狩龍人と巫女と異世界と

GARUD

12 アップリケ

 気絶したおじいちゃんの懐をナツキが弄りサイフを手に入れた。
 ナツキはドヤ顔でサイフをアイテムBOXに入れた。
 その姿はまるで、昔の某RPGで他人のタンスやツボを漁る勇者のように堂々としていて、私はある意味関心してしまった。

「ユナ。金も手に入った事だし買い出し行くぞ」
「手に入ったと言うか、強奪したと言うか……スッたとも言う?」
「いンだよこのジジイのは。ポケットマネーなんてのは端金にもならねぇだろうし」
「まあ、今はおじいちゃんの生死より私のパンツの方が問題だしね」
「カカッ。ンだな。そンじゃまぁ、二百年ぶりの国内を探索だ!」
「おー!」

 おじいちゃんをその辺に転がしてナツキと一緒に神殿を出るあたり私も大概だな。

 街に出て、通りに差し掛かると人々の喧騒が聞こえてくる。
 そしていざ、通りに出れば流石は国と名乗るだけはあり、通りは商店街になっていてかなりの人がごった返すように行き来している。

「はぐれンじゃねぇぞ」
「私小さいから逸れちゃうかも……ねぇ、手ぇ繋いでよ」
「甘えンじゃねえよ」
「だめ?」

 上目遣いにうるりと瞳を揺らしてやれば、ナツキは面倒臭そうに一度、チッと舌打ちして手を差し出した。

 悪ぶってるくせに実は優しい男である。
 くれぐれもチョロいとは言ってはいけない。

「誰がチョロいだコラ」
「聞こえてた」

 どうやら心の声が自然と口から出てしまっていたらしい。

「兎にも角にもパンツよね」
「お漏らししてもいいように厚手のやつにしとけよな?」
「漏らさないし!」
「お前を抱き上げる度にふとももの下あたりが濡れてるんだが?」
「ちょっ?!なに言って?!」

 ナツキは唐突にしゃがみ、ペロンと私の貫頭衣を捲る。

「ななな?!」
「今は濡れてないみたいだが「ふぬんっ!」プペッ」

 最速で拳を頭頂部に叩き込む。
 舌を噛んだのか地面でのたうち回るナツキを全力で蹴手繰る。慈悲はない。

「ぜー……ぜー……」
「あいててて……」

 蹴り続けて疲れた私は肩で息をする間にナツキは立ち上がり、口では痛いと言いつつ実際には打撲痕など一切なく、砂埃を叩いて落としている。

「人通りの多いところで何してくれてんのよ!」
「いいじゃねぇか。誰も幼女の股関になんて興味はねぇよ」

 ナツキの言うとおり、私が蹴手繰っている間はなんだなんだ?と道行く人たちも興味深く観戦していたものの、いざナツキがなんでもないように立ち上がると──

 なんだただの兄妹喧嘩かじゃれあいか。

 とすぐに興味を無くして歩いていく。
 中には変なねちっこい感じの視線もあるが……

「特殊な方が私に何かしようとしたらどうするのよ」
「ンなもん……何にも出来ねえよ」

 粘ついた視線を向けてきていた輩にナツキは気が付いているぞ?と言わんばかりに鋭い視線をピンポイントで向ける。

 向けられた方はたまったものではなく、慌てて目を伏せて人混みに消えて行った。

「な?」
「なに感謝しろよ?みたいな目をしてんのよ」
「だって世界最強のボディガードだぞ?感謝して当然だろ?」
「そんなのただのマッチポンプじゃん」

 カカカッと笑うナツキに手を引かれながら、ぶ~ぶ~と頬を膨らませるわたし。
 
 そのままナツキに引かれ、一軒の店の前で立ち止まった。

「服屋だな。ここで買ってけよ」
「そうね。それじゃちょっと見てくるわよ」
「ついでに服も何着か選んどけ」
「ありがと。ってアンタに言うのも変か」
「ジジイの金は俺の物。よって俺に礼を言うのは間違ってねぇよ」
「ふふっかわいそうなおじいちゃん!」

 私が店の中に入っていくと、ナツキも後ろを着いてくる。

「ねぇ」
「何だ?」
「私、パンツを選びたいんだけど?」
「選べよ」
「アンタが横に居ると選べないでしょッ!」

 は?と疑問の表情を浮かべるナツキ。
 なんというデリカシーの無さなのかしら!
 しかも、ぷんすこと怒る私の態度に「ははぁん?」と言ってニヤリと口角を歪める。

「大丈夫だぜ?お前の下着姿なんかに興味なンてねぇからよ」
「な!なにおう!」
「なんだったらかわいいアップリケの付いたパンツでも買えばいいンじゃねぇか?ほれ、このベアーとかかわいいじゃねえかプププ」

 私に熊さんパンツを突き出してぷーくすくすと笑うナツキに私はこめかみに青筋を立てつつ、なんとか一泡吹かせてやろうと思考を巡らせ……ピーン!と閃いた。

「なるほど。ナツキはアニマル系が大好物っと」
「をい?」
「しかもお尻の部分のアップリケに大変興奮する……なるほど。とんだロリコンだわ」
「ンだと?」

 私をからかって余裕の表情を浮かべていたはずが、今はすっかりこめかみをピクピクと痙攣させている。堪え性のない男はダメねえ。

 ここで私がさらに煽る。

 冷ややかな目で、淡々とした口調で、それでいて丁寧に。

「何かしらロリコンさん?私は変態さんを喜ばせるためのアップリケ選びに忙しいんですけど?」
「だぁぁぁれが変態だ!」

 はい私の勝ち。

「あんたよあ・ん・た。もうこれ以上からかわないからあっちで私の服でもえらんでてよ」
「チッ……わーったよ!」
「あ、そうそう。服はあんたの好すみでいいわよ?へ・ん・た・い・さん」

 絶対に吠え面かかせてやる!と、負け惜しみを口にしつつも服はしっかりと選びに行ってくれるあたり本当に────

 チョロくて操りやすいなと私はほくそ笑んだのでした。


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