凡人勇者の異世界英雄譚Ⅱ 〜転移したら無敵になってました〜

雨猫

Ep1/act.2 魔法の世界

かくして、俺は異世界に来たわけだが…。

「お主の元いた世界はどんなとこじゃ?」

爺さんは異世界人の俺に興味津々だった。

「んー、パッと見たくらいだけどこんな木々で覆われた自然って世界じゃない。もっと電気を使った科学的な世界だ」

「ほう…カガクとな。聞いたことない魔法じゃ」

「いや、科学は魔法じゃなくて理論的に地上にある物を加工して…って説明してもわかんないだろ」

「うむ。わからぬ」

と言った具合にお互いが分からないことだらけで話が噛み合わなかった。
そんなことよりも、俺は今後この世界で生きることになるなら、この世界のことを聞いた。

爺さん曰く、この世界は科学とは真逆で、人間の力、魔法を糧として暮らしている。
家事は水魔法、火起こしは炎魔法、家は土魔法と言った具合だ。

ある程度話したところで、爺さんは「さて」と腰を上げた。

「お主に魔法を教えようかの」

唐突すぎたが、大賢者ともあろうお方が異世界人を召喚しといて何もしないわけもない。
それよりも、フリーターで同じ日常を繰り返すだけの俺にとって、さっきのような魔法が使えるようになると言うのは、ワクワクして仕方がないことだった。

俺は黙って爺さんに従った。



「よし、この辺でいいじゃろ」

小屋から出て軽く歩いた森の中のひらけたところで爺さんは立ち止まった。

「魔法というのはな、我々人間や、動物や虫にも、分け隔てなく存在する魔力を使って、イメージを具現化するものなんじゃ」

イメージを具現化…?

「そうじゃ。人によって使える強力な属性は限られているのじゃが、簡単な生活程度の属性魔力は誰にでも宿っておる」

「要は、戦いで使えるような強い魔法は、人によって属性があるけど、生活程度の弱い魔法であれば、どんな属性でも誰にでも扱えるってことか?」

「そういうことじゃ。だから瑠夏よ。まずは生活程度の魔法を使ってみるのじゃ」

理屈はわかった。しかし、どんなに想像しても、今までおはかけ離れすぎていて戸惑った。

「まあ、とりあえずやるか」

俺は右手を上げ、炎を右手に宿す、そんなイメージをした。

が、何も起こらなかった。

「爺さん、何をイメージしても何も起こらねえんだけど」

「おかしいのう。イメージさえ出来れば微弱でも反応はあるはずじゃが」

おいおい、ここに来て異世界人は魔法が使えないなんてことはないよな?

「一度小屋へ戻ろう。もしかしたらお主は異世界人だから少し変わった魔力なのかもしれん。魔法道具で確認してからにしよう」

俺はなんとなく嫌な想像をしながら小屋へ戻った。

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