やり直し女神と、ハーレムじゃないと生きられない彼の奮闘記

スカーレット

第21話

ハーレム結成から早くも一年以上が経過して、時期はもうすぐクリスマスというところまできている。
私たちは中三になっていて、受験勉強も追い込みというところだ。


この一年の間にも沢山のイベントによって絆を深めてきた私たちだが、傍から見れば歪な関係に見えるだろう。
それでも手探りで、伝令も数々クリアしてきたし、大輝が今もちゃんと生きて私の傍にいるということがその証だ。


しかし、そんな風に頑張ってきた私たちだったが、ここへきて朋美の様子が最近おかしいということに気づく。
これに関してはあの大輝でさえ気づいている様子があるから驚きだ。


何かあったのかと聞いたこともあるが、何もないよ、と取り繕った笑顔で返ってくる。
要領を得ないし、無理やり聞き出すのも、と考えてひとまずは本人が話す気になるまでは放っておこうと考えていた。




『緊急ミッション!デデーン!!』




……は?
何、緊急ミッションって。
何で効果音まで口で言ってんの、このシステム。




『この後訪れるハーレム崩壊の危機を回避せよ!!※これは特殊ミッションです。あなたの行動一つで未来は大幅に変わりますが、あなたの発言によっても未来は大幅に変わってしまいます。あなたが取る行動が正解で会った場合、ハーレム崩壊を防ぐことができます』




ハーレム崩壊?
どういうことだろうか。
大輝が実はハーレムを望んでなかったとか?


いや、それはないと考えていいはずだ。
何故なら彼は最近、ちょっと調子に乗ってきてる?ってくらいに私たちとの関係を楽しんでいる様に見える。
だとすると、この場合朋美に何かあると考えるのが妥当か。


しかし何て言うか大雑把なミッションだな……。
ていうか、※をコメって発音するのか。まぁ、わからなくはないけど。
いや、問題はそこじゃないな……。


崩壊するってことは、大輝か朋美に何らかの心境や環境の変化がある、ということだと考えられる。
それがたとえば心変わりなら、私に止める術はない。
しかし、あの様子にあっても朋美が大輝を思う姿勢は変わっていない様に見える。


だとすると、朋美がハーレムを抜けざるを得ない様な事態、ということになってくる。
親のコネで結婚しなきゃいけなくなるとか?
いや、そこまでのお嬢様って感じでもなさそうだけど……。


あとは何だろう……わからん。


いずれにしても、今回はかなり大きな動きがあると見て間違いないだろう。
って……いや待てよ?
ハーレム崩壊ってことは、大輝の死の運命が復活してるってことか?


一大事じゃないか!!
なのにあんなふざけた調子で何がミッションだ!!
いや、こんなところで一人憤慨していても仕方ない。


とりあえず色々調べてみないことには、わからないことだらけなのだ。
先ほどの私の推論だって、あくまで推論でしかない。
まずはどうにかして事情などを把握しなくては。




「俺たちにも言えない様なことなのかな……」


把握しなくては、と息巻いたはいいものの、私自身が朋美に会う機会がなく、手詰まりになっていたある日の大輝の言葉。
悲愴な感じが伝わってきて、こちらとしても前までの様にはっきりアドバイスなんかをあげられないのがもどかしい。


「ただ単に調子が悪かったりってことも考えられるけどね……」


気休めにもならない上に、私自身も絶対こんな理由じゃないだろ、と思いながら返す。
こんなことしか言えないのが腹立たしくさえある。
大輝としても私を頼りにしていたらしく、その私から大した情報が出てこないことにややがっかりした様な顔をしていた。


くそ、この私が大輝にこんな顔させることになるなんて……。


更に苦悩すること数日。
もうあと何日かでクリスマス、というところまできてしまっている。
焦りばかりが募って、最近の私はイラついていた。


そんな時大輝からメールがあって、やはり朋美の様子がおかしいということを知らされる。
こうなったら大輝に朋美を尾行してもらおう、と考えて私はその旨を大輝に伝えた。
上手く行くかは正直微妙だが、なる様にしかならないだろう。


そして翌日。
大輝は朋美を尾行している頃合いだ。
今回、私は正直こうして手をこまねいているしかやることがない。


今までだったら考えられない様な展開だ。


『朋美の家がわかったから、今から前まで行く』


意外にも大輝はちゃんとやれてる様で、ほっと胸を撫で下ろす。
追い込まれている状況というのは大輝にとって、力を発揮できる状況だし……何ならこのまま全貌を暴いてくれたりしないだろうか、なんて考えてしまう。


気を揉みながら返信のこないメールを待つこと数時間。


『返信遅くなってごめん!とりあえず朋美の家に行ってきた』


どうやら無事に任務を遂行できた様だ。
昼を食べ損ねていたので、ラップしてあった昼食を食べながらメールを読む。


『心配してたんだよ、どうだった?』
『色々あったんだけど、とりあえず朋美が塞ぎこんでた理由は、家族で九州に引っ越さないといけないから、ってことらしい』


引っ越し……九州って……。
さすがに遠すぎる。
何だってそんなことに……。


ノルンだったら何か知ってるかな。
あとで聞きに行っておくのがいいかもしれない。


『引っ越しか……しかも九州ってちょっと、突拍子もない話だね。他には?色々あったって言ってたけど』


その色々の部分が何となく気になる。
正直あまりいい予感はしない。
私はママの作った餃子を食べながら、ドキドキする鼓動を抑えて大輝の返信を待つ。


『これは言うのを考えてたんだけど、どうせ会ったらバレるし言っとくと、かなりこっぴどくやられた。朋美の親父が登場してさ。タコ坊主みたいな見た目して、強いの何のって……』


何だって……?
大輝を、傷つけたってことか……?
怒りに我を忘れて、つい携帯を握る手に力がこもってしまう。
携帯がミシミシと悲鳴を上げる音で我に返って、慌てて力を緩めた。


『で、そのタコ坊主とやら、私が殺しちゃっていいの?』


感情に任せてつい怒りのこもった内容になってしまった。
いや、マジで殺してやりたい。
生まれてきたことを後悔させてやりたい気分だ。


『まぁ待てって……俺が殴られたのは半分自業自得みたいなもんだから……』


大輝が何かしくじったということだろうか。
というか、そんな遠くに行っちゃうってことだと……朋美は必然的にハーレムを抜けることになる。
ってことは、大輝の死亡ルートが、復活しちゃわないか?


いや、このままいけばまずそうなっておかしくない。
朋美を失って、大輝までも失うなんて……そんな未来、絶対認めたくない。
せっかくここまで頑張ってきたのに、ここでこんな残酷な運命が待ってるなんて、誰が想像できるのか。


いずれにしても、このままという訳にはいかない。
怒りに震える手を必死で抑えつけて、私は神界へ行くことに決めた。




「一年ぶりくらいか?よくきたな、スルーズ」


相変わらずのごつい鎧主婦、ヘイムダル。
いや、少し主婦スキル上がってるか?
どうもいつもの転送地点にいないと思って探してたら、何とヴァルハラの窓をそれはもう隅々までピカピカに磨き上げていた。


「えっと……人間界だともうじき年末だし、大掃除の風習があったりするけど……こっちにもそんなのあったっけ?」
「いや、私のは日課だ。やってると楽しくなってしまってな。やめ時がわからなくなってしまうんだ。ちなみにこのあとは台所の掃除を……」


そう言いながらもヘイムダルは掃除の手を止めない。
あのごつい鎧の、しかも顔面を全部覆う兜をかぶっているのにどうやっているのか、はあーっと息を吐きかけてキュッキュキュッキュやって悦に入っている。


「そ、そうかよくわかったよ。とりあえず今日はそういう掃除談義をしにきたんじゃないんだ。ノルン、何処にいるか知ってる?」
「ああ、中にいるぞ。今頃私の作ったアップルパイを食べている頃だと思うが」
「あ、アップルパイ?あんたが作ったの?……まぁいいや、聞いてるとまた長くなりそうだ。ありがと、またね」


こいつは一体何を目指してるんだ……主婦スキル上げまくって、本当にオーディンと結婚したいとか言い出さないだろうな。
とにかくノルンは中にいるとわかったことだし、中に入ろう。
どうせエントランスにでもいるんだろうし。




「やっほー、スルーズ。そろそろ来ると思ってたよ」


ノルンがフォークを口に咥えてこちらを向く。
アップルパイと一緒に、フォークまで食べちゃう私可愛いアピールか?


「は?何でよ」
「え、だって、もう体感したでしょ?伝令ちゃんバージョン1.02」


そう言いながら口いっぱいにアップルパイを詰め込んで私を見る。
どうでもいいが、顔小さめのノルンがほっぺただけやたら膨らんで、別の生き物みたいになってんだけど……。


「何だそれ……いつの間にバージョンアップとか……。てかあれか、あの寒いデデーンとかほざくやつ」
「うん、そうだけど……寒いってひどくない!?可愛いじゃん!私の愛らしい声で、デデーン、って」


フォークを突き出し、得意げにノルンは言う。
ていうか口に入れてたもんこっちに向けんな。
もし唾液飛んで来たら、お返しでダイレクトに大量の唾吐きかけてやるからな。


「自分で言うな……あと音のデータくらい何処からから持ってくればいいだろ」
「あれ、録音するの結構恥ずかしかったんだからね……」


顔を赤らめながらも、アップルパイを食べる手は休めない。
歪みねぇな、本当……。
つーか何だよ、結局恥じてんじゃないか。
なのにあんな寒いことを体張って……って、そんなこと言ってる場合じゃなかった。


「いや、今回の用事はそんな、どうでもいいことじゃないんだって」
「ちょっと、どうでもいいって何!?そんなに鬼畜仕様がお好みだったら、今からでも……」
「ほう、やってみろ。ちなみにそんなことして私が次またやり直しになったら、首に縄付けてでもあんたを向こうに同行させて、一緒にやり直させるからな」


この私に脅しか、面白い。
目には目を、って昔の偉い人も言ってたしな。
ならば私は更にその上を行こうじゃないか。


ちなみにそんなことになった場合、ノルンは今の記憶持ってないわけだし、私よりはいくらか楽なはずだけど。
いや、記憶ないから逆に混乱するか?
どっちにしても、ここまできてそんなことにさせちゃうわけにはいかない。


「わ、悪かったよ……で、要件は何なの?」
「最初からそういう態度でこいよ、まったく……今回の伝令、正直わかりにくいことだらけでほぼお手上げなんだ。朋美の家族についてとか、知ってるだけの情報がほしい」
「……むぅ……。朋美ね……簡単に言うと土建屋の娘だね。父親が社長やってる会社が、最近かなりの経営不振に陥ってるみたい」
「経営不振?何でまた……」
「詳しいことはわからないけど、何かもめたっぽいかな、どうやら。喧嘩っ早い人みたいだし。こんな感じの人だね」


そう言ったノルンが漸くフォークから手を離して、朋美の父親の画像を水晶に映す。


「ちなみに、強さで言ったらこの人もう人間の域超えてる。神とまでは行かないんだけど……エインフェリア級には強いかもしれない」


何だこれ、ヤクザっぽいな……んでやたらごつい。
ていうかエインフェリア級って……これと喧嘩したのか、大輝……人間の身でそりゃ無謀ってものだ。
でも、そんな化け物みたいなやつが何で、こんな時代に……いや、それより今はもっと考えないといけないことがある。


「それで、経営が傾いちゃって……資金繰りの関係で九州に行かなくちゃならなくなったみたいだね。長崎で会社再建しないといけなくなったらしいよ」


大輝はこの辺の情報を仕入れているのだろうか。
まぁ、仕入れていようといまいと、今回できることと言ったら……本当にないな。
八方塞がりってやつか、これ。


「事情は大体わかった。それを踏まえた上でノルンに聞きたいんだけど」
「どうしたの、改まっちゃって。言ってみそ」


またそれか……気に入ったのか?
今の人間界でそれ言ったら、元ネタ知ってる人間の方が少ないかもしれないのに。
まだ半分もある、えへへ、とか言いながらノルンは再びフォークを手に取る。


話に集中しないんだったら、私が代わりに一気に平らげてやってもいいんだぞ、ノルン。


「率直に、私はどうしたらいいと思う?もちろん神の力は基本的に使えない。人間の、中学三年生の女の子として、って意味で」
「ふむ……スルーズが理想とする結末って、どんなん?」


またも口いっぱいにアップルパイを放り込んでノルンが問いかける。
ていうかお前、口の中のもんちゃんとなくなってから喋れよ、汚いな……。
見ろ、少しアップルパイ口から飛んじゃってるじゃないか。


「そりゃ……三人一緒に平和で、ってのが理想だよ。だって、そうじゃなかったら大輝が……」
「なるほど、まぁそりゃそうだよね。私が思うに、まず朋美を大輝の地元に引き留めてってのは中学生の力じゃどうにもならない。これはわかるよね?」


そりゃそうだろう。
仮にパパやママに頼んで、うちで引き取るなんて提案をしても朋美はまず了承しないだろう。
たとえ本人が了承したとしても、おそらく朋美の生活は我慢の連続になってしまうんじゃないだろうか。


パパの会社で融資させるってのも……やっぱり当事者同士で話す必要がある上に、パパはもちろん私だってタコ坊主とは面識がない。
そんな信頼関係皆無の相手に融資、ってなるともう子どもが口を挟む筋合いの話ではなくなるだろう。


「朋美はいずれにしても、長崎に行くことにはなっちゃうだろうね。これは確定してると言ってもいいかもしれない」
「ふむ……」


改めて言われると、何だか腹が立つな。
てかいつまで食ってんだ、んなもん一口だろ。


「だけど、今までと違った形で繋ぎとめるってことなら、もしかしたら可能かもね」
「何だよ、違う形って」
「さぁね?私から言えるのは、こんなところかな。何にせよ、大輝とももう一度よく相談した方がいいとは思う。今回はスルーズだけの力じゃ絶対どうにもならないから」
「…………」


それはついさっきも思い知ったばっかりだけど……。
意味がわからないことばっか言いやがって……。
結局情報は得られたけど、私に打てる手がないということに変わりない。


性格上、じっとしているのは性に合わないしストレスを溜めそうな気がしてくる。
だけど、これが大輝を生かす結果につながるのであれば……そう考えてとりあえずやりきれない気持ちも、飲み込んでおくことにする。
これが、って結局何したらいいんだ、私も大輝も。


とりあえずこのままノルンに当たっても仕方ないということで、私は人間界に戻ることにした。
この情報が果たして何かの役に立ったりするのだろうか。




「まぁ何だ、俺のことより今は朋美のことだろ……」


翌日、私は大輝の地元まで足を運んだ。
大輝の様子も見ておきたかった、というのが一番なのだが……見て、溢れる怒りを止めるのが大変だった。


公園のベンチに腰かけている大輝の顔に貼られた絆創膏や湿布。
何ということをしてくれたんだ、タコ坊主……!
無意識に、チチオヤ殺ス♪などと口ずさんでしまって、大輝が慌てて話題を変えた。


「これさ、俺なりにも相当考えたんだけど……子どもに何とかできる問題じゃないよな」
「まぁ、子どもだけだとまずどうにもならないだろうね……そのタコ坊主を葬らない限りは。でも、解決策はあると言えばあるんだけど」
「まぁ、葬るのはなしの方向で行くとして、どんな方法か聞いて大丈夫か?」


私は昨日のノルンとの会話の中でも考えた方法を打ち明け、大輝もそれは思いついていた様でシミュレーションしていた内容を打ち明けられた。
もう一つ考えていたこともやはり子どもの口出し出来る範疇ではなくなっている、という大輝の発言に私もため息しか返せなかった。


「世の中上手く行かないもんだなぁ……」


大輝には、こんな形で世の中に絶望なんかしてほしくなかった。
なのに、こんな顔をさせてしまっているのはこの私だ。
頼りにしていた私から光明が見いだせないという現状、それが大輝の顔を曇らせている。


「…………」


本当に……何もできることはないのだろうか。
打てる手がないって、決めつけているけど……しかしどれだけ考えても今の身分ではどうにもならないことばっかりだった。


「大輝、傷は大丈夫?」


しかし本当に見ていて痛々しい。
私の大輝の可愛い顔を、こんなにしやがって……。


「ああ、まぁ……多少痛みはするけどな。こんなの舐めとけば治るだろ」
「ふむ……なら、私が舐めてあげよう」
「は!?」


こうでもしてないと、自分がダメになっていきそうな気しかしない。
ごめんだけど大輝、生贄になってもらう。


「ヘイヘイヘーイ、ストップだ春海、落ち着け。こんな人目あるとこでやることじゃない……そうだろ?」
「何言ってるの?自分じゃ舐めれないでしょ」
「春海のそういうのは、俺の中だけに留めておきたい。他の誰にも見せたくないんだ……わかってくれるか?」


何となくわからないでもないけど……そう言われて私はこれ以上無理やりにでもやってやろうという気を削がれてしまった。
今日はどうも調子が出ない。
凹んでる場合じゃないのに、勝手に心が凹んでいく。


「ふむ、珍しくカッコつけたね。室内ならされるがままなのに」


すっかりと気分が萎えてしまって、ちょっとふてくされた様な態度になってしまう。
これも私らしからぬ態度かもしれない。


「まぁ、昨日もカッコつけた結果がこれなんだけどさ……」
「別に大輝がカッコよかったことなんて、私の記憶にはほぼないんだけどね。大体いつもヘタレてるし」


ああ、ダメだ……どんどん言葉にトゲが……。
大輝を傷つけても私には一つも得はないというのに。


「そういうこと、思うのは別に自由だけど……口に出すのは勘弁してもらえませんか……」
「何を今更。だってさ、大輝がカッコよかったことなんかほとんどないんだし……ていうかいつもいーっつもヘタレてカッコ悪い癖に!!」
「!!」


ああ、ちょっと言い過ぎた……。
どうしてこう、私は……ここまで言うつもりじゃなかったのに……。
なんて思ったのに、大輝は私の言葉を受けてはっとしている。


えっと、何?もしかして被虐趣味にでも目覚めちゃったの?
だけど今私、そんな気分じゃないから、ごめんね。


「そうか……そうだな。春海、俺……タコ坊主ともう一回戦うわ」
「……え?」


え、ちょっと待って。
マジでマゾに覚醒したとか?
ちょっと勘弁してもらいたいんだけど、こんな時に……。


「それしか、方法ない気がしてきた。俺たちがあいつをどれだけ思っているか、見せてやるのが一番いいと思う。それには、俺自身が必死で何かをしているのを見せるのがいい」


……どういうことだろう。
もしかして、大輝は私にも思いつかなかった解決策を思いついたってこと?
いやいや、まさかそんな……あのピヨピヨしてた大輝が……嘘でしょ?


「だけど……昨日そこまでボコボコにされたんだよ?」


認めたくないわけじゃないが、何となく止めてしまう。
今よりボコボコにされるところなんか、正直見たくない。


「まぁそうなんだけど……でも、他のことを一生懸命やっても、朋美の心には響かないかもしれないだろ?だったら、俺が命を賭けているところを見せる方が確実だよ」


何と言うことでしょう。
大輝は私が絶望して、割と酷いこと言ったのにその酷い一言からヒントを得て、答えを見つけてしまっていました。


「……すごいこと、考えるんだね……」


正直驚きを隠すことはできなかった。
大輝が命を賭ける……朋美じゃなくても、他の女であっても、自分の為に命を張ってくれるという男に心動かされないということは、ほとんどないのではないだろうか。
だとすれば勝算はある。


そして、これは大輝じゃないとできないことだ。
恥ずかしながら私は物理的にハーレムを守ることばかり考えて、この答えに辿り着けなかった。
だけど、大輝は……この局面で三人の心の別れを阻止する妙案を思いついたのだ。


いや、寧ろこれは大輝だから辿り着けた、大輝ならではの答えだと言えよう。
あの大輝がここまでの結果を見せたのだ。
だったら、私にできること、それは……。


「だったら……せめて犬死にならない様にしないと。だって、大輝が死んじゃったら元も子もないでしょ?だから……」


影から支えて守ること。
つまり、大輝をできる限り鍛えて強くしてあげる。
今のままあのタコ坊主と戦っても、最悪瞬殺なんてことになって、朋美に必死さアピールどころではなくなってしまうかもしれない。


あの大輝が、自分の力で見つけた答え。
だったら私は全力で応援したい。
そして、絶対に上手くやってもらう必要がある。


勝てるところまでは行かなくても、大輝の心意気が朋美に伝わる結果になれば……!
こうして、私と大輝の希望を掴むための稽古が、今始まる。
こうなったら、とことんやってやる。


絶対、あの胸糞悪い運命に、打ち勝って見せる!
私じゃなくて大輝がな!!

コメント

  • 姉川京

    ハーレム崩壊とか話の内容が凄いwww

    続き投稿楽しみにしてます!

    これからもお互い頑張りましょう!

    あともし宜しければ僕の作品も読んでください!

    0
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