凡人勇者の異世界英雄譚Ⅱ 〜転移したら無敵になってました〜
Ep.1/act.12 優しい青年
ケンドラー家から義賊を捕まえるよう頼まれてから早一週間が経過していた。
しかし、一向に足取りは掴めなかった。
と言うよりも被害すらなかったのだ。
そして俺はと言うと…。
「ああ…腹減って死にそうだ…」
昨日の晩から何も食べていない。
理由はいたって簡単だ。爺さんから「これだけあれば足りるじゃろ」と貰ってる生活費用を街でたまたま見つけたライダー変身セットに使ってしまったからだ。
そう、俺はそれなりに仮○ライダーオタクなのだ。この世界にも似たようなライダーがいて、つい浮かれて衝動買いしたのだ。
あれからリオンも一緒に住むようになったのだが、昨日から依頼とやらで帰って来てない。
「アルスに飯おごってもらおうかな…貴族なら一人に奢るくらいわけないだろ…」
とも思ったが、なんか変なプライドが邪魔して実行には移せなかった。
他の知り合いは王女様だが…流石に「飯奢ってくれ」なんで会いに行ったら門番に引っ捕らえられそうだからやめた。
家にいても腹の音は収まらないから、俺は適当に街へ気晴らしに出た。
休日の街は子連れが多く賑わっていた。
何もすることのない俺は、お母さんに買ってもらったであろうお菓子を食べ回す子供を物欲しそうに見ることしか出来なかった。
「よう、何してるんだ?」
ふと横を見ると、声の主であろう見知らぬ男性がニヤケ顔で立っていた。
「隣座ってもいいかい?」
俺は黙って頷いた。
「君はもしかして…今暇でしょ?」
「ああ、そうだよ」
見れば分かるだろ、と言い返したくなったが、気のいい人そうなのでやめた。
「僕も暇でね。この街は綺麗だよね」
どこか紳士的で、優しそうな男だった。
ぐぅ〜〜〜。
少し忘れかけていた腹の音が鳴った。
俺がどこか不服そうにしていると、その男は自分のぶら下げているカバンを漁り始めた。
「賞味期限心配だけど、よかったら食べる?」
差し出してきたのは少し乱暴に包まれたパンだった。
「え、いいの?」
「ああ、どうぞ」
そんな言葉を交わし、俺はそのパンに懸命にかぶりついた。
「どうして見ず知らずの俺に優しくしてくれるんだ。これあんたの飯だろ」
男は空を見上げながら答えた。
「俺は下民なんだ。ここの王都とは少し離れた場所で暮らしていてね。たまにこうして王都に稼ぎに来ているんだ」
「下民か。俺は括りで言えば平民なのかな」
俺はふとアルスに言われたことを思い出した。
「平民じゃ分からないかもね。下民は少し前まで酷い差別にあっていたんだ。今もその名残は残っていてね。だから、こうして困っている人を見ると手を差し伸べたくなるんだ」
「いい奴だな」
俺は一言だけ男に返した。
今までの人生、俺は自分に降りかかるであろう面倒事を全て除外して生きてきた。
重い話や悩みを聞くのは心底嫌だった。
「さあて、そろそろ仕事に戻ろうかな」
「なんの仕事してるんだ?」
「下民が王都でやる仕事、気になるかい?」
「気になる程でもないけど」
「ふふ、正直だね。俺は身体強化系の魔法を使えてね、俺より足の速い人を見たことがないんだ。それを活かして、運び屋の仕事をしているよ」
少し含みのある言い方で、俺はケンドラー家に言われたことを思い出していた。
「そういや兄ちゃん、俺ここ最近事件になってる『貴族を狙う義賊』っての探してるんだけど、なんか心当たりない?」
男はジロッと横目に見て、笑いながら答えた。
「残念ながら分からないな」
「そうか、残念だ。最後に名前聞かせてくれよ」
「ああ、俺はブロード・テイラー。次に会えたら、また話をしようか」
「俺はシルド・ギル。そうだな。あんたみたいないい奴もいるんだな。また会おうな」
そう言うと、彼は目に見えない速さで消えていった。
「へー、速いな」
こんな感想しか出てこなかった。
しかし、一向に足取りは掴めなかった。
と言うよりも被害すらなかったのだ。
そして俺はと言うと…。
「ああ…腹減って死にそうだ…」
昨日の晩から何も食べていない。
理由はいたって簡単だ。爺さんから「これだけあれば足りるじゃろ」と貰ってる生活費用を街でたまたま見つけたライダー変身セットに使ってしまったからだ。
そう、俺はそれなりに仮○ライダーオタクなのだ。この世界にも似たようなライダーがいて、つい浮かれて衝動買いしたのだ。
あれからリオンも一緒に住むようになったのだが、昨日から依頼とやらで帰って来てない。
「アルスに飯おごってもらおうかな…貴族なら一人に奢るくらいわけないだろ…」
とも思ったが、なんか変なプライドが邪魔して実行には移せなかった。
他の知り合いは王女様だが…流石に「飯奢ってくれ」なんで会いに行ったら門番に引っ捕らえられそうだからやめた。
家にいても腹の音は収まらないから、俺は適当に街へ気晴らしに出た。
休日の街は子連れが多く賑わっていた。
何もすることのない俺は、お母さんに買ってもらったであろうお菓子を食べ回す子供を物欲しそうに見ることしか出来なかった。
「よう、何してるんだ?」
ふと横を見ると、声の主であろう見知らぬ男性がニヤケ顔で立っていた。
「隣座ってもいいかい?」
俺は黙って頷いた。
「君はもしかして…今暇でしょ?」
「ああ、そうだよ」
見れば分かるだろ、と言い返したくなったが、気のいい人そうなのでやめた。
「僕も暇でね。この街は綺麗だよね」
どこか紳士的で、優しそうな男だった。
ぐぅ〜〜〜。
少し忘れかけていた腹の音が鳴った。
俺がどこか不服そうにしていると、その男は自分のぶら下げているカバンを漁り始めた。
「賞味期限心配だけど、よかったら食べる?」
差し出してきたのは少し乱暴に包まれたパンだった。
「え、いいの?」
「ああ、どうぞ」
そんな言葉を交わし、俺はそのパンに懸命にかぶりついた。
「どうして見ず知らずの俺に優しくしてくれるんだ。これあんたの飯だろ」
男は空を見上げながら答えた。
「俺は下民なんだ。ここの王都とは少し離れた場所で暮らしていてね。たまにこうして王都に稼ぎに来ているんだ」
「下民か。俺は括りで言えば平民なのかな」
俺はふとアルスに言われたことを思い出した。
「平民じゃ分からないかもね。下民は少し前まで酷い差別にあっていたんだ。今もその名残は残っていてね。だから、こうして困っている人を見ると手を差し伸べたくなるんだ」
「いい奴だな」
俺は一言だけ男に返した。
今までの人生、俺は自分に降りかかるであろう面倒事を全て除外して生きてきた。
重い話や悩みを聞くのは心底嫌だった。
「さあて、そろそろ仕事に戻ろうかな」
「なんの仕事してるんだ?」
「下民が王都でやる仕事、気になるかい?」
「気になる程でもないけど」
「ふふ、正直だね。俺は身体強化系の魔法を使えてね、俺より足の速い人を見たことがないんだ。それを活かして、運び屋の仕事をしているよ」
少し含みのある言い方で、俺はケンドラー家に言われたことを思い出していた。
「そういや兄ちゃん、俺ここ最近事件になってる『貴族を狙う義賊』っての探してるんだけど、なんか心当たりない?」
男はジロッと横目に見て、笑いながら答えた。
「残念ながら分からないな」
「そうか、残念だ。最後に名前聞かせてくれよ」
「ああ、俺はブロード・テイラー。次に会えたら、また話をしようか」
「俺はシルド・ギル。そうだな。あんたみたいないい奴もいるんだな。また会おうな」
そう言うと、彼は目に見えない速さで消えていった。
「へー、速いな」
こんな感想しか出てこなかった。
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