伝説の遊騎士

ノベルバユーザー327952

試験~臙城・風花side~

「奏ちゃんは?」
楓くんが奏ちゃんを抱えて近づいてくる。
私の隣まで来た楓くんはゆっくりと奏ちゃんを地面に寝かせた。
私は動けば痛みの走る体を何とか叱咤して少しでも奏ちゃんに近づく。
「大丈夫だよ、気絶してるだけだと思う」 
奏ちゃんを寝かせた後、楓くんが教えてくれた。
その言葉を聞いた瞬間、全身から力が抜ける。
残ったのは無理して動かした体の痛みだけだった。
ただこの状況で痛いなんか言っていられない。


「その様子ならお前も大丈夫そうだな」
楓くんの顔を見たら本当に心配してくれているというのが分かる。だから余計に心配をかけまいと笑ってみせる。
「おかげさまで平気ですよ」
もしかしたら痛みで変な笑みになってしまったかもしれない。
でも、そんなことは指摘されず楓くんは視線を黒夜の方に戻す。
黒夜はまだ起き上がろうとはしていなかった。


(・・・おかしい)
黒夜がたった一発、それも魔力付与も何もしていない一発でダウンなんてこと絶対にあり得ないことだ。
ということは何か作戦があるのかもしれない。
そんな事を考えていると銃声が鳴り響く。


驚いて音のした方を見ると、光が捕まった繭の方に楓くんが発砲していた。


撃ち出された弾は繭に当たるもすり抜ける様にして後方に飛んでいってしまう。


それを見た楓くんは悔しそうな顔をしたかと思ったらこちらに顔を向け近づいてきて耳打ちしてきた。








「分かった!」
私は楓くんからの提案を受け入れた。
早速行動に移そうと痛む体に鞭打つ様な気持ちで立ち上がる。
そして奏ちゃんを背負う様にして引きずりながら常闇の倒れているのとは逆方向・・・光の捕まっている繭のある方に後退していった。






楓くんからの提案の内容はちょっとした賭けだった。
「臙城」
「なに?」
「ちょっとした提案というかお願いなんだか・・・」
「うん」
「今から風花を連れてどっか遠くまで逃げて欲しいんだ」
「は?逃げるなんて出来るわけないじゃない!!」
「そこを何とか頼むよ!ここでムリせず一旦体制を立て直してから、お前と風花でもう一度常闇に挑む・・そうすれば倒せは出来なくても負かされることもないと思うんだ。今の状態じゃお前はおろか風花に至っては気絶してて足を引っ張るだけだ。だからお前らだけでも逃げて、作戦をしっかり用意してからもう一度挑戦してほしい」
「じゃああんたはどうすんの?」
「俺はここで光を助けられないかイロイロ試してみる!それにもし黒夜が起きたらお前らが逃げるための時間稼ぎも出来るしな!」


要約すれば今は逃げて後で弔い合戦の様なものをしてほしいというものだった。
そしてかなり賭けの部分の大きな願いだった。
まず常闇から逃げ切れるという保証がない。
楓くんには悪いが常闇との力の差は歴然だった。どんなに贔屓目ひいきめで見ても楓くんの勝ちはあり得ないだろう。
そしてもし逃げ切れたとしてもまた私たちが挑んで勝てるという保証もない。もしかしたらまた同じような状況、状態に陥るかもしれない。
おそらく楓くんは態勢を立て直して試験合格を目指してほしいと考えているのだろう。
だがやはりかなり厳しい賭けの気がした。


そんな考えがあり、最初は納得出来なかったものの、最後に見せられた楓くんの何かを堪えたような笑顔を見せられて私は提案を受け入れた。


いや、もしかしたら最初から納得していないというのは気のせいで、この提案は大歓迎だったのかもしれない・・・それが私に流れる《血》だから。










私は痛む体で何とか光のいるであろう繭の位置まで下がってきた。
だがまだ遠くに逃げなければ一息つくなど出来はしない。
まだ先に進もうと繭の隣を通り過ぎようとした瞬間、周りのエクアがいきなり濃く、重くなり体にのし掛かってくる。
私はそれに耐えきれず崩れ落ちてしまった。


気分は最悪だった。背後の常闇と楓くんのいる方のエクアが黒く禍々しい。それなりに距離はあるのにこのエクアの濃度である。頭がガンガンして体は重く、気持ち悪かった。それなのに妙に感覚は冴え渡り私の背後に死が広がり迫ってきているのがわかった。
その感覚のせいで体が余計にいうことを聞かなくなってしまう。
「あー、やっぱりムリだった」
そんな言葉が思わず出てしまった。
ふと横を見るとまだ気絶していて目を覚まさない奏ちゃんがいた。それを見て私も倒れこんでしまう。
(やっぱりダメだ・・・)
そんな考えばかり浮かんでしまう。
仰向けになり空を見ていると常闇の術で創られた繭が目に入った。
「!!」
そこでこの状況を打破できるかもしれない1つの作戦を思いついた。
ダメかもしれない。でも出来たなら・・・


私は重い体を奮い立たせ、刀を抜いた。



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