日常は崩れさり少年はあの日を想う
捌
「うらあああああっ!」
 ヤギ人間に拳を叩きつける。
 感触は鋼鉄。
「いったあああああっ」
「そりゃそうでしょお兄ちゃん!そいつコンクリもぐもぐ食えるようなやつなんだよ!?」
「それもそうか!」
 日向は奴の背後に回り込み、脚払いを掛け、脛を抑えてピョンピョン跳んでいる。どうやら目測を誤って脛を奴の鋼鉄のような皮膚に直撃させたらしい。絶対痛い。
「おいおい、これマジでダメージ通んねえな!」
「腐っても...反逆者...かっ!」
 脛の痛みを我慢して日向がヤギ人間に飛び蹴りをかます。
『うおっ!イテぇなてめえ!』
「がっ」
 僕の視界の隅で日向が宙を飛ぶ。
「日向っ!?」
「げほっ...私は大丈夫!お兄ちゃん、関節だ!」
 関節...関節か!?
 なるほど、そういうことか!
「ふっ!」
『...ンなっ!?どこイきやがったてめえ!?』
 ヤギ人間の懐に潜り込むと、柔らかく曲げられた膝の裏に、回し蹴りをかました。
『ガッ』
「うっし!通った!」
普段の自分からは考えられないくらい頭が冴えている。体も軽い。
 不思議だが、しかし。
「今ならお前だって倒せるっ!」
『ナめんな、ザコがあっ!』
 超強烈な足払い。たまらず尻餅を付いてしまう。そこへ拳が飛んできて、
「はい、お待たせぇぇぇぇっ!」
 ヤギ人間の左膝裏に日向の膝蹴りが突き刺さった。
『グアあっ!?』
「私を忘れんな!」
「タイミングバッチリすぎるだろ!マジでありがとう!」
「お兄ちゃん、愛してるっていってくれていいんだぜ!?」
「あ、それはないわ」
「酷い!」
『おマエらやるキあんのか!?』
 ヤギ人間が拳をコンクリの地面に叩きつける。日向はそれを予測したように跳んでいたが、僕は気付かずにモロにコンクリの破片を食らう。
「痛たたたたた」
「それ読めたでしょ!?」
『モラったぁ!!』
 ヤギ人間は拳をコンパクトに打ち出す。それは僕の腹に吸い込まれて、衝撃を放った。
「がふがっ...ぐがぁっ!!」
「お兄ちゃん!?」
 勢いを殺しきれず、壁にめり込む。
 
『ヨソミしてんなぁっ!!』
「っ!?...かはっ!」
 僕に気を取られ、視線を切った日向にヤギ人間の拳が襲いかかる。僕と同じ軌道を描いて僕の腹に突き刺さる。
「あがあっ!?」
「うっ...ってお兄ちゃん大丈夫!?」
 これが大丈夫に見えるのだろうか。
 素人でもわかる、この内蔵の傷つき。皮膚には切り傷、打撲跡。腹部には大きなアザが出来ているだろう。
 しかし、それは日向も同じなのだ。僕だけじゃない。
『おん?もうオわりか?』
「...お、お前は終わりならどうするんだ?」
『ナニキいてるのかワからねえけど、とりあえずコロすぞ?』
 これはアウト。
 戦って死ぬか、諦めて死ぬか。dead or die、みんな死ぬしかないじゃない。
 でも、残念ながら諦めるわけにはいかない。
「...なら、止めるしか、ねえじゃんか」
『おん?まだやるのか?』
「「たりめー」」
 横を向くと、日向が膝をついて立ち上がっていた。日向はこちらの視線に気づくと、ニヤリとした。
「何よお兄ちゃん。私も一緒に戦うよ」
「...よく出来た妹だわ」
「褒めて讃えよ」
「はいはいすごいねー」
「終わったらハンバーグ2倍ね」
「...じゃあもっと買わないとな」
まずは。
「「こいつをぶっ飛ばすッ!!!」」
 さあ、ここが正念場。
 この街の命運なんて大層なものを押し付けられて、なぜだと思わない自分はとっくにおかしいのだろう。でも、それはそれ、これはこれだ。
『もっとタタカおうぜぇ!!』
「ああ、これで終わりにしよう!!」
 これが、僕達の、最初の世界救済になる。
 それを知らない僕の瞳は、金色に染まっていた。
to be continued......
 ヤギ人間に拳を叩きつける。
 感触は鋼鉄。
「いったあああああっ」
「そりゃそうでしょお兄ちゃん!そいつコンクリもぐもぐ食えるようなやつなんだよ!?」
「それもそうか!」
 日向は奴の背後に回り込み、脚払いを掛け、脛を抑えてピョンピョン跳んでいる。どうやら目測を誤って脛を奴の鋼鉄のような皮膚に直撃させたらしい。絶対痛い。
「おいおい、これマジでダメージ通んねえな!」
「腐っても...反逆者...かっ!」
 脛の痛みを我慢して日向がヤギ人間に飛び蹴りをかます。
『うおっ!イテぇなてめえ!』
「がっ」
 僕の視界の隅で日向が宙を飛ぶ。
「日向っ!?」
「げほっ...私は大丈夫!お兄ちゃん、関節だ!」
 関節...関節か!?
 なるほど、そういうことか!
「ふっ!」
『...ンなっ!?どこイきやがったてめえ!?』
 ヤギ人間の懐に潜り込むと、柔らかく曲げられた膝の裏に、回し蹴りをかました。
『ガッ』
「うっし!通った!」
普段の自分からは考えられないくらい頭が冴えている。体も軽い。
 不思議だが、しかし。
「今ならお前だって倒せるっ!」
『ナめんな、ザコがあっ!』
 超強烈な足払い。たまらず尻餅を付いてしまう。そこへ拳が飛んできて、
「はい、お待たせぇぇぇぇっ!」
 ヤギ人間の左膝裏に日向の膝蹴りが突き刺さった。
『グアあっ!?』
「私を忘れんな!」
「タイミングバッチリすぎるだろ!マジでありがとう!」
「お兄ちゃん、愛してるっていってくれていいんだぜ!?」
「あ、それはないわ」
「酷い!」
『おマエらやるキあんのか!?』
 ヤギ人間が拳をコンクリの地面に叩きつける。日向はそれを予測したように跳んでいたが、僕は気付かずにモロにコンクリの破片を食らう。
「痛たたたたた」
「それ読めたでしょ!?」
『モラったぁ!!』
 ヤギ人間は拳をコンパクトに打ち出す。それは僕の腹に吸い込まれて、衝撃を放った。
「がふがっ...ぐがぁっ!!」
「お兄ちゃん!?」
 勢いを殺しきれず、壁にめり込む。
 
『ヨソミしてんなぁっ!!』
「っ!?...かはっ!」
 僕に気を取られ、視線を切った日向にヤギ人間の拳が襲いかかる。僕と同じ軌道を描いて僕の腹に突き刺さる。
「あがあっ!?」
「うっ...ってお兄ちゃん大丈夫!?」
 これが大丈夫に見えるのだろうか。
 素人でもわかる、この内蔵の傷つき。皮膚には切り傷、打撲跡。腹部には大きなアザが出来ているだろう。
 しかし、それは日向も同じなのだ。僕だけじゃない。
『おん?もうオわりか?』
「...お、お前は終わりならどうするんだ?」
『ナニキいてるのかワからねえけど、とりあえずコロすぞ?』
 これはアウト。
 戦って死ぬか、諦めて死ぬか。dead or die、みんな死ぬしかないじゃない。
 でも、残念ながら諦めるわけにはいかない。
「...なら、止めるしか、ねえじゃんか」
『おん?まだやるのか?』
「「たりめー」」
 横を向くと、日向が膝をついて立ち上がっていた。日向はこちらの視線に気づくと、ニヤリとした。
「何よお兄ちゃん。私も一緒に戦うよ」
「...よく出来た妹だわ」
「褒めて讃えよ」
「はいはいすごいねー」
「終わったらハンバーグ2倍ね」
「...じゃあもっと買わないとな」
まずは。
「「こいつをぶっ飛ばすッ!!!」」
 さあ、ここが正念場。
 この街の命運なんて大層なものを押し付けられて、なぜだと思わない自分はとっくにおかしいのだろう。でも、それはそれ、これはこれだ。
『もっとタタカおうぜぇ!!』
「ああ、これで終わりにしよう!!」
 これが、僕達の、最初の世界救済になる。
 それを知らない僕の瞳は、金色に染まっていた。
to be continued......
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