幼馴染を追って異世界へ 〜3億課金した最強アカウント × 【超重力属性】を使って〜

甲殻類

7話 友の死を経て

私の息子の幼馴染、けんくんが亡くなってもう1年が経過した。


 璃屠は、あれからちゃんと学校には通っているが様子が明らかに変わった。


 私としてもやれることはやってみたが全くダメだった、母親以上にあの子にとってけんくんの存在は大きかったのだろう。


 進学するのかどうか訪ねてみたが、通信制大学に通うと言っていた。
 私は璃屠の進学先をどうこう言うつもりはない。


 ここまで来ると、恐らく義務感なのだろう。いくら自分の心がズタボロに壊されていようと学ぶことはしなければならないという義務、そういうものしかもう璃屠の心には残っていないのだろう。


 璃屠とけんくんがお互いにどれほどの存在だったのか・・正直侮っていた。


 月が部屋を照らす中、お酒を煽りながら今日もまた同じことを考える。


 最近飲む量増えたな、体重も増えた、幸せは減ってるけど……。


  ーーはぁ、ため息をつく回数も増えたかな。


 バタンッ


 冷蔵庫が閉まる音がしたのでそちらの方をみてみると一葉が一人飲み物を物色していた。


「おーい、一葉飲み物持ってこっちこいこい」


 そう言うと、一葉は言われた通り飲み物を持って向かいに座る。


「どうしたの?お母さん」


「ああ、少し話そう」


 一葉はキョトンとした様子で、飲み物を飲み始める。


「璃屠の様子は最近どうだ?」
 ぶっちゃけ私よりも妹一葉の方が接しているので今は家族としてのふれあいは7:3で任してある。


 「ほとんど、あのCRってのに入ってるよ」
 「で、たまに出てるって思ったら。部屋で筋トレしてるよ」
 「あと、大学の説明会とかも受けてるみたい」


 通信制大学はCRで授業を受けることも可能だ。今の大学は通信制がほとんどで、わざわざ足を運んで学校に行くことは殆どないので特に問題にはならないが……ちゃんと大学には行くって言ってるしな。


 ほんとに心配だ。


 「でもほとんどずっとあのゲームやってるみたい」


 そう言うと一葉はすっと目を伏せる、いつもの元気があんまり感じられない。


 OOPARTSだっけか、あのゲームがけんくんとの最後の繋がりみたいなもんだしな。


 結局あの日、けんくんが亡くなったことを伝えた時、最初は信じていなかった。だが、ニュースやちゃんとした証拠を見せて現実を受け入れさせた。


 璃屠は、以外にも冷静で現実をちゃんと受け止めたかと思った……が、それはこちらがそう思っていただけで、璃屠は日が経つにつれどんどんおかしくなっていった。


 次第に、部屋に籠りあんまり出てこなくなってしまった。
 ずっとゲームにログインしている。


「すまんな、一葉こんな頼りない親でさ」


 その言葉を聞いた瞬間一葉は伏せていた顔を思いっきり上げ、興奮するように言う


「そんなことないよ! 大丈夫だから、いつも通りに接してあげることが重要なんだから」


 そう一葉強く言う。


 娘に説教を食らうとは……なんかいいかも   
 ーー冗談ですはい。


「一葉ありがとうな。一葉も無理はするな」


 そう言うと、一葉は私の目をみながらはっきりと


「家族なんだから当然です」


 びしっと指を突き出し私の顔目の前まで伸ばす。顔が少し赤い、風邪か?


 私は降参と言わんばかりに両手をあげ、無抵抗の意思を伝える。


 璃屠、いい妹をもったな。


 そして、けんくんを殺した刹那悠紀という男はあの日けんくんを殺したあと、警察に自首し、これまでの殺人の経緯、方法、証拠を全て自分で出し捕まった。


 98人を殺したのだそりゃ騒ぎになったさ、ニュースやワイドショー、世間を賑わせその年最悪の事件となった。


 当然、彼は法廷で即刻死刑判決を下され、もう2度とこの地に足は踏み入れないだろう。


 そして、彼は取り調べの中もう1人を殺す筈だったということを言っており、それが私の息子だった。


 もの凄い鳥肌たったさ、脂汗もひどかった、軽く過呼吸になりかけたくらいだ。
 それほどの衝撃を私は感じた。


 だから隣に住む、けんくんのお母さんひいては私の幼馴染、剣崎優子に私は恨まれると思った、けんくんは死んで私の息子は生きているのだからそういった類の恨みは覚悟の上だった。


 だが、優子はそんなことを微塵も感じさせないような、むしろ璃屠を可愛がり慕ってくれた。


 流石私の幼馴染だ、本当に感謝しかないな。


 ふと一葉の様子をみてみると、うっつらと半分目を閉じかけていてとても眠そうだった。


「呼び止めて悪かったな、もう寝なさい」


「うん、そうする。おやすみお母さん」


「ああ、お休み」


 そう言うと一葉は立ち上がりふらふらと自分の部屋へ戻って行った。


「さて、そろそろ私も寝るかな」
 お酒の缶をゴミ袋にまとめ玄関の前に置いておく、明日ゴミ出しな。
 私はそのまま自分の部屋に戻り、就寝した。








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 俺は一人考えていた。あれから俺はうつ病と診断され、さらに睡眠不足が加速しOOPARTSにログインしていない時のほうが辛いところまで来てしまった。


 今もOOPARTSオンラインの結社3人で作った高台に登ってぼーっとしているところだ。


 一時は自殺すら考えたが、その考えはすぐに打ち消された。
 一葉や母さんには迷惑かけたくないからな。


 妹を泣かせる兄、母を泣かせる息子などにはなりたくないからな。


 ただ念のため、俺は死亡保険など色々な保険に入っておいた。いや保険って重要でしょ?


 あれから、俺はさらに課金をしまくり、ついに1億5千万を突破した。


 さらに言うとけんが死んでから俺はCR自体にもう3億入れていた、これでもう現金に戻すことは不可能となった。残りは1億5千万だ。


 あとは、この金をどう使うかを1人寂しく考えるだけだ。


 あとで、イベントガチャ引くか。ガチャのしすぎでインベントリはパンパンで次から次へと拡張している。拡張にかなりお金使ってる気がするな〜。


 あれから、1年か早いような遅いような。けんは今頃天国でゲームでもしているんだろうか。


 ジグさんには最初、会って殺しに行ってやろうかと思って憤怒していた時もあったが、死刑が決まったので僕も落ち着きを取り戻してはいる。


 最初の頃は心配され、一時期病院生活だったしな。


 今はゲーム内の結社ランキングとかは徐々に落ちて今は3位だ。
 TOP5に入ってからも俺は一心不乱にやり続けて遂に1位を勝ち取った、しかしもうその時には一緒に喜べる仲間は一人もいなかった。


 そっから徐々にゲーム自体に寿命が来ようとしていたのも明らかだった。


 プレイヤー数も減少していき、初期からやっているプレイヤーはもう殆ど引退してしまった。ゲーム内のフレンドももう殆ど今はやっていない状態だ。


 もって、1年くらいだろうな。



















 その1年が経過し、俺は大学1年生の最後を迎えた。


 それと同時にOOPARTSオンラインも幕を閉じようとしている。


 今日は2人共出かけているので今は誰もいない。一葉は夜ご飯を豪勢にしようと買い出しに行き(結構時間かかる)、母さんはいつも通り仕事。


 今日は土曜日ぷらす最後ということでオンライン人数がゲーム発売直後並みにいる。
 初期からいた人も結構ログインしている。俺のフレンドもちらほらログインしている。


 まぁうちの結社は相変わらず1人だが……。




 もう俺はこの3日前に全額課金を果たしている。全部ガチャと装備買えるだけのものは買い切った。


 最後に個人戦闘力ランキングを眺める、1位は俺、2位はけん、4位にジグさんがある。


 俺とけんはほぼ同率、けんももしものためにもうあの日の前日に全ての課金を終わらせていた、これも奇跡かどうかわからないがジグさんも同じような状態だ。


 だから、これだけしても俺とけんの差は変わらないしぶっちゃけ5位までは殆ど僅差だ。


 俺は開いていたランキング覧を閉じる。


 そして、最後はこの結社で迎えるため、結社の中を歩く、そして2人の部屋を覗きそれぞれのベットで寝っ転がり、天井を見ながら思いに耽る。


 2人共自分の部屋凝りすぎでしょ、懐かしさと寂しさで片目からは涙が流れ落ちた。


 色々ありすぎた、3人で思い出がこんなにあるなら他の結社はもっと凄いことになってそうだ。


 そして、12時まであと10分となった時、ログで初期スポーンの始まりの街に全員で集合しようという旨が伝えられる。


 ただ、結社で最後を迎えたいという人も多かった。


 そして、いきなり運営からメールが届き結社にいても始まりの街の最後の集まりに参加できるよう粋な計らいをしてくれた。


 始まりの街には無数のスクリーンが召喚され、そこにはそれぞれの結社の人達が映し出され、こっちからも相手からも見えるようになっており会話も可能となっている。


 メッセージの終わりには、「長い間のこのOOPARTSオンラインを遊んでいただき誠にありがとうございました。これからも皆様のご期待に応えられるようなゲームを作っていきたいと思う次第です。本当にありがとうございました、そしてお疲れ様でした」


 という1文。


 みんなこのメールを読み、仲間と肩を組んで終わりを待つもの、恋人同士で手を繋ぎながら待つもの、1人で待つもの(おれ)、最後までクエストに挑んで楽しむもの、1対1を申し込み決闘するもの、多種多様で、それぞれである。


 そしてカウントダウンが始まる。








          そのカウントダウンが0になった瞬間




















             俺の意識は消えていた。







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