近距離魔法使いの異世界冒険記 ~妹と二人で転生しました~
第18話 いざ、テスト(2)
「よーい、スタート!」
私の掛け声と同時に、カルミはさっきと同じようにイグニッションを構築し、発動させた。そしてやはり、魔力は減っていない。
それに対しエイリーは、腰に差していた木の剣……いや、長さ的にナイフと言った方が適切だろう。木のナイフを右手に構えた。
そしてイグニッションがエイリーに届いたように見えた時、炎が一瞬にして消え去った。
「……え?」
エイリーは当然のように無傷。身体も服も、木のナイフも、燃えた跡は一切見当たらない。しかし魔力を見れば、最初よりも少し減っている。
これは魔力操作さえできれば誰でも出来る技術で、魔法に大量の魔力をぶつけて相殺しているだけである。もちろん魔力は消費するので、さっきよりも減ったのだ。
「イ、イグニッション!」
カルミはもう一度イグニッションを放った。さっきよりも炎は大きくなっている。しかしそれでも魔力は減っていない。
そしてまたエイリーに届いたかと思うと、炎は消え去った。
「……さっきからそれしか使ってませんけど、それしか使えない訳じゃないですよね?」
「も、もちろんよ」
「なら、もっと使ってきて下さいよ。イグニッションだけじゃ降参させられませんよ」
おお、エイリーが煽った。さて、カルミは乗るか乗らないか。
「ふーん、そんなに自信があるのね。いいわ、怪我しない程度に全力でやってあげるわ」
あれ?意外と短気なのかな。表情に少し怒りが見える。
「アイシクルアロー!」
カルミがそう叫ぶと、氷柱がいくつも生成され、先端がエイリーに向けられる。
……うん、本気だよね。かなり本気で攻撃してるよ。この数なら、下手すれば怪我するよ。
「身体強化・ダブル」
それに対してエイリーは冷静に身体強化を2重にかけている。身体強化はエイリーが使える、数少ない魔法の1つだ。範囲は指定していないので、全身にかかっている。
「バースト!」
カルミのその一声で氷柱が数本ずつ動き出した。それらの氷柱は瞬時に加速し、エイリーに襲いかかる。
しかしエイリーはそれらを簡単に避けるので、氷柱は1本も当たらない。しかも、隙を見ながら少しずつ近づいている。
「身体強化!」
とはいえ、カルミにはまだ逃げるという手は残っている。少しずつ近づいて来るエイリーから、カルミは少しずつ離れていっている。
「あら?煽ってきた割には、私の氷柱を避けるのに精一杯で全く近づけてないじゃない」
ここで、少し余裕のできたカルミもエイリーを煽った。しかし、エイリーは表情ひとつ変えていない。
「勘違いしているようですけど、近づいていないのはわざとですよ。近づきすぎると少し面倒なんで……ねっ!」
そう言ってエイリーは背中に隠し持っていた、液体の入った試験管のようなのような物を取り出し、カルミに投げつけた。
「はぁ……『悪魔の水』なんかで隙が作れるとでも思ったのかしら?そんな訳ないでしょう」
そう言ってカルミは、試験管を空中で割った。なので中の液体も飛び散ってしまった。
しかしエイリーは何故か、ニヤリと笑いながらかなり後ろまで跳んだ。
「悪魔の水?そんなものじゃないですよ。これは、そうですね……言うなれば『地獄の水』です」
悪魔の水というのは、触れると魔力を吸われる水のことを指す。悪魔と呼ばれる種族も魔力を吸う魔法を使うので、そう呼ばれている。
そしてエイリーは投げた水のことを地獄の水と言っているけど……たしかにあれは地獄の水だろう。私も制作を手伝ったので、その恐ろしさがよくわかっている。
「何が地獄よ。何も起きないじゃない。そろそろこっちも攻撃を再開……え?」
カルミはさっき生成した残りの氷柱を動かそうとした。しかし、そこで気が付いただろう。
氷柱はもうほとんど溶けていたのだ。今は春で暖かいとはいえ、いくらなんでも溶けるのが早い。
「どうして溶けて……って、あっつ!」
さて、さっきの地獄の水の本領発揮だ。
「どうですか?まるで、灼熱地獄にでも居るみたいでしょう?これで降参してくださると助かるんですが」
この地獄の水には「灼熱剤」という名前を付けている。この水は沸点が低く蒸発しやすい。その気体になった水の周囲が、まるで灼熱地獄に居るように思えるほど暑くなるからだ。
灼熱剤は気体の状態だと、周囲の空気中の魔力を消費して熱を発するようになっている。逆に言えば、保管するのなら液体か固体の状態で保管しなければならない。
なので、試験管を模して作った容器の内部の圧力を高めて、液体の状態にしていたのだ。とはいえ沸点はそこまで高くないので、かける圧力はたいして高くはないけど。
「ここまで意地を張っちゃったら、なかなか引き下がれないわよ」
カルミは降参する気は無いようだ。とはいえイグニッションは無効化されるし、アイシクルアローも溶かされるし、打つ手はないと思うんだけど。
「ファイア……アロー……」
「「カルミさん!?」」
カルミがファイアアロー……その名の通り、炎の矢を飛ばす魔法を放とうとしたとき、突然カルミが倒れた。
そして倒れる瞬間、カルミからなぜか大量の魔力が溢れたのが見えた。魔力不足で倒れることはないけど、一気に魔力を放出すると体に負荷がかかって気を失うことがある。今回倒れたのはそのせいだろう。
「えっと、えっと……どうしよう!エンシー!」
「とりあえず中和剤!」
「そ、そうだね」
エイリーはそう返事すると、背中からもう一本の試験管を取り出し、栓を抜いて辺りに振りまいた。
すると、周囲の気温が直ぐに元に戻った。
「よし、私がカルミさんを運んで行くから、エイリーはお母さん達にベッドの用意をしてもらっておいて」
「わかった。じゃあよろしく!」
そう言ってエイリーは走って帰って行った。
さて、私も急いで運ばないとな。
私の掛け声と同時に、カルミはさっきと同じようにイグニッションを構築し、発動させた。そしてやはり、魔力は減っていない。
それに対しエイリーは、腰に差していた木の剣……いや、長さ的にナイフと言った方が適切だろう。木のナイフを右手に構えた。
そしてイグニッションがエイリーに届いたように見えた時、炎が一瞬にして消え去った。
「……え?」
エイリーは当然のように無傷。身体も服も、木のナイフも、燃えた跡は一切見当たらない。しかし魔力を見れば、最初よりも少し減っている。
これは魔力操作さえできれば誰でも出来る技術で、魔法に大量の魔力をぶつけて相殺しているだけである。もちろん魔力は消費するので、さっきよりも減ったのだ。
「イ、イグニッション!」
カルミはもう一度イグニッションを放った。さっきよりも炎は大きくなっている。しかしそれでも魔力は減っていない。
そしてまたエイリーに届いたかと思うと、炎は消え去った。
「……さっきからそれしか使ってませんけど、それしか使えない訳じゃないですよね?」
「も、もちろんよ」
「なら、もっと使ってきて下さいよ。イグニッションだけじゃ降参させられませんよ」
おお、エイリーが煽った。さて、カルミは乗るか乗らないか。
「ふーん、そんなに自信があるのね。いいわ、怪我しない程度に全力でやってあげるわ」
あれ?意外と短気なのかな。表情に少し怒りが見える。
「アイシクルアロー!」
カルミがそう叫ぶと、氷柱がいくつも生成され、先端がエイリーに向けられる。
……うん、本気だよね。かなり本気で攻撃してるよ。この数なら、下手すれば怪我するよ。
「身体強化・ダブル」
それに対してエイリーは冷静に身体強化を2重にかけている。身体強化はエイリーが使える、数少ない魔法の1つだ。範囲は指定していないので、全身にかかっている。
「バースト!」
カルミのその一声で氷柱が数本ずつ動き出した。それらの氷柱は瞬時に加速し、エイリーに襲いかかる。
しかしエイリーはそれらを簡単に避けるので、氷柱は1本も当たらない。しかも、隙を見ながら少しずつ近づいている。
「身体強化!」
とはいえ、カルミにはまだ逃げるという手は残っている。少しずつ近づいて来るエイリーから、カルミは少しずつ離れていっている。
「あら?煽ってきた割には、私の氷柱を避けるのに精一杯で全く近づけてないじゃない」
ここで、少し余裕のできたカルミもエイリーを煽った。しかし、エイリーは表情ひとつ変えていない。
「勘違いしているようですけど、近づいていないのはわざとですよ。近づきすぎると少し面倒なんで……ねっ!」
そう言ってエイリーは背中に隠し持っていた、液体の入った試験管のようなのような物を取り出し、カルミに投げつけた。
「はぁ……『悪魔の水』なんかで隙が作れるとでも思ったのかしら?そんな訳ないでしょう」
そう言ってカルミは、試験管を空中で割った。なので中の液体も飛び散ってしまった。
しかしエイリーは何故か、ニヤリと笑いながらかなり後ろまで跳んだ。
「悪魔の水?そんなものじゃないですよ。これは、そうですね……言うなれば『地獄の水』です」
悪魔の水というのは、触れると魔力を吸われる水のことを指す。悪魔と呼ばれる種族も魔力を吸う魔法を使うので、そう呼ばれている。
そしてエイリーは投げた水のことを地獄の水と言っているけど……たしかにあれは地獄の水だろう。私も制作を手伝ったので、その恐ろしさがよくわかっている。
「何が地獄よ。何も起きないじゃない。そろそろこっちも攻撃を再開……え?」
カルミはさっき生成した残りの氷柱を動かそうとした。しかし、そこで気が付いただろう。
氷柱はもうほとんど溶けていたのだ。今は春で暖かいとはいえ、いくらなんでも溶けるのが早い。
「どうして溶けて……って、あっつ!」
さて、さっきの地獄の水の本領発揮だ。
「どうですか?まるで、灼熱地獄にでも居るみたいでしょう?これで降参してくださると助かるんですが」
この地獄の水には「灼熱剤」という名前を付けている。この水は沸点が低く蒸発しやすい。その気体になった水の周囲が、まるで灼熱地獄に居るように思えるほど暑くなるからだ。
灼熱剤は気体の状態だと、周囲の空気中の魔力を消費して熱を発するようになっている。逆に言えば、保管するのなら液体か固体の状態で保管しなければならない。
なので、試験管を模して作った容器の内部の圧力を高めて、液体の状態にしていたのだ。とはいえ沸点はそこまで高くないので、かける圧力はたいして高くはないけど。
「ここまで意地を張っちゃったら、なかなか引き下がれないわよ」
カルミは降参する気は無いようだ。とはいえイグニッションは無効化されるし、アイシクルアローも溶かされるし、打つ手はないと思うんだけど。
「ファイア……アロー……」
「「カルミさん!?」」
カルミがファイアアロー……その名の通り、炎の矢を飛ばす魔法を放とうとしたとき、突然カルミが倒れた。
そして倒れる瞬間、カルミからなぜか大量の魔力が溢れたのが見えた。魔力不足で倒れることはないけど、一気に魔力を放出すると体に負荷がかかって気を失うことがある。今回倒れたのはそのせいだろう。
「えっと、えっと……どうしよう!エンシー!」
「とりあえず中和剤!」
「そ、そうだね」
エイリーはそう返事すると、背中からもう一本の試験管を取り出し、栓を抜いて辺りに振りまいた。
すると、周囲の気温が直ぐに元に戻った。
「よし、私がカルミさんを運んで行くから、エイリーはお母さん達にベッドの用意をしてもらっておいて」
「わかった。じゃあよろしく!」
そう言ってエイリーは走って帰って行った。
さて、私も急いで運ばないとな。
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