近距離魔法使いの異世界冒険記 ~妹と二人で転生しました~

駄菓子オレンジ

第16話 勧誘と、推薦

「学園って……王都第一学園のことよね?」
「そこの教師が、そこ以外のどこを言うと思ってるのよ」

 この言葉には驚いた。教師直々に勧誘されるのは、それ相応の実力だと認められていないとダメだろうし。

「だが、学園の入学試験は、試験の時点で9歳以上でないと受けられないんじゃなかったのか?流石に2年前から勧誘するのは早い気がするが……。それに、どうして試験が終わったばかりの忙しい時期に来たんだ?」

 父もナルウルフの解体が終わったようで、会話に参加してきた。
 父の言ってることは本当で、王都第一学園の入学試験を受けられるのは、その試験の時点で9歳以上12歳以下の子供だけだ。そしてその試験は、2月の末に行われることが多い。今は3月10日なので、まだ色々と忙しいはずの時期。それにもかかわらず、王都から馬車でも丸2日かかるこの村まで来ているのだ。

「私に任された分の仕事はこなしてきたから大丈夫よ。それに、今は春休みだから授業も無いしね」
「あー、そういえばカルミは宿題はさっさと終わらせるタイプだったわね。『実技が微妙だから、宿題だけは』なんて言って」
「ち、ちょっと!恥ずかしいからやめて!」

 へぇー。教師をやってるくらいだから、魔法を使うのは上手いのかと思っていた。でも、その分頭は良いのだろう。

「ゴホン、えー、それはともかく、だからここに来ているのは大丈夫よ。今忙しいのは、仕事が残っている人だけだから」

 私たちはカルミに「手伝ってやれよ」というような視線を送ったけど、カルミは全く気にしない様子で続きを話した。

「で、どうして2年前から勧誘に来ているのかよね。その前にだけど、うちの学園に『特別推薦』という制度があるのは知っているかしら」
「うーん、知らないわね。アナタは知ってる?」
「いや、俺も初めて聞いた。最近できた制度なのか?」

 私も学園に関する本は何冊か読んだことがあるけど、特別推薦については何も書いていなかった。

「そうね。最近……と言うより、今回の試験から実施された制度よ。聞いたことがなくても無理ないわね」
「その特別推薦って、どんな制度なんですか?」
「それが、2年も前から勧誘に来ている理由でね。特別推薦っていうのは、学園の教師が推薦すれば、9歳未満でも7歳以上なら試験を受けられるという制度なのよ」

 なるほど、それなら私たちを勧誘しても、遅くとも1年後には試験を受けられる訳だ。

「まぁ、教師と言っても一部だけだし、1回の試験に推薦できるのは2人までだけどね」
「それで、受けるなら私たちを推薦してくれるってことですか?」
「もう1つ条件はあるけど、そういうことよ」

 条件というのが気になるけど、それはともかく、ありがたい話だ。早いこと入学できれば、本だけではわからないことも学べるし。

「その条件っていうのは?」

 そんなことを考えているうちにエイリーが質問していた。

「私と戦って、強いと思わせることよ」
「……戦うんですか?」
「えぇ、勝てとまでは言わないわ。それに、噂だけで推薦する訳にもいかないしね」
「あー、確かに……」

 確かに噂だけで判断するのは良くないだろう。噂が一人歩きしてるだけだったら、その人を推薦した教師の評価は落ちそうだ。

「ミエンとガルダさんもそれで大丈夫?」
「そうね……私もエンシーとエイリーが学園に行ってくれたら嬉しいし、2人が入りたいのならそれでいいわよ」
「俺も同じだな。2人が行きたいのなら行って欲しい」

 特に止めたりはしないようだ。なら、これといって悪い所は無さそうだし、私は行きたいところだ。
 隣を見るとエイリーが私を見ており、頷いた。エイリーも行きたいようだ。

「それなら、受けたいです」
「じゃあ、早速外に……」
「あら、もうなの?もっと休んでいけばいいのに。カルミはあまり魔力も残ってないでしょう?」
「うっ……」

 カルミは一瞬硬直した。何か急いでいるような雰囲気もあったし、何かを隠そうとしているようにも感じる。

「それに、カルミの魔力の中にエンシーの魔力もちょっと混じってるわね。もしかして、家に来る前に魔力を切らしていたところでエンシーたちと会ったのかしら」
「うぅ……」
「で、治癒魔法の跡もあるわね。それもエンシーの魔法みたいだし、エンシーたちに会う前に、あのナルウルフに襲われていたとか?」
「……なんでわかるのよ」
「ふふふ、どうしてかしらね」

 母は笑顔だけど、その笑顔には恐怖しか感じられない。私たちも叱られたことはあったけど、こんな風に怒られたことは無い。

「まぁ、それは冗談として、昔から飛行魔法を使う時はよく魔力を切らしていたじゃない。たぶん、今回もそうでしょう?」
「……おっしゃる通りです」

 なるほど、あのガサガサッという音は、森に降りてきた時の音か。そして、運悪く近くにナルウルフが居て襲われてしまったのだろう。

「とにかく、カルミの戦い方的にまだ魔力は足りてないでしょう?もう少し休んでから始めなさい」
「はぁ……何でもお見通しね。そうさせてもらうわ」

 結局、まだしばらく休めるようだ。なら、作戦でも立てておこう。

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