凡人勇者の異世界英雄譚Ⅱ 〜転移したら無敵になってました〜

雨猫

Ep1/act.3 魔力レベル0

小屋へと戻った俺は、爺さんがそそくさと用意した魔法道具とやらで魔力を調べることになった。

「さて、瑠夏は楽にしていてくれ」

おう…と戸惑いながらも椅子に腰をかけた。

すると、爺さんは魔法道具を覗き込み、俺の体をジロジロと見ていった。

「んん…?なんじゃこれは…」

爺さんは顔が真っ青になっている。

「な、なんだよ」

一度呼吸をし、俺を見つめてこう告げた。

「お主には、魔力が微塵もないんじゃ」

「は?」

嫌な予感が当たってしまった。
まったく、俺のワクワクを返して欲しい。

「こんな人間は見たことがない。異世界人だからか?赤ん坊にも10程度の魔力はあるというのに…」

「おいおい、それは俺を貶してんのか?はっ、残念ながら俺は勇者様でも英雄くんでもなく、魔法のない地球生まれ地球育ちのフリーターだよ!」

拗ねた俺を見て爺さんは訂正した。

「いや、そうじゃないんじゃ。確かに魔力が0も驚きなんじゃが、だとしたらさっきわしの魔法をかき消したあの力の説明がつかないんじゃよ」

「あー、あれか」

俺は召喚されてすぐにこの大賢者を名乗る爺さんから魔法を食らわされた。
しかし、なんの痛みもなくその魔法は俺に触れた途端に消え去ったのだ。

「はっ、まさか…」

何かを閃いた爺さんは、魔法道具のチャンネルを切り替えて再び覗き込んだ。

「やはりそうじゃったか…」

「何か説明つく理由でも見つかったか?」

少し諦めながらも放った俺の言葉をかき消すように爺さんは述べた。

「お主、体が強すぎるんじゃ」

「体が強すぎる?」

「お主はさっき魔法を魔法でかき消したんじゃない。守護魔法も何も使わず、肉身にそれを受け、ダメージにならなかっただけなんじゃ」

なんじゃそりゃ…。
あまりに非現実的すぎて理解しがたい。

「試しに外で思い切り拳を振ってみろ」

俺は言われたままに外へ出た。

いやいやまさかな…。
確かに爺さんの魔法が食らわなかったことは不思議だが、だからって強すぎる体?
非現実が過ぎるだろ。

どうせ俺のへにゃちょこパンチが空を切って終わりだろ。

そう思いながらボクシングポーズを見様見真似で構え、何もなさそうな森へ繰り出した。

すると、凄まじい轟音と共に爆風が吹き荒れ、僅か一瞬で前方の木々が消え去った。

「はえ…?」

「こういうことじゃ」

こういうことって言われても…。
理解し切れない俺を差し置いて、爺さんは一人でウキウキした顔をしていた。

こんな力、どう扱えばいいんだよ…。

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コメント

  • 鳳 鷹弥

    初めまして。
    まだまだ読み始めですが、
    スタートの、段階での作品構成力に
    驚かされました。

    私なんかがですが、
    参考に読ませて頂きます!

    ついでですが、よかったら私の作品もよろしくお願いします。

    0
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