったの?


『改造? いえ。改変はしますが改造は必要ありません。依代へ移った後に改造する方もいらっしゃいますが……』


 そうなの?

 まあいいか。……はい、持ったよ。

 それで次は何すればいいの?


『はい。それではそのまま寝台に横になってください。依代が上にくるように、潰れないようにお持ちのままでお願いいたします』


 ……なかなか難しいな、これ。幼女の身体だとべスポジが掴みにくい……。

 よいしょ、

 うんしょ、

 えいっしょっと!

 ……ふ~、綺麗に寝られた。完璧ね。
 それでここからどうするの?


『はい。それではそのままお眠り下さい』


 ――は?


『はい。それではそのままお眠り下さい』


 いや、聞こえてないとかじゃないからね?

 ちゃんと聞こえてたけど……。

 え? 寝るって睡眠の寝るってこと?

 ……狸寝入りとか、そういうのではなくて?


『はい。そのままお眠り下さい』


 寝る以外に必要な儀式とか、全くないの……?


『はい。そのままお眠り下さい』


 ……ねぇ。実はちょっと面倒くさくなってるだけでしょ……。

 ……さっきから同じようなことしか言ってないけど!?


『はい。そのままお眠り下さい』


 ちょっとーー!!

 今"はい"って言った、"はい"って言ったよこの子っ!

 なんて子なの……!


『失礼いたしました。そのままお眠り下さい』


 やっぱりちょっと投げやりになってる……!

 ……もう言外に寝ろとしか言ってねーよ、これ。

 なんなの?

 どうしちゃったの……?

 うささんはうさんくさいけど、そんなに適当な発言しないよ!

 ……ちょっとズレた頓珍漢なことを言ってくれるんだよ!


『失礼ですね。そのままお眠り下さい』


 もういいよ!

 もう寝ろとしか言わないよ!

 興奮しちゃって寝られなくなっちゃったんだけどっ!

 どうしてくれんの……?

 ――幼児はね、寝なくていいときに眠くなって、寝ろと言われると起きてイタズラしたくなっちゃうのっ……!

 どうしてくれんのこの心理状態っ……!


『失礼いたしました。そのままお眠り下さい』


 ……やっぱり対応変わらないのね。なんてやつなんだ……。


「…………?」


 ――って……あ、れ?

 なん、か、きゅう、に、ね、む、くぅー……。


「――――」


 …………。


『対象者が睡眠状態へ移行したことを確認。プログラムの依代への移行を開始いたします。システムより現状、およそ七か月かかると推測。対象の身体の保護に移行いたします。防護膜発動。依代の状態の確認へ移行いたします……――――』


 ――静かな空間で精密音だけが辺りを包む。

 大きな遊園地の傍に可愛らしくピンクのフリフリでまとめられた一画があった。天蓋のついたキングサイズのプリンセスベッドの中央。小さな白い影が大事そうに何かを持ち、ひそかな寝息を立てている。その周りでは不思議な膜と数式が散らばる。

 静かに横たわる少女の人形のような愛らしさもあり、その一画は一種幻想的な雰囲気を醸し出していた。

 ――少女以外誰もいない広い部屋の中、外からの来客者があった。

 透き通るほどに白い髪、黒曜石のように輝く暗く鋭い瞳。足音すら悟らせないほどの実力者。

 ――マリア・スズキ。アイ・スズキの母だ。


「……始まったわね。全く。親離れが速すぎるわ~」
「ああ。早過ぎる……まだ甘えてほしい……」


 そしてともにやってきた男。何を隠そう、アイの父ケンシン・スズキだ。アイの前ではだらけきった情けない顔を晒しているが、仕事は出来る男である。

 漆黒の髪に切れ長の赤い色の瞳。暗闇では紅にも見える瞳の色は目が合うとビビると部下には怖れられている。


「――だ~め。女の子は少し見ない間に大きく成長するものよ~」
「――っ、いやだいやだ! あいちゃんが嫁入りなんてまだ早いっ!」


 何を想像したのか。先ほどまで神秘的だった空間に情けない男の叫びがこだまする。先程までキリッとしていた顔も台無しだった。

 ――マリアは困った。これでは近い将来、娘がいつまで経っても結婚出来ずに行き遅れてしまう可能性が出て来てしまう。


「かなり飛躍したわね~。よ~しよ~し。お嫁の話は確かに早いけれど~、実際にそんなことになったら邪魔しちゃだめよ~?」


 聞き分けの悪い子どもに諭すように夫の未来の暴走を事前に窘める。


「いやだいやだっ! そんな話聞きたくないっ……! ……相手を殺してでも阻止するんだっ!」


 無駄だと思いながらまだ見ぬ娘婿のため擁護を試みた。しかし夫はまだ先のことを想像して喚いている。娘の未来を想ってか、いつものにこやかな表情から思わずマリアは真顔になっていた。


「――――ダメよ? そんなことしたら、捥ぐわよ?」
「…………」


 先ほどまで「いやいや!」と癇癪を起していた夫が黙った。

 ――これ以上ここにいても娘のAIの気を散らすだけ。依代移行とはとても無防備な状態なのだ。……家族であっても近くにいると排除対象になりかねない。

 無事に移行が開始されたことを確認できたことだし、娘が起きるまではかなり時間が掛かる。その間、影の護衛も含めてこの部屋へ近づかないように手配をしなくてはいけない。

 しばらくは退屈になりそうだと思いながら、いまだに黙ったままの夫の襟首を掴んで引きずりながら部屋を後にした。

 ――後に残ったのは穏やかに寝息を立てる少女の幻想的な光景のみとなった……。


『…………――――』


 ――ちなみに、引きずられて退室したとき黙っていたのではなく、あまりの恐怖に気付いたら気絶していたと、後に本人自らが語った。

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