サンタクロースパイ

COLK

64.たとえ、犯罪だとしても・・・

時計を見てみると、時間は、23時37分だった。




「おっ!いっけね!!もうクリスマスになっちまう!!!
急がないと!!!〝真っ赤なお鼻の~トナカイさ~んは~♪〟、
って俺、トナカイ飼ってねぇけど(笑)」と言い、
あの、黒いサンタクロースの服を着て、玄関まで移動しようと
思ったその時、子供達をはじめとするたくさんの人達が
呼んでいる声が自分を呼んでいるような気がした。




「〝お兄さん〟、〝兄ちゃん〟、〝お兄ちゃん〟」などと。




「おっ!皆、俺を呼んでるな!!」




そこで、霧河はこんな事を思った。




(俺のやってる事は、確かに犯罪だ。だからいつか、
もしかしたら、この事が、本当に現実でもバレて、
もしかしたら、捕まってしまうかもしれない。でも、皆、
凄く喜んでくれるし、これからも、たくさんの人達に、
プレゼントだけじゃなくて、夢や希望も与えたい。だって、
それが、俺の生きる意味だと思うから)と。




外に出ようとした時、玄関に飾ってある、
霧河の幼い頃に、両親と一緒に撮った家族写真が目に留まり、
霧河は、笑顔で、
「父さん、母さん、行ってくる」と言い、
そして、玄関のドアを開けた。




〝バタン〟


「霧河竜令」。本名、「網田謎留」。これからも、彼は毎年、
クリスマスに、子供をはじめとするたくさんの人達に、
プレゼントや夢や希望を与えていくだろう。




クリスマスの朝、
〝枕元を見ると欲しいモノが置いてある〟という現象は、
もしかしたら、この、不思議な男が起こしているのかもしれない。

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