異世界魔女は気まぐれで最強です。

雨狗 嗄零(あめいぬ しゃお)

異界の花園

「こんにちは、ここはどこですか?」

「ここは異界の花園、私の作った異界だよお嬢さん。そちらのお二人もそんなに身構えることないよ。私も魔女様に連なる者の1人だからね。」

ピアスたちは、その言葉を聞いて驚きながら力を抜いた。
3人はそのまま女性に招かれ、丘の上にある家に入りお茶を出された。

「なるほどね、たまたまここに迷い込んだってわけか。ここに入ることが出来るのは限られた者たちなんだけど、適性があったってことね。」

「俺たちの事よりも、あんたのことを教えて欲しい。あんた何者?」

タトューが真剣な眼差しを送り、その回答の重要さを示している。

「私は魔女様に連なる者の1人。眷属ってほど大層な者じゃないけど、側人といえば分かるかな?要するに弟子だよ。」

「え!!!側人って、私もです!でも、弟子ってどう言う事?」

「「!?」」

「アサミ!お前、側人やってるのに意味わかってなかったのか!?側人ってのは、魔女様の弟子を意味してるんだぞ。側人は世話もしたりするが、基本的に弟子として修行してくんだ。一人前として認められた者は、新たに弟子を取ったり魔法の才能を持っているヤツを探したりと、役割が色々あるんだ。」

「大体説明は終わったみたいだね。それじゃあ、改めて!私の名前はマホバ。魔女様の元を離れてここである物を作る役目を担ってる。ちなみに、私が作ってるのはコレさ。見たことあると思うけど。」

マホバが差し出してきたのは、アサミたちがここに来るきっかけとなった赤い玉だった。

「これは「宝玉」と言う魔力の結晶に魔術で形を成したものさ。」

マホバは、自分の作っている宝玉について説明を始めた。
宝玉は少ない魔力で込められている魔術を使うことができる。その代表的な物としてアサミたちがここに来た時に使った「転移の魔術を込めた宝玉」だ。
マホバは空間を操る術に長け、それを宝玉として他のものでも使えるようにしており、魔女の元に完成した物を送っていた。

「私が作るものは転移する為のものが多いけど、この空間自体も宝玉を核にしているんだよ。ここ以外にも、、、、?なにか、来る?」

マホバは、席を立ち外の様子を見に戸を開けた。アサミたちも突然のことであったがそれにつられて後を追う。

「おおお!!!!!なんと美しい!こんな場所がこの世にあるのか!」

「今日はお客さんが多いですね。こんにちは、ここには初めての方ですね。私はマホバ。ここに住んでいるものです。あなたは?」

「お初にお目にかかります。見苦しいところをお見せしましたが挨拶を。私は「聖主教:魔術研究者のドミ」研究室に持ち込まれた魔球を調べていたのですが、突然光だしここに来た次第です。」

「「「聖主教、、、。」」」

アサミたち3人がその言葉に反応し、警戒や憎しみ、怒りがこみ上げる。
それを感じ取ってからか、マホバは3人を制止するかの様に片手を挙げ抑えさせる。

マホバはアサミたちの介入を許さず、話を進め出した。

「ここに来た理由は分かりました。生憎、ここに長居されるのは困りますので元の場所にお送りします。申し訳ありませんが帰っていただけませんか?」

「それは残念、ここの場所はある場所によく似た魔力で満ちているので研究したいと思っていたのですが、、、。残念です、ね"!!!」

落ち込んだ様に顔を下に向けたと思ったら、ドミのと名乗った男が声を荒げてファイヤーボールを放ってきた。
放たれた魔法はまっすぐ、そして強い炎を纏ってマホバを飲み込もうとした。

「マホバさん!」

アサミがとっさに声を上げて、対抗するために大量の水を生み出そうとしたが、アサミが心配する必要もなくマホバは無事だった。

「大丈夫だよ。問題ないから。心配してくれてありがとうね。」

優しく振り向き無事な姿を見せる時、マホバは今まで髪で隠していた目をわざと見せる様にして振り向いた。
その目は力強く「手を出すな」と言うアイコンタクトだった。
その目に3人は身構えた力を抜き、警戒を怠ることなく見守ることにする。

「いきなり攻撃とはひどいですね。怪我をしたらどうする気ですか?」

「これはこれは失礼しました。次は全力で行きましょうか。」

ドミが10個以上のファイヤーボールを生み出し、本気という言葉通りにマホバもろともアサミたちを始末しようとすぐさま打ち出そうとした。

「やはり聖主教の方々とは、相入れないのでしょうか?残念ながらここの空間。異界の花園と言うのですが、、、ここは私が作った場所でして、ここでは私の思い通りに出来るのです。ですので、私が少し望めばその魔法も消え去り、あなたを殺すこともたやすいのです。」

マホバが話ている間にその言葉は全て事実となり、話終わるときにはドミは息をしなくなり、話の終わりに合わせる様に倒れていった。
マホバがしたのは、ドミの作った魔法の無効化、行動制限、思考停止、そして最後にドミの周囲の空気を消失。
動きも魔術も頭の活動すら封じられ、ドミは眠る様に死んだ。

アサミたちは自分たちとマホバとの間に、圧倒的な差があり下に見てはいけない存在だと知った。
そこから先は多くを語ることはなかった。
マホバも先ほどの様に話す雰囲気ではないことを理解して、龍の石像のところにアサミたちを送り、石像に新たな転移用の宝玉をしまう様に頼み、宝玉を渡した。

「またここに来るとき、この石像に納めた宝玉を使うといい。勝手に持って行ったりしないようにな。他に使う奴がいるかも知れないから。」

「そんな事しませんよ!しっかり納めますー。えっと、少しの間でしたけど、ありがとうございました。勉強になることも多かったし、私もマホバさんみたいに一人前になれる様に頑張りますね。」

「こちらこそ、ありがとう。私は人付き合いが得意な方じゃない。あんた達が来た時、実はビクビクしながら話をしてたんだよ。また会いに来てほしいな。」

「勿論です!まだまだ、話し足りないですし色々教わりたいです!」

「ふふふ。あ、そうだ。あんた達はこれからこの大陸を旅するんだろ?それなら私みたいに魔女様の弟子だった奴ら、外魔女と言うのだけれど。そいつらところを訪れるといいよ。何かと協力してくれるだろうし、何より得るものが見つかると思う。外魔女は私を含めて8人。あと7人の外魔女がこの大陸にいる。見つけるのも大変かも知れないけど頑張ってね。それじゃあ、良い旅を!」

アサミ達は元の石像の前に戻ってきた。
アサミの手の中には渡された赤い宝玉があり、そのまま龍の口にはめ込むと口が閉まり、保管された。

「なんだか、夢を見てた様な感覚だな。」

「確かに。あの場所もあの人も、不思議だった。魔女様の側人だっただけのことはある。」

「2人ともなにぼーとしてるの?この森に来た目的!忘れてないでしょうね?」

「「あっ!」」

「もう、やっぱり!ギリギリまで狩って街に戻るよ!日も傾いてきてるんだから早く!」

アサミは、感じ取った魔物の気配の元に向かうため走り出した。
ピアスとタトューもアサミを追いかけて走り出す。

私たちって走ってばっかりだね。でも、今が楽しいからいっか!
なぜ、そのまま街に帰らなかったのか?
アサミの見つけた魔物を狩って帰る頃には、アルトの街に来た時の様に門をくぐるため必死になって走る事となり、後悔することを3人はまだ知らない。

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