幼馴染を追って異世界へ 〜3億課金した最強アカウント × 【超重力属性】を使って〜

甲殻類

13話 リ・ストランテ

 
 あの戦闘のあと、俺は悶えていた。


「痛ってぇ……」


 アイテムボックスからロウポーションを取り出し、さっき庇った腕を癒す。


 といっても低級Eランクのポーションだからそんなすぐには治らない。


「アキトよそんなもん薬草でも塗りたくっとけば治るのじゃよ」


 そういうとシロネはとんでもなく深い緑色の磨り潰した薬草を俺の腕に塗りたくってくる。


「ゔぁあああああああ〜」
 俺は絶叫する。


 じんじん染みる〜
 もう前が見えないぐらい涙が溢れている。


 あれから1時間悶えてた。


「薬草でそんな悶えてるやつ初めて見るぞ、痛みに弱すぎじゃ」


 はっはっはと高笑いしているシロネを尻目に腕を代わりがわりにさする。


 いや、尋常じゃないくらいひりひりする、なんなら殴られた時の方がまだましなくらいだ。


 恐らく、ポーションをかけた上に薬草を塗ったことにより変な反応を起こしたんだろうと俺は推測している。
 今度からは絶対薬草か、ポーションどちらかだけにしよう…


 普通のポーションやハイポーションその他の回復品は全てレベル20からしか使えないようになっている。


 今のレベルだってまだチュートリアルみたいなものだし…


「そういえば、アキトよ。スキルは使えたんじゃな」


 そう、あの時スキルが発現しなければシロネにお願いしていたとこだった、シロネがあの4人を倒してくれたおかげで経験値が入り俺はレベル11へ上がった。


 レベル11以上でスキル魔法が取得可能になるのでちょうどレベル11の時に取ったスキルを使用することができた。


 重力系の魔法やスキルはとにかく威力が強かった。
 状態異常やステータスダウンなど特殊効果は付いていなかったが、その威力だけで十分だった。


 あの時はとにかく冷やっとした、命を賭けている分やっぱり戦闘時の緊張感が重くのしかかってくる。




「まあな、さっきの戦闘で使えるようになったばっかだけどな」




 ーーさてと。




「こいつどうする?」


 俺はさっき倒した盗賊の方を向く。


 ここは、元Sランク冒険者様に決めていただいた方が無難だろうとふんでいる。


 ぶっちゃけ別に俺は冒険者のしっかりとした仕組みもよく知らんし、こういった場合どうすればいいのか分からんからな。


 まぁ俺が倒したやつ以外シロネが全員息の根を止めてるが…容赦なさすぎだろ。


「ふぅむ…どうしたものかの〜」


 シロネは片手を顎に添え悩む。


「冒険者ギルドに届けても報酬は貰えん…だからといって街の兵士に渡してものぉ」


 シロネは答えを決めたのか真剣な表情でこちらを見る。


「アキト何も言わずわしに従って欲しいのじゃが…こやつはここに置いて行く」


 ここに置いていくか、それは思いつかなったがどうしてだろうかシロネなりに考えがあるのかそれとも…


 まぁここは何も言わずと言われてるからな素直に従いますかな。


「了解した」


 それから、俺たちは荷物を整え街へ向けまた歩き出していた。


 街に近づくに連れ昨日よりも人通りが多くなり、途中馬車や冒険者と思われる人達とよくすれ違った。


 道もしっかりと整備されており歩きやすい。


 街への通行証は女神から貰っているので大丈夫だ。


 この世界の通行証は身分証と同定義で、平民、貴族、冒険者、兵士、商人、帝国騎士など職業によって色が違う、しかもそれぞれの階級によって縦模様が入る。


 ちなみに、王族は顔パスだ(王族の人はそれが一発で分かるよう、とある王族専用アイテムを持っているらしい…詳しくは知らん)




 女神のやつ、通行証をアイテムボックスに入れてやがった。
 なので街に行くには絶対レベル10に達することが最低条件だったわけだ。




 俺たちは途中お昼休憩を挟んで夕方頃にリ・ストランテを眼前に見据えていた。


 ともかくでっかい街という簡単な感想しか出ない、城門もかなり強固な作りになっていて、簡単には侵入できないようになっている。


 周りには巡回している兵士、雇われた冒険者がおり、街でこんなすごいなら帝国はどうなっているのか想像もつかない。


 街を入退場出来るのは朝9時から夕方の5時までで、今は夕方の6時でタイミングが悪かった。
 なので今回は街のすぐ隣にある森で食料を調達し野宿する。


 アイテムボックスに食料があるのだがOOPARTSオンラインの料理はなかなかに貴重なのでもう一度作れる環境が整うまでは温存しておくつもりだ。




**




 一夜明け朝早くから街に入るために俺は街の入り口の門に並んでいる。
 朝早いのにもうちょっとした列が出来ている。


 入り街審査といって、身体、身分証のチェック、軽い口頭質問、入市税を払ったら街に入れる。


 ちなみにシロネは影魔法で俺の影の中に隠れている。


 (影に隠れてることバレたらまずくないか?)
 俺は率直に思っていた質問をぶつけてみる。


 (わしの影魔法を見破るやつなどこの街にはおらんのじゃ、それに街に入れたら影から出るつもりじゃ)


 (じゃあ別に入り街審査普通に受ければよかったじゃん)


 (わしの年齢を見られたら少々困る、ちょっとした騒ぎになってしまうからの)


 バツの悪そうな感じでシロネは答える。


 あぁ、確かに100歳を超えてるなんてまず人間種ではないからな。


 この世界の平均寿命は男女共に45歳、まあこの平均を下げるのが魔物と戦争だが…本来ならもっと高い。


 でも列の中には人間種以外の奴もちらほら見えるんだが…


 (あと言っておくが他に見える人間種以外の種族は大抵は奴隷じゃ、よほどの功績をあげた奴じゃないと人間の街には入れんのじゃ)




 本当に、俺の考えを先読みするんじゃない、ドキッとしちゃうじゃないか。


 (成る程な、ちょっとどころか大騒ぎになりそうだな)


 俺は入り街審査をつつがなく終わらせ街に入る。


 入り口の門を抜けると、まず見えるのが露店だ門から直線上に沢山の露店が左右に別れ並んでいる。


 食べ物の露店だけでなく、宝石、アイテム、武器等様々な種類の露店が出店している。


 俺たちはその露店での欲を抑えつつ、まずはシロネがこの街でよく使う宿を紹介してくれるらしいのでシロネの案内に沿って街を歩いている。


 少し近道を使うとのことで裏路地に入り、狭く細い道を進んでいると男たちが言い争っている声が聞こえた。


 ちょうど進路にその男たちがいるのでそいつらが退くまで遠目から観察する。


 男たちは2対1、2人の方はいかにもって感じのガラの悪そうな連中で1人は細身でもう1人はがたいが良い、1人の方は金髪で特徴的な赤い瞳、背丈は俺より少し小さいくらいだから170cmちょっとか。


 ヤンキー崩れみたいな奴で何か粋がっている中学生みたいなシュールな感じが面白い。




「お前、これで何日滞納してると思ってやがる!」


 がたいが良い方の男がそのヤンキー崩れの男に怒鳴る。


 どうやら借金系の話っぽい。


 声がでかいからよく聞こえる。


「いやぁ〜、あと少し待ってもらえれば先月分払えるんですがねぇ」


 ヤンキー崩れのやつは申し訳なさそうに答える。


「俺たちは先月分と今月分両方の話をしてんだよ!それに先々月のやつもまだ半分残ってんだ!!」


 今度は細身のやつが怒鳴った。


「あと1週間待ってくれ、そうすれば絶対払えるから」


 ヤンキー崩れはその怒鳴りに怯み、手を合わせて懇願する。


 なんか長くなりそうだから、道でも変更するかシロネに相談しようと思った矢先。


 シロネが影の中から石を2人の男の片方に投げた、中々の速さでそいつの頭に石がぶつかる。


 こいつ、やりやがった。俺は顔をおさえる。


「痛ってぇ!誰だ石投げた奴!!」


 2人は俺のいる方向を向く。片方の奴が俺を見つけ鋭い目を向けてくる。


 俺は2人に見つかったので、素直に出て行く。


「今石投げた奴おまえか!」


 俺はその問いに素直に答えようとした瞬間ーー。


「ナイスアシストぉおおおおおお」


 金髪崩れが思いっきり2人の後頭部めがけラリアットをかます。


 ラリアットを受けた2人は顔面を石でできた地面にとんでもない勢いで強打する。


 2人は気絶して泡を吹いている。


 なんだか知らぬ間に終わっているんだがーー




「お、お前が意識をそらしてくれたのか!助けてくれてサンキュな」


 ヤンキー崩れはめちゃくちゃ馴れ馴れしく話しかけてくる。


「俺の名前はバルト・ベルってんだよろしくな」


 手を差し出し握手を求めてくる。


「あ、ああ。俺の名前はーー」


 俺も手を出し握手しようとした瞬間バルト・ベルは何か思い出したかのような表情になり、握手しようとした手を引く。


「あっいっけね、こうしちゃいられないんだった。じゃあまたな、助けてくれてありがとよ」


 そう言うとバルト・ベルはそうそうにこの場から立ち去っていった。




(かっかっか。どうじゃったアキトよわしの投擲力)


 こいつ…あとで説教だな。


 それにしても、台風みたいなやつだったな。


 **


 それからは近くにいた巡回している兵士に喧嘩していた人が倒れていると伝えておいた。
 これであの2人も何とかしてもらえるだろ。




 裏路地を抜けると意外とすぐに宿屋に着いた。なんか朝っぱらから疲れた。
 お腹も空いているし、何か宿屋で食べよう。


 俺は宿屋の扉に手をかけ中に入る。



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