エタニティオンライン
何処へ
あの鬼神の如く強いクオンに限って大丈夫だとは思うけど……万が一、万が一のことがある。最近のPKは徒党を組むという噂を聞いたことがあるし、それに何よりペナルティがなくなったことでPKが増える可能性だって……! とにかく捜しに行かないと。
メインストリートを行き交う他のプレイヤー達は、とにかく警戒した様子で周囲を見回している。ペナルティ機能が消失したことで、街中でのPKも考えられるからだ。しかし、日本人がこの急速な環境の変化にいち早く順応し、他人を殺すという行為に走ることはまず少ないだろうと、アキは思い込まずにはいられなかった。特に街中は様々なプレイヤーの目があるため、ただでさえ少ないPKなど考え難かった。
メインストリートを駆けていくと、見覚えのあるモンスターの後ろ姿が見えてきた。生真面目なことに、アイアンゴーレムとサキュバスは、いまだに宣伝を続けていた。ちょうど良い、とアキはその二体に声をかける。
「お疲れさん」
「あぁら、アキちゃんじゃない」
「宣伝はもう大丈夫だよ、ありがとう。それより、少しフィールドまで付き合って欲しいんだ」
「ふふ、戦いなのね?」
サキュバスは得意げににやけた。アキは二体の持つ麻袋をアイテムチェストへと収納して身軽にさせてから、それらを連れて東門へと向かって行った。目指すは『躍然たる草原』を一つ越えた先にある『絡み合う森』だ。回復薬の素材である回復草と日輪草は『躍然たる草原』で全て揃うが、復活薬の素材の一種である樹液花と黄金草は『絡み合う森』でしか手に入らない。クオンならば、より強いモンスターのいるそこへ向かうだろうと予想できた。
アキの背丈ほどの高さはある石壁に囲まれたディザイアから、フィールドへと出ることができる四つの門のうちの東門の手前まで足を運んだ。いつも門番をしている天馬騎士団の姿はない。所詮はロールプレイ、現実の自分に害が及ぶのであれば、ロールプレイをやめてしまうのは当然である。天馬騎士団も終わりだなあ……とアキはしみじみと考えていた。
「アキちゃぁん、絡み合う森に行くのかしら?」
「そうだな。この草原か森に俺の知り合いがいるはずなんだ」
「なぁんか必死ねぇ。ただ事じゃないってわけね」
「ああ、今日ばかりは必死にならざるを得ない事情があるんだよ」
お前達NPCにはわからないだろうけどさ、俺たちプレイヤーにとっては、大きすぎる事件なんだ……。そういえば何十年も前、こういう小説がネットで流行ったって母さんが言ってたな。その頃はまだ、ネタにされる程度で済まされてたらしい。でも機械、映像と医療の技術が発展した現代じゃ、割とバカにならない話なんだ。
躍然たる草原を抜けるまでに、数体のモンスターに出くわした。そのどれも初心者が相手するような弱いものであったため、アイアンゴーレムが全てを潰して事なきを得た。広大な草原を抜けると、徐々に草木が生い茂り始めた。やがて鬱蒼とした森の入り口が視界の奥から現れた。
フィールド『絡み合う森』は、植物に擬態したモンスターや、爬虫類型、昆虫型などの森に関連のあるモンスターが現れる中級者向けのフィールドだ。森は一度入ると、視界の悪い中、四方八方からモンスターが出現するため気を配る必要があった。
「よし、行こう。サキュバス、明かりをお願い」
「人使い荒いわねぇ。ああ、早く強い子と戦いたいわぁ」
サキュバスは手のひらから、ぽっと光球を出現させ、それをアイアンゴーレムに持たせた。
背の高い草をかき分け、特殊な木々の樹液で育った樹液花と、もともと雑草だったが、とあるモンスターの影響で黄金色に輝くようになった黄金草を採取しつつ森の中を歩いた。木々は枝同士が絡み合い、空からの明かりを遮断された森の中は薄暗く、アイアンゴーレムの持つ光球のみが、辺りを白く照らしていた。
メインストリートを行き交う他のプレイヤー達は、とにかく警戒した様子で周囲を見回している。ペナルティ機能が消失したことで、街中でのPKも考えられるからだ。しかし、日本人がこの急速な環境の変化にいち早く順応し、他人を殺すという行為に走ることはまず少ないだろうと、アキは思い込まずにはいられなかった。特に街中は様々なプレイヤーの目があるため、ただでさえ少ないPKなど考え難かった。
メインストリートを駆けていくと、見覚えのあるモンスターの後ろ姿が見えてきた。生真面目なことに、アイアンゴーレムとサキュバスは、いまだに宣伝を続けていた。ちょうど良い、とアキはその二体に声をかける。
「お疲れさん」
「あぁら、アキちゃんじゃない」
「宣伝はもう大丈夫だよ、ありがとう。それより、少しフィールドまで付き合って欲しいんだ」
「ふふ、戦いなのね?」
サキュバスは得意げににやけた。アキは二体の持つ麻袋をアイテムチェストへと収納して身軽にさせてから、それらを連れて東門へと向かって行った。目指すは『躍然たる草原』を一つ越えた先にある『絡み合う森』だ。回復薬の素材である回復草と日輪草は『躍然たる草原』で全て揃うが、復活薬の素材の一種である樹液花と黄金草は『絡み合う森』でしか手に入らない。クオンならば、より強いモンスターのいるそこへ向かうだろうと予想できた。
アキの背丈ほどの高さはある石壁に囲まれたディザイアから、フィールドへと出ることができる四つの門のうちの東門の手前まで足を運んだ。いつも門番をしている天馬騎士団の姿はない。所詮はロールプレイ、現実の自分に害が及ぶのであれば、ロールプレイをやめてしまうのは当然である。天馬騎士団も終わりだなあ……とアキはしみじみと考えていた。
「アキちゃぁん、絡み合う森に行くのかしら?」
「そうだな。この草原か森に俺の知り合いがいるはずなんだ」
「なぁんか必死ねぇ。ただ事じゃないってわけね」
「ああ、今日ばかりは必死にならざるを得ない事情があるんだよ」
お前達NPCにはわからないだろうけどさ、俺たちプレイヤーにとっては、大きすぎる事件なんだ……。そういえば何十年も前、こういう小説がネットで流行ったって母さんが言ってたな。その頃はまだ、ネタにされる程度で済まされてたらしい。でも機械、映像と医療の技術が発展した現代じゃ、割とバカにならない話なんだ。
躍然たる草原を抜けるまでに、数体のモンスターに出くわした。そのどれも初心者が相手するような弱いものであったため、アイアンゴーレムが全てを潰して事なきを得た。広大な草原を抜けると、徐々に草木が生い茂り始めた。やがて鬱蒼とした森の入り口が視界の奥から現れた。
フィールド『絡み合う森』は、植物に擬態したモンスターや、爬虫類型、昆虫型などの森に関連のあるモンスターが現れる中級者向けのフィールドだ。森は一度入ると、視界の悪い中、四方八方からモンスターが出現するため気を配る必要があった。
「よし、行こう。サキュバス、明かりをお願い」
「人使い荒いわねぇ。ああ、早く強い子と戦いたいわぁ」
サキュバスは手のひらから、ぽっと光球を出現させ、それをアイアンゴーレムに持たせた。
背の高い草をかき分け、特殊な木々の樹液で育った樹液花と、もともと雑草だったが、とあるモンスターの影響で黄金色に輝くようになった黄金草を採取しつつ森の中を歩いた。木々は枝同士が絡み合い、空からの明かりを遮断された森の中は薄暗く、アイアンゴーレムの持つ光球のみが、辺りを白く照らしていた。
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