幼馴染を追って異世界へ 〜3億課金した最強アカウント × 【超重力属性】を使って〜
27話 試験1
翌朝、あれからは誰からも襲撃は受けなかった。魔物も夜に活発になるのだが運良く遭遇しなかったようだ。
俺達は今朝食の準備中である。腹減った。また、今朝も俺は薪集め担当になった。女性陣が主に調理関係、俺以外の男性陣が食料調達と言った感じだ。
俺だけハブなのは……触れないでおこう。
俺は薪を拾いつつたまに出てくる魔物を片付ける作業を約1時間やっていた。今回の試験に魔物っているのかね……
こんな弱い魔物なら配置するだけ無駄になるんじゃないのかと疑問に思いつつ探索する。
薪を拾い集め皆の元に戻った時にはすでに朝食はほぼ完成していた。美味しそうな匂いと共にお腹の虫も豪快に鳴る。
食事中今日の動きについて話あっていた。
「今日は……というより基本はゴールを目指しつつ試験官を見つけてスクロールを確認するって感じでいいよね」
メガネくんはそう言って朝食のスープを啜る。スープの湯気のせいでメガネが曇り、軽く結露した時にはみんなで笑っていた。
そして準備を整え出発する。6人で動くのでそんなスピーディには移動できないが四方八方をケアできるので途中の魔物は難なく突破することが出来た。
移動の陣形はバルトとトルスが前その後ろにメガネくんそのすぐ後ろに俺、俺の後ろにエーフとユイの二人になっている。
魔物は大概トルスとバルトが張り合って討伐している。途中からはどちらが多く倒せるか勝負まで始まっていた。
二人とも戦闘スタイルは同じようで、出てくる魔物全て顔面を殴打し、殆どスキルや魔法を使っていない。素手だけで戦っている。
たまに倒し損ねた魔物が二人を抜けて襲ってくるがメガネくんか俺が対処していた。
ほんとやるなら完璧にやってほしいものだが、二人は勝負のことしか頭に入っていないらいしい。
(なんじゃなんじゃ仲間が増えとるの〜)
シロネは今起床した。これまでずっと寝ていたのだ……ほんと呑気なやつ。
(なんか6人でチーム組んで共闘しようってことになったんだよ)
(ほーん……そんなことよりわしの朝ごはんは?)
どうやらシロネにとってそんなことはとるに足らないことらしいです。俺はバレないようそっと影の中に食料を放り投げる。そろそろ自動でというかいちいち影に放り込まない方法を探したいものだ。
(しっかりやるのじゃぞ、わしは今回は介入しないからの)
そう、当然今回の試験は俺からシロネからの手助けを断ったのだ。
(吉報を待っとるからの)
シロネはそれだけ伝えると和衷協同を切る。
そうこうしてる内に今日一人目の試験管を見つけたらしい。
「試験官スクロールの属性は何ですか?」
メガネくんが試験官に問う。俺たちが持っている属性スクロールは火、あちらの3人が持っているのは水だ。さあどうだろうか。
「あら〜見つけるの早いわねぇ〜」
そう言ってその試験官は思わずこちらが眠くなりそうな柔らかい声で答える。
海のように青い髪ウェーブがかった長髪は太陽の光と合わさって煌びやかで背が高いお姉さん気質っぽさが浮かんでくる、胸もそれなり大きいのに体はいい具合に引き締まっている。
「私のスクロールの属性はねぇ〜……」
そう言いかけた時だった。
「やっと見つけたぞシェル」
そう言って茂みの中から見覚えのある試験官が顔を出す。
全員近づいていたことに気付いておらず皆呆けている。もし敵だったら一大事だったところだ。
「ウタゲちゃ〜ん、この子たち一番のりだった〜」
「ふ〜ん」
ウタゲ先生はこちらを凝視してくるが、俺は知らぬ存ぜぬを貫き通す。
「まぁいいだろう、スクロールの属性を教えてもらおうか」
完全に空気扱いのメガネくんを尻目にバルトが答える。
「俺たちのチームは火属性だぜ」
あちらチームはエーフが答える。
「私たちは水属性です」
できればウタゲ先生と同じスクロールではありませようにと心の中で唱えていた。
「あ、じゃあこの子たちゲットね〜」
そう言ってシェルという試験官はエーフに抱きかかり3人をどこかへ連れて行ってしまった。
いや、そんなはずはない。あっちはたまたま当たっていただけだ、こんなことがあるわけない……
そう願っているとウタゲ先生がこちらをニヤニヤと見てくる。
あーやってしまいましたな、どうやらビンゴらしい。今日一発目で当たるのはいいが相手に運がない。
俺は覚悟を決める。バルトとユイも薄々感じているのだろう、この人が容赦という言葉を知らないことを……
ーーーーーーーーーー
僕達は少し森がひらけた場所に来ていた。前を先行しているシェルと言う試験官はエーフを人形のように抱きかかえていた。そしてそのひらけた場所の中央付近に行くと足を止める。
エーフをちょこんと置くと、優しそうな笑顔で告げる。
「それじゃあ試験を始めるわね〜」
相変わらず柔らかい口調でゆったりと話す。
「お、お願いします」
僕が代表して挨拶をしておく。その瞬間シェル先生の目つきが変わる。さっきまでの優しい雰囲気は消え今は恐怖すら感じるまでの威圧感を目つきだけで放っている。
「お題は〜あなた達の魔法、スキルで私に傷をつけるもしくは私の防御魔法、スキルを突破出来たらクリアね〜」
「私はここにいるわ〜反撃はしないからいつでもいいわよ〜あ、ちなみに制限時間は日没までだから気をつけてね♪」
僕たちは考える普通に考えたらいくら試験官、学校の先生だとしても3人がかりの攻撃を日没までの半日間耐えることなんてできるわけない。
僕はメガネのずれを直す。一旦引いて作戦を練るべきか、それとも今から……
「エル何を迷っている、こんなわかりやすい試験などそうそう無いぞ」
「そうだよエルくん、一気に決めちゃいましょう」
二人に背中を押されそれを快諾する。ものは試し、それほど防御に自信があるなら見せてもらうぞ。僕は覚悟を決める、二人も覚悟が決まったようで先ほどまでの緩いムードは皆無、目が据わっている。
「どこからでもいらっしゃいな〜」
シェル試験官はにっこりと微笑む。
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俺たちはウタゲ先生について少し離れた場所に来ていた。絶対に人工的に作られただろう違和感しか感じられないぐらい森が綺麗にひらけていた。
木や草が欝蒼と茂る中に突然何にもない円形に広がった土地がある、しかもところどころ焼けたような跡があり絶対にこの人が燃やしたに違いない……俺は確信する。
バルトとユイもこの違和感には気づいたようで、さっきから辺りをキョロキョロ見ている。
「お!こんなところにひらけたいい場所があるじゃないか」
と、とってつけたようなわかりやすい嘘を言い放ち、その場所の中央まで移動する。
「さぁてと君たちには何を課そうかな」
少し考えたふりをした後、いや絶対考えてないだろうふりをした後あらかじめ決めていた課題を口にした。
「うん、決めた。私と死ぬ気で戦え」
どうやら俺達は死ぬらしいぞ。
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