エタニティオンライン
湖沼に潜むモノ
ディザイアを発ってから二時間ほど道なりに進み、フィールドは『燦然たる街道』を越え、精鋭隊が『鬱屈の湿地帯』の中心部にある人食いの湖沼へと至った頃であった。
草木が青々と茂り、心地良い風の吹く街道とは違い、湿地帯には重く淀んだ空気が漂っていた。湿気が肌にまとわりつき、時折異臭も香ってくる。
湖沼には生物の死骸や、植物の枯死体が集まった湿原も存在し、所々足元がぬかるんでいる。
アキは最後尾をたらたらと歩く青龍に声をかけた。
「青龍、そこ足元沈むから気をつけて」
「おわっ、ホントじゃん。あっぶないなー。ありがとカメさん」
「カメ……まあ良いか。テンマ、ここの湖沼にはボスがいるけど、ちょっかいさえ出さなければ素通りできる。素通りで良いよな?」
「……いや、無用な戦いは避けたいが、ここにもクラッキングの影響があるかどうか知っておきたい。エンカウントして、しばらく行動を観察しよう」
まあ、中級のこの湿地帯のボスなら、このメンバーで一分もかからず倒せるか。観察出来るくらいの余裕はあるな。
「玄武の二人、そして青龍と白虎は同意で良いな?」
「観察なんて退屈だけど、ま、仕方ないかー」
「了解……合図は任せる」
「雑魚敵の殲滅は退屈だったから、ちょうど良いね! やろうやろう!」
半径五十メートルはある湖沼に潜んでいるのは、全長六メートルの『マンイーター』という植物系に属するモンスターだ。
花びらの中央には、上下左右に尖った歯のついた口を持ち、多数のツルを模した触手でプレイヤーを巻き取って、獲物を食う性質がある。だが、その動きは非常に鈍く、下手をすれば初心者プレイヤーにまで狩られてしまう始末だ。
しかし、精鋭隊が何もしないうちに湖沼から顔を出したのは、マンイーターにそっくりだが、間違いなく別格のモンスターであった。本来緑色のマンイーターとは違い、赤紫色をしている。そしてその体長は、通常のマンイーターの三倍は優に超えていた。
「アッキー、あれって……」
「竜狩りの秘宝限定ボスモンスター『アースイーター』だ……! どうしてこんなところに!」
横からテンマの指示が鋭く飛んだ。
「こいつはマンイーターとは違い、桁外れに強い! 一同警戒しろ!」
巨大な触手はマンイーターの数倍の速さで動き、触手自体の数も多い。古参プレイヤーでさえ手こずる上級クラスのボスモンスターであった。
青龍も笑っていられなくなり、ゆっくりとその双剣を両手に持った。白虎は無愛想な顔のまま、背中からずっしりとした重みのある槌を取り出した。
「竜狩りの秘宝なんて、嫌なことを思い出させるのね。獄炎に灼かれて死になさい……!」
宙に指を這わせてから、カドゥケウスを振りかざしたカトレアは、憎悪の表情に顔を歪めながらスペルを放った。
「『イラプション』」
アースイーターの眼前の水面が、じわりと橙色に染まっていく。やがて音もなく、橙色と黄色の混ざり合ったマグマがそこから噴出した。水面下に落ちていったマグマは、冷え固まって湖沼の底へと沈んでいく。
アースイーターの胴体に付着したマグマは、植物類のアースイーターを燃焼させた。不気味な絶叫とともに、アースイーターはジタバタと暴れ始めた。
「ゲォゲォガァゲァァアッ!」
長い触手が湖沼の縁にいるアキ達へと頻繁に襲いかかるようになった。精密な攻撃ではないものの、明らかに攻撃性を増していた。皆は避けつつ弾きつつ、徐々に後退していく。
「おいおい朱雀ちゃん! 怒らせてどうすんのさぁ!」
「怒ってるんじゃないわ。苦しんでるのよ。まだ足らないみたいねぇ! 喰らいなさい。『イクスプロージョン』!」
カドゥケウスをアースイーターへと向けると、杖の先に古代語の描かれた円形の魔法陣が現れ、そこから二メートルほどの燃え盛る大火球が出現し、重々しく放たれた。
弓なりの軌道を描いた火球は、ごうごうと音を鳴らしながらアースイーターの顔面へ直撃した。火球は大爆発を起こし、アースイーターへと致命的なダメージを与えた。それとともに絶大な爆発音が湿地帯中に鳴り響き、細細と育つ木々で休息していた小鳥達が飛び去る。
漂う噴煙の中から、黒々と焦げたアースイーターが口を開きながら顔を出した。
植物系モンスターへの、火炎系スペルなどはダメージが三割ほど増えることが確認されていた。今回はそれに加え、カトレアの純ステータスの高さとカドゥケウスのダメージ増加の効果が重複し、極大なダメージを弾き出していた。
それでもまだ、アースイーターは動ける様子であった。
「皆の者、様子見している暇などない! 即時速攻全力で終わらせるぞ!」
テンマの号令とともに精鋭隊全員が一斉に各々の武器を、構えた。
草木が青々と茂り、心地良い風の吹く街道とは違い、湿地帯には重く淀んだ空気が漂っていた。湿気が肌にまとわりつき、時折異臭も香ってくる。
湖沼には生物の死骸や、植物の枯死体が集まった湿原も存在し、所々足元がぬかるんでいる。
アキは最後尾をたらたらと歩く青龍に声をかけた。
「青龍、そこ足元沈むから気をつけて」
「おわっ、ホントじゃん。あっぶないなー。ありがとカメさん」
「カメ……まあ良いか。テンマ、ここの湖沼にはボスがいるけど、ちょっかいさえ出さなければ素通りできる。素通りで良いよな?」
「……いや、無用な戦いは避けたいが、ここにもクラッキングの影響があるかどうか知っておきたい。エンカウントして、しばらく行動を観察しよう」
まあ、中級のこの湿地帯のボスなら、このメンバーで一分もかからず倒せるか。観察出来るくらいの余裕はあるな。
「玄武の二人、そして青龍と白虎は同意で良いな?」
「観察なんて退屈だけど、ま、仕方ないかー」
「了解……合図は任せる」
「雑魚敵の殲滅は退屈だったから、ちょうど良いね! やろうやろう!」
半径五十メートルはある湖沼に潜んでいるのは、全長六メートルの『マンイーター』という植物系に属するモンスターだ。
花びらの中央には、上下左右に尖った歯のついた口を持ち、多数のツルを模した触手でプレイヤーを巻き取って、獲物を食う性質がある。だが、その動きは非常に鈍く、下手をすれば初心者プレイヤーにまで狩られてしまう始末だ。
しかし、精鋭隊が何もしないうちに湖沼から顔を出したのは、マンイーターにそっくりだが、間違いなく別格のモンスターであった。本来緑色のマンイーターとは違い、赤紫色をしている。そしてその体長は、通常のマンイーターの三倍は優に超えていた。
「アッキー、あれって……」
「竜狩りの秘宝限定ボスモンスター『アースイーター』だ……! どうしてこんなところに!」
横からテンマの指示が鋭く飛んだ。
「こいつはマンイーターとは違い、桁外れに強い! 一同警戒しろ!」
巨大な触手はマンイーターの数倍の速さで動き、触手自体の数も多い。古参プレイヤーでさえ手こずる上級クラスのボスモンスターであった。
青龍も笑っていられなくなり、ゆっくりとその双剣を両手に持った。白虎は無愛想な顔のまま、背中からずっしりとした重みのある槌を取り出した。
「竜狩りの秘宝なんて、嫌なことを思い出させるのね。獄炎に灼かれて死になさい……!」
宙に指を這わせてから、カドゥケウスを振りかざしたカトレアは、憎悪の表情に顔を歪めながらスペルを放った。
「『イラプション』」
アースイーターの眼前の水面が、じわりと橙色に染まっていく。やがて音もなく、橙色と黄色の混ざり合ったマグマがそこから噴出した。水面下に落ちていったマグマは、冷え固まって湖沼の底へと沈んでいく。
アースイーターの胴体に付着したマグマは、植物類のアースイーターを燃焼させた。不気味な絶叫とともに、アースイーターはジタバタと暴れ始めた。
「ゲォゲォガァゲァァアッ!」
長い触手が湖沼の縁にいるアキ達へと頻繁に襲いかかるようになった。精密な攻撃ではないものの、明らかに攻撃性を増していた。皆は避けつつ弾きつつ、徐々に後退していく。
「おいおい朱雀ちゃん! 怒らせてどうすんのさぁ!」
「怒ってるんじゃないわ。苦しんでるのよ。まだ足らないみたいねぇ! 喰らいなさい。『イクスプロージョン』!」
カドゥケウスをアースイーターへと向けると、杖の先に古代語の描かれた円形の魔法陣が現れ、そこから二メートルほどの燃え盛る大火球が出現し、重々しく放たれた。
弓なりの軌道を描いた火球は、ごうごうと音を鳴らしながらアースイーターの顔面へ直撃した。火球は大爆発を起こし、アースイーターへと致命的なダメージを与えた。それとともに絶大な爆発音が湿地帯中に鳴り響き、細細と育つ木々で休息していた小鳥達が飛び去る。
漂う噴煙の中から、黒々と焦げたアースイーターが口を開きながら顔を出した。
植物系モンスターへの、火炎系スペルなどはダメージが三割ほど増えることが確認されていた。今回はそれに加え、カトレアの純ステータスの高さとカドゥケウスのダメージ増加の効果が重複し、極大なダメージを弾き出していた。
それでもまだ、アースイーターは動ける様子であった。
「皆の者、様子見している暇などない! 即時速攻全力で終わらせるぞ!」
テンマの号令とともに精鋭隊全員が一斉に各々の武器を、構えた。
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