日常は崩れさり少年はあの日を想う

雨月和海@アイコン描いて

「ここは俺に任せて先に行け、絢斗!」

「何言ってんだ遙!お前がいなきゃ僕は...っ!」

 絢斗の肩を強く叩く遙。

「痛っ...何すんだよ遙!」

「お前こそ何言ってんだ莫迦野郎ッ!!!」

 後ろから迫る組織の連中を見据え、遙は絢人に怒鳴る。絢斗はハッとなり、振り向く。その先には開いたシェルターが。

「俺達は【children】だろッ!!!神を救う神の子達だ!だから、多少の犠牲を払おうと、その目的を果たさなければならない!」

「遙...っ!」

「行けッ!!!そして、ノアを...✕✕✕を救えッ!!!」

 そう言い残すと、遙は組織の追手に突っ込んで行った。

「来い...【satellite】ッ!!!」


─────────俺は俺の限界を超えるッ!!!
#
 始業式が行われて、僕と遙は教室へと向かった。廊下の窓は開いていて、桜の花弁がヒラヒラと舞い降りている。

「まあ、また同じクラスとはな...」

「びっくりしたよ...でも、違うクラスだったらめんどくさかったし...」

「そうだな」

 階段を軽快に駆け上がり、遙を少し引き離して教室へと入る。

「遙、早くしr──────」

 ...目が悪くなったのだろうか、見たことが無いはずの女子生徒に見覚えがある。多分、高校2年デビューだろうか。メガネはコンタクトになり、右と左にユラユラと揺れていたお下げ髪は後頭部の高めの場所で1本にまとめられている。

「...何よ、その顔は」

「どうした絢t─────ッ!?」

「何なのあんたたち...いえ、此坂くんと一条くん、どうしたの?」

「「言い直したッ!?」」

 目の前に立つのは、翡翠色の髪をもつポニーテール女子。中学の頃は毒舌会長として学校を震え上がらせた、災厄の化身。

「べ、べつにいいじゃない、高2デビューしたって。」

古神音夕香こがねゆうか───通称【上中の雌獅子】。コン〇スのノ〇さんみたいに金属バットを振り回していた、要注意人物である。
 ...ちなみにノ〇さんはチェーンソーだ。

「ゆ、夕香...高1はまだお下げだったのに、どうしてポニテに変えたんだい?っていうかなぜ言い直したし。」

「細かいこと気にすると禿げるよ。」

「「なんだとッ!?」」

 僕と遙、夕香の3人は上中では生徒会に所属しており、不登校児の1人を加えた4人で【上中四天王】と呼ばれていた。...由来は、委員会の中で最も権力を持っているのが生徒会で、それが4人だけだからである。決して、(1人を除いて)暴力的であった訳では無い。

「いつになったらふたりが来るのかと、見に行く所だったんだけど...」

 鞄を肩にかけて並んでいる僕らを見て夕香は溜息をつき、

「その必要は無かったようね。」

 と呟いた。

キーンコーンカーンコーン
キーンコーンカーンコーン

「うげっ」

「「予鈴じゃんッ!!!」」

僕達3人は、急いで1年B組の教室へ向かった。
#
「はい、とりあえず以上になりまーす。みんな、今年もよろしくねー。」

 担任は相変わらず20代前半教師の羽村唯(はむらゆい)だった。この緩やかな感じと、授業のわかりやすさで学校中の人気教師だ。

「気をつけー、れ」

「はいストップ」

 出席番号1番の男子が号令をかけようとすると、唯がそれを止める。疑惑の視線を受け止めた唯は、教卓をバシーンっと叩いた。


「男子諸君、朗報だ!」


 わけがわからないという顔をする男子の中に、色々と察しがついてしまったのがふたり。


────もちろん、我々である。


「なあなあ、確か前話で盛大にフラグ一つ立ててなかったか?」

「oh......」

 顔を見合わせて天井を仰ぐアホ二人。もちろんそんなことでセリフは止まるはずもなく...

「今日から、うちのクラスで転校生が学ぶことになる!」


───────や、やめてくれ。


「では、入って───明日南。」

 この世の終わり、という顔をする男子2人と色めき立つ他男子と、見とれてしまう女子。


 そこには、天使がいた。


 白髪は背中まで伸び、前髪は右側に流して赤いピンで止めてある。うちの制服は黒地に白のブレザーなのだが、彼女だけは真っ白のブレザーにチェックのプリーツスカート、季節外れの赤いマフラーを巻いている。

明日南あすなみ未月樹みつきです。よろしくお願いします。」

To be continued...

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