エタニティオンライン
最終告知
アキが唸りながら悩んでいると、メニュー画面を開いていたリベリィが険しい表情で一言叫んだ。
「緊急告知! これまずい!」
アキ、クオン、テンマが同時に「メニュー」と呟き、緊急告知画面を開いた。
そこには前に見た告知とは大きく異なる長い文章が記載されていた。
『ログイン中のプレイヤーの皆々様へ。
初めに、これが最後の告知となることを申し上げます。できるだけ焦ることなく、以下の文章を把握し、早急な対処をお願い申し上げます。
まずクラッカーの容疑者ですが、警察の調べでは、残念ながら我々エタニティオンライン運営部関係者であると断定されました。なお、その関係者は置き手紙のようなものを残して、現在逃亡中です。
置き手紙には、手紙を開封してから三日以内に自身を捕まえられなければ、ログイン中のプレイヤーを追い出すか、もしくは漏れなく抹殺するという旨が記載されていました。
我々が調べたところ、現在ゲーム内における三大都市と呼ばれているディザイア、アビス、ヴァルカンの一部で、全プレイヤーが使用することのできるログアウトホールが開かれていることを確認できました。
ログアウトホールを使用した方々のログアウトが確認されたことと、犯人の目的が一概にプレイヤーの殺害ではないといった判断から、運営部としてプレイヤーの方々には早急にログアウトホールの使用を推奨することに致しました。
既に置き手紙を見つけてから現実世界において半日程度経過しています。
制限時間は残り二日と半日となっております。
我々も警察と協力しつつ、犯人の捜索に尽力しておりますが、万が一の時、我々では対処しかねる可能性があります。
現実時間で二日以内、ゲーム内時間で四日以内に必ずログアウトホールを使用していただくよう、宜しくお願い申し上げます』
全員が読み終えると、それぞれにため息を漏らした。
「とうとう、ここまで来てしまったというわけだな」
テンマが意味深げに呟くと、クオンが首をかしげた。
「ってことは、フールギャザリングの人々もログアウトするんじゃない?」
確かにそうだ。普通の人間なら奇妙な宗教より、運営の告知を優先するだろう。それ以前に最悪の場合抹殺されてしまう可能性があるのに、ログアウトしない人がいるのか疑問だ。
運営部関係者ということは、やっぱり犯人は西倉修だな。信じていなかったわけじゃないけど、織笠文の言葉は正しかったわけだ。あとはゲーム内のプレイヤーの動きと、協力者の動きに注意を払うだけ。
……もっとも、それはもしかしたら目の前にいるのかもしれないけどな。
「恐らく普通の感性を持ち合わせてはいないだろうから、どういった行動をするかわからん。私が今夜まで少し様子を見て判断する。
それまでに一応作戦は立てておく。実行するとなれば、今夜になることが予想される。夜戦仕様の装備はないだろうが覚悟だけはしておいて欲しい」
そういえば奴らは普通じゃないんだった……。この後に及んでまだオルフェ達を引き止めるつもりなら、戦うことになるな、どうあっても。
「では私から連絡が行くまで自由行動とする。くれぐれもフールギャザリングに関わらないように。解散!」
────周囲はすっかり夜となり、テンマ達と別れたアキはクオンとともに、数日ぶりにオータムストアへと足を運んだ。相変わらずのこじんまりとした店構えからは、どこか哀愁すら感じられた。
真っ暗な店内には誰もいない。陳列棚には何も置かれておらず、商品はレジの裏にまとめてあった。
レジ奥にある錬金術を行う部屋を覗いてみるが、薄ら明るいカンテラが灯っているだけだった。アキは階段の方へ顔を向け、階上をぼんやり眺めた。
「なんか、こういうの寂しいね」
クオンの言葉にアキはため息で答えた。軋む音を鳴らしつつ階段を上がり、自分の部屋のドアを開いた。
「さすがにここまで片付けるプログラムはされてないか」
「ベルちゃんのこと?」
「ああ。犯人の目的の一つは、エタニティオンラインを現実世界へと近づけること。そのためにNPCに疑似恋愛のような機能をつけた。恐らくは俺達が見つけられてないだけで、他にも追加機能があったと思う。
それを確認しに来たんだ」
「……アキ、なんか落ち着いたね」
「前の俺がバカだっただけだよ。ただのプログラムに、ただのデータに……もう何も思わなくなっただけなんだ」
アキは力なく、自分の部屋の椅子に腰掛けた。クオンが後ろで手を組み、天井を見上げて言葉をこぼした。
「理性がそう囁いてるんだね。自分を律するために」
「はは、クオンにしては難しい言い回しを使ったな」
ベッドに胡座をかいたクオンは頬をむくれさせる。
「私だって真面目になればこんなもんだよ!」
さすがにバカにしすぎたかな。クオンは現実世界じゃ立派な大人だ。きっとこの世界で何かをロールプレイしているんだろう。
俺も今、何かをロールプレイしているのかな。
「緊急告知! これまずい!」
アキ、クオン、テンマが同時に「メニュー」と呟き、緊急告知画面を開いた。
そこには前に見た告知とは大きく異なる長い文章が記載されていた。
『ログイン中のプレイヤーの皆々様へ。
初めに、これが最後の告知となることを申し上げます。できるだけ焦ることなく、以下の文章を把握し、早急な対処をお願い申し上げます。
まずクラッカーの容疑者ですが、警察の調べでは、残念ながら我々エタニティオンライン運営部関係者であると断定されました。なお、その関係者は置き手紙のようなものを残して、現在逃亡中です。
置き手紙には、手紙を開封してから三日以内に自身を捕まえられなければ、ログイン中のプレイヤーを追い出すか、もしくは漏れなく抹殺するという旨が記載されていました。
我々が調べたところ、現在ゲーム内における三大都市と呼ばれているディザイア、アビス、ヴァルカンの一部で、全プレイヤーが使用することのできるログアウトホールが開かれていることを確認できました。
ログアウトホールを使用した方々のログアウトが確認されたことと、犯人の目的が一概にプレイヤーの殺害ではないといった判断から、運営部としてプレイヤーの方々には早急にログアウトホールの使用を推奨することに致しました。
既に置き手紙を見つけてから現実世界において半日程度経過しています。
制限時間は残り二日と半日となっております。
我々も警察と協力しつつ、犯人の捜索に尽力しておりますが、万が一の時、我々では対処しかねる可能性があります。
現実時間で二日以内、ゲーム内時間で四日以内に必ずログアウトホールを使用していただくよう、宜しくお願い申し上げます』
全員が読み終えると、それぞれにため息を漏らした。
「とうとう、ここまで来てしまったというわけだな」
テンマが意味深げに呟くと、クオンが首をかしげた。
「ってことは、フールギャザリングの人々もログアウトするんじゃない?」
確かにそうだ。普通の人間なら奇妙な宗教より、運営の告知を優先するだろう。それ以前に最悪の場合抹殺されてしまう可能性があるのに、ログアウトしない人がいるのか疑問だ。
運営部関係者ということは、やっぱり犯人は西倉修だな。信じていなかったわけじゃないけど、織笠文の言葉は正しかったわけだ。あとはゲーム内のプレイヤーの動きと、協力者の動きに注意を払うだけ。
……もっとも、それはもしかしたら目の前にいるのかもしれないけどな。
「恐らく普通の感性を持ち合わせてはいないだろうから、どういった行動をするかわからん。私が今夜まで少し様子を見て判断する。
それまでに一応作戦は立てておく。実行するとなれば、今夜になることが予想される。夜戦仕様の装備はないだろうが覚悟だけはしておいて欲しい」
そういえば奴らは普通じゃないんだった……。この後に及んでまだオルフェ達を引き止めるつもりなら、戦うことになるな、どうあっても。
「では私から連絡が行くまで自由行動とする。くれぐれもフールギャザリングに関わらないように。解散!」
────周囲はすっかり夜となり、テンマ達と別れたアキはクオンとともに、数日ぶりにオータムストアへと足を運んだ。相変わらずのこじんまりとした店構えからは、どこか哀愁すら感じられた。
真っ暗な店内には誰もいない。陳列棚には何も置かれておらず、商品はレジの裏にまとめてあった。
レジ奥にある錬金術を行う部屋を覗いてみるが、薄ら明るいカンテラが灯っているだけだった。アキは階段の方へ顔を向け、階上をぼんやり眺めた。
「なんか、こういうの寂しいね」
クオンの言葉にアキはため息で答えた。軋む音を鳴らしつつ階段を上がり、自分の部屋のドアを開いた。
「さすがにここまで片付けるプログラムはされてないか」
「ベルちゃんのこと?」
「ああ。犯人の目的の一つは、エタニティオンラインを現実世界へと近づけること。そのためにNPCに疑似恋愛のような機能をつけた。恐らくは俺達が見つけられてないだけで、他にも追加機能があったと思う。
それを確認しに来たんだ」
「……アキ、なんか落ち着いたね」
「前の俺がバカだっただけだよ。ただのプログラムに、ただのデータに……もう何も思わなくなっただけなんだ」
アキは力なく、自分の部屋の椅子に腰掛けた。クオンが後ろで手を組み、天井を見上げて言葉をこぼした。
「理性がそう囁いてるんだね。自分を律するために」
「はは、クオンにしては難しい言い回しを使ったな」
ベッドに胡座をかいたクオンは頬をむくれさせる。
「私だって真面目になればこんなもんだよ!」
さすがにバカにしすぎたかな。クオンは現実世界じゃ立派な大人だ。きっとこの世界で何かをロールプレイしているんだろう。
俺も今、何かをロールプレイしているのかな。
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