主役の勇者が最終的に死ぬ運命なんて嫌だ

花波真珠

#1 RPGゲーム「勇者が死んだ」

今月新発売の、「勇者が死んだ」。
急遽、販売決定いたしました!

新感覚RPGゲーム、
是非お買い求めください!!




俺は興味をそそったゲームの題名が記憶に残り、インターネットですぐさま注文した。



そんなことがあったのは3ヶ月前。
さっき、やっとゲームソフトが届いたのだ。
もう待ちくたびれた。
やっとゲームができるじゃないか。
俺は早速ゲームを開いた。

『貴方はこの世界で冒険しますか』

表示された文が質問にもかかわらず、回答の欄には「YES」しか書かれていない。
俺は呆れながらも、YESを選択した。

『主人公の名前を入力してください』

特に思いつかなかったので、
「ハルト」にした。山旗春翔やまはたはると、俺の名前だ。
名前を入力し終わると、画面が眩しく光りだした。
眩しくて、とっさに目を閉じた。

目を閉じている間、なぜか浮いているような、ああ、ブランコに乗りながら目を閉じているような感覚があった。





目を閉じていて感じた眩しさは、だんだんと和らいできた。
俺はゆっくり目を開いた。

「どこだ、ここ」

俺は天気のいい空の下、芝生に座っていた。
さっきまで散らかった家に座っていたのに。

自分を見ると、短剣のようなものを身につけて、古臭い服を着ていた。
そして、右上に常に変な表示がされている。
まるでゲームの中の世界に入ったみたいだ。


俺は自分で感じたことにハッとした。
もし、あのゲームの中に俺が入ってしまったなら、最初にあった質問からすると、俺は主人公。
つまり、俺は死ぬ運命にあるということになる。
そんなの嫌だ、嫌に決まってる。

そんなファンタジーなことが起こるはずない、と思いつつも、ほんとにゲームの世界に入ってしまったのではという不安の気持ちがある。

俺は混乱して足が震え、立ち上がることができなかった。


「勇者様、勇者様大丈夫かの?」

目の前に白くて長い髪の、可愛い女の子が立っていた。小学2年生くらいの見た目に見える。

「パン、、、食べるか?」


ふわふわのパンを渡された。
あいにく腹は減ってない。
背中にかけていた袋に、とりあえず入れた。

「君、だれ?」
「わたくしは、勇者様にお供する魔法使いの、ヤナじゃ!」


アニメで見るようなおじいちゃんの喋り方なわりに、見た目は妖精のように綺麗で可愛らしいのだ。なんだかむず痒い気分だった。


「勇者様の使命は、大魔王リクスを倒すことなのじゃ!!」
「…強引すぎ。会っていきなり大魔王倒すとか」


やっぱりここはゲームの世界なのだろうか。
勇者に魔法使いって、ちょっとベタすぎる気もするし、進め方も雑だけど……


「しょうがないのじゃ。ゲーム此処のルールなのじゃから」


ヤナと名乗る魔法使いは、引きつった笑顔でそう言うと俺に村の説明をすると言って話し始めた。



もしかして、こいつも俺みたいにゲームの中に入ってしまった人間だったのか?
違うとしたら、今の言葉はどういう意味だったんだろう……。

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