近距離魔法使いの異世界冒険記 ~妹と二人で転生しました~

駄菓子オレンジ

番外編 ハロウィンと、思い出

 これはカルミが訪ねてくる半年ほど前、10月の末のこと。

「あら、明日でもう10月も終わりなのね。時間が過ぎるのって早いわー」

 寝室でエイリーと話していると、母のそんな声が聞こえてきた。
 ちなみに元の世界とこの世界で、暦の差は一切ないらしい。閏年までちゃんとある。

「明日で10月が終わり……10月31日か……」

 エイリーは少し寂しそうな顔をしている。なにせ、明日はハロウィンだった日だ。この世界にはハロウィンは無い。

「あー、子供たちの仮装を見るの、毎年楽しみにしてたもんね」
「そうそう、手作りのお菓子をあげて、喜ぶ顔を見るのも楽しみだったのに」

 近所で家を回っているのはほとんどが小学生だった。なのでここ数年は、愛百合がクッキーやカップケーキなどを作り、あげる側になっていたのだ。
 そして愛百合のお菓子はとても美味しいので、毎年貰った子供は「Trick or Treat」の後に「去年のやつ超美味かったから、またちょうだい」みたいなことを言ってくれるのだ。
 元々私たちは子供が好きなのに、可愛い仮装をして満面の笑みでそんなことを言われると、それはもう幸せで。
 そんな訳で私たちは、毎年ハロウィンを楽しみにしていたのだ。

「これは、さっさと魔王を倒して帰りたいところだよね」
「本当だよ。……あ、もしちゃんと帰れたら、次はお菓子作り手伝ってよ。毎年私だけで作ってるんだから」
「う、うん。毎年任せきっちゃってゴメン」

 私が参加していないのには、一応理由がある。愛百合は料理やお菓子作りに関してはスパルタなのだ。
 でもまぁ、逆に言えば、それ故に美味しくなっている。あまり文句は言えない。

「……はぁ、でもやっぱり、この世界でもハロウィンっぽいことはしたいな」
「ハロウィンっぽいことか……ハロウィンと言えばカボチャとお菓子?」

 この2つから連想されるものとなれば……

「「パンプキンパイとか?」」

 やっぱりこれになるよね。毎年、配る用のお菓子とは別に焼いてたし。

「……お母さんに焼いてもらおっか」
「そうだね。やっぱりパンプキンパイがないとハロウィンって感じがしないよ」
「あとは、仮装もあるよね」
「うーん……仮装かー」

 せっかく今は小学生くらいの年齢になってるんだし、仮装はしておきたいところ。だけど、いきなり仮装しだしたら驚かれるだろうし……。

「やっぱり仮装は無理かな」
「そうかもね……あ、でも、ちょっとオシャレするくらいならいいんじゃない?」
「あぁ、それありだね。そうしよっか」

 仮装とは言えないかもしれないけど、これならあまり怪しまれないだろう。
 さて、こうして決まったならすべきことは1つ。

「じゃあ、行こっか」
「うん!」

 そう言って私たちは、寝室から出て母の元へ向かう。

「「お母さーん、明日パンプキンパイが食べたーい」」
「パンプキンパイ?いきなりね」
「なんだか無性に食べたくなっちゃって」
「くれなかったら、そうだね……」
「「イタズラしちゃおっかな」」

 そんな1日早い「Trick or Treat」をかました、ハロウィン前日の夜だった。

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