凡人勇者の異世界英雄譚Ⅱ 〜転移したら無敵になってました〜

雨猫

Ep2/act.2 総団長バルクド・ガロン

シンはゴホンと姿勢を立て直した。

「シルド・ギルくん。この方が魔法騎士団総団長にして、次期大賢者に最も近い男と言われている、バルクド・ガロンさんだよ」

「さっきはすまなかったね。私がバルクド・ガロンだ。バンさんが育てた子か、懐かしいね」

「懐かしい?」

「ああ、私もバンさんに世話になったことがあるんだ。大賢者になる前から弟子を取らない主義だったあの人に稽古を付けてもらうには一苦労だったよ」

そうか、大賢者であるバンの爺さんはやっぱり世界一強いと言っても過言ではないのか。

「と言うか、バルクドってどっかで聞いたことあるな…」

「ああ、バルクドはこの世界の名前だからね」

「総団長のバルクドの祖先は、この世界を創り上げた一族なんだ」

「と言っても別に凄くはない。何人も何人も子供を産んでバラバラになっていくうちに、たまたま私の家系が受け継いできただけだ」

なんとなく壮大なことだけ理解できた。
王族の家系は魔力値が高いのと同じように、偉人の血族はさぞお強いんだろう。

ある程度話を済ませ俺は紙を記入した。
名前や出身、魔法だったりの記述欄がある。
ここで俺は以前から考えていた自分の魔法(嘘)を書き上げた。



名前 : シルド・ギル 
年齢 : 24歳
出身 : アルフォア国
魔法 : 風魔法



風魔法と偽ればなんでも応用できるのだ。
移動が早いのも風魔法で体を押し出してるものとすればいいし、敵を吹っ飛ばすのも風の衝撃波とすれば辻褄が合う。
無理はあるが、攻撃をくらわないのも直前で風を起こして軌道を変えているとかって言えば通じそうな気がする。

我ながら天才だと思った。

「書き終えたかな?そしたら次は、こちらの魔法道具を腕に巻きつけてくれ」

俺は言われたままに腕時計の形状の魔法道具を腕に巻きつけた。

「そしたらここのスイッチを押して目を閉じるんだ。自分の今のステータス、力の強さだったり魔力値が数値化して脳内に表示される」

魔法道具の中心にあったスイッチを押して俺は目を閉じた。



攻撃値 : 999999
防衛値 : 999999
魔力値 : 0
総合値 : エラー



ん?なんだこれ?カンスト?
俺はここに来たばかりの頃、爺さんに言われたことを思い出していた。

「あの、普通ってどんくらいなんすか?」

「普通かー。人によって大きく変わるから分からないけど、入団者の平均値は攻撃値3000、防衛値2000、魔力値4000で総合値9000ってところかな」

俺は自分の顔が青ざめるのが分かった。
ああ、やっぱりおかしいんだ…俺…。

「いくつだったんだい?」

「え、あ、大体平均くらいっすね」

こんくらいの誤魔化ししか出来なかった。

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