不能勇者の癖にハーレム築いて何が悪い?
27:すっきりしたい!
「どういう意味だ? 俺たちに国を裏切れと言いたいのか?」
「そうじゃないわ。あなたたちがドラゴンと呼ぶ種族は、元々人間なの。厳密には、龍族と呼ばれる民なのよ」
「……どういうこと?」
シルヴィアの言うことが、俺も雅樂も全く理解できていない。
正直な話、龍族とか言われてもアニメとかでそういう設定の種族が、みたいなイメージはあるがイマイチ話が掴めないでいる。
仮にシルヴィアの言うことが本当なのだとしたら、このシルヴィアも龍になれる、みたいなことなのだろうか。
「私たちは人間の姿で生まれてくるんだけど、ある程度の年齢になると龍に変身できる様になるの。この子は少し事情が違うんだけどね」
「ってことは何か? 元が人間だから、結界に引っかからないでこの街に入れた、ってことになるのか?」
「んー……半分正解。私は元々この街の人間だもの。結界が出来る以前からこの街に住んでいるわ」
龍族であることを隠してなのだろうか。
それとも、全員が知っている?
それによっては大分事情が変わりそうな気がする。
「何で龍族は魔王に与している? 軍勢が出来るほどの人数なんだ、ほぼ全員が従っているってことになるんじゃないのか?」
「そうね、そうなるわ。そして、そのほぼ全員が私の知り合いでもあるの。何でって言われると微妙なところではあるんだけど、まず好戦的な人とその人と仲良しだったり恋人だったりっていうのが集まっているのね。洗脳されたりしているわけではないわ。けど、魔王の意志に反対する者も当然いたのよ、私みたいにね」
食事を平らげてシルヴィアは飲み物を口に運ぶ。
聞いている限りじゃ、何だか狂った連中の話にしか聞こえない。
結局は持て余した力を魔王の誘いにかこつけて発散しているに過ぎないじゃないか。
「お前がこの街にいるのを知っているやつもいるんだろ? なのに襲ってこようとしているのは何でだ? お前が賛同しなかったからか?」
「それもあるわね。私たち龍族は意見が二分して……とは言っても魔王に従ってる方が圧倒的に多数なんだけどね。私たちは昔……私なんかが生まれるずっと前から、龍になれるってだけで謂れのない迫害を受けたりしてきたのも、事実ではあるから。今はもうほとんど迫害とかなくなったって言っていいレベルなんだけどね」
「…………」
だとしたら、ただの八つ当たりじゃないのか?
昔迫害されてたって事実があったとして、今はそうでもない。
それが本当なら、今生きてる人間たちには特に罪がある様には思えない。
そう考えてしまうのは俺だけなんだろうか。
もちろん牙を剥くのであれば、俺だって抵抗はするし相手によっては倒すし殺すこともある。
魔王につくことそのものを悪であるとは考えないが、やっていることがただの八つ当たりによる虐殺なんだとしたら、さすがにそれは違う気がする。
「で……私としては、正直連中に何とかして魔王軍から抜け出してもらいたいの。それには死んでもらってると叶わない願いになっちゃうでしょ」
「随分と利己的な願いなんだな。というかお前の一存なんじゃないのか、それ」
「……まぁ、他のみんなには大体反対されたわね。無駄に終わるだけだって」
普通に考えて、話にならないだろう。
ただ一人の少女が願っていることが、俺たちの動き次第で変わるとかそんなことはまずありえない。
仮に俺たちが討伐をやめるんだとしたら、この国が滅んでそれを皮切りに他の国が消えていくのを見守るだけになる。
「ねぇ、そこで一つ提案なんだけど」
「提案? この無謀な話でか?」
「凛、もう聞く必要ないと思うんだけど」
雅樂がもう帰ろうと言わんばかりに立ち上がりかけ、それでも立ち上がらない俺を見てため息をついた。
まぁ、聞き入れるかどうかは別にして提案があるというならそれを聞くだけ聞くのも悪くない。
俺の表情からそんな情報を読み取って、雅樂は再度椅子に腰かけた。
「どんな提案よ。早く言いなよ」
「おい、急かすな。で?」
「あんたが魔王になって、私たちを統治するってのは、どう?」
「…………」
一体何を言っているのか、この女は。
何をどうしたら、そんな訳の分からない提案を出来るんだろうか。
勇者である今の俺が、一転して魔王になる?
というかそれが仮に出来るんだとして、何日かかるんだ?
ドラゴンの軍勢が攻め入ってくるまであと何日あるのかわからないが、どう考えても時間が足りない。
そう考えると、一考の余地すらない提案だ。
「あー……シルヴィア、悪いんだけど」
「時間がない、って言いたいのよね?」
「わかってんじゃねぇか。だったら……」
「なら、その時間は私が稼ぐわ。だから、あなたたちはその間に魔王を討伐するなりドラゴンを懐柔するなり、好きな様にしてもらえれば」
「現実味がなさすぎるでしょ。あんたにそこまでの人望がある様には見えないんだけど」
雅樂の言うことももっともだとは思う。
確かに正面切って言う類のことではない気がするが、シルヴィアはどう見ても少女だし、連れている龍だってまだ幼い。
メギド……と言ったっけ。
それがたとえば特別な存在なんだとしたら……それでも望みが薄いことに違いはない気がする。
「私にはそこまでの人望は確かにないわね。だけど、このメギドはまず私とは違うわ」
「どういう意味だ?」
まさか俺の考えた通り、このちっこいのが特別な龍だったり?
だとしたら多少の望みはあるかもしれないが……だからって俺たちが聞き入れないといけない理由もない気がするんだけどな。
「このメギドは、人間として生まれなかった、言わば純正の龍なの」
「……それで?」
「この子以外はみんな、私も含めて人間から龍に変身することでしか龍としての姿を見せられないのね。だけどこの子は人間になったりは出来ないピュアドラゴン。つまり、この子を媒介として子孫を反映させていくことで、龍の一族は更に反映することができるわ」
「……それって逆に、人間からしたら脅威になったりしないか?」
「龍と人間の棲み分けは既に確立されているでしょ。だったら、それを少し拡大するだけのことよ」
簡単に言ってくれているが、途方もなくめんどくさい話だと思う。
魔王に代わる統治者が現れるとして、その仕事だって半端じゃない量になるんだろうし、とてもじゃないが容易なことではないはずだ。
「話にならないわね。私たちにメリットがないわ。私たち、ボランティアする気はないのよ。このドラゴン討伐だって支度金やら報酬やらがちゃんと王宮から発生してるんだから」
「そうだな、まぁ雅樂の言う通りではある。俺たちがお前に協力することで、俺たちにどんな得があるんだ?」
何となく嫌な聞き方をしてるな、というのは自分でもわかる。
正直こういう恩を着せる様な言い方は俺の好みじゃない。
だけど自分たちにプラスになることがない現状、わっかりましたー! って二つ返事で引き受けられる様な内容ではないし、見方によっては王様から受けた依頼と矛盾してしまう。
「得か……やっぱり人間なのね。お金がほしいの? あんまり持ってないけど……」
「別にお金じゃなくてもいいわ。あんたが出せるものによる、としか言えないわよ。だって、雇い主を裏切ることになるかもしれないのよ? それなりのリスクが伴うのに、私たちには一切リターンがなかったら、やる意味ないじゃない」
「無償で一切を引き受けます、なんてのがお望みなら、聖人君子でも探してもらいたいところではあるな。俺たちは遊びじゃなくて仕事で来てるんだし、報酬はあって然るべきだと思う。当然じゃないか?」
とは言ったものの、雅樂は多分殺す気満々だと思うし、それこそ遊び半分と思われても仕方ないかなとは思う。
大型相手なら雅樂の独壇場とも言える舞台になるわけだし、正直ちまちま小物を狩るより生き生きしそうではある。
「それに、あんたの提案に乗ったことで逆に世界が滅ぶ、なんてことだってゼロではないのよね。どうなるのかなんて、誰にもわからないんだから」
そんなもしもの話をしだしたらキリがないかもしれないが、それだってあり得ない話ではない。
調子にのったドラゴンの軍勢が主要都市をガンガン攻め落としていけば、人類そのものの存続が危ぶまれる。
そうなってしまってから迎え撃つんだと、勢いに乗っている分魔王軍は強敵どころではなくなってしまうのではないだろうか。
「お金以外だと……龍族の宝とか、あとは力を与えるくらいなら……」
「くらいって何? 中途半端な力なら、別にいらないんだけど」
雅樂の言葉にシルヴィアが顔を歪める。
何だか泣き出しそうに見えるのは俺だけなんだろうか、自身の計画の失敗を予感し始めているのかもしれない。
そもそも成功する公算があったことに驚きではあるんだが。
「わ、私の……私の人生をリン、あなたに捧げる。それじゃダメ?」
「お生憎様、女はもう間に合ってるの」
「あなたに聞いてないわよ!!」
「はぁ!?」
「おい、やめろ! ……喧嘩するならもう店出るぞ。人生を捧げるって、どういう意味だよ」
「……言葉の通りよ。私の人生をあなたに捧げる。あなたは私の全てを思いのままに出来るわ」
「残念だけど、それが本当だとしても、凛は不能なのよ。やっぱり話にならないじゃない」
「…………」
事実だけど、勝手に説明しないでもらえますかね……。
結構人目あるし、誰が聞いてるかわからないんだから。
「不能って……その、アレが……ダメってこと?」
「言い方に不満はあるが、まぁそうだ。使い物にならん」
「だ、だとしたら……もしかしたらそれも治せるかもしれないわ」
「!?」
思わぬシルヴィアの発言に俺も雅樂も再び顔を見合わせる。
これまで何度もスカだった、この不能の治療。
もっとも王様からもらった薬はまだ継続して飲んでいるし、効き目がすぐに出るとは思っていなかったから仕方ないとは思う。
それだけに、俺としては少し疑わしいという気持ちが強い。
もちろん、シルヴィアは可能性がある、と言っただけで絶対に治してみせるとは言っていない。
だが、可能性の話とは言ってももしも治る見込みがあるのであれば、さっさと治してしまいたいというのが本音ではある。
何故なら勃たないくせに性欲だけはぐんぐん溜まっていくんだよ、歳相応に。
なのに発散する術が戦闘しかないから、もう何から何まで限界というこの状況。
いい加減すっきりしたい。
「まぁ、あんたの言うことは可能性の話だっていうのはわかってる。だけど、今まで何度も肩透かし食らって来てるから、私たちも慎重になってるっていうのは理解してもらえる?」
「それって……」
「報酬は先払いしてもらう。その結果によって、ってところかしらね」
大体俺も同じことを考えてはいたが、何でこう勝手に決めちゃうのかな。
あくまで俺の下半身事情であって、お前らは至って健康だろ。
しかもそれを報酬って……。
どちらにしても、提案そのものには乗ってみる価値がありそうだ。
「そうじゃないわ。あなたたちがドラゴンと呼ぶ種族は、元々人間なの。厳密には、龍族と呼ばれる民なのよ」
「……どういうこと?」
シルヴィアの言うことが、俺も雅樂も全く理解できていない。
正直な話、龍族とか言われてもアニメとかでそういう設定の種族が、みたいなイメージはあるがイマイチ話が掴めないでいる。
仮にシルヴィアの言うことが本当なのだとしたら、このシルヴィアも龍になれる、みたいなことなのだろうか。
「私たちは人間の姿で生まれてくるんだけど、ある程度の年齢になると龍に変身できる様になるの。この子は少し事情が違うんだけどね」
「ってことは何か? 元が人間だから、結界に引っかからないでこの街に入れた、ってことになるのか?」
「んー……半分正解。私は元々この街の人間だもの。結界が出来る以前からこの街に住んでいるわ」
龍族であることを隠してなのだろうか。
それとも、全員が知っている?
それによっては大分事情が変わりそうな気がする。
「何で龍族は魔王に与している? 軍勢が出来るほどの人数なんだ、ほぼ全員が従っているってことになるんじゃないのか?」
「そうね、そうなるわ。そして、そのほぼ全員が私の知り合いでもあるの。何でって言われると微妙なところではあるんだけど、まず好戦的な人とその人と仲良しだったり恋人だったりっていうのが集まっているのね。洗脳されたりしているわけではないわ。けど、魔王の意志に反対する者も当然いたのよ、私みたいにね」
食事を平らげてシルヴィアは飲み物を口に運ぶ。
聞いている限りじゃ、何だか狂った連中の話にしか聞こえない。
結局は持て余した力を魔王の誘いにかこつけて発散しているに過ぎないじゃないか。
「お前がこの街にいるのを知っているやつもいるんだろ? なのに襲ってこようとしているのは何でだ? お前が賛同しなかったからか?」
「それもあるわね。私たち龍族は意見が二分して……とは言っても魔王に従ってる方が圧倒的に多数なんだけどね。私たちは昔……私なんかが生まれるずっと前から、龍になれるってだけで謂れのない迫害を受けたりしてきたのも、事実ではあるから。今はもうほとんど迫害とかなくなったって言っていいレベルなんだけどね」
「…………」
だとしたら、ただの八つ当たりじゃないのか?
昔迫害されてたって事実があったとして、今はそうでもない。
それが本当なら、今生きてる人間たちには特に罪がある様には思えない。
そう考えてしまうのは俺だけなんだろうか。
もちろん牙を剥くのであれば、俺だって抵抗はするし相手によっては倒すし殺すこともある。
魔王につくことそのものを悪であるとは考えないが、やっていることがただの八つ当たりによる虐殺なんだとしたら、さすがにそれは違う気がする。
「で……私としては、正直連中に何とかして魔王軍から抜け出してもらいたいの。それには死んでもらってると叶わない願いになっちゃうでしょ」
「随分と利己的な願いなんだな。というかお前の一存なんじゃないのか、それ」
「……まぁ、他のみんなには大体反対されたわね。無駄に終わるだけだって」
普通に考えて、話にならないだろう。
ただ一人の少女が願っていることが、俺たちの動き次第で変わるとかそんなことはまずありえない。
仮に俺たちが討伐をやめるんだとしたら、この国が滅んでそれを皮切りに他の国が消えていくのを見守るだけになる。
「ねぇ、そこで一つ提案なんだけど」
「提案? この無謀な話でか?」
「凛、もう聞く必要ないと思うんだけど」
雅樂がもう帰ろうと言わんばかりに立ち上がりかけ、それでも立ち上がらない俺を見てため息をついた。
まぁ、聞き入れるかどうかは別にして提案があるというならそれを聞くだけ聞くのも悪くない。
俺の表情からそんな情報を読み取って、雅樂は再度椅子に腰かけた。
「どんな提案よ。早く言いなよ」
「おい、急かすな。で?」
「あんたが魔王になって、私たちを統治するってのは、どう?」
「…………」
一体何を言っているのか、この女は。
何をどうしたら、そんな訳の分からない提案を出来るんだろうか。
勇者である今の俺が、一転して魔王になる?
というかそれが仮に出来るんだとして、何日かかるんだ?
ドラゴンの軍勢が攻め入ってくるまであと何日あるのかわからないが、どう考えても時間が足りない。
そう考えると、一考の余地すらない提案だ。
「あー……シルヴィア、悪いんだけど」
「時間がない、って言いたいのよね?」
「わかってんじゃねぇか。だったら……」
「なら、その時間は私が稼ぐわ。だから、あなたたちはその間に魔王を討伐するなりドラゴンを懐柔するなり、好きな様にしてもらえれば」
「現実味がなさすぎるでしょ。あんたにそこまでの人望がある様には見えないんだけど」
雅樂の言うことももっともだとは思う。
確かに正面切って言う類のことではない気がするが、シルヴィアはどう見ても少女だし、連れている龍だってまだ幼い。
メギド……と言ったっけ。
それがたとえば特別な存在なんだとしたら……それでも望みが薄いことに違いはない気がする。
「私にはそこまでの人望は確かにないわね。だけど、このメギドはまず私とは違うわ」
「どういう意味だ?」
まさか俺の考えた通り、このちっこいのが特別な龍だったり?
だとしたら多少の望みはあるかもしれないが……だからって俺たちが聞き入れないといけない理由もない気がするんだけどな。
「このメギドは、人間として生まれなかった、言わば純正の龍なの」
「……それで?」
「この子以外はみんな、私も含めて人間から龍に変身することでしか龍としての姿を見せられないのね。だけどこの子は人間になったりは出来ないピュアドラゴン。つまり、この子を媒介として子孫を反映させていくことで、龍の一族は更に反映することができるわ」
「……それって逆に、人間からしたら脅威になったりしないか?」
「龍と人間の棲み分けは既に確立されているでしょ。だったら、それを少し拡大するだけのことよ」
簡単に言ってくれているが、途方もなくめんどくさい話だと思う。
魔王に代わる統治者が現れるとして、その仕事だって半端じゃない量になるんだろうし、とてもじゃないが容易なことではないはずだ。
「話にならないわね。私たちにメリットがないわ。私たち、ボランティアする気はないのよ。このドラゴン討伐だって支度金やら報酬やらがちゃんと王宮から発生してるんだから」
「そうだな、まぁ雅樂の言う通りではある。俺たちがお前に協力することで、俺たちにどんな得があるんだ?」
何となく嫌な聞き方をしてるな、というのは自分でもわかる。
正直こういう恩を着せる様な言い方は俺の好みじゃない。
だけど自分たちにプラスになることがない現状、わっかりましたー! って二つ返事で引き受けられる様な内容ではないし、見方によっては王様から受けた依頼と矛盾してしまう。
「得か……やっぱり人間なのね。お金がほしいの? あんまり持ってないけど……」
「別にお金じゃなくてもいいわ。あんたが出せるものによる、としか言えないわよ。だって、雇い主を裏切ることになるかもしれないのよ? それなりのリスクが伴うのに、私たちには一切リターンがなかったら、やる意味ないじゃない」
「無償で一切を引き受けます、なんてのがお望みなら、聖人君子でも探してもらいたいところではあるな。俺たちは遊びじゃなくて仕事で来てるんだし、報酬はあって然るべきだと思う。当然じゃないか?」
とは言ったものの、雅樂は多分殺す気満々だと思うし、それこそ遊び半分と思われても仕方ないかなとは思う。
大型相手なら雅樂の独壇場とも言える舞台になるわけだし、正直ちまちま小物を狩るより生き生きしそうではある。
「それに、あんたの提案に乗ったことで逆に世界が滅ぶ、なんてことだってゼロではないのよね。どうなるのかなんて、誰にもわからないんだから」
そんなもしもの話をしだしたらキリがないかもしれないが、それだってあり得ない話ではない。
調子にのったドラゴンの軍勢が主要都市をガンガン攻め落としていけば、人類そのものの存続が危ぶまれる。
そうなってしまってから迎え撃つんだと、勢いに乗っている分魔王軍は強敵どころではなくなってしまうのではないだろうか。
「お金以外だと……龍族の宝とか、あとは力を与えるくらいなら……」
「くらいって何? 中途半端な力なら、別にいらないんだけど」
雅樂の言葉にシルヴィアが顔を歪める。
何だか泣き出しそうに見えるのは俺だけなんだろうか、自身の計画の失敗を予感し始めているのかもしれない。
そもそも成功する公算があったことに驚きではあるんだが。
「わ、私の……私の人生をリン、あなたに捧げる。それじゃダメ?」
「お生憎様、女はもう間に合ってるの」
「あなたに聞いてないわよ!!」
「はぁ!?」
「おい、やめろ! ……喧嘩するならもう店出るぞ。人生を捧げるって、どういう意味だよ」
「……言葉の通りよ。私の人生をあなたに捧げる。あなたは私の全てを思いのままに出来るわ」
「残念だけど、それが本当だとしても、凛は不能なのよ。やっぱり話にならないじゃない」
「…………」
事実だけど、勝手に説明しないでもらえますかね……。
結構人目あるし、誰が聞いてるかわからないんだから。
「不能って……その、アレが……ダメってこと?」
「言い方に不満はあるが、まぁそうだ。使い物にならん」
「だ、だとしたら……もしかしたらそれも治せるかもしれないわ」
「!?」
思わぬシルヴィアの発言に俺も雅樂も再び顔を見合わせる。
これまで何度もスカだった、この不能の治療。
もっとも王様からもらった薬はまだ継続して飲んでいるし、効き目がすぐに出るとは思っていなかったから仕方ないとは思う。
それだけに、俺としては少し疑わしいという気持ちが強い。
もちろん、シルヴィアは可能性がある、と言っただけで絶対に治してみせるとは言っていない。
だが、可能性の話とは言ってももしも治る見込みがあるのであれば、さっさと治してしまいたいというのが本音ではある。
何故なら勃たないくせに性欲だけはぐんぐん溜まっていくんだよ、歳相応に。
なのに発散する術が戦闘しかないから、もう何から何まで限界というこの状況。
いい加減すっきりしたい。
「まぁ、あんたの言うことは可能性の話だっていうのはわかってる。だけど、今まで何度も肩透かし食らって来てるから、私たちも慎重になってるっていうのは理解してもらえる?」
「それって……」
「報酬は先払いしてもらう。その結果によって、ってところかしらね」
大体俺も同じことを考えてはいたが、何でこう勝手に決めちゃうのかな。
あくまで俺の下半身事情であって、お前らは至って健康だろ。
しかもそれを報酬って……。
どちらにしても、提案そのものには乗ってみる価値がありそうだ。
「ファンタジー」の人気作品
-
-
3万
-
4.9万
-
-
2.1万
-
7万
-
-
1.3万
-
2.2万
-
-
1.2万
-
4.8万
-
-
1万
-
2.3万
-
-
9,690
-
1.6万
-
-
9,542
-
1.1万
-
-
9,385
-
2.4万
-
-
9,166
-
2.3万
コメント