転生者よ、契約せよ。シリーズ

ソリィ

シリーズ5 「クーの真の家族と怠惰教師」

長くなってきたので簡易的な人物紹介を載せますね。
リア:お姉さんというかレディっぽい口調の女性。見た目年齢は18ぐらいのお姉さん。クーや説子と姉妹契約を結び、過保護に慈しんでいる。実ははぐれの神様で、それゆえに不老不死であるという裏設定がある。
クー:無邪気っぽい感じの中にしっかりした知性も感じるような口調の少女。結構口調が迷走しやすい子。リアを「リア姉さん」と呼ぶ子。日本から異世界に転生した転生者で、燃えるような赤い髪の少女。見た目年齢は14,5歳ぐらい。
説子:天然かつ研究者っぽい口調の少女。リアとクーの事を「リアねぇ」「クーねぇ」と呼ぶ子。見た目は高校3年生ぐらいで、三つ編みにセーラー服。読書が好きで、面白ければそれでよし!とマイナーな小説も買い漁っている。
フェンリル:4で説子が仲間にした狼。実は作者がいい感じのものを思いつけず、まだ名前が無い。3では安全な場所にお留守番していた。

シリーズ4の続きです。クーの前世の家族に会って、父親に見送られている所からスタートです。
ちなみに、オール一人称です。最初はクー視点ですが、途中から説子視点に切り替わります。なんでこうなったかは不明。


「お父さーん、またねー!」
わたしは見送りに来たお父さんに笑顔で手を振りました。
またお父さんに会えるなんて、とても嬉しいです。
「うっ、うっ……ああ、またね、フィー」
嗚咽を漏らし、涙を流しながらも嬉しそうなお父さん。
あまり表情は動いて居ないが、代わりに雰囲気が雄弁に彼の感情を語っていて、遠巻きにされがちな彼をフォローし、通訳するのはいつも私たち家族の役目だった。
だから、こんな風にお父さんが感情を露にするのは珍しくて。
お父さんに涙を流させたという事が、わたしティファーナが大事にされているという証のようで、とても嬉しい。
「うんっ! お兄ちゃんとお姉ちゃんにもよろしくねー!」

「クーねぇのお父さん――レンさんだったか? 号泣してるな」
「わん」
「わおん」
「クーも喜んでるし、連れて来て良かったわね」
説子の言葉に、目を細め、しみじみと言うリア姉さん。
「リア姉さん、ありがとう!」
たたたっ、と彼女の元へ駆け寄り、そのまま抱き付き、お礼を言う。
「どういたしまして。クーが喜んでくれてよかったわ」
軽くわたしを受け止めたリア姉さんは、ふわりと柔らかに微笑んでくれた。

 ***

「私としては菫さんと話が合って嬉しかったな。まさかあんなマイナーな作品の読者に出会えるとは思わなかった」
どの後、説子の魔術の練習をしてみようという事で、3人揃って飛行していた時。
ふと説子が呟くように言った。
確かに、リア姉さんがお父さん(とお兄ちゃん)に「娘さんを私にください」をやっていた時とか、説子は随分とお母さんと話し込んでいた。盛り上がっている様子だったし、あのお母さんと話が会う人を家族以外だと初めて見たから、そっとしといたけどね。
家族は皆、英才教育的なノリでちっさい頃からお母さんお気に入りの小説を読み聞かされて育ったしなんとか付いてけるけど、あれは本当にびっくりした。
「お母さんと話が盛り上がれる人なんて初めて見たよ。説子凄いね。ちっさい頃から英才教育受けた我が家でも付いていくのが精一杯なのに」
「一番盛り上がったのは##だけど、リアねぇが勧めて来た小説の話も多かったし、結構話はしやすかったぞ?」
※「##」はティファーナたちノブリーシュ家の子供たちが英才教育を受けたマイナー作品の事です。ものすごーいマイナーな小説以外はなんにも決めてないテキトーなやつなのでタイトルとか考えるの面倒だし「##」がタイトルという事でお願いします。
「……ほんと、びっくり」
お母さんを溺愛しているお父さんだって付いていききれないのに。潔く諦めたのか「僕の解らない事をしっかり理解してる菫は凄いね」とか言ってるぐらいなのに。お母さん相手に##の話をして盛り上がるなんて凄すぎる。
「……私からすれば説子がなんて言ってるのか判らなくて不思議なんだけど」
「え、##だぞ? ##ってリアねぇ発音出来ないのか?」
「##だよ? 確かに判り辛いけど……、リア姉さんが不思議って断言するぐらいのものかな?」
「……とりあえず連発するのはやめてくれないかしら。あと私も万能という訳では無いのだから出来ない事ぐらいあるわよ」
「「えー!?」」

 ***

クーねぇとリアねぇと話しているうちに、私の通っていた高校の近くまで来ていた。
……県を3つぐらい跨いでも魔力切れにもならず普通に飛行出来るんだな。
私の拙い魔力操作でもそのぐらいは継続出来ることにびっくりだ。
まあリアねぇによれば私はリアねぇと姉妹になった事で魔力がバカでかくなっていて、その魔力にものを言わせて力技でどうにかしているだけらしいが。
まあ、それはともかく。
ついでに高校に寄ってみる事にしたのだ。
「そうだ! 説子、教室とか見てみようよ! クラスメイトの人とかもしかしたら居るかも!」
「あ、それはいいかもしれないな」
キラキラと目を輝かせたクーねぇの提案に、私は飛びついた。
「あの時の担任ぐらいなら居るでしょうね。時間的にまだ5時限目の授業中でしょうし、教室を見て回ってみたらどう?」
リアねぇも後押しするようにヒントをくれて、私たちはひょいひょいと窓の外から部屋の中を見て回っていた。
他の人には見つからないように、魔術を使って隠れながらやってみなさい、とリアねぇに言われたので、透明化して。
《あ!》
《なんだ? クーねぇ、誰かみつけたのか?》
《担任の人が居る! なんかテキパキ教えてるね……?》
え、それほんと?
クーねぇの言う担任の人とは、クーねぇとリアねぇが転校して来た時にクラスの担任をしていた男教師だ。
やる気を出すと結構凄いが、そのやる気を出させるのが物凄く難しい……らしい。
っていうかすっごい気になる。あの担任がテキパキって全然想像出来ないんだが。
《……担任って、あの怠惰って単語を体現したかのような言動だったあの男の教師??》
《うん》
《……それが、テキパキと、授業を、している、と?》
《うん。一瞬別人かとも思ったけど、同一人物だね。魔術もフル活用して確認したから間違いないよ》
《なにそれ面白そう! クーねぇ、今どこに? 担任はどこに居たんだ?》
《私も担任さんも1年1組の教室に居るよ。あ、私は窓の外だけど》
それを聞いた私は2年4組の教室から猛スピードで飛び出し、クーねぇの居る場所に急いで向かい始める。
ああもう遅いな! あの小説みたいに転移出来たらいいのに……てぇ!?
「わぶっ!?」
瞬時に景色が切り替わり、クーねぇ(クーアティアの姿だ、いつのまに幻影を解いたんだろう)に勢いよく衝突してしまった。
「わわっ、クーねぇ大丈夫?」
「うん。っていうか説子凄いね……」
しみじみとした様子で言われたが、心当たりも無く首を傾げる。
「……いきなり転移するんじゃないわよ説子……。パッと消えたし心臓が止まるかと……」
注:リアに心臓に当たる臓器はありません。溶岩の中でも生息できる生態です
ふっ、と現れたリアねぇ。ぼやくように言われた言葉に、ビックリした。
「……え、転移? 私が?」
「ええ。魔力任せではあるけれど、あれは間違いなく転移だったわ」
「え、ええ!?」
……というか急ぎたいからあの小説みたいに人を指定で跳べたら良いのにって思っただけなんです、そしたら急に景色が変わったんです、とは言い辛い状況だなぁ……。
現実逃避ぎみそう考える。
「なるほど。まあいいわ」
もしかして思考読まれた? ま、まあ言い辛い事を察してくれたと思えば……。
「ねえ、そろそろ授業も終盤みたいだけど、噂の教師は見なくていいの?」
「「あ、そうだった!」」
クーねぇとハモって叫び、窓を覗き込む。
「うわ、本当にテキパキ授業してる…………」
凄い。爽やかな感じでテキパキテキパキ授業してる。
ふと、担任が空に目を向け、蕩けるように笑った。
「あ、今笑った」
「うん、なんか蕩けるような感じだった」
「「一体何があったんだ、担任……」」
あ、授業終わった。っていうか速攻で走り出したんだけど。
「あ、なんか駆け出したよ」
「どこ行くんだろうか?」
「気になるなら追いかければいいじゃない」
興味津々に校門を爆走していく担任を2人揃って見ていると、リアねぇにそう言われた。
「「その手があった!」」
っていうかなんで思いつかなかったんだろうか?
「あ、でも説子はちょっと休憩ね。私に背負われてなさい」
「う……、わかった……」
有無を言わせない雰囲気でリアねぇはそう宣言し、私がしぶしぶ頷くと、軽々と私を背負った。
 ***
「ここって……大学?」
担任の追いかける事しばらく。
大学らしく建物に付いた。何食わぬ顔でキャンパスへと入っていく。
あの人、高校の教師であって、大学に行くような用事は無いと思うんだけど……。
「あ、止まった」
一直線に担任が向かった先には、冷たい容貌の女性が。
「あれは……確か、花宮《はなみや》なごみさんだっけ? 氷の鉄仮面って呼ばれるクールビューティーの」
クーねぇが彼女の名を言い当てる。
「ああ。担任……宮山《みややま》努《つとむ》と揃って名前と見た目や言動の乖離が激しい人として結構有名だった人だ」
「今はクールビューティー???…な感じだけどね」
「そうだな……二人ともなんか花飛んでるみたいな感じだ」
ふわふわと周りに花が飛んでいそうなほど幸せそうな雰囲気を醸し出す2人。
担任はもちろん、花宮さんも、在学時代の噂とは掛け離れた様子だ。



「満足したかしら?」
「くぅーん」
「きゅーん」
「「あ」」
寂しげに鳴く2匹と、呆れたような様子のリアねぇ。
「「ご、ごめんなさい」」
「うん。私を放置して別の事に夢中になられると寂しいから、次から気をつけてくれると嬉しいわ」
「はい……」
「ご、ごめんなさい……」
「ちゃんと反省してるならそれでいいわ。ここでやろうとしてた事は全部出来たし、次はどの世界に行きましょうか?」
優しくリアねぇは微笑み、そんな事を言ってくる。
オーロラ色の髪が月の光に反射して、とても綺麗だ。
……あ、そうだ。
「じゃあ、かぐや姫の世界がいいな、リアねぇ」
「ふふ、いいかもね。クーは何かある?」
「ううん! 私もかぐや姫の世界、行ってみたい!」
「決まりね。じゃあ早速、いきましょうか」
月明かりが辺りを照らす中、姉妹たちは、また次の世界へと旅立つのだ。

「転生者よ、契約せよ。3 『かぐや姫の世界にて』」につづく


裏設定コーナー
フェンリル:ごめんなさい、忘れてました。セリフは捻じ込んだので存在が何時の間にか消失するのは免れましたが。彼らの活躍に期待していた読者さんには申し訳ありません。

説子の魔力:ものすごい多い。魔力任せのゴリ押しで魔術を結構発動しても平然としているぐらいなのでとんでもない。リアが説子に休憩を取らせたのは「さすがに魔力を使いすぎてるからちょっと休ませて回復させないと」とリアが思ったからだが、のちにまだまだ魔力に余裕があり休憩なんて必要無いぐらいだった事が判明する。

フィーの家族:両親は「青年と、少女の、バレンタイン」の青年と少女。兄妹は兄1人と妹2人が居る。

教師:「クールビューティちゃんと怠惰教師」の教師こと努。ちなみに冷たい美貌と説子に称された女性はクールビューティーちゃんことなごみ。なごみは今(説子たちが見てた時)は大学の1,2年生という想定です。

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