狩龍人と巫女と異世界と
8 宿屋の一室で二人
力が再び封印されたナツキ曰く、飛剣等の召喚術を使うには魔力……ゲーム脳にも分かりやすく説明するとMPが足りないらしい。
じゃあもう一度キスをして力を開放すればいいじゃない!という事にもならないらしい。
『お前のその小さなナリじゃあ開放の儀式は一日一回までが限度だろ』
という事らしい。
なんでも、MPとは別に身体に物凄い負荷がかかるらしく、無理をすれば臓器に深刻なダメージが出る可能性があるとか。
というわけで、私達二人は城塞都市サイガで一泊する事になったのだが……
「部屋は一つだ」
「は?却下!」
「うるせぇ。岩の中から出て直ぐだぞ?手持ちに金がねぇンだよ」
「ぐぬぬ……」
歯噛みしている私をよそに、宿屋の店主は仲の良い兄妹だねぇなどとほざきながら部屋の鍵をナツキに手渡している。
「いう事を聞かない妹でして」
「はぁぁん?!」
「ははは。反抗期ってやつですよ」
コラ宿屋の店主!誰が反抗期かッ!
その慈しむような目を今すぐやめろ
「ほら行くぞ。い・も・う・と・よ」
「つぇぇぃ!」
「あいったぁぁ!」
イラッとした私がナツキの弁慶の泣き所を蹴ったのはある意味では仕方のない事だろう。
そうしてイライラしながらズンズンと部屋へと歩き、鍵を奪い取ってドアを開く。
「ベッドが一つね?」
「まぁ見れば分かるな」
私はビシッと床をんけど指さした。
「ンだ?床がどうした?」
「私がベッド。アンタは床」
「あン?」
「バカなの?」
「巫山戯んなチビ助。俺が金を出してるんだぞ?」
「はぁ?こんな宿の一部屋しか取れない程度の金を出した程度で威張るの?威張りん坊なの?威張りん坊将軍なの?」
「宿屋の店主にチクって来るか。きっとお前の飯だけ虫入りとかになるぜ?」
「やめて?」
ごめんない調子に乗りました。
私は上目遣いで目をうるうるさせて懇願した。
ご飯は大事なのだ。
「本来なら俺がベッドでお前が床なンだが……折衷案を提案してやらないでもないぜ?」
ニヤリと口を歪ませるナツキ。
「せせ、折衷案ね!い、いいわよ!聞いてあげるわ!」
あくまでも気が付かない、分からない、勘付かない!といった感じを必死に出す私だが、正直次のナツキの言葉は当然の如く
「二人で一つのベッドで寝る……だ」
「断固拒否よこのロリコン!十二、三の幼女の私に一体何をするつもりなの!」
「一体何をって……男女で一つのベッドだぞ?そりゃあ一体になるンじゃねぇか?」
「いいいいい、いったたたたィ」
当然のように放たれた言葉に、かあああ!と私の顔が火を吹くように熱を帯びる。
始めてのチュウですら朝方に済ませたばかりだというのに、その夜に最後までを初体験なんて!
いやんいやんと手で顔を覆ってクネクネしている私を放ったらかし、ナツキは早々に上着を脱ぎ捨て、上半身裸になってベッドへ向かう。
なんつー背筋しとるんじゃぃ!
いえ、決して指の間からチラチラと様子を覗いていたわけではございませんよ?
「おら、いつまでそうしてるンだよ。早くこっちに来い」
「は、はやきゅってぇ」
胸板厚すぎいぃぃ!マーベルなキャプテンみたいぃぃ!
私はまるで熱に浮かされるように……いや、実際に物凄く顔が熱いことから確実に発熱しているであろう。
よろよろとおぼつかない足取りでナツキが待つベッドに向かう。
「おら、寝ンぞ」
ベッドの横にたどり着いた私はナツキに腕を引かれベッドの中へと吸い込まれる。
「ま……って……こ、心の準備が……」
「ア?寝るのに心の準備が要ンのか?」
「ととと、とうじぇんれしょ!」
ベッドの中で身を硬くし、カミカミになる私をジトリとした目で見ると、スッと手のひらが伸びてくる。
「お前、熱出てるじゃぁねえか」
「……ふぇ?」
てっきり、見せられないよ!なアレやソレをされるのではないか?と恐怖と……ほんの少しの期待をしていた私。
でも、ナツキの伸びてきた手はそのまま私の額にピタリと当てられて……
単に私の体調を気遣ってくれただけなのだと知り、上がっていた熱は一層上昇してしまった。
「転移初日にこんだけ色々あったンだ。熱も出るわな」
ナツキは恐らくアイテムBOXから取り出した革の袋に一度手を突っ込み、その後袋を結いて私の頭の裏に敷いてくれた。
「冷たくて気持ちいい……」
「魔法で袋の中に氷を作った。言わば簡易氷枕だな」
後頭部から首裏にかけ、ひんやりとした氷枕の冷たさに私の緊張は何処かに行ってしまったのだろう。
コロンと体を傾けて横にいるナツキの方を向く。
「ありがと……ナツキって見た目と違って優しいんだね」
「あ?見た目も優しそうな好青年だろうが」
「ふふっ」
「今の笑う所じゃねぇぞ?」
和むと同時に強烈な眠気が襲ってくる。
大きなあくびをするとナツキが部屋の明かりを消してくれた。
「明日の昼にはマハー・ヴァイロに向かうから今日はもう寝とけ」
「…………うん。………おや………す………み」
私は眠気に逆らわずにそのまま意識を手放した。
そのナツキの言葉の意味を何一つ考えないまま────
じゃあもう一度キスをして力を開放すればいいじゃない!という事にもならないらしい。
『お前のその小さなナリじゃあ開放の儀式は一日一回までが限度だろ』
という事らしい。
なんでも、MPとは別に身体に物凄い負荷がかかるらしく、無理をすれば臓器に深刻なダメージが出る可能性があるとか。
というわけで、私達二人は城塞都市サイガで一泊する事になったのだが……
「部屋は一つだ」
「は?却下!」
「うるせぇ。岩の中から出て直ぐだぞ?手持ちに金がねぇンだよ」
「ぐぬぬ……」
歯噛みしている私をよそに、宿屋の店主は仲の良い兄妹だねぇなどとほざきながら部屋の鍵をナツキに手渡している。
「いう事を聞かない妹でして」
「はぁぁん?!」
「ははは。反抗期ってやつですよ」
コラ宿屋の店主!誰が反抗期かッ!
その慈しむような目を今すぐやめろ
「ほら行くぞ。い・も・う・と・よ」
「つぇぇぃ!」
「あいったぁぁ!」
イラッとした私がナツキの弁慶の泣き所を蹴ったのはある意味では仕方のない事だろう。
そうしてイライラしながらズンズンと部屋へと歩き、鍵を奪い取ってドアを開く。
「ベッドが一つね?」
「まぁ見れば分かるな」
私はビシッと床をんけど指さした。
「ンだ?床がどうした?」
「私がベッド。アンタは床」
「あン?」
「バカなの?」
「巫山戯んなチビ助。俺が金を出してるんだぞ?」
「はぁ?こんな宿の一部屋しか取れない程度の金を出した程度で威張るの?威張りん坊なの?威張りん坊将軍なの?」
「宿屋の店主にチクって来るか。きっとお前の飯だけ虫入りとかになるぜ?」
「やめて?」
ごめんない調子に乗りました。
私は上目遣いで目をうるうるさせて懇願した。
ご飯は大事なのだ。
「本来なら俺がベッドでお前が床なンだが……折衷案を提案してやらないでもないぜ?」
ニヤリと口を歪ませるナツキ。
「せせ、折衷案ね!い、いいわよ!聞いてあげるわ!」
あくまでも気が付かない、分からない、勘付かない!といった感じを必死に出す私だが、正直次のナツキの言葉は当然の如く
「二人で一つのベッドで寝る……だ」
「断固拒否よこのロリコン!十二、三の幼女の私に一体何をするつもりなの!」
「一体何をって……男女で一つのベッドだぞ?そりゃあ一体になるンじゃねぇか?」
「いいいいい、いったたたたィ」
当然のように放たれた言葉に、かあああ!と私の顔が火を吹くように熱を帯びる。
始めてのチュウですら朝方に済ませたばかりだというのに、その夜に最後までを初体験なんて!
いやんいやんと手で顔を覆ってクネクネしている私を放ったらかし、ナツキは早々に上着を脱ぎ捨て、上半身裸になってベッドへ向かう。
なんつー背筋しとるんじゃぃ!
いえ、決して指の間からチラチラと様子を覗いていたわけではございませんよ?
「おら、いつまでそうしてるンだよ。早くこっちに来い」
「は、はやきゅってぇ」
胸板厚すぎいぃぃ!マーベルなキャプテンみたいぃぃ!
私はまるで熱に浮かされるように……いや、実際に物凄く顔が熱いことから確実に発熱しているであろう。
よろよろとおぼつかない足取りでナツキが待つベッドに向かう。
「おら、寝ンぞ」
ベッドの横にたどり着いた私はナツキに腕を引かれベッドの中へと吸い込まれる。
「ま……って……こ、心の準備が……」
「ア?寝るのに心の準備が要ンのか?」
「ととと、とうじぇんれしょ!」
ベッドの中で身を硬くし、カミカミになる私をジトリとした目で見ると、スッと手のひらが伸びてくる。
「お前、熱出てるじゃぁねえか」
「……ふぇ?」
てっきり、見せられないよ!なアレやソレをされるのではないか?と恐怖と……ほんの少しの期待をしていた私。
でも、ナツキの伸びてきた手はそのまま私の額にピタリと当てられて……
単に私の体調を気遣ってくれただけなのだと知り、上がっていた熱は一層上昇してしまった。
「転移初日にこんだけ色々あったンだ。熱も出るわな」
ナツキは恐らくアイテムBOXから取り出した革の袋に一度手を突っ込み、その後袋を結いて私の頭の裏に敷いてくれた。
「冷たくて気持ちいい……」
「魔法で袋の中に氷を作った。言わば簡易氷枕だな」
後頭部から首裏にかけ、ひんやりとした氷枕の冷たさに私の緊張は何処かに行ってしまったのだろう。
コロンと体を傾けて横にいるナツキの方を向く。
「ありがと……ナツキって見た目と違って優しいんだね」
「あ?見た目も優しそうな好青年だろうが」
「ふふっ」
「今の笑う所じゃねぇぞ?」
和むと同時に強烈な眠気が襲ってくる。
大きなあくびをするとナツキが部屋の明かりを消してくれた。
「明日の昼にはマハー・ヴァイロに向かうから今日はもう寝とけ」
「…………うん。………おや………す………み」
私は眠気に逆らわずにそのまま意識を手放した。
そのナツキの言葉の意味を何一つ考えないまま────
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