幼馴染を追って異世界へ 〜3億課金した最強アカウント × 【超重力属性】を使って〜

甲殻類

32話 これから



 「はなせぇえええええー」


 ウタゲ先生がバタバタと暴れている中、俺はバルトに駆け寄っていた。



「大丈夫ーーなわけないな」



 俺はバルトの姿を見て、心配をしている暇がないことを瞬時に判断する。



「ユイ回復魔法を頼む」



「わかってる」



 ユイは俺が言う前からもう回復魔法の発動に取り掛かっていた。ユイもこの怪我の程度を見てすぐに行動に移っていた。



「傷が深くて私程度の回復魔法じゃ届かない」



 悔しそうにそう呟く。さっきからずっと回復魔法をかけているが外傷は治ってさも完治したように見えるが、体の中の傷までは届いていない。



 仕方ないポーションで直すしかないか。俺はアイテムボックスの中から出そうとした時。



「あらあら、ウタゲちゃんやりすぎよ〜」



 そう言うと、さっきあっちの3人組の方の試験を見ていたはずのシェル試験官が俺たちの方へ近づき、手をかざし回復魔法をバルトにかける。すると徐々に体内の傷が癒えていることが分かるくらい青いオーラがバルト覆っている。



 この魔法は、海水魔法……ウタゲ先生もそうだったが、この人も大概だな。海水属性は広範囲攻撃と高度な回復能力に特化した属性だ。言うならばこの二人には分が悪い相手と言える。





 ユイはシェル試験官が使った魔法を凝視し掠れるような声を漏らす。



「すごい……」





 その声を聞き取ったのか、シェル試験官はニコッとユイに向かって微笑む。



「これでよしっとーーあとは、お願いね。流石に完璧に完治させるのは試験官として出来ないから、これはウタゲちゃんの迷惑料ってことで受け取ってね♪」





「それじゃ、試験の続き頑張ってね〜」



 そう言うと、シェル試験官はウタゲ先生を軽々と抱きかかえお姫様抱っこのスタイルで森の奥へ消えていった。

 いまだにウタゲ先生の怒号が森の中をこだまして聞こえてくる。





「あれ?なんで俺ここで寝てるんだ」



 寝ぼけたことを抜かすバルトにユイが超至近距離で矢を放つ。ちょうどバルトの頭の上すれすれを通り過ぎていき後ろにある木に突き刺さる。



「おい!何すんだ急に。こっちは怪我人だぞ!」



「うるさい」



 ユイはバルトを睨み、バルトもユイを睨みつける。



 うんうん仲はまだまだ良くならなそうだ。俺はバルトに手を差し出し倒れていたバルトを起き上がらせる。



「怪我はどのくらい治ってるんだ?」



「えーっとねえ……」



 バルトは自分の体を触りだし、確認する。触らなくても分かるだろと思ったが、俺は喉元まで言葉をだしかけて飲み込む。



「お!治ってる、痛みがないぞ!!」



 よっしゃーとガッツポーズを大胆に決め、またユイに矢を放たれ喧嘩を再開している。







「おーい!!」





 メガネくんの声が聞こえそちらの方角を見ると3人がこちらに向かってきていた。











 俺たちは合流し今日はこの辺りで休息も兼ねて早めに野営の準備を始めることにした。



 いつも通りの俺は薪集め担当になり今回はメガネくんとチームを組んでいる。今は薪集めも終わりみんなの元へ帰っている途中だ。



「ほんと、シェル試験官は強すぎだよ3人でも敵わなかったんだから」



 さっき行われたお互いの試験のことを俺達は話していた。



「こっちはバルトが1人でやるって言って結局シェル試験官に介入されて勝ち負けつかず終わっちゃったよ。バルト的にはあれ以上やらずにすんで良かったけどな」



 俺はそう答える。するとメガネくんは小さな声でぼそっと呟く。



「そうか、一人で試験官と……」



 あまりにも小さな声だったので何を言ったのか聞き返そうと思った瞬間メガネくんは話題を変える。





「そういえば、アキト達って合格のサインスクロールに貰った?」



 あれ……そう言えば俺達シェル試験官が介入してごたごたして、スクロールに合格のサイン貰ってねぇ。

 俺はしまったと顔に出ていたのかその焦りを見て、メガネくんは心配そうにこちらを覗き込む。



「試験官に確認した方がいいんじゃない?」



「ああ、そうだなゴール地点で確認するよ。流石にあれで不合格ってことはないだろう」



 多分、いや大丈夫だよな。だってシェル試験官勝手に試験終わらせちゃったし……



 心配ない問題ないーーと自分にいい聞かせる。







 そのままスクロールについて考えていると、ご飯準備中の皆んなのところに到着する。





「お!アキトー聞いてくれよ〜」



「な、なんだ」



 バルトは手にスクロールを持って意気揚々とこちらに近づいてくる。



 俺は少し怖気ながら答える。



「スクロールに合格の印が入ってたんだよ!いつ入れたんだろうな」



 そう言ってスクロールを見せてくる。確かにウタゲ先生のサインが入っている。ただ、いつ入れたんだ?スクロールはバルトが持ちたいと言っていたから持たせていたがバルトとウタゲ先生は激しく戦闘していた筈だ。



 ま、細かいことを気にするのは後にしよう。



「ま、合格ならいいんじゃないのーーそれより早くご飯食べようぜ」



「そうだな、俺も腹減ったぜ」



 そう言って、踵を返しバルトはご飯支度しているユイ達の方へ走って行った。



「合格もらえたんだ!よかったね」



 メガネくんが後ろから薪を落とさないようにバランスを取りながら俺の横まで来る。



「あぁ〜良かったー」



 俺は、不安要素が消え体の力が抜け薪を落としてしまう。それを見てエーフがこちらまで 駆け寄ってきて拾うのを手伝ってくれる。メガネくんも薪を一旦置いてからもう一度こちらまで来て手伝ってくれた。





「ありがとう二人とも」



「「どういたしまして」」



 二人の発言がかぶる。それに笑いながら、みんなの元へ歩き出す。



 今日は疲れたなー俺何もしてないけど……









ーーーーーーーーーー







「ウタゲちゃんいいの〜全員合格にしちゃって……」



 シェルは不安そうに問いかけて来る。今だにお姫様抱っこ状態だが、私はもう諦めて運んで貰っている。



「心配すんなって、別に不正に合格させたわけじゃないし、あのじじいに歯向いたいだけだから……」





 そう言うと、またシェルは歩き出す。





「腕は大丈夫なのか?シェル」



「大丈夫だよ〜、明日には治ってるから」



 私はシェルの右腕を見る。シェルの右腕全体からこの辺り一帯の気温が上昇するほどの熱が発せられている。今もシェルの右腕は燃えているのだ、火傷とは比にならないほどに。



 シェルはあいつの発動しようとしたスキルをスキル<深海の右腕/デップスハンド>で瞬時に押さえ込もうとした。このスキルは相手の魔法、スキルに関わらず相手が発動した瞬間その技を海水に覆われた右手で掴むと発動をキャンセル出来る。効果範囲は相手との距離が50m以内ならどこからでも使え、至近距離でない場合は水の手を飛ばすことでも発動する。



 今回はあいつが発動しようとした火の玉を右手で握り混んだのだが、威力が強すぎて今シェルの右腕はこんな状態だ。



 あの小さな火の玉はどれだけの威力があったのか……もしあのまま飛んで来ていたらと考えると私はーー





 残念だーーせっかくどれほどの威力かわくわくしていたのにシェルが水を差したせいでそれが叶わなくなってしまった。





「ウタゲちゃんはまったく反省していないんだから〜もし私の右腕が無くなってたらどうするつもりだったの」



「冗談きついよシェル。シェルはそんなのダメージの内に入らんだろ」



「これでも痛いんだからね〜」



 シェルは頬を膨らませ珍しく怒っている。シェルが頬を膨らませたらガチで怒っている時だ(これでも)





**





 試験官室に戻る最中、はっとシェルが何かを思い出したかのように慌て出す。



「あー!!あの子達のスクロールに印押すの忘れてたじゃないウタゲちゃん」



「それなら心配いらん、あいつらにスクロールを渡した時に既に印は付けておいたからな」



「え?じゃあウタゲちゃん最初から合格にするつもりだったの?」



 ぽけーっとしたシェルの顔を小突いて私はお姫様抱っこの状態から降りる。



「ばーか、そんなわけあるかよ。私の炎を受けたら印が浮き出るように細工しただけだ」



「なるほど、ウタゲちゃんに炎のスキルや魔法すら使わせないレベルだったら落としてたわけか……」


「そゆこと、ほら行くぞぼーっとしてるなよ試験はまだ続いてるんだからな」



「あぁ〜待ってよ〜ウタゲちゃーん」



 さぁてどうなるのやらね。私が合格をやったんだちゃんとゴールしろよな……そう私がシェルを呼ぼうと振り返った瞬間



 突然その大きな胸と共にシェルが後ろから抱きついて来る。



 ゔぁぁあああ窒息する〜死因が胸による窒息死なんてシャレにならんぞ〜!!

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