狩龍人と巫女と異世界と

GARUD

11 二つのプロローグ

「まぁ結局、全てを片付けた俺を待っていたのはいわれのない罪と、当時の仲間達の拘束と処刑。怒りに任せて国を滅ぼしてやろうとした俺に当時拘束されていた風凪の開放を条件に俺を誘き出したお前と風凪の裏切りで俺は岩の中へ」

 ナツキの悲痛な最後はなんとも可哀想ではあるが、それは一度横に置く。

 世界の成り立ちと、過去の戦争の成り行き。
 それはまさに──

「ナツキの最後はともかくとして、大まかな話はパーフェクトオンラインのプロローグのまんまだねこれ」
「なンだと?」
「プロローグとはいったい」

 驚くナツキと意味が分からず困惑するおじいちゃんを放り、私の思考は説明書のプロローグを思い返す。

 やはり、思い返せばパーフェクトオンラインにログインする前、説明書に記載されていたゲームの内容そのままだったのだ。

 でも、今の説明ではプロローグには不完全。

 たしか……続きは……

「魔の大地に再び厄災の火種が燻り始めた……異形の魂の欠片を取り込みし災悪の魔王が各地に現る……彼の者達が異形の魂の欠片全てを取り込みし時……世界の終わりが訪れる……う~ん……」

 記憶力には自信ニキな私だったけど、チラ見した程度でこれ以上は思い出せない。

「異形の魂を吸収した魔王か」
「巫女様!それは神託ですかな?!」
「これはプロローグって言って……あぁ、なんて説明したらいいのかなぁ……」

 何やらワクワクしたような口ぶりのナツキと大興奮のおじいちゃん。

「俺ン時は──果ての大地に一頭の龍が現れり……それはやがて厄災となり人々に襲いかかる……戦士たちは力を溜めうんぬんだったな」
「へぇ」
「まぁ結局、運営自体がメインストーリーとは別にイベントやら転職、転生に忙しくてパーフェクトレジェンドオープンから十年経った後もそんな龍は実装されなかったンだけども……」
「実装……この場合は現れた世界に喚ばれた?或いは……」

 この世界の為にナツキがプレイしていたパーフェクトレジェンドが存在していた……

 この導き出した答えがナツキと同じ物かどうかはナツキの真剣な眼差しが語っていた。

「だとすると……未来人の可能性があるナツキのパーフェクトレジェンドと、過去人である私のパーフェクトオンライン……時間軸が合わないね」

 方や未来で二百年前の魔龍王戦争。
 方や過去でその後の世界の危機。

「ンなどうでもいい事考えても仕方ないぞ?」
「どうでもいいわけないでしょ」
「いンやどうでもいい。要はその魔王達を俺が一匹残らずブチ殺せば解決するンだからな」

 犬歯を剥いて獰猛に笑うナツキの能天気な脳筋っぷりが素晴らしい。

 知力よりパワーとはよく言ったもんだね。
 そしてそんな脳筋は実際にやってのけそうな位には強いのだから、まったくもって頼もしい。

「まぁ、実際に戦うのはナツキなんだしソレでいいか」
「二百年ぶりの戦闘が無双一回で終わりってンじゃ味気ないかンな。暴れ倒すぜ!」
「巫女様。私には何がなにやらさっぱりですじゃ……」

 盛り上がる私とナツキに置いてけぼりを食らったおじいちゃんがしょんぼりと肩を落としていた。

「ロートルジジイはさっさと引退しとけ」
「だれがロートルじゃい!」
「正直、封印が解けたらお前は真っ先にブッ殺してやろうと思っていたンだがな……」
「ナツキよ……」
「貧弱なジジイになってしまって……」
「だ!誰が貧弱か!」
「お前だよ!そら、貧弱貧弱ぅぅ!」
「おのれぃ!うわ!この!鬱陶しい!やめ、やめぇい!」

 ナツキはおじいちゃんの前後左右から貧弱貧弱!と人差し指でツンツンと剥げた頭や出た腹や背中なんかを突いてからかっている。

 ちょっとした分身みたいに見える辺り、からかうのにも本気を出しているんじゃなかろうか?

 結局、分身殺法よろしくナツキの残像拳に翻弄されたおじいちゃんは荒い息を吐いて降参!降参じゃぁぁぁ!と声を上げた事でナツキはからかうのを止めた。

 おじいちゃん涙目である。

「結局、風凪はなんで俺を裏切ったんだ?」
「あの時は、わしも風凪も……家族を国に人質として取られていたのじゃ。ナツキをどうにかせぬと家族の命は無い……とな」
「ンで、お前に呼ばれて無防備に出てきた俺を封印した風凪は結局巫女としての責任を追求されて処刑……生き残ったのはお前だけか……」
「まことにすまんと思っとる……」
「二百年も前の事だ。許す事はできねぇが……怒り狂うほどの炎も残っちゃいねぇよ」

 そう言ってナツキはタバコを取出し、指を弾いて火を点けて気怠げに煙を吐く。

 遠くを見るような目をするナツキがなんだか無性に愛おしい。これは母性ね。

「よしよし。ナツキは偉いね」
「をィ……背伸びしてまで頭を撫でるな」
「ふふ。甘えていいんでちゅよ?ほらバブバブ~」
「幼女にバブみを感じてオギャるわけねぇだろッ!そして空気読め!っかパンツ買えよ痴女!」

 ペシッと頭を軽く叩かれ、ハッとなった私は慌てておじいちゃんに向き直る。

「すっかり忘れてた!おじいちゃんお小遣いちょうだい!今すぐにぃぃ!」
「わかっわかりましたからっ!揺さんで下さいぃぃ……おぅふ」

 おじいちゃんの首根っこ掴んで必死にお願いすると、何故か白目を剥いて意識を失ってしまった。
 横でくつくつと笑うナツキを睨みつけ、気絶してしまったおじいちゃんの頬をビンタビンタ!

 起きておじいちゃん!

 私のパンツはどうなるの!


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