不能勇者の癖にハーレム築いて何が悪い?
6:俺が不能で誰かに迷惑かけたのか?
「ねぇ役立たず」
「…………」
「返事くらいしなさいよ、不能者」
アルカの言葉が胸に突き刺さる。
実際事実だし返す言葉もないのだが、だからと言ってその事実を武器に俺を傷つけていいという結果にはならないと思う。
まぁ……俺の今の状態を説明した時の四人の顔は正直、時が止まった? と錯覚したくなる様なもので、まぁ簡単に言って俺の相棒は物の役に立たなくなってしまった、というものだし、正直何言ってるんだこいつ、ってなるのは仕方ない。
だけど何をどう言われたからと言って、それで回復するならいくらでも罵ってくれよと思うが結局言われ損にしかならない上に心には傷が残るという、誰も得しない結果にしかならないという。
しかも錯乱したアルカが、私の加護を使えば! なんて言ってその場でアンダーを脱がしにかかったものだからたまらない。
それ自体は阻止できたが、ならそのままでいいから、なんて言ってアルカは俺の股間に加護を浴びせた。
状態異常の一種なの? と思わなくはないが、厳密には違うのだろう。
おそらく俺の中の女に対する認識であるとか、自分で言うのも何だがちょっと根の深い問題なのだと思う。
つまり、俺自身がその問題をどうにかして解決しないと治る見込みは薄いのではないか、というのがミルズの見解。
ヨトゥンは難しいことはわからないけど、無理強いは良くない、なんて常識人みたいなことを言っていたので、戦闘中とのギャップに驚かされた。
そして一番おっかなかったのが他でもない雅樂。
使い物にならないんだったら、切り落としてあげるから新しいのに期待しよう? とかハイライトの消えた目で言われた時はマジで小便漏らすかと思った。
新しいのって何だよ。
トカゲの尻尾じゃあるまいし、そんなにょきにょき生えてきたらおカマの人とか困っちゃうじゃん。
「ちょっと私と色々してみる?」
「はぁ? 何だよ色々って」
「だから、その……反応しそうなこと」
我がパーティにおけるツルペタ代表とも言えるアルカと色々って、何を色々したらいいのかわからない。
ミルズ辺りとだったら何て言うか、挟んだりしてもらって、なんてのもありかもしれないが。
こんな板みたいな胸した女相手じゃ、おろし金みたいな感じで俺のが削れちゃったりする結果になりはしないだろうか。
「あんたの考えてること、何となくわかるわ。知ってる? 回復のエネルギーって健常者に大量に浴びせると毒にしかならないって」
「おま……恐ろしいことを考えるんだな。昨日だってお前の加護浴びてたけど、あれが過ぎたら俺の相棒は……」
「物の役に立たないおしっこ製造機なんだから別にいいじゃない」
「…………」
厳密にはただの排出機であって、製造しているのは腎臓だったり膀胱だったりっていう別の器官だけどな。
とは言え、以前の様に猛々しくいきり立ったりはしてくれないから、半分アルカの言ってることは合ってるってことになるんだけど。
それにしてもアルカは何をそんなに根に持っているんだろうか。
他のメンバーはできないなら仕方ない、って割とすんなり納得してくれたってのに。
いや、語弊があるな。
雅樂だけは、届けを出しに行ってさぁ、試そう! なんて言って三人を締め出して二人きりになろうとしたりと割と積極的だったのだが、もちろん他の三人がそれを許すわけもなくて、結果としては試すもクソもなかった。
「何? まだ昨日のこと話してるの? とりあえず今日はひと狩り行こうよ。その話はまた後でってことで。一度届出してあるんだから、いつでもできるんだしね」
ミルズとヨトゥン、雅樂が呼びにきて、俺の役立たず談義はめでたく終了を迎えた。
昨日のうちに紹介所へ行っておけば良かったのだが、昨日に関しては俺があの調子だったのと、雅樂のこともあって誰もそこまで気が回らなかったということで、みんなで紹介所へ足を運ぶ。
「あ、リンさん。おめでとうございます。先日のゴブリン討伐で七級から六級に格上げになりましたよ!」
受付の女性が俺たちに気づいて声をかけてくる。
思えばこの人も割とスタイルいいし、出会った頃は割とエロい目で見ていたのだが……。
「今日は鼻の下伸びてないのね、リン」
「……ほっとけ」
アルカの言う様に、特に魅力的に見えない。
いや、可愛いと思うしスタイルいいな、というのは今でも変わらないんだけどね。
「聞いてくださいよお姉さん。この人、勃起不全に……」
「おい待て。お前こんなとこでそんなことを言うんじゃない。何よりこの人には関係ないだろ」
雅樂が勝手に話そうとするのを、慌てて止める。
こいつ昔からこういうとこあったな、そういえば。
「あら、あなたは確かオールハントさん。この方たちとパーティを?」
「んー、明確にそうと決まってはないけど、二つ依頼受けてそれぞれを手伝う、って言う方式は特に問題ないんでしょ?」
「ええ、取り分などは話し合って明確にしてもらえれば問題ありませんよ」
なるほど、その発想はなかった。
ぶっちゃけ雅樂は一人でも問題ないというか、ここまでずっと一人でやって……殺って? きたわけだからな。
お互いを手伝うという名目で受けることも可能なわけだ。
ちなみに五人とか六人のパーティもあるにはあるみたいだが、極端に少ない。
元々友達だったからとか、俺が理由に使えない様な理由を引っ提げてくるやつらを見てると、浮かれてんじゃねぇよ、なんて思ってしまう。
逆に雅樂の様にソロで……って言うと自家発電になっちゃうから一人でクエストに挑むやつも珍しくはないが、大半が俺や雅樂の様な余所者というわけだ。
現地人も弱いわけでは決してないが、彼らは慢心することが少ない。
戦闘中のヨトゥンの様なやつは稀だと聞いている。
「じゃあどうする?」
「あんたリーダーなんだから、ちゃちゃっと決めなさいよ」
「いや、いつの間に俺がリーダーになったんだよ。お前ら頼みなとこがまだまだあるんだから、適正なのさがしてくれよ」
「じゃあ不能が治りそうなクエスト探してみる?」
本当、言いたい放題言ってくれやがる……。
不能で何が悪い!?
そういう心無い一言がいじめを生むし、自殺に繋がることだってあるんだぞ!?
そうは思ってもこいつら何となく怖いし、言い出せない自分がいるんだけど。
こんなとこまでいじめられっ子根性が染み付いていやがる。
「まぁ、不能が治るクエストなんてないと思うけど……」
「えっと、リンさん。オールハントさんが言ってたことは本当なんですか?」
「…………」
「ご、ごめんなさい。そんなに睨まないでもらっていいですか……」
「……はぁ。本当ですよ。一昨日のクエストがなかなか心理的にきついものだったから、って言うのがあると思いますけど」
俺がそう言うと受付のお姉さんであるところのハルアさんが深刻そうな顔をする。
何か思い当たることでもあるんだろうか。
実際俺たちはクエストの完了報告はしたが、内容まで事細かに語ったわけではない。
だから事情を察するにしてもある程度の想像でしかないんじゃないか、というのが正直なところではあるんだが。
「ゴブリンの殲滅でしたよね、確か」
「ええ」
クエストボードを見ていた四人も、俺とハルアさんが深刻な雰囲気になったのを見て動きを止める。
こいつら貪欲すぎんだろ……。
そんなに俺に復活してもらいたいのか?
「もしよければ別室で、どういう内容だったか聞かせてもらってもいいですか?」
「え、別室?」
一瞬、年上のお姉さんが手ほどきをしてくれるのか、みたいな連想をしてしまい、思わず上ずった声が出てしまう。
もちろんあいつらにも聞かれていて、何想像してんのよ不能が、とか罵られまくったわけだが。
そんなに言うならお前らもついてこい、と俺は誘ってハルアさんを含めた六人で紹介所の別室へと入っていった。
「ここはね、冒険者の相談所としてよく使われるんだけど……まぁクエストの内容によっては話しにくいとかあると思うから」
「…………」
話しにくい、か。
もちろん一昨日のことを指しているんだということはわかる。
そしてその内容が嬉々として語れることではないことも。
しかしこの世界においては日常のワンシーンに過ぎないのかもしれない。
そう考えると俺が抱えた闇は、一体何だったのかと思わされる。
「なるほど、そういうことが……」
「何よ、この世界じゃそんなの日常茶飯事だし、凛だって聞いたことあったんじゃないの?」
「見るのと聞くのじゃ大違いってことさ。お前だって、初めて見た時はさすがにびっくりしたとかあったんじゃないのか?」
「私の武器は洞窟みたいな狭い場所に向かないし、ゴブリン討伐なんか請けたことないもの」
「ん? ってことは何だ、お前別に見たことはないのか?」
俺がそう言うと、雅樂は不思議そうな顔で俺を見る。
見たこともないのに俺をなじったのか、こいつ。
割と衝撃的なシーンだったと思うし、くっころとか嫌いじゃなかった俺だけどあれ以来多分トラウマに近いものを感じているはずだ。
「多分……というか私の考察をお話ししてもいいですか?」
ハルアさんが少し考えたのちに、俺を見る。
首肯で応えるとハルアさんは俺以外のメンバーを見た。
「これは、多分というだけの話です。私はリンさんではないので、私がリンさんだったらこう考える、という程度の、参考にとどめてほしいんですが」
「わかりました。お願いします」
「リンさんはまだ若いですし、恐らく旅の仲間とは言っても皆さんを女性として意識して見ていたんだと思います」
「…………」
まぁ、ぶっちゃけソロ活動のオカズにしていたこともあるし、何度襲ってやろうと思ったか知れない程度には意識していただろう。
否定しようのない事実だ。
こいつらのせいで俺の同胞が何億も死んでいったんだ……。
そんなことを考えていると、雅樂の視線が死線に変わりそうな勢いになっていることに気づく。
それはマジでシャレにならないから、どうか我慢して聞いてください。
「そしてその女性方と一緒にこなしたクエストで、変わり果てた女性たちを何人も目撃した。おそらく苗床にされていたんだと思いますし、玩具にされていたなんて話もよく聞きます」
覚悟が足りなかったり、ゴブリンだからと侮った結果がああいうものなんだろうということは俺も理解している。
ただし、理解と目の当たりにするのは別物なんだということを、一昨日思い知ったというわけだ。
「ここからはあまり言いたい内容ではないのですが……気を悪くしないでもらえると助かります。
おそらくリンさんがみなさんとそういう肉体関係になったりした場合に、後々そのゴブリンなどの魔物に滅茶苦茶にされるところやされてしまったところなどを連想して重ねてしまった、というのが私の考えです」
ある程度自分でもそうなのかな、みたいな考えはあった。
そして俺はこいつらを守りたい、って思ったから自らの手を汚して人間もろともゴブリンを葬ったのだから。
実際他人からそう言われてみると、やはりそうだったんだなという考えが頭に固まってくる。
「もちろん聞いた限りのことですし、私は実際見ていませんが……リンさんの若さなどを考慮してみると、自然とこの説に行き当たりました」
「…………」
「…………」
「まぁ、リンがこっちきてから毎日の様にソロやってたのは知ってるけど」
「知ってたのかよ!!」
アルカの言葉に思わず反応してツッコミを入れてしまう。
恥ずかしすぎるだろ……気づいててもそういうのは空気読んで黙っててくれよ。
「まぁ、私たちをそういう目で見たくなる気持ちはわかるけどね」
得意そうなアルカだが、お前の出番は三人の中でもダントツに少なかったと言っておこう。
もちろん口には出さずにな。
ただ可愛いだけの口の悪い聖職者で抜けるほど俺は、ソロが上手いわけでもないからな。
「でも今は私もいるんだし……別に凛が危惧してる様なことにはならないと思うけどね。間違って私が手を滑らせて殺しちゃったりでもしない限りは」
「…………」
さらりと恐ろしいことを言いやがって。
それ間違いなく俺が巻き込まれるか、当てる気ないのわからないで止めようとしに行って俺だけ死んじゃうパターンだろ、わかってるんだからな。
見ろよ、みんなだってドン引きでお前のこと見てるじゃないか。
「その原因がわかったからって、俺の状態が良くなるとは思えないし……時間に任せるしかないんじゃないかって俺は思ってますけどね」
「その時間が何年っていう保証もなければ、もしかしたら一生治らないかもしれないのに?」
雅樂が心配そうに俺を覗き込む。
こいつが心配してるのは、俺の下半身具合か?
それとも俺自身なんだろうか。
もっとも向こうの世界なら子どもが欲しいとかってことなら最悪精子だけ取り出す、なんてことだって出来るんだろうが……こっちの文明じゃそんなことできそうにないから、そんな風に心配になるのもわからなくはないけどな。
もちろん子どもがほしいなんて言われているわけじゃないけど。
「だったら今日は敢えて何の関連もなさそうなクエストに挑む、というのはどうでしょう?」
ヨトゥンの提案は思いもよらないものだったが、俺としては関連しそうな方が色々と思い出して逆効果になるんじゃないか、なんて思っていたから、正直ありがたい。
俺たちはひとまず洞窟へ入らなくて済むクエストを二つ、見繕うべくロビーに戻っていった。
「…………」
「返事くらいしなさいよ、不能者」
アルカの言葉が胸に突き刺さる。
実際事実だし返す言葉もないのだが、だからと言ってその事実を武器に俺を傷つけていいという結果にはならないと思う。
まぁ……俺の今の状態を説明した時の四人の顔は正直、時が止まった? と錯覚したくなる様なもので、まぁ簡単に言って俺の相棒は物の役に立たなくなってしまった、というものだし、正直何言ってるんだこいつ、ってなるのは仕方ない。
だけど何をどう言われたからと言って、それで回復するならいくらでも罵ってくれよと思うが結局言われ損にしかならない上に心には傷が残るという、誰も得しない結果にしかならないという。
しかも錯乱したアルカが、私の加護を使えば! なんて言ってその場でアンダーを脱がしにかかったものだからたまらない。
それ自体は阻止できたが、ならそのままでいいから、なんて言ってアルカは俺の股間に加護を浴びせた。
状態異常の一種なの? と思わなくはないが、厳密には違うのだろう。
おそらく俺の中の女に対する認識であるとか、自分で言うのも何だがちょっと根の深い問題なのだと思う。
つまり、俺自身がその問題をどうにかして解決しないと治る見込みは薄いのではないか、というのがミルズの見解。
ヨトゥンは難しいことはわからないけど、無理強いは良くない、なんて常識人みたいなことを言っていたので、戦闘中とのギャップに驚かされた。
そして一番おっかなかったのが他でもない雅樂。
使い物にならないんだったら、切り落としてあげるから新しいのに期待しよう? とかハイライトの消えた目で言われた時はマジで小便漏らすかと思った。
新しいのって何だよ。
トカゲの尻尾じゃあるまいし、そんなにょきにょき生えてきたらおカマの人とか困っちゃうじゃん。
「ちょっと私と色々してみる?」
「はぁ? 何だよ色々って」
「だから、その……反応しそうなこと」
我がパーティにおけるツルペタ代表とも言えるアルカと色々って、何を色々したらいいのかわからない。
ミルズ辺りとだったら何て言うか、挟んだりしてもらって、なんてのもありかもしれないが。
こんな板みたいな胸した女相手じゃ、おろし金みたいな感じで俺のが削れちゃったりする結果になりはしないだろうか。
「あんたの考えてること、何となくわかるわ。知ってる? 回復のエネルギーって健常者に大量に浴びせると毒にしかならないって」
「おま……恐ろしいことを考えるんだな。昨日だってお前の加護浴びてたけど、あれが過ぎたら俺の相棒は……」
「物の役に立たないおしっこ製造機なんだから別にいいじゃない」
「…………」
厳密にはただの排出機であって、製造しているのは腎臓だったり膀胱だったりっていう別の器官だけどな。
とは言え、以前の様に猛々しくいきり立ったりはしてくれないから、半分アルカの言ってることは合ってるってことになるんだけど。
それにしてもアルカは何をそんなに根に持っているんだろうか。
他のメンバーはできないなら仕方ない、って割とすんなり納得してくれたってのに。
いや、語弊があるな。
雅樂だけは、届けを出しに行ってさぁ、試そう! なんて言って三人を締め出して二人きりになろうとしたりと割と積極的だったのだが、もちろん他の三人がそれを許すわけもなくて、結果としては試すもクソもなかった。
「何? まだ昨日のこと話してるの? とりあえず今日はひと狩り行こうよ。その話はまた後でってことで。一度届出してあるんだから、いつでもできるんだしね」
ミルズとヨトゥン、雅樂が呼びにきて、俺の役立たず談義はめでたく終了を迎えた。
昨日のうちに紹介所へ行っておけば良かったのだが、昨日に関しては俺があの調子だったのと、雅樂のこともあって誰もそこまで気が回らなかったということで、みんなで紹介所へ足を運ぶ。
「あ、リンさん。おめでとうございます。先日のゴブリン討伐で七級から六級に格上げになりましたよ!」
受付の女性が俺たちに気づいて声をかけてくる。
思えばこの人も割とスタイルいいし、出会った頃は割とエロい目で見ていたのだが……。
「今日は鼻の下伸びてないのね、リン」
「……ほっとけ」
アルカの言う様に、特に魅力的に見えない。
いや、可愛いと思うしスタイルいいな、というのは今でも変わらないんだけどね。
「聞いてくださいよお姉さん。この人、勃起不全に……」
「おい待て。お前こんなとこでそんなことを言うんじゃない。何よりこの人には関係ないだろ」
雅樂が勝手に話そうとするのを、慌てて止める。
こいつ昔からこういうとこあったな、そういえば。
「あら、あなたは確かオールハントさん。この方たちとパーティを?」
「んー、明確にそうと決まってはないけど、二つ依頼受けてそれぞれを手伝う、って言う方式は特に問題ないんでしょ?」
「ええ、取り分などは話し合って明確にしてもらえれば問題ありませんよ」
なるほど、その発想はなかった。
ぶっちゃけ雅樂は一人でも問題ないというか、ここまでずっと一人でやって……殺って? きたわけだからな。
お互いを手伝うという名目で受けることも可能なわけだ。
ちなみに五人とか六人のパーティもあるにはあるみたいだが、極端に少ない。
元々友達だったからとか、俺が理由に使えない様な理由を引っ提げてくるやつらを見てると、浮かれてんじゃねぇよ、なんて思ってしまう。
逆に雅樂の様にソロで……って言うと自家発電になっちゃうから一人でクエストに挑むやつも珍しくはないが、大半が俺や雅樂の様な余所者というわけだ。
現地人も弱いわけでは決してないが、彼らは慢心することが少ない。
戦闘中のヨトゥンの様なやつは稀だと聞いている。
「じゃあどうする?」
「あんたリーダーなんだから、ちゃちゃっと決めなさいよ」
「いや、いつの間に俺がリーダーになったんだよ。お前ら頼みなとこがまだまだあるんだから、適正なのさがしてくれよ」
「じゃあ不能が治りそうなクエスト探してみる?」
本当、言いたい放題言ってくれやがる……。
不能で何が悪い!?
そういう心無い一言がいじめを生むし、自殺に繋がることだってあるんだぞ!?
そうは思ってもこいつら何となく怖いし、言い出せない自分がいるんだけど。
こんなとこまでいじめられっ子根性が染み付いていやがる。
「まぁ、不能が治るクエストなんてないと思うけど……」
「えっと、リンさん。オールハントさんが言ってたことは本当なんですか?」
「…………」
「ご、ごめんなさい。そんなに睨まないでもらっていいですか……」
「……はぁ。本当ですよ。一昨日のクエストがなかなか心理的にきついものだったから、って言うのがあると思いますけど」
俺がそう言うと受付のお姉さんであるところのハルアさんが深刻そうな顔をする。
何か思い当たることでもあるんだろうか。
実際俺たちはクエストの完了報告はしたが、内容まで事細かに語ったわけではない。
だから事情を察するにしてもある程度の想像でしかないんじゃないか、というのが正直なところではあるんだが。
「ゴブリンの殲滅でしたよね、確か」
「ええ」
クエストボードを見ていた四人も、俺とハルアさんが深刻な雰囲気になったのを見て動きを止める。
こいつら貪欲すぎんだろ……。
そんなに俺に復活してもらいたいのか?
「もしよければ別室で、どういう内容だったか聞かせてもらってもいいですか?」
「え、別室?」
一瞬、年上のお姉さんが手ほどきをしてくれるのか、みたいな連想をしてしまい、思わず上ずった声が出てしまう。
もちろんあいつらにも聞かれていて、何想像してんのよ不能が、とか罵られまくったわけだが。
そんなに言うならお前らもついてこい、と俺は誘ってハルアさんを含めた六人で紹介所の別室へと入っていった。
「ここはね、冒険者の相談所としてよく使われるんだけど……まぁクエストの内容によっては話しにくいとかあると思うから」
「…………」
話しにくい、か。
もちろん一昨日のことを指しているんだということはわかる。
そしてその内容が嬉々として語れることではないことも。
しかしこの世界においては日常のワンシーンに過ぎないのかもしれない。
そう考えると俺が抱えた闇は、一体何だったのかと思わされる。
「なるほど、そういうことが……」
「何よ、この世界じゃそんなの日常茶飯事だし、凛だって聞いたことあったんじゃないの?」
「見るのと聞くのじゃ大違いってことさ。お前だって、初めて見た時はさすがにびっくりしたとかあったんじゃないのか?」
「私の武器は洞窟みたいな狭い場所に向かないし、ゴブリン討伐なんか請けたことないもの」
「ん? ってことは何だ、お前別に見たことはないのか?」
俺がそう言うと、雅樂は不思議そうな顔で俺を見る。
見たこともないのに俺をなじったのか、こいつ。
割と衝撃的なシーンだったと思うし、くっころとか嫌いじゃなかった俺だけどあれ以来多分トラウマに近いものを感じているはずだ。
「多分……というか私の考察をお話ししてもいいですか?」
ハルアさんが少し考えたのちに、俺を見る。
首肯で応えるとハルアさんは俺以外のメンバーを見た。
「これは、多分というだけの話です。私はリンさんではないので、私がリンさんだったらこう考える、という程度の、参考にとどめてほしいんですが」
「わかりました。お願いします」
「リンさんはまだ若いですし、恐らく旅の仲間とは言っても皆さんを女性として意識して見ていたんだと思います」
「…………」
まぁ、ぶっちゃけソロ活動のオカズにしていたこともあるし、何度襲ってやろうと思ったか知れない程度には意識していただろう。
否定しようのない事実だ。
こいつらのせいで俺の同胞が何億も死んでいったんだ……。
そんなことを考えていると、雅樂の視線が死線に変わりそうな勢いになっていることに気づく。
それはマジでシャレにならないから、どうか我慢して聞いてください。
「そしてその女性方と一緒にこなしたクエストで、変わり果てた女性たちを何人も目撃した。おそらく苗床にされていたんだと思いますし、玩具にされていたなんて話もよく聞きます」
覚悟が足りなかったり、ゴブリンだからと侮った結果がああいうものなんだろうということは俺も理解している。
ただし、理解と目の当たりにするのは別物なんだということを、一昨日思い知ったというわけだ。
「ここからはあまり言いたい内容ではないのですが……気を悪くしないでもらえると助かります。
おそらくリンさんがみなさんとそういう肉体関係になったりした場合に、後々そのゴブリンなどの魔物に滅茶苦茶にされるところやされてしまったところなどを連想して重ねてしまった、というのが私の考えです」
ある程度自分でもそうなのかな、みたいな考えはあった。
そして俺はこいつらを守りたい、って思ったから自らの手を汚して人間もろともゴブリンを葬ったのだから。
実際他人からそう言われてみると、やはりそうだったんだなという考えが頭に固まってくる。
「もちろん聞いた限りのことですし、私は実際見ていませんが……リンさんの若さなどを考慮してみると、自然とこの説に行き当たりました」
「…………」
「…………」
「まぁ、リンがこっちきてから毎日の様にソロやってたのは知ってるけど」
「知ってたのかよ!!」
アルカの言葉に思わず反応してツッコミを入れてしまう。
恥ずかしすぎるだろ……気づいててもそういうのは空気読んで黙っててくれよ。
「まぁ、私たちをそういう目で見たくなる気持ちはわかるけどね」
得意そうなアルカだが、お前の出番は三人の中でもダントツに少なかったと言っておこう。
もちろん口には出さずにな。
ただ可愛いだけの口の悪い聖職者で抜けるほど俺は、ソロが上手いわけでもないからな。
「でも今は私もいるんだし……別に凛が危惧してる様なことにはならないと思うけどね。間違って私が手を滑らせて殺しちゃったりでもしない限りは」
「…………」
さらりと恐ろしいことを言いやがって。
それ間違いなく俺が巻き込まれるか、当てる気ないのわからないで止めようとしに行って俺だけ死んじゃうパターンだろ、わかってるんだからな。
見ろよ、みんなだってドン引きでお前のこと見てるじゃないか。
「その原因がわかったからって、俺の状態が良くなるとは思えないし……時間に任せるしかないんじゃないかって俺は思ってますけどね」
「その時間が何年っていう保証もなければ、もしかしたら一生治らないかもしれないのに?」
雅樂が心配そうに俺を覗き込む。
こいつが心配してるのは、俺の下半身具合か?
それとも俺自身なんだろうか。
もっとも向こうの世界なら子どもが欲しいとかってことなら最悪精子だけ取り出す、なんてことだって出来るんだろうが……こっちの文明じゃそんなことできそうにないから、そんな風に心配になるのもわからなくはないけどな。
もちろん子どもがほしいなんて言われているわけじゃないけど。
「だったら今日は敢えて何の関連もなさそうなクエストに挑む、というのはどうでしょう?」
ヨトゥンの提案は思いもよらないものだったが、俺としては関連しそうな方が色々と思い出して逆効果になるんじゃないか、なんて思っていたから、正直ありがたい。
俺たちはひとまず洞窟へ入らなくて済むクエストを二つ、見繕うべくロビーに戻っていった。
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