ジーナと言う寵姫

佐野元

かくして男は

「ミネバ国統治者の御名において言い渡す!」



精算というものは人生において必ずしなければいけないものだと悟った。



「禁術に触れた第三王子ジークハート・ミネバを!」



何故なら今俺は。



「王権剥奪上、離宮に生涯幽閉の身とする!」



調子に乗りすぎたツケを取り立てされているからだ。



















人間頭がおかしいと思われるかもしれないが時としてそれが案外真実な事がある。

そんな稀な件に俺、ジークハート・ミネバは該当する。

その理由は簡単だ。単に”前世の記憶”が存在するからだ。

これを聞いたやつは10割俺を頭がおかしいやつと断ずるだろう。

正直俺自身もこの世に生を受けて19年、未だに自身の正気を疑っている。



いつ頃だろうか、物心がついた頃には既に自身の前世をすんなり受け入れていた。

どうやら前世の俺は女だったらしい。それがなんの因果か男として生まれ落ちた。

だからと言って何かに困ると言う事もなく(ありがたい事に女装に目覚めると言うこともなく!)綴がなく男として成長していった。

一度どうして前世と性別が違うのに乖離状態が無いのか考えてみたが前世の自分が女として終わっている上に仕事に生きる様なタイプだったようだと言うことくらいしか推測することが出来なかった。なんつー女だ過去の自分は。



さて、この国には【ギフト】と呼ばれる神からの恩恵が与えられる。

大なり小なりこの国の民ならば得る事の出来る才の発露、と言った所だろうか。

ちなみに他国からの移民は持てないのでは?と思われるかもしれないがそんなことは全く無く、教会できちんとした手続きと洗礼さえ受ければ翌日には得られるようだ。

他国に籍を移す場合は同様に済ませればギフトの回収が行われる。

……だいぶ公務員的な神だと思ったのは口には出さない方が良いだろう。

……話を戻そう。何故ギフトの話をしたのかと言えば俺のギフトについてだ。

俺のギフトは【叡智】、つまり膨大な知識だ。卵が先か鶏が先か、なんてまだるっこしい事は抜きにしても恐らくは俺の前世の知識に絡めた物だとわかる。

前世の俺はただの平民だったので様々な便利な品を知り、扱いつつもその仕組や構造等には全くの無知だった。

しかし、驚く事にこの【叡智】のギフトは脳裏でその名を唱えると外観や扱い方、あまつさえ仕組みや構造なんかを表示してくれるのだ。ついでに図解付きで至れり尽くせりだ。

お陰で俺は物を作ると言う事にハマった。それはもう前世の知識をフル稼働でご飯を抜きがちになるくらいだった。

その結果として、顔の作りは良いが痩せぎすの髪の毛がボサボサのド近眼な陰キャ眼鏡男の完成だ。



そう、全体はどうであれ俺の顔はめちゃくちゃ良いのである。

王族と言う血筋だからか俺の顔は前世の俺が見ればすっ転ぶくらいには顔が良い。

いや、厳密に言えば俺だけでなく『兄弟』全員の顔が良いのだ。



そもそも俺には兄弟が上と下を含めて四人居る。五人兄弟だ。

しかもご丁寧に俺達の種族はほぼバラバラだった。

まず第一王子。正妃の息子であり、この国の王太子。名前をアルトラン・ミネバと言う。種族は人間だ。

完璧と言う言葉を体現したような人間でどんな時でも一分の隙も見せない人だ。

ちゃらんぽらんな引きこもりの人間には些か、いや大分眩しすぎる存在だが俺は彼を尊敬している。

アルトランも俺を見掛けるたびに心配なのだろうかやたら食べ物を与えてくるのでまぁそれなりに兄弟の情をくれていると思う。



次に第二王子。第一側室の方を母に持っている。名前をリベルト・ミネバと言う。種族は獣人。

アルトランとはまた違う完璧を体現した人間で、アルトランが『全て』において完璧とするならリベルトは『騎士』と言うものに対して完璧な人だ。

卓越した剣術はもちろん、仕草やその在り方全てが『騎士の頂点』と褒め称えられてもおかしくない。

しかもリベルトは虎獣人を母に持つ為か自身も虎獣人の血を濃く継いでいるので体力、持久力共に並の人間を圧倒している。

快活な性格の為、引きこもりで体力が糸くず並の俺を無理やり引っ張り出し訓練にも強制的に混ぜられる事も少なくない。

お陰である程度護身用に剣技は学べたし、ギリギリ人間としての営みを送る事が出来ているので彼にも頭が上がらない。



次に第四王子。第三側室の方を母に持つ。名前をテミル・ミネバと言う。種族はハーフエルフだ。

人よりは鋭く、エルフよりは丸みがある耳が特徴だ。

人外の美と言えばエルフ、と言うのが思いつきやすいがまさしくそれでテミルは第三側室の方の美貌を男として余すことなく受け継いだようだ。

音楽を愛でる事を何よりも愛しているテミルは最近成人したばかり(この国では16歳が成人とされている)だが、立派に宮廷楽団のまとめ役として働いているようだ。

穏やかな性格で普段はこちらを年下ながら気にかけてくれるのでお礼がてらにギフトを使って小型のジュークボックスと何枚かのレコードをプレゼントしてやると子供のようにはしゃいで喜んでくれた。あそこまで喜んでくれるならいつかまたレコードをプレゼントしてもいいかもしれない。



次に第五王子。第四側室の方を母に持つ。名前をラスティ・ミネバ。種族はハーフヴァンプ。

こちらもエルフ同様人外の美で連想されがちな上、テミル同様ラスティも第四側室の方の美貌を正しく引き継いでいた。

ハーフだとしても曲がりなりにもヴァンプと言う種族性故か、日が落ちるまでのラスティは非常に眠たがりだった。ラスティは現在15歳で来年成人を迎えるが、普段眠気を誤魔化すように目を擦る仕草をよくする為、ともすれば年齢より些か幼い印象を感じる。

行動も幼子のそれで、稀に俺の部屋に来たかと思えば俺を抱き枕代わりにしてそのまま誰かが起こすか夜が来るまで起きる事がないのだ。

そうすると俺は自分のやりたい作業を何も出来なくなってしまうので諦めて一緒に寝る事にしている。嗜めるのは簡単だがこの時間はきっとラスティが成人すればすぐに失くなってしまうだろうとわかっているし弟が可愛いので不問にしている。

「ジーナと言う寵姫」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「恋愛」の人気作品

コメント

コメントを書く