エタニティオンライン
言い知れぬ高揚
「あ、真田君……」
「あれ、水戸先生。どうしたんですか?」
水戸は手に何かの新聞記事を持っていた。教室へと入り、それをおもむろに暁影へと差し出す。その見出しには、『エタオン、大型アップデート実施!』と大きく掲載されていた。暁影は奪うようにして、新聞記事に書かれた内容を読み込んだ。
「真田君は確か、このゲームが好きなんですよね……? さっき職員室で新聞を読んでいたら、偶然この記事を見つけて。まだ知らなかったなら、今日のお礼になるかもって……」
「いや、ホント、知らなかった! 先生ありがとう!」
暁影は水戸の手を握ると、みるみる水戸の顔が赤くなっていく。唇を震わせた水戸は、一生懸命に頷いて返した。
「あ、思わず……。すみません」
急いで手を離した暁影は、輝いた瞳でその新聞記事を読み続けた。水戸も興味ありげにそれを横から見ようとして、眉をひそめながらしきりに丸いメガネを上げ下げしている。
「そんな目が悪いんですか?」
「え、え、あ……邪魔してごめんなさい。昔からパソコンやタブレットをずっと使っていたものだから、そのせいかもしれませんね」
「最近のものは視力低下を軽減する工夫がされてますけど……となると先生は結構前からやってるんですね」
「そう、なりますね。あ、そろそろ職員会議なので、行かなくちゃ!」
水戸は、教室の時計を確認してから、開けたままの教室の扉から廊下へと出ようとした。そこで一度振り返り、見送る暁影へとはにかみながら小さく手を振る。
「エタオン、それと自作小説も頑張って下さいね」
「な、なんで小説のことを……!」
「ふふ、久野さんから聞きましたよ。それじゃ、失礼しますね」
あれ、俺、久野さんに小説書いてるなんて言ったっけ……。まあ大方、悠辺りが口滑らせたんだろ。恥ずかしいから秘密にしとけって言ったのに。
気恥ずかしさを感じながら、様々なアップデート情報の載っている新聞記事を読み進めると、武器の不具合をアップデート、という欄があった。リスト化されてはいないが、悠の古びた大太刀も何か変化があるかもしれない、と一番に思いついた。他にも、バトルキャンペーンというイベントが開催されているようであった。
新聞記事にはその内容は記載されていない。詳細をゲーム内でいち早く知るため、暁影は急いで鞄を手に取り、家へと走り出した。久しく忘れていたゲーム対する興奮を、暁影はその身に感じていた。
一時間ほどかけて家に着くと、まだ母親は帰ってきていないようだ。素早く着替えてから、用を足し、手を洗い、風呂へと入り、ジャクソンへ軽食を頼んだ。ものの数分で出されたフレンチトーストと牛乳を腹に収めると、二階へと駆け出す。自室へと入り、準備が万端なことを確認した。
「風呂良し、トイレ良し、飯良し、完璧だな」
飛び込むようにエタカプに乗り込むと、いつものように両手足と頭をアーチ状の器具で固定された。首の後ろで接続音が鳴り、ダイブインを行う。奈落へと落ちていくような感覚。暁影は、妙な安らぎを覚えた。
ゆっくりと目を開けると、オータムストアの二階、自室の窓から見える家々と、その奥に見える大自然の光景であった。アキはこの光景を目の当たりにするたび、幾度となく、ここが現実であれば……と妄想していた。
「おおっと、こうしちゃいられない。メニュー……。最新情報は……あった!」
メニュー画面にある『!』のアイコンを押し込むと、運営側からメッセージが届いていた。アナウンスとして、一人一人にメッセージが送られる形式となっていた。予想通り、午前中にアップデートを終わらせたようだった。
『アップデートのお知らせ。アップデート箇所は、不具合のあった数種類の武器防具の修正、後衛職であるウィザードとプリーステスとエンチャンターのステータス調整。バトルキャンペーンのイベントを実施。バトルキャンペーンにつきましては、こちらから特設ページへと移動して下さい』
メッセージの『特設ページ』だけが、青く点滅しており、そこを指で押した。メッセージ画面から、やけに騒がしい画面へと移り、その上部にある『バトルキャンペーン』という文字から、イベント特設ページであると判断出来た。アキはそのイベント内容に、一瞬目を疑った。要約すればそれは『プレイヤー同士の戦闘推奨イベント』であった。
「あれ、水戸先生。どうしたんですか?」
水戸は手に何かの新聞記事を持っていた。教室へと入り、それをおもむろに暁影へと差し出す。その見出しには、『エタオン、大型アップデート実施!』と大きく掲載されていた。暁影は奪うようにして、新聞記事に書かれた内容を読み込んだ。
「真田君は確か、このゲームが好きなんですよね……? さっき職員室で新聞を読んでいたら、偶然この記事を見つけて。まだ知らなかったなら、今日のお礼になるかもって……」
「いや、ホント、知らなかった! 先生ありがとう!」
暁影は水戸の手を握ると、みるみる水戸の顔が赤くなっていく。唇を震わせた水戸は、一生懸命に頷いて返した。
「あ、思わず……。すみません」
急いで手を離した暁影は、輝いた瞳でその新聞記事を読み続けた。水戸も興味ありげにそれを横から見ようとして、眉をひそめながらしきりに丸いメガネを上げ下げしている。
「そんな目が悪いんですか?」
「え、え、あ……邪魔してごめんなさい。昔からパソコンやタブレットをずっと使っていたものだから、そのせいかもしれませんね」
「最近のものは視力低下を軽減する工夫がされてますけど……となると先生は結構前からやってるんですね」
「そう、なりますね。あ、そろそろ職員会議なので、行かなくちゃ!」
水戸は、教室の時計を確認してから、開けたままの教室の扉から廊下へと出ようとした。そこで一度振り返り、見送る暁影へとはにかみながら小さく手を振る。
「エタオン、それと自作小説も頑張って下さいね」
「な、なんで小説のことを……!」
「ふふ、久野さんから聞きましたよ。それじゃ、失礼しますね」
あれ、俺、久野さんに小説書いてるなんて言ったっけ……。まあ大方、悠辺りが口滑らせたんだろ。恥ずかしいから秘密にしとけって言ったのに。
気恥ずかしさを感じながら、様々なアップデート情報の載っている新聞記事を読み進めると、武器の不具合をアップデート、という欄があった。リスト化されてはいないが、悠の古びた大太刀も何か変化があるかもしれない、と一番に思いついた。他にも、バトルキャンペーンというイベントが開催されているようであった。
新聞記事にはその内容は記載されていない。詳細をゲーム内でいち早く知るため、暁影は急いで鞄を手に取り、家へと走り出した。久しく忘れていたゲーム対する興奮を、暁影はその身に感じていた。
一時間ほどかけて家に着くと、まだ母親は帰ってきていないようだ。素早く着替えてから、用を足し、手を洗い、風呂へと入り、ジャクソンへ軽食を頼んだ。ものの数分で出されたフレンチトーストと牛乳を腹に収めると、二階へと駆け出す。自室へと入り、準備が万端なことを確認した。
「風呂良し、トイレ良し、飯良し、完璧だな」
飛び込むようにエタカプに乗り込むと、いつものように両手足と頭をアーチ状の器具で固定された。首の後ろで接続音が鳴り、ダイブインを行う。奈落へと落ちていくような感覚。暁影は、妙な安らぎを覚えた。
ゆっくりと目を開けると、オータムストアの二階、自室の窓から見える家々と、その奥に見える大自然の光景であった。アキはこの光景を目の当たりにするたび、幾度となく、ここが現実であれば……と妄想していた。
「おおっと、こうしちゃいられない。メニュー……。最新情報は……あった!」
メニュー画面にある『!』のアイコンを押し込むと、運営側からメッセージが届いていた。アナウンスとして、一人一人にメッセージが送られる形式となっていた。予想通り、午前中にアップデートを終わらせたようだった。
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