奴隷を助けたはずが奴隷になったのでタスケテください!

金丸@一般ユーザー

5ー3 アイギスの盾の角

わたしは裏稼業うらかぎょう——エリーをやめてルミエに戻る。

鼻の下を伸ばした男どもを暗殺するのは得意だった。

でも、あんなバケモノと戦うなんてもうできない。

ようやく帰宅。

ログハウスの様な部屋には、夏の熱がこもっていた。

フクロウの鳴き声が聞こえる。

魔法であかりをつけると、窓を開けて換気した。

髪を束ねてポニーテールにし、部屋着に着替える。

木箱を開ける。

凍っている酒ビンが、ひとつだけ残っていた。

魔法でビンの中身へ炭酸をいれる。

汗が、顔や首筋から流れてゆくのを感じる。

ビンを開ける。

勢いよく泡立ってゆく中身を飲む。

炭酸がノドを痛くするけど、凍ったビンから口が離れない。

口のはしから液体が少しもれたので、それをなめる。

「あーーーッ、ウマしぃ!」

突然、窓が閉まった。

何かが足にまとわりつく。

数センチほどの蛇が、足をのぼっていた。

「イヤッ、キモチワル!」

手で蛇を払う。

蛇は、その場にとぐろを巻き、尾を激しくふる。

フクロウの鳴き声が聞こえる。

さっきから何、フクロウが窓の側にでもいるの?

窓をそっと開ける。

大きく広がった瞳孔どうこう

「ヒイイィィイイッ!」

それを持つリーシェちゃんが魔法で浮かんでいた。

肩では、フクロウが首をかしげている。

なによもお、おどかさないで……。

「大きな声だしてごめんね」

「それは気にしてないよ」

「こんな遅くにどうしたの」

リーシェちゃんが、無言で窓から入ってくる。

「リーシェね、アカヤのね、およめさんなの」

いきなり何のこっちゃ……。

えっ、まって。

あの男、こんな小さな女の子に、そういう設定で生活させてるの?

…………、キモヤバッ!

リーシェちゃん、逃げてきたんだ。

「可哀想に、それはつらかったね。
 明日、被害を治安当局にまで届けましょ」

フクロウが飛んで暗さへ消えた。

彼女の首のアザが光る。

「アカヤの背中からオマエの匂いがする」

わたし年上なのに、オマエって……。

「たぶん、抱き着いたから、そのときについたかも」

「アカヤのこと好きなの?」

「嫌いだけど」

「好きでもない男に抱きつくんだ」

蛇がわたしの足にかみつく。

なにこれ、すぐにしびれて立ってられない。

彼女が——新月の様なひとみがわたしを見下す。

「この、ドロボウ猫」

彼女の首のアザが光る。

黒い女神が、その背後に現れる。

まさか、この子には、聖痕が。

「——憎悪ぞうおのアテナ、アイギスのたて

「ウソ、聖痕って——神とどう戦えっていうのよ!」

黒い女神が等身大の盾を振り上げる。

「ヒトのオトコをとるヤツは、盾の角で死ね」

わたしは、落ちてくる盾の角を見た。

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