伝説の遊騎士
試験~光side~
足元から強いエクアを感じた。
ヤバイ・・・、そう思った時にはもう遅かった。
地面から影が僕を包み込むように膨れ上がってくる。
動こうにも足を影に捕まれていて動けない。
「光!!」
楓が必死の形相で飛んできてくれる。
「かえで~!」
だから僕もその手を掴もうと手を伸ばした。
手が届く・・そう思った瞬間に今度は背後からエクアを感じる。
楓を見ても楓はそのエクアに気づいた様子はない。
(来ちゃダメ!!)
光が口にするより早くエクアが近づいてくる。
(どうにかしなくちゃ!!)
そんな思考を読んだかのように隣にいた焔ちゃんが楓に抱きついた。
届きそうだった手が離れていく。
そんな景色を見て安心する。
遠ざかっていく楓は驚いたような顔をして焔ちゃんを見ていた。
でも僕が認識できたのはそこまでだった。
一瞬にして目の前が真っ黒に塗りつぶされてしまう。
そこは誰も存在していないただの闇の真っ只中だった。
影に包み込まれて気絶していたのかどうかも分からない。
事実、今、僕は起きているのかどうかも分からないような状態だった。
「ふぅー・・これって絶対常闇黒夜だよねー・・」
一人だと分かっていたけれどそんな事を呟いてみる。
やはり返事は返ってこない。
「出れるかな・・」
構わず一人口にして右手にエクアを溜めてみる。
しかし、エクアは反応しなかった。
(エクアが使えないなんて久しぶりだなー・・・)
なんて考えながら今の状況を冷静に考える。
まず、この術は間違いなく常闇黒夜によるものだ。
僕を捕まえて閉じ込めるなんて十二家の人間か、もしくは十二家候補に選ばれている予備の家系の人間だけだろうから。
さらにその術の中で僕がエクアを操れないってことは相当強い支配下にあるエクアが使われているってことになる。
そんなことが出来るのはあいつしかいない。
それに影を使って戦うのは僕の記憶には2人しかいないから。
「まずいなー・・」
考え始めると段々焦りが出てくる。
相変わらず辺りは真っ黒で自分が本当に存在しているのかも疑わしくなるほどだ。
外の様子が知りたくても見ることも聞くことも出来ないことには何も分からない。
一番の気がかりは敵として最悪の常闇がいるということだ。
十二家の中でも圧倒的に強い常闇がいたら焔ちゃんがどんな行動をとるかも予想しにくい。
とにかく出来ることをやんなくちゃ・・・そう考えてみても今の状態では出来ることがかなり限られる。
光はその時のために黙って体の中に少しだけあるエクアに意識を向けた。
どれだけ時間が経っただろう。
今までと何も変わらない景色。
今までと何も変わらない感覚。
狂いそうな状況の中で光は未だにじっとたたずんでいた。
少しの変化も見逃さないように・・・頭が狂ってしまわないように意識しながら。
どれだけ時間が経っただろう。
異変は突然だった。
急に今まで動かなかったエクアが激しく動き出す。
それと同時に真っ暗だったはずの世界が薄れて外の様子が見えるようになった。
(!?・・・)
そして目に映った景色を見て驚愕する。
息が上手くできなくなる。
最初に光の目に飛び込んできたのはボロボロの楓だったから。
「楓!!!」
震える声で楓の名を呼ぶ。
しかし誰もその声に答えない。
外の様子は見える様になったのにそれ以外は何も変わっていなかった。
「楓!楓!!」
構わず光は叫び続ける。
相変わらず何も変わらない闇の中で叫び続ける。
それでも何も変わらない。
変わっていくのは外の景色ばかり。
今すぐ楓に駆け寄りたい。
でも、今の僕にはそんな簡単な事さえ出来ない。
悔しさで唇を噛む。
そして戦況が動いた。
常闇が楓の後ろにいきなり現れる。
そのまま常闇は楓を踏み倒して剣を振り上げた。
「止めろ!常闇!!!」
思わず目を見張り、聞こえないと分かっていても叫ぶ。
常闇は止まらない。
「うわーーー!!!!!」
光は楓を助けに行こうと体に溜めていたエクアを放出する。
光の出したエクアが常闇のエクアを押し始める。
「うわーー!!!!」
それでも常闇の術を破れる程のエクアはなかった。
(なんで・・なんで・・なんで・・・)
どれだけ光が自分を責めても何も変わらない。
そんな光を笑うかの様に常闇が笑った。
また息が詰まったのが分かる。
今度は怒りで・・・。
今まで抱いたことのない・・自分でも驚く程の怒りで息が詰まった。
それでも僕には何も出来ない・・そう思っていた瞬間、常闇のでも自分の物でもないエクアが流れ込んでくる。
《何か》が闇を切り裂いて入ってくる。
光はその《何か》を見逃さなかった。
亀裂を中心にして光のエクアを集める。
すると簡単に影が消え去った。
目の前にはこちらに刀を向けている焔ちゃん。
だけど、そんな事を気にしている暇はない。
すぐに手にエクアを溜めて常闇に光の弾を撃ち出す。
同時に地面を蹴って楓に近づいた。
常闇は予想していなかったのだろう。
避けるような行動を取らずに僕の術に直撃して吹き飛ぶ。
その間に僕は楓に駆け寄った。
「楓!楓!!」
必死で呼び掛けると楓は僕の事が見えてないみたいな反応をする。
そしてゆっくりと手を伸ばして僕の髪に触れた。
楓のそんな動作に僕はドキドキしてしまう。
だけど、そんな気持ちを邪魔するように常闇が立ち上がった。
でもそんなのは気にしない。
もう一度手を向け光の弾を撃つ。
常闇は僕の術を避けながら反撃してくる。
僕は気にせずエクアを溜めて常闇との間を遮る様に壁を作り出した。
それで簡単に常闇の術を消すことが出来る。
「ごめんね、少し待ってて・・・」
僕はそれだけ言って光を抱え上げ、飛ぶ。
着地地点は焔ちゃん達のいる場所。
着地して楓を下ろす。
「ちょっ!?楓くん!?」
すぐに焔ちゃんが驚きの声をあげる。
それで僕は少しだけ安心した・・焔ちゃんがまだ味方だと分かったから。
でも楓は焔ちゃんの方を見ずに僕の方をじっと見続けてくる。
だから少しだけ楓の頬に触れながら行ってくるね・・とだけ伝えて元の場所に戻った。
改めて常闇の顔を見る。
たったそれだけ。
たったそれだけなのに怒りが込み上げてくる。
「僕はもう手加減できないよ・・・」
それだけ言って自分のなかのリミットを外す。
エクアが体に纏わりつく様に渦巻く。
それで準備が整う。
だから最後の言葉をかけた。
「さぁ始めようか・・・」
ヤバイ・・・、そう思った時にはもう遅かった。
地面から影が僕を包み込むように膨れ上がってくる。
動こうにも足を影に捕まれていて動けない。
「光!!」
楓が必死の形相で飛んできてくれる。
「かえで~!」
だから僕もその手を掴もうと手を伸ばした。
手が届く・・そう思った瞬間に今度は背後からエクアを感じる。
楓を見ても楓はそのエクアに気づいた様子はない。
(来ちゃダメ!!)
光が口にするより早くエクアが近づいてくる。
(どうにかしなくちゃ!!)
そんな思考を読んだかのように隣にいた焔ちゃんが楓に抱きついた。
届きそうだった手が離れていく。
そんな景色を見て安心する。
遠ざかっていく楓は驚いたような顔をして焔ちゃんを見ていた。
でも僕が認識できたのはそこまでだった。
一瞬にして目の前が真っ黒に塗りつぶされてしまう。
そこは誰も存在していないただの闇の真っ只中だった。
影に包み込まれて気絶していたのかどうかも分からない。
事実、今、僕は起きているのかどうかも分からないような状態だった。
「ふぅー・・これって絶対常闇黒夜だよねー・・」
一人だと分かっていたけれどそんな事を呟いてみる。
やはり返事は返ってこない。
「出れるかな・・」
構わず一人口にして右手にエクアを溜めてみる。
しかし、エクアは反応しなかった。
(エクアが使えないなんて久しぶりだなー・・・)
なんて考えながら今の状況を冷静に考える。
まず、この術は間違いなく常闇黒夜によるものだ。
僕を捕まえて閉じ込めるなんて十二家の人間か、もしくは十二家候補に選ばれている予備の家系の人間だけだろうから。
さらにその術の中で僕がエクアを操れないってことは相当強い支配下にあるエクアが使われているってことになる。
そんなことが出来るのはあいつしかいない。
それに影を使って戦うのは僕の記憶には2人しかいないから。
「まずいなー・・」
考え始めると段々焦りが出てくる。
相変わらず辺りは真っ黒で自分が本当に存在しているのかも疑わしくなるほどだ。
外の様子が知りたくても見ることも聞くことも出来ないことには何も分からない。
一番の気がかりは敵として最悪の常闇がいるということだ。
十二家の中でも圧倒的に強い常闇がいたら焔ちゃんがどんな行動をとるかも予想しにくい。
とにかく出来ることをやんなくちゃ・・・そう考えてみても今の状態では出来ることがかなり限られる。
光はその時のために黙って体の中に少しだけあるエクアに意識を向けた。
どれだけ時間が経っただろう。
今までと何も変わらない景色。
今までと何も変わらない感覚。
狂いそうな状況の中で光は未だにじっとたたずんでいた。
少しの変化も見逃さないように・・・頭が狂ってしまわないように意識しながら。
どれだけ時間が経っただろう。
異変は突然だった。
急に今まで動かなかったエクアが激しく動き出す。
それと同時に真っ暗だったはずの世界が薄れて外の様子が見えるようになった。
(!?・・・)
そして目に映った景色を見て驚愕する。
息が上手くできなくなる。
最初に光の目に飛び込んできたのはボロボロの楓だったから。
「楓!!!」
震える声で楓の名を呼ぶ。
しかし誰もその声に答えない。
外の様子は見える様になったのにそれ以外は何も変わっていなかった。
「楓!楓!!」
構わず光は叫び続ける。
相変わらず何も変わらない闇の中で叫び続ける。
それでも何も変わらない。
変わっていくのは外の景色ばかり。
今すぐ楓に駆け寄りたい。
でも、今の僕にはそんな簡単な事さえ出来ない。
悔しさで唇を噛む。
そして戦況が動いた。
常闇が楓の後ろにいきなり現れる。
そのまま常闇は楓を踏み倒して剣を振り上げた。
「止めろ!常闇!!!」
思わず目を見張り、聞こえないと分かっていても叫ぶ。
常闇は止まらない。
「うわーーー!!!!!」
光は楓を助けに行こうと体に溜めていたエクアを放出する。
光の出したエクアが常闇のエクアを押し始める。
「うわーー!!!!」
それでも常闇の術を破れる程のエクアはなかった。
(なんで・・なんで・・なんで・・・)
どれだけ光が自分を責めても何も変わらない。
そんな光を笑うかの様に常闇が笑った。
また息が詰まったのが分かる。
今度は怒りで・・・。
今まで抱いたことのない・・自分でも驚く程の怒りで息が詰まった。
それでも僕には何も出来ない・・そう思っていた瞬間、常闇のでも自分の物でもないエクアが流れ込んでくる。
《何か》が闇を切り裂いて入ってくる。
光はその《何か》を見逃さなかった。
亀裂を中心にして光のエクアを集める。
すると簡単に影が消え去った。
目の前にはこちらに刀を向けている焔ちゃん。
だけど、そんな事を気にしている暇はない。
すぐに手にエクアを溜めて常闇に光の弾を撃ち出す。
同時に地面を蹴って楓に近づいた。
常闇は予想していなかったのだろう。
避けるような行動を取らずに僕の術に直撃して吹き飛ぶ。
その間に僕は楓に駆け寄った。
「楓!楓!!」
必死で呼び掛けると楓は僕の事が見えてないみたいな反応をする。
そしてゆっくりと手を伸ばして僕の髪に触れた。
楓のそんな動作に僕はドキドキしてしまう。
だけど、そんな気持ちを邪魔するように常闇が立ち上がった。
でもそんなのは気にしない。
もう一度手を向け光の弾を撃つ。
常闇は僕の術を避けながら反撃してくる。
僕は気にせずエクアを溜めて常闇との間を遮る様に壁を作り出した。
それで簡単に常闇の術を消すことが出来る。
「ごめんね、少し待ってて・・・」
僕はそれだけ言って光を抱え上げ、飛ぶ。
着地地点は焔ちゃん達のいる場所。
着地して楓を下ろす。
「ちょっ!?楓くん!?」
すぐに焔ちゃんが驚きの声をあげる。
それで僕は少しだけ安心した・・焔ちゃんがまだ味方だと分かったから。
でも楓は焔ちゃんの方を見ずに僕の方をじっと見続けてくる。
だから少しだけ楓の頬に触れながら行ってくるね・・とだけ伝えて元の場所に戻った。
改めて常闇の顔を見る。
たったそれだけ。
たったそれだけなのに怒りが込み上げてくる。
「僕はもう手加減できないよ・・・」
それだけ言って自分のなかのリミットを外す。
エクアが体に纏わりつく様に渦巻く。
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