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自称『整備士』の異世界生活

九九 零

21

トラさん!いつも読んで頂き、ありがとうございます。それと、20話の誤字指摘も感謝感激雨霰です!

分かる範囲で訂正しました。








たまに教会で『魔法の才能がない』と言われる子供がいる。確率で言えば一万人に一人の確率で居るとされていて、世間からは"無能者"と蔑まれている。

その中で極稀にいる。

教会で魔法の才能がないと判定されたのにも関わらず、魔法が使える子供が。

その子供達は俗に"悪魔憑き"などと呼ばれ、不幸を呼ぶ忌子として迫害され、忌み嫌われている。最悪の場合、邪教徒扱いされて処刑されてしまう事だってある。

俺の息子…エルもその一人。魔法の才能がない。魔力がないとまで言われたにも関わらず、杖や呪文なく指先に火を灯してみせた。

紛うことなく、それは"悪魔憑き"の証であって…驚きよりも、悔しさや憐れみが湧いて出た。

いつも予想の斜め上をいく奴だが、今回ばかりは予想外だった…。

それでも…エルは俺の大切な息子だっ!

どんな結果になろうとそれは変わらない。
例え、世間から悪魔憑きや忌子なんて呼ばれようと、俺だけはエルの味方でいてやる。それがカッコいい父親ってもんだろ!

……って言うのは後付けで、ついさっきまで頭ん中は別の事ばっかり考えてた。

魔法が使えない?魔力がない?
なのに、魔法が使える?杖も呪文もなしで?

え?なにそれ?魔法使いの夢じゃん。

羨ましーーじゃなくて、もし教会の関係者や誰かにエルが悪魔憑きだってバレたら一家諸共処刑なんてのも有り得るから、エルには悪いと思うけど…いや、本当に悪いと思ってるけど、魔法を使える事は秘密にしといて貰わなきゃならないんだ。

「な〜に一人で黄昏てるの?」

「ん?ああ、マリアナか」

いつも気配を感じさせずに現れるから、慣れちまったよ。まったく…。

「いや、なに。ちょっとな」

「えー。なになに?気になるんだけど?もしかして、神の祝福で何かあった感じ?」

「もしかして…付いてきてたのか…?」

さすがのマリアナでも神の祝福を受けてる所を覗くなんて罰当たりな事はしないだろ…。

いや、でも、マリアナだしなぁ…。

「そんなわけないでしょ?これでも私も忙しいのよ?ナルガンの代わりに書類の山を片付けたりしなきゃだし、娘達の動向をコッソリ覗き見なきゃだし、部下に指示を出さなきゃだし、こう見えて、やる事沢山あるのよ?」

えっへんと胸を張るマリアナ。
その中に必要のなさそうなモノが混ざってたけど、指摘すると後が怖いから触れないでおく。

「あ、そうそう。最近、神の祝福を受けた後の子供が攫われる事が増えてるみたいだから、ドンテも気を付けた方がいいわよ。ついこの間にも、私の可愛い可愛いレーネちゃんが攫われそうになってナルガンが独断で全兵を動かしそうになってたからねっ」

「お、おう」

なんだか、その光景が容易に想像できる。
ナルガン…普段は無口だが、怒ると怖ぇからなぁ。

「で、話を戻すけど、神の祝福はどうだったの?」

「ん?あ、ああ…どうだろうな?」

「随分と曖昧な返事ね。別に詮索とかはしないけど、そんな言い方をされると気になっちゃうなぁ〜。調べたくなっちゃうなぁ〜」

「………」

チラチラと横目で俺を見やるマリアナ。
こういう態度を取る時のコイツに変に隠し事をすると、後で本気で調べるんだよなぁ。

どうしてか、俺とナルガンだけでコッソリと行った夜の店だって、コイツにだけは知られてたし…。

「はぁ…ダメだったよ」

「ダメ?ダメって、どう言ったダメなの?」

「エルに魔法使いの素質はねぇってこったよ」

エルは教会で魔法を使えないって言われてんだ。嘘じゃねぇぞ?

「あらら。じゃあ、今は落ち込んじゃってる感じかな?」

「いや、アイツなら普段通り…あ…」

「ん?」

「いや、アイツに限ってそれは有り得ないと思うが…なぁ、マリアナ。今、エルが今なにしてるか知ってるか?」

「エル君なら今はナルガンと一緒にいるんじゃないかな?たぶん、レーネも一緒だと思うよ?」

「そ、そうか。それなら大丈夫か…」

さっきマリアナが言ってた人攫いに遭うなんて…あのエルに限って、そんな目に遭うはずがないはずだ。

なんせアイツは…親である俺が言うのもアレだが、賢い奴だ。
他の子供みたくはしゃぎ回ったり、危ない所とかに近寄ったり絶対にしない。

それにナルガンが付いてるんだ。

心配しなくても大丈夫だろう。
だが…なんだ。この胸騒ぎは…。


●●●


ガタゴトと馬車が揺れる。

馬車の形式は、箱型で、荷台の箱には小汚い布が掛けられている。

座ってるとケツが痛い。かと言って、不安定で立っていられない酷い揺れ。

やっぱり馬車は嫌いだ。

ところで、俺が今どこにいるのかと言うと…。

「……どこ、だ?」

まったく分からない。

気が付くと、ここに寝かされていた。
ついさっきまでナルガンと一緒に街の観光をしていた筈なんだけど…。

「ぅぅ…ぅん…」

ああ。そう言えばレーネも居たな。

俺の隣でレーネも寝かされている。随分と寝辛そうだ。

そりゃそうか。
なんたってここはーー牢屋なんだからな。

マナ感知で把握する限り…ん?マナ感知が壊れてる?
周囲がボヤけて感じ取れる。まるでノイズでも入ってるかのようだ。

体内のマナもあやふやな感じで上手く感じ取れないし、なにやらマナが吸い取られてるような…そうでないような…。
なんかだか、気持ち悪い感覚がする。

兎に角、分かる事は一つ。

ーーーどうやら俺は何者かに捕らえられてしまったみたいだ。


○○○


記憶を遡って、思い返す。

神の祝福を受け終えて一度屋敷に帰宅した俺は、早速とばかりに試作バイク作成に取り掛かろうとしていた。

けど、どうしてか気が乗らなくて部屋でゴロゴロとしていると、ナルガンがレーネを連れて「街を案内する」と言ってきた。

気分転換にとその提案に乗っかって、ナルガンと共に街の観光に赴く事にした。

って言っても、特にこれと言った目ぼしい建物があるわけでも売店があるわけでもないんだけどな。

この街…ラフテーナには碌な観光地がない。案内されるのは、闘技場や、上級騎士と呼ばれる騎士達のトップが住まう屋敷 (ナルガンもその一人) ばかりで、飲食店は少なく、露店などの店なんて一つもない。

徐々に観光にも飽きてきて、ボンヤリと空を眺めつつナルガンの足取りに合わせて歩いていると、突然視界一面に白煙が広がりーー気が付くと馬車に乗せられていた。

あー…うん。
これは、アレだ。そう、アレ。

状況把握に少し時間が掛かったけれど、ようやく俺がどんな状態に陥ってしまっているか理解できた。

所謂、拉致ってやつだな。

「はぁ…」

現状を理解して、思わず溜息が出てしまう。

隣でスースーと寝息を立てて寝ているレーネを見やると、首元に無骨な首輪が嵌められているのが目に付いた。

なんとなく俺自身の首に手を持っていけば、同じような物が俺の首にも嵌められているのが分かる。

レーネから視線を外して荷台の奥へと視線を移すと、そこには俺とレーネ以外にも子供達の姿がある。

全員で7人ほど。俺とレーネを合わせると9人だな。共通点は、全員が子供…見た目からして10歳ほどの年齢ばかりな事と、全員が同じ首輪を取り付けられていることと、絶望しきった表情をしている事だな。

……レーネが起きたら、さっさと逃げるか。
こんな辛気臭い所に長居したくない。

ってなわけで、レーネが起きる前に前準備でもしとこう。

早速、鉄格子に手を掛けて腕力に物を言わせて格子を曲げーーれなかった。

硬い。そりゃ鉄だからな。
いや、でも、いつもならこれぐらいは簡単にひん曲げれるはず…あ、そう言うことか。

原因は分からないけど、体内のマナの循環が止まっているんだな。だから、マナに頼った力が出ない。

……良いな、これ。

訓練に使える。どうにかしてこの原因を探って、自分でも使えるようにしたい。

そう思ってマナを不安定にしている原因を模索していると、レーネが小さな呻き声を上げながら目を覚ました。

「………」

眠そうな瞳で俺を見つめて停止するレーネ。
暫くして、視線が彷徨い、同乗者の子供達に向けられ、最後に自身の首輪の存在に気が付く。

「ぅぅぅ…っ」

そして、瞳に大粒の涙を浮かばせ始めた。
今にも泣き出してしまいそうな予感…。

さて、どうしようか…。

「…だ、大丈夫だよ」

対応に迷っていると、対面に座っていた女の子がレーネの頭に手を置いて声を掛けた。

その手は震えていて、女の子も今にも泣き出しそうなほど辛そうな顔をしている。だけど、それでも気丈に笑顔を作ってレーネの頭を撫でる。

すると、レーネは小さく頷いて泣き止んだ。

「……すごい、な」

俺には出来ない芸当だ。
素直に賞賛する。

「お前、名前、は?」

「…エーリ…です…」

そうか。鋭利な名前だな。

……冗談はさておき。

「エーリ。ここは、どこ、だ?」

「わかりません…。気が付いたらここに…」

俺と同じか。

「売られるのよ…きっと、私達は奴隷にされるのよっ!」

「…パパ…ママ…ぅぅ…」

「嫌だ。嫌だよぉ…。ウチに帰りたいよぉ…」

「クソォォッ!出せ!出せよぉ!!ここから出せーっ!!」

なんつー悲観的な奴等なんだ。
暴れ出すガキまで出る始末で、手に負えない。

「うるせーぞっ!ぶっ殺されてぇのかっ!!」

そんな声と共にガイィンッと鉄と鉄がぶつかり合う音が聞こえた。
鉄格子に向けられて剣が振られたみたいだ。

暴れていたガキは途端に大人しくなって、静かに泣き始めた。
他の子供達もビクリッと身を震わせ、静かに泣き始める。

それに吊られて、涙を堪えようと頑張っていたエーリもダムが決壊したかのように泣き始め、レーネも大きな声を上げて泣き始める。

……はぁ。なんと言うか…最悪だな。

っと思った途端、馬車が急停止して、布がめくり上げられた。
そこから覗くのは、怒りで顔を真っ赤にした男の姿。

「ちっ!」

舌打ち一つ、牢の鍵を開けて手を伸ばしてくる。

子供達がビックリした様子で奥に逃げ込んでしまい、一番手前にいた俺が引っ張られて外に投げ出された。

上手く着地して、男の股間に強烈な一撃でも加えてやろうと思ったけど…体が思い通りに動かずに地面に全身を打ち付ける。

痛い…。

「クソガキがっ!!」

「ーーガッ!?」

視界に火花が飛び散り、一瞬何が起きたのか理解できないほどの衝撃が全身に伝わる。

遅れて、蹴られたのだと分かった。

兎に角、痛い。痛すぎる…。
咄嗟に回復魔法を使おうとしたけれど、魔法が発動しない。

全力で思考を働かして現状の打開策を探るけれど、その前に次の一撃が放たれる。

「泣くんじゃねぇ!!耳障りなんだよっ!!クソがっ!!」

「ーーグッ!?ーーガハッ!?ーーウッ!?」

連続で同じ所を蹴ってきやがる。
俺は泣いてないってのにっ。

体が思考に追い付かなくて回避すらできず、蹴られるたびに俺はゴロゴロと地面を転がるしかできない。血と土で服を汚す。

痛みで涙が自然と出てくる。怒りが沸々と沸き立ち思考が濁ってくる。

クソ…。クソ…っ。クソ…っ!

怒りで我を失いそうになるのを、全力で持ち堪える。

そう、我慢だ。我慢するんだ…。

「っ!」

でも、ヤラレっぱなしってのは性に合わない。

意趣返しにと蹴り出された脚にしがみついて本気で噛み付いてやる。

「このっ!クソガキャァッ!!」

「ーーガッ…」

最後に見た光景は、激怒した男の大振りな蹴りだった。


●●●


「な、なんだって!?エルが攫われたあ!?」

「……すまない」

まさか…まさか、あのエルが…。

嘘だろ…。

「お、お前が付いていながら、どうしてだよっ!」

「………」

近場に居合わせたと自称する兵士が一歩前へ。
無言を貫くナルガンの代わりに、一礼して報告する。

「不躾ながら報告させて頂きます!人攫いは煙幕によって我々を混乱させ、その騒ぎに紛れて両名を拉致したと推測します!即座に近場の者達で周囲を入念に捜索しましたが、痕跡一つ残っていませんでした!」

…両名?

「ちょっと待て。確か、レーネちゃんも一緒に居たよな?ナルガン、もしかして…」

「……ああ…」

頭を下げたままのナルガン。その拳は血が滴るほど強く握りしめられ、体を小刻み震わせている。

ナルガンの気持ちが手に取るように伝わってくる。

ナルガン自身が付いていながら、エルだけじゃなく愛しい娘まで攫われたんだ。
悔しくて悔しくて仕方ない筈だ。

「もういい。頭を上げろよ、ナルガン」

「だが…」

「だがもクソもあるかよ。そんな事してる暇があるなら、すぐに捜しに行くべきだろうがよ。それとも、なにか?テメェは捜す気もないぐらい落ち込んでんのか?」

「そんな事はないっ!!」

ガバッと顔を上げると、俺の両肩を力強く掴んで強面な顔面をグイッと近付けてくる。
相変わらず凄い気迫だ。

分かってる。お前の気持ちはよく分かってるよ。

すぐにでも捜しに行きたかったんだろうさ。でも、俺の息子であるエルも攫われたとなっちゃ、俺に報告しなきゃならないもんな。

ああ。よく分かってるよ。

「なら、さっさと行くぞ」

ナルガンの背を叩いて気合いを入れさせる。

ああ、懐かしいな。冒険者時代を思い出す。
昔はよく落ち込んでいたナルガンの背を叩いて前に進ませたもんだ。

その時とは全く状況は異なるし、場所も時代も違うが、なんだか懐かしく感じる。

そんな事を思えるほど、俺はそこまで切羽詰まってなくて心に余裕がある。

確信はないんだが、エルならなんとかするんじゃないかって心のどこかで思ってしまっている俺がいるんだ。

それによーーなぁ、エル。お前なら、こんな状態になっても仏頂面を浮かべたまま一瞬で解決しちまうんだろ?


●●●


「………」

眼が覚めると、鉄格子が見えた。

どうやら、俺はまだ生きてるみたいだ。
そして、まだ牢の中にいるみたいだ。

「ーーっつ!」

起き上がろうとすると全身が悲鳴を上げて、激痛に身をよじる。

「ごめんなさい…」

声が聞こえて振り返ってみれば、レーネが俺の側でションボリとしていた。
周りの子供達もお通夜のような暗い顔だ。

みんなの表情が暗い理由は攫われてしまったからだろうけど、レーネだけは俺の身を案じてくれているみたいだ。

将来は優しい子に育ちそうだな。

「だい…ぶ、だ」

大丈夫だ。大丈夫…。

そう自分に言い聞かせながら、全身を襲う痛みに抗って体を起こし、近くの鉄格子の壁に背を預ける。

未だに不安と心配が入り混じった顔をするレーネの頭に手を置いて、もう一度「大丈夫だ」と言ってやる。
それでもレーネは心配そうな顔で俺を見つめてくる。

大丈夫だって言ってんのに…。

「…ゲホッ、ゲホッ…」

あー…やべー。
やっぱ、全然大丈夫じゃないな。これ。

咳したら血反吐が出た。

クソ痛ぇし…。
肋骨折れたか?兎に角、早いところ回復魔法で治さなきゃ不味いかもしれない。

もう、なりふり構っていられないな…。

「……少し、寝る」

打開策を考えるか…。


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