コンビ二家族とAIの妖精

坂崎文明

弱者のランチェスター戦略

「妙子さん、テントもできたし、準備万端ですよ。弁当の価格は半額でいいの?」
  
 副店長の村上妙子が所属している婦人会の神沢のおばあちゃんが訊いてくる。婦人会会長の神沢福子である。今年、七十四歳になる。
 少し小太りだが、身体の動きは軽く、エプロン姿でテキパキと仕事を捌いている。
 
「そうですね。仕入れ値が六割引きなので、それでも二割も儲かるから十分です。ありがとうございます。それに昨日の弁当なので早めに売りたいし、何か神沢町のみんなに申し訳ないんですけど」

 妙子は頭を下げながら、笑顔で答える。

「元は八割引なので、買い取ってもらって、わしらも儲かってるので大丈夫だよ。妙子さん、困った時はお互い様だよ。気にすることはないよ。春樹さんにはいつも釣りでお世話になってるしなあ」

 老人会の会長の神沢仁である。今年、八十歳になる。
 神沢福子の夫で痩せ型で仙人のような白いひげを生やしていて、飄々としている。
 何でも神沢家の七百七十二代当主だそうで、この神沢町の大地主でもある。天皇家が現在、百二十五代目らしいので、相当、古い家系で少なくとも縄文時代ぐらいまで遡れるはずである。最早、眉唾、ファンタジーな話であるが。

 直接の子孫の有名人では人気プロレスラー神沢勇吾、その娘の女子プロレスラー神沢勇などがいる。親戚に人気アイドル歌手の秋月玲奈、内閣総理大臣の安東要などがいるが、春樹も妙子は知らない。
 これが後にコンビ二家族の命運を分けることになる。

「弱者のランチェスター戦略、自分の商圏の顧客に集中せよかあ。しかし、ルナちゃんは凄いなあ」

 村上絆はコンビ二店舗の駐車場に集まって来ている保冷車などから弁当を店舗に運んでいた。
 昨日、<8-12>本部の一夜城店舗で販売されていたものである。
 神沢町、この町の顧客、つまり住民全員を味方につける発想は、確かに<弱者のランチェスター戦略>の基本だが、妙子が婦人会、生協の役員、民生委員などをやっていたり、日頃から春樹が早起きして老人会の公園の草抜きの手伝いなどをしていたからであった。

 ちなみに、一夜城店舗の建ってる土地の地主は神沢仁である。
 そこに店舗を構えた時点で、一夜城店舗は死地に嵌っていたとも言える。完全な敵地に城を築いてしまっていた。
 「全商品八割引戦略」はコンビ二家族の店舗担当SV早坂の提案だったが、実は彼はすでにコンビ二家族側に寝返っていた。
 絆は少し両親の偉大さを知ることになったが、商売には地域の人との絆が大事なんだなと改めて思い知らされていた。
 その日、コンビ二家族の反撃が静かにはじまった。













(あとがき)


安倍晴明と安東総理のやり直し転生譚
https://www.alphapolis.co.jp/novel/771049446/809038308


少女格闘伝説
https://www.alphapolis.co.jp/novel/771049446/998191115


アルファポリス第2回ライト文芸大賞 
https://www.alphapolis.co.jp/prize



 人気プロレスラー神沢勇吾、神沢勇、人気アイドル歌手の秋月玲奈は「少女格闘伝説」(第一部は完結している)の登場人物である。
 内閣総理大臣の安東要は「安部清明と安東総理のやり直し転生譚」の主人公である。

 妙子のモデルは僕の母親であるが、老人会、婦人会、生協役員を兼任、民生委員で、老人会で早朝から公園の草抜きをしたりしてます。
 自宅が地域のみかん農家の委託販売所になっていて、僕の妹はヤクルトの販売員だが、母親が老人会、婦人会、生協などで注文を取って、そのお陰で妹はヤクルトで売上げを毎年表彰されて、会社からディズニーランドなどに招待されている。
 で、僕はヤクルトのヨーグルトやレトルトの味噌汁を食べ(味噌を足しているが)、サービスでもらったクズみかん一箱とか(みかけは悪いが甘くて美味しい)を食べることになる(笑)

 僕の母親は高卒だけど、もう地域を動かす女になっていて、母親が動くと町が動くという感じになっている。最近、母の旧姓が秦氏六十姓に入っていることが判明して何となく納得してる。個人の資質なんだろうけど。
 毎日、卵とか(買ったことがない)、野菜とか、昆布とか何かが家に届く。
 何なんだこれは?と前々から思ってるが、これが出来たらもう商売は勝ったも同然だが、母親はボランティアでやってるだけである。
 地域住民の人脈を掌握してるので政治家になった方がいいが、性格的に向かないだろう。
 老人会、婦人会、生協、民生委員、公園の掃除などは消防団と同じで、手当てが付いたり、弁当くれたり、忘年会新年会は予算が出てタダでカニ甲羅とか、視察旅行(議員と同じ)に行ける役得はあります。
 毎月のように旅行か食事会に行ってるし、何故か週に数回、近くの果物販売店の奥さんに昼食を奢ってもらっているが、たぶん、何かの接待かと思われるが事情は知らない。

 
 

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