近距離魔法使いの異世界冒険記 ~妹と二人で転生しました~

駄菓子オレンジ

第8話 いざ、スキルで狩り

 私はスキルのせいで遠距離魔法が使えなくなった。だけど、そのスキルの本当の効果はかなり強力。
 なので、スキルを使う練習をしようと森に出かけた。前に猪を狩ったあの森だ。
 父からは「使おうと思えば自然と使えるぞ」と言われているけど、発動したことに焦ったら危ないから、大人しい動物を狙うようにしよう。
 さてと、森に着いたから早速、魔力感知で動物を探す。

「おー、今日はいつもの倍くらい居る」

 探してみると、普段あまり現れない動物も居た。森の奥の方にはよく居るけど、浅い所には滅多に出てこないらしい。比較的簡単に狩れるけど、味はとても良いので、売るとそこそこいい値段になるとか。私はまだ食べたことはないけど。見た目はほとんど兎で、小さい羽が生えている。結構可愛い。
 その兎のような動物を狩ろうかと思ったけど、周りをよく見ると好戦的な動物が多かったからやめておいた。
 ちなみに、魔力感知には慣れてきたので、それらの好戦的な動物からいきなり襲われることはほとんどなくなった。

「他に1匹でいる大人しい動物は……居た」

 1匹で、周りに他の動物が居ない鹿を見つけた。遠距離魔法は使えないので、周りを警戒しながらゆっくり近づいた。
 魔法で足音を消しながら、鹿が見える距離にある木の裏までたどり着いた。

(そういえば、私が見れる未来って10秒先までだっけ)

 ということを思い出し、私は作戦を考えた。
 考えた結果、私はスキルのある可能性にかけて、作戦を実行することにした。
 考えた時間はそこそこあったけど、鹿はまだ同じ場所でウロウロしていた。
 まず私はスキルを使った。父に言われた通り、使おうと思うだけで使えた。どうやら私のスキルは、左目は今の景色、右目は未来の景色を視ることができるらしい。そして私の右目では、鹿を驚かすと、私から見て右方向に逃げる姿が見えた。
 次に、鹿に気づかれないように、逃げたように見えた先に移動し、1つの何かの結晶のようなものを置いて、さっきの木の裏に戻った。
 そして私は、鹿を驚かせるために、パンッという音を魔法で出した。すると鹿はさっき見た未来と同じ方向に逃げ出し、突然体を一瞬硬直させ、その場に倒れた。

「よし、なんとなくスキルの性質がわかったかな。少なくとも2つは」

 私がわかったスキルの性質は「時間が違っても、条件が同じならば未来は同じ」というものと「視た未来は必ず起こる訳では無い。変えることができる」というもの。
 まず私は、未来を視てから鹿を驚かせるまで、絶対に10秒以上かかっていた。そして鹿は、私が移動してから戻ってくるまで、ずっと同じ場所をウロウロしていた。
 つまり「鹿が同じ場所をウロウロしていて、私が同じ木の裏に隠れている」という条件が同じだったから、未来を視ても、それから10秒以上経ったあとに驚かしても、同じ方向に逃げたと考えられる。まだ1回しか試していないけど、恐らくそうだろう。
 そして、もし「視た未来は必ず起こる」のなら、私が最初に視た未来では鹿が驚いて逃げていたので、私が驚かした以外の別の何かに驚いて逃げていたはず。しかし、そうはならなかった。ならば「必ず起こる訳ではなく、変えられる」と考えられる。こっちは確実だろう。

「えーっと……あったあった。これの効果は残ってるのか」

 今探していたのは、さっき置いた何かの結晶のようなもの。これはルーンと呼ばれている。
 ルーンは魔石というものに魔法を付与したもので、付与した魔法の効果を保存し発動するという便利な道具だ。さっき鹿が倒れたのは、触れた動物に電撃を浴びせるという魔法が保存してあったからである。
 そのルーンの素になる魔石には2種類あり、その片方しかルーンにすることはできない。
 ルーンにできない方は魔物、例えばスライムやゴブリンといった、RPGによく出てくるモンスターのような生き物が体内に持っていて、狩れば手に入れられる安い素材。ただ、とても大きい魔石だったり、強い魔物の魔石だと証明できたりすると、その価値は跳ね上がる。
 ルーンにできる方は、自然に洞窟などに生成されたもの。石や岩が周囲の魔力を吸ってできた自然の魔石。魔力の多い洞窟ならよく生成されるけど、そういう洞窟には、その魔石を餌にする魔物が居ることが多く、あまり見つからない。そういう訳で、価値はとても高い。ものによってはドラゴンから採れた魔石の10倍以上の価値がつくこともあるらしい。ドラゴンの強さがどのくらいかはわからないけど、恐らく想像以上ではあるだろう。
 さて、どうして私がそんな物を持っていたかというと、それは半年ほど前に遡る……。

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