転生者よ、契約せよ。シリーズ
シリーズ6 「SF世界とリアの過保護」
時間軸的には、3のかぐや姫のラストの直後です。
「2人とも、守護具はちゃんと起動できてる?」
「大丈夫だよ、リア姉さん」
「うん、大丈夫だぞ、リアねぇ」
かぐや姫の世界から旅立ったわたしたちは、いつもしている準備のため、リア姉さんが保有する安全な空間に来ていました。
リア姉さんは過剰な程に護りを与える魔導具がきちんと作動するかチェックしたり、自分たちの格好が次の世界で浮きすぎないか確認したりと、過保護な性分を存分に発揮し、わたし達妹の安全確保に忙しなく動き回っていて、
もう何回もそれを見ているわたしと説子は、されるがままにチェックを受けつつ、少しでもリアの負担を減らせるように積極的に動きます。
それは丁度、わたしの準備が終わった事で少し余裕が出来て、辺りを見回した時でした。
まるで信じられないものを見たかのように、目を見開いて立ち尽くすルナリィさんが目に入ったのです。
「ル……」
「さて、準備完了ね。お待ちかねのSF世界に行くとしましょう」
彼女の驚いた様子が気になり、わたしは声を掛けようとしますが、
準備を終えたリア姉さんがわたしの声を掻き消すように声を上げた事で、わたしの声は掻き消されてしまいました。
……仕方ありません、あとで聞いてみましょう。
わたしはそう考え、リア姉さんを追う事にしました。
いくらここが安全とはいえ、一番安全な場所はリア姉さんの目の届く場所ですからね。
毎回、世界を移動する度、こういう感じで準備を整えていた、という設定を後付けしました。……だってストーリーの展開上、こういう準備してる場面が必須だったんだもん。
こういう風にワンクッション挟むのは、1でちらっと出てきた化け物対策であり、ルナが同行していた時にもしていた事です。
リアたちが準備している場所は、リアが全力で攻撃しても傷1つ付かないような、リアが知る世界を探し回ってもこれ以上のものは見つからないだろうと断言出来る場所です。魔導具の付け替えなどで、どうしても無防備になる瞬間があるため、リアが作りました。
リアの行動:まだクーとルナが居るのに部屋を出て行ったのは、あの部屋が扉を開きっ放しにしていると防御力が大分下がる仕様になっているのと、部屋がリア本人が居なくてもクーの安全を確信出来るほどの強固に守られているからです。なお、仕様についてはリア(製作者)は不本意であり、材料の都合でそうせざるを得ませんでした。
ちなみに、ルナが護衛するんじゃないか? という点については、本人の性質が性質だからそれにはあまり期待していないようです。
あ、先に準備が済んだ説子が部屋を出て行ってしまい、部屋の中と違って安全を確信しきれない
環境に説子を置いておく不安が大きかった、というのもあります。
第2話
19/4/13 4:52 発見した誤字を修正。そのついでに、1カ所リアの言い回しを修正。
19/4/15 17:11 リアルの知人からの指摘により、途中にある現地の女騎士視点をより分かりやすくなるように加筆。リア視点の後、急に視点が切り替わるので、視点の切り替わりがより分かりやすくなるようにしました。ついでに、その後の転移後の話も少し加筆しました。
「じゃあ、行くわよ」
「ああ!」
「SF世界、楽しみだね」
「……そもそも、えすえふ? とはなんなのでしょうか……」
……あー。ルナは日本に連れてった事、無かった……ような気がするわね。ええ、たぶん。
話が通じにくいのはちょっと不便だし、連れてって詰め込むのもアリかしら?
「うーん……」
「……うん、見れば判る。というかちょっと説明がし辛いからそういうものだと思ってくれないか?」
説明しようとして、結局何と言えばいいのか判らず迷っている2人を見ながら、扉を開く作業を続ける。
ふと、思い出した。
天真爛漫なあの子の、新しい素材を見つけた時のような、満面の笑顔を。
だからだろうか。
あの子が故郷と呼んでいたその世界に、扉が開いたのは。
「まあ、いいか」
あそこもSF系統だしね。
そのうち紹介というか、話をするつもりだったし。
ルナが生きていたのだから、レレが、あの子がひょこっと顔を出す事も、あるかもしれないし。
あ、でも、一応守りは固めておいたほうがいいかもしれないわね。
そう思い、ささっと守護魔法を重ねがけする。
「ん? リアねぇ、どうし――」
キィィン――
********
忙しい業務の中、上司からもぎ取った休暇で、買い物をしようと町に出た。
しかし。
キュインキュイン!と、けたたましく鳴った音に、私は休暇が終わった事を悟った。
あれは、はるか昔、世界を滅ぼす勢いで暴れた悪魔の魔力波動を感知した際、起動する警報の音だ。
もう鳴る事は無いだろうと、それでも無いよりは良い筈だと設置されていた、それが鳴り響いたのだ。
「……何の音だろう?」
「さあ……?」
顔を見合わせ、囁きあう群衆(混乱防止のためもあり、この警報の意図は私たち騎士団に所属する者と、国家運営に携わる重要人物しか知らないので、民間人にとってはよく分からない音だろう)に紛れ、私は顔を引き攣らせた。
(まさか、世界を滅ぼさんと暴れた悪魔が、また訪れるとは……! 急いで上司に判断を仰がねば!)
大急ぎで上司に判断を仰ごうと、人混みをすり抜け、既に、今日が休暇であった事など忘れ、ただ自分の職務を全うしようと、私は駆けだした。
********
視点は変わり、リアたち一行。
転移魔法によって切り替わった風景に、クーと説子、ルナはぎょっと目を見開いた。
「はぁ……やっぱりね」
4人の周囲を徹底的に包囲し、警戒した様子で武器を向ける人々に、リアは溜息を吐いた。
『リアねぇ?』
『ち、ちょっとリア姉さん! この状況は何!?』
殺意を向けられる状況に慣れきっていない妹2人が慌てる。
「心配しなくても大丈夫よ。――ルナ」
あやすようにリアは2人に向けて微笑み、ルナリィの名前を呼ぶ。
『はっ。――捩れ、消滅しろ』
リアの意図を汲み、一歩前に出たルナリィが呟いた、その次の瞬間。
リアたち一行に敵意を持つ者が所持していた全ての武器が、ぐにゃりと捩れ、どこかに呑み込まれるように消滅した。
「えっ……」
絶句する周囲を横目に、リアはルナの動きを見て懐かしそうに微笑んでいた。 
第3話
わたしたちは、囲まれたあの場所から、少し離れた通りにあるレストランで少し休憩を取っていた。
主に説子とわたしが、濃密な殺意に神経を疲れさせてしまったからだ。
……あ、そうだ。
ゆっくり出来てる今のうちに聞いてみよう。
「そういえば、ルナリィさん」
「はい、なんでしょうか」
そう思ったわたしの呼びかけに、ルナリィさんは少し不思議そうにこちらに顔を向けた。
「こっちに来る前、リア姉さんを見て驚いてたよね? なんでなのか、ちょっと気になってて」
「あ……気付かれていたのですか。私の知る、コハク……あ、失礼しました。アンリーア様は、家族への情が深い方ではありましたが、あれほど心配性ではありませんでしたから、少し驚いてしまったのです」
「ふふ、過保護ってはっきり言ってもいいのよ」
「……アンリーア様は主ですから、配慮は当然の事です」
横合いからの揶揄うようなリア姉さんの声に、ルナリィさんは若干硬い表情で答える。
……暗に過保護だって肯定してると思うんだけど、いいんだろうか。
「へえ、そうなのか。じゃあ、リアねぇはなんでこんなに過保護になったんだ?」
せ、説子……。
「確かに気になったけどそれストレートに聞いて良い事なのかな……?」
「あっ。リアねぇ、無理しなくてもいいからな?」
思わずツッコミを入れると、説子は慌てて無理に聞き出すつもりはないと付け加える。
「いいわよ。まあ、元から過保護だったとは思うけど、悪化した切っ掛けはあの子かしらね」
「「あの子?」」
懐かしそうに目を細め、リア姉さんは、ゆっくりと語り出した。
第4話
「レレ……ファーレ・アッチェソーリっていうんだけど、根っからの物作りバカでね。新しいレシピを思いついた! って寝ている私を起こす事も何回もあったわ」
リア姉さんの話は、その言葉から始まった。
「私の魔道具作りの師匠みたいな子で、自称部下なの。タメ口だし、本人が主張してるだけだけどね」
「私? 私は娘だと思ってるわ。妹にしては背とか精神年齢が低かったし、ご飯とかの世話をしたりした時期もあったしね」
「ちなみにだけど、レレはドワーフよ。褐色の肌にさらさらした白い髪、丸くて大きい金色の瞳の女の子。寿命は人と同じか若干長いぐらいで、長命種って訳ではないわね。でも、「ずっと物を作ってたいから」って言って私に頼んで不老になってるから、その辺の心配は入らないわ」
懐かしそうに、少し寂しそうにリア姉さんは語る。
やがて話題は「過保護になった切っ掛け」に移り変わった。
「ハメられたのよ。レレの才能を妬んだバカにね」
「変な時空間に飛ばされていったわ、私の目の前で」
「その穴が暴走していたのと、犯人が全力で結界を張って、数の暴力で妨害もしていて、まだまだ未熟だった私では、止められなかった」
それまで、感情を出来る限り抑え込んだ声音で語っていたリア姉さんの表情が、くしゃりと崩れた。
「……だから、その時の無力感を、もう味わいたくないの。家族を、私の手が届かない所に追いやってしまうのは、もう絶対に嫌なのよ」
リア姉さんは震える声で、悲しそうに顔を歪めて言う。
「彼女の死亡は、確認したのか?」
「いいえ。世界渡りが出来ても、少しだけ感じた空間の感じだと、今でも転移が無理そう……というか、ぐちゃぐちゃ過ぎて狙いを定めきれないというか……。危険だし、失踪先の世界に迎えに行くのは、無理なのよ」
「……なら、その人が自力で帰還できるかどうかは」
「…………ああ、そういえば彼女の持ち物に、凄すぎる耐久性のある結界具があったわ。工房も持ち歩いてるし……」
「帰って、来られるかもしれない?」
「ええ」
「なら、一番に迎えられるように、その失踪した世界で、待ってみよう。クーねぇ、ルナさん、いいか?」
「もちろん! リア姉さんの大事な家族だもん、行くに決まってるよ」
説子の提案に、わたしは飛びついた。
「私は主様のご意向に従います。……ですが、その方に会ってみたいとも思います」
ルナリィさんの控えめな主張に、リア姉さんは目を瞠り、そして嬉しそうに微笑んだ。
「説子……クーもルナも……確かにそうね」
「じゃあ、また世界移動か?」
説子がそう問いかけると、リア姉さんは少し気まずそうにしながら、
「あー、いえ、実はここが失踪した世界なの」
と言った。
……もしかして、あの武装集団はそれでかな?
「だから、しばらく観光しながら待ってみましょう」
「もう帰ってきてる可能性を考えて、探してみるのもありかもしれないぞ」
「ああ、確かに。じゃあ明日と明後日は世界中を回って探してみましょうか」
説子の言葉にリア姉さんは納得したように頷き、予定を組み立てる。
「あれ、今日はどうするんだ?」
「言ったでしょ、観光よ。工房とか、観光がてらにレレが寄りそうな所を回ってみましょう」
「「了解!」」
7へつづく 
「2人とも、守護具はちゃんと起動できてる?」
「大丈夫だよ、リア姉さん」
「うん、大丈夫だぞ、リアねぇ」
かぐや姫の世界から旅立ったわたしたちは、いつもしている準備のため、リア姉さんが保有する安全な空間に来ていました。
リア姉さんは過剰な程に護りを与える魔導具がきちんと作動するかチェックしたり、自分たちの格好が次の世界で浮きすぎないか確認したりと、過保護な性分を存分に発揮し、わたし達妹の安全確保に忙しなく動き回っていて、
もう何回もそれを見ているわたしと説子は、されるがままにチェックを受けつつ、少しでもリアの負担を減らせるように積極的に動きます。
それは丁度、わたしの準備が終わった事で少し余裕が出来て、辺りを見回した時でした。
まるで信じられないものを見たかのように、目を見開いて立ち尽くすルナリィさんが目に入ったのです。
「ル……」
「さて、準備完了ね。お待ちかねのSF世界に行くとしましょう」
彼女の驚いた様子が気になり、わたしは声を掛けようとしますが、
準備を終えたリア姉さんがわたしの声を掻き消すように声を上げた事で、わたしの声は掻き消されてしまいました。
……仕方ありません、あとで聞いてみましょう。
わたしはそう考え、リア姉さんを追う事にしました。
いくらここが安全とはいえ、一番安全な場所はリア姉さんの目の届く場所ですからね。
毎回、世界を移動する度、こういう感じで準備を整えていた、という設定を後付けしました。……だってストーリーの展開上、こういう準備してる場面が必須だったんだもん。
こういう風にワンクッション挟むのは、1でちらっと出てきた化け物対策であり、ルナが同行していた時にもしていた事です。
リアたちが準備している場所は、リアが全力で攻撃しても傷1つ付かないような、リアが知る世界を探し回ってもこれ以上のものは見つからないだろうと断言出来る場所です。魔導具の付け替えなどで、どうしても無防備になる瞬間があるため、リアが作りました。
リアの行動:まだクーとルナが居るのに部屋を出て行ったのは、あの部屋が扉を開きっ放しにしていると防御力が大分下がる仕様になっているのと、部屋がリア本人が居なくてもクーの安全を確信出来るほどの強固に守られているからです。なお、仕様についてはリア(製作者)は不本意であり、材料の都合でそうせざるを得ませんでした。
ちなみに、ルナが護衛するんじゃないか? という点については、本人の性質が性質だからそれにはあまり期待していないようです。
あ、先に準備が済んだ説子が部屋を出て行ってしまい、部屋の中と違って安全を確信しきれない
環境に説子を置いておく不安が大きかった、というのもあります。
第2話
19/4/13 4:52 発見した誤字を修正。そのついでに、1カ所リアの言い回しを修正。
19/4/15 17:11 リアルの知人からの指摘により、途中にある現地の女騎士視点をより分かりやすくなるように加筆。リア視点の後、急に視点が切り替わるので、視点の切り替わりがより分かりやすくなるようにしました。ついでに、その後の転移後の話も少し加筆しました。
「じゃあ、行くわよ」
「ああ!」
「SF世界、楽しみだね」
「……そもそも、えすえふ? とはなんなのでしょうか……」
……あー。ルナは日本に連れてった事、無かった……ような気がするわね。ええ、たぶん。
話が通じにくいのはちょっと不便だし、連れてって詰め込むのもアリかしら?
「うーん……」
「……うん、見れば判る。というかちょっと説明がし辛いからそういうものだと思ってくれないか?」
説明しようとして、結局何と言えばいいのか判らず迷っている2人を見ながら、扉を開く作業を続ける。
ふと、思い出した。
天真爛漫なあの子の、新しい素材を見つけた時のような、満面の笑顔を。
だからだろうか。
あの子が故郷と呼んでいたその世界に、扉が開いたのは。
「まあ、いいか」
あそこもSF系統だしね。
そのうち紹介というか、話をするつもりだったし。
ルナが生きていたのだから、レレが、あの子がひょこっと顔を出す事も、あるかもしれないし。
あ、でも、一応守りは固めておいたほうがいいかもしれないわね。
そう思い、ささっと守護魔法を重ねがけする。
「ん? リアねぇ、どうし――」
キィィン――
********
忙しい業務の中、上司からもぎ取った休暇で、買い物をしようと町に出た。
しかし。
キュインキュイン!と、けたたましく鳴った音に、私は休暇が終わった事を悟った。
あれは、はるか昔、世界を滅ぼす勢いで暴れた悪魔の魔力波動を感知した際、起動する警報の音だ。
もう鳴る事は無いだろうと、それでも無いよりは良い筈だと設置されていた、それが鳴り響いたのだ。
「……何の音だろう?」
「さあ……?」
顔を見合わせ、囁きあう群衆(混乱防止のためもあり、この警報の意図は私たち騎士団に所属する者と、国家運営に携わる重要人物しか知らないので、民間人にとってはよく分からない音だろう)に紛れ、私は顔を引き攣らせた。
(まさか、世界を滅ぼさんと暴れた悪魔が、また訪れるとは……! 急いで上司に判断を仰がねば!)
大急ぎで上司に判断を仰ごうと、人混みをすり抜け、既に、今日が休暇であった事など忘れ、ただ自分の職務を全うしようと、私は駆けだした。
********
視点は変わり、リアたち一行。
転移魔法によって切り替わった風景に、クーと説子、ルナはぎょっと目を見開いた。
「はぁ……やっぱりね」
4人の周囲を徹底的に包囲し、警戒した様子で武器を向ける人々に、リアは溜息を吐いた。
『リアねぇ?』
『ち、ちょっとリア姉さん! この状況は何!?』
殺意を向けられる状況に慣れきっていない妹2人が慌てる。
「心配しなくても大丈夫よ。――ルナ」
あやすようにリアは2人に向けて微笑み、ルナリィの名前を呼ぶ。
『はっ。――捩れ、消滅しろ』
リアの意図を汲み、一歩前に出たルナリィが呟いた、その次の瞬間。
リアたち一行に敵意を持つ者が所持していた全ての武器が、ぐにゃりと捩れ、どこかに呑み込まれるように消滅した。
「えっ……」
絶句する周囲を横目に、リアはルナの動きを見て懐かしそうに微笑んでいた。 
第3話
わたしたちは、囲まれたあの場所から、少し離れた通りにあるレストランで少し休憩を取っていた。
主に説子とわたしが、濃密な殺意に神経を疲れさせてしまったからだ。
……あ、そうだ。
ゆっくり出来てる今のうちに聞いてみよう。
「そういえば、ルナリィさん」
「はい、なんでしょうか」
そう思ったわたしの呼びかけに、ルナリィさんは少し不思議そうにこちらに顔を向けた。
「こっちに来る前、リア姉さんを見て驚いてたよね? なんでなのか、ちょっと気になってて」
「あ……気付かれていたのですか。私の知る、コハク……あ、失礼しました。アンリーア様は、家族への情が深い方ではありましたが、あれほど心配性ではありませんでしたから、少し驚いてしまったのです」
「ふふ、過保護ってはっきり言ってもいいのよ」
「……アンリーア様は主ですから、配慮は当然の事です」
横合いからの揶揄うようなリア姉さんの声に、ルナリィさんは若干硬い表情で答える。
……暗に過保護だって肯定してると思うんだけど、いいんだろうか。
「へえ、そうなのか。じゃあ、リアねぇはなんでこんなに過保護になったんだ?」
せ、説子……。
「確かに気になったけどそれストレートに聞いて良い事なのかな……?」
「あっ。リアねぇ、無理しなくてもいいからな?」
思わずツッコミを入れると、説子は慌てて無理に聞き出すつもりはないと付け加える。
「いいわよ。まあ、元から過保護だったとは思うけど、悪化した切っ掛けはあの子かしらね」
「「あの子?」」
懐かしそうに目を細め、リア姉さんは、ゆっくりと語り出した。
第4話
「レレ……ファーレ・アッチェソーリっていうんだけど、根っからの物作りバカでね。新しいレシピを思いついた! って寝ている私を起こす事も何回もあったわ」
リア姉さんの話は、その言葉から始まった。
「私の魔道具作りの師匠みたいな子で、自称部下なの。タメ口だし、本人が主張してるだけだけどね」
「私? 私は娘だと思ってるわ。妹にしては背とか精神年齢が低かったし、ご飯とかの世話をしたりした時期もあったしね」
「ちなみにだけど、レレはドワーフよ。褐色の肌にさらさらした白い髪、丸くて大きい金色の瞳の女の子。寿命は人と同じか若干長いぐらいで、長命種って訳ではないわね。でも、「ずっと物を作ってたいから」って言って私に頼んで不老になってるから、その辺の心配は入らないわ」
懐かしそうに、少し寂しそうにリア姉さんは語る。
やがて話題は「過保護になった切っ掛け」に移り変わった。
「ハメられたのよ。レレの才能を妬んだバカにね」
「変な時空間に飛ばされていったわ、私の目の前で」
「その穴が暴走していたのと、犯人が全力で結界を張って、数の暴力で妨害もしていて、まだまだ未熟だった私では、止められなかった」
それまで、感情を出来る限り抑え込んだ声音で語っていたリア姉さんの表情が、くしゃりと崩れた。
「……だから、その時の無力感を、もう味わいたくないの。家族を、私の手が届かない所に追いやってしまうのは、もう絶対に嫌なのよ」
リア姉さんは震える声で、悲しそうに顔を歪めて言う。
「彼女の死亡は、確認したのか?」
「いいえ。世界渡りが出来ても、少しだけ感じた空間の感じだと、今でも転移が無理そう……というか、ぐちゃぐちゃ過ぎて狙いを定めきれないというか……。危険だし、失踪先の世界に迎えに行くのは、無理なのよ」
「……なら、その人が自力で帰還できるかどうかは」
「…………ああ、そういえば彼女の持ち物に、凄すぎる耐久性のある結界具があったわ。工房も持ち歩いてるし……」
「帰って、来られるかもしれない?」
「ええ」
「なら、一番に迎えられるように、その失踪した世界で、待ってみよう。クーねぇ、ルナさん、いいか?」
「もちろん! リア姉さんの大事な家族だもん、行くに決まってるよ」
説子の提案に、わたしは飛びついた。
「私は主様のご意向に従います。……ですが、その方に会ってみたいとも思います」
ルナリィさんの控えめな主張に、リア姉さんは目を瞠り、そして嬉しそうに微笑んだ。
「説子……クーもルナも……確かにそうね」
「じゃあ、また世界移動か?」
説子がそう問いかけると、リア姉さんは少し気まずそうにしながら、
「あー、いえ、実はここが失踪した世界なの」
と言った。
……もしかして、あの武装集団はそれでかな?
「だから、しばらく観光しながら待ってみましょう」
「もう帰ってきてる可能性を考えて、探してみるのもありかもしれないぞ」
「ああ、確かに。じゃあ明日と明後日は世界中を回って探してみましょうか」
説子の言葉にリア姉さんは納得したように頷き、予定を組み立てる。
「あれ、今日はどうするんだ?」
「言ったでしょ、観光よ。工房とか、観光がてらにレレが寄りそうな所を回ってみましょう」
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