主役の勇者が最終的に死ぬ運命なんて嫌だ
#12 暁の城と裏切り②
「ヤナ、その裏切り者ってのを解決する前に、コインを貯めて装備を買わないか?」
俺は街を歩きながら、ヤナに言った。
早くこのボロくて古臭い服を着替えたくてたまらない。
ヤナは察したように頷いて、また歩き出した。買うと言ったはいいが、今の所持金は0円。実際に装備を買えるのもまだまだ先だ。
「デモ、王が、依頼こなせば装備と武器くれるッテ、言ってタよ…?」
今になってナシュリーのカタコトな話し方が可愛らしきく思えた。表情はずっと真顔のままで、笑った顔や悲しそうな顔は見たことないけど…
「そうだけど…装備と名のつくものじゃなくてもいいから、普通の服が欲しいっていか…」
しまった、と心の中で叫んだ。
ここはゲームの中の世界だ。
装備イコール普段着る服、つまり、いつでも戦闘体勢のままだ。
そりゃあそうだろう。
眠たくならないのが何よりの証拠だ。
寝るために寝巻きに着替えることはない。
思った通り、フェラルフもナシュリーもポカンとした不思議そうな顔で俺を見てる。
「ハルト、此処では、その文化はそんな文化は存在しない…」
ヤナがこそっと、そう言った。
まただ。まだヤナはそうやって俺を困らせる。悩ませる。
ヤナはなんなんだ?このおかしなゲームの登場人物なんじゃないのか?
此処がゲームだって、分かってるんなら
どうして………………
「ハルト様っ!あの女性のクエストをやったらどうですかー?」
フェラルフが指をさした先には、兵士の格好をした凛々しい女性がいた。
たしかに、クエストマークが表示されていた。
「あの〜…どうしたんですか?」
「これはこれは…!勇者様、お目にかかれて光栄です」
そう言うと、クエストの一覧が表示された。
①王の食事の準備  報酬110G
②兵士の部屋掃除  報酬 40G
俺は迷わず①を選んだ。だって、一気にコインが集まったら楽だし、それに、早く王の依頼をこなしたい。
俺たちはにこにこした兵士2人に食事の準備をする会場へ案内された。
その時、王が来るから危険物は預かっておくとのことで、俺の短剣、フェラルフのボクサー手袋、ナシュリーの銃を渡した。
4人で食事を運ぶと、すぐに仕事は終わった。
「終わりましたけど…」
そう言って近づいたその時だった。
依頼を受けた女性の兵士が俺から預かっている短剣で、しゅっと音を立てて攻撃してきた。
俺は危機一髪、反射神経で後ろに下がり避けられた。兵士は血走った怪しい目をしている。
するともう1人監視用にいた男の兵士がフェラルフのボクサー手袋をつけて睨んできた。
どうやら裏切り者にはめられたらしいな。
「戦うしかない…」
何も武器がない状態でだが、立ち向かうしか選択肢はなかった。
俺の後ろで、ヤナが怯えて震えていた。
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