魔神と勘違いされた最強プレイヤー~異世界でもやることは変わらない~

ぶらっくまる。

第011話 嚙み合わぬ会話

 ガサラムが襲撃者との戦闘に至った経緯を説明し終え、アレックスへと視線が集中する。そのアレックスは、どう切り出したものかと考え込み、静寂が生まれた。

 イザベルが威圧スキルを解除したにも拘わらず、シルファとラヴィーナの様子があまりにも不自然で、未だ後遺症のように二人の表情は、ガチガチに強張っていた。

 笑っていた方が可愛いのに勿体ないとどうでもよいことを考えながらアレックスは、彼女たちの背後へと視線を向け、先が見えない木々の闇を見据える。

 この世界のこと以前に、現在地がどこでどういった場所なのかさえ不明だった。言えるのは、アレックスが自室の窓から確認しただけでも、見渡す限りが深い森で覆われていたということだけだった。

 どんな外敵が潜んでいるかも不明な未知の土地。

 陽も大分傾いてきており、辺りが夜の帳に包まれるのも時間の問題だった。

 暗くなる前にさっさとけりを付けるべくアレックスは、跪いている二人の様子を見比べて声を掛けた。

「ラヴィーナとやら」

「はっ」

「む、そんな畏まらんで良い」

「で、ですが……」

 その必要がないと言っても、ラヴィーナがシルファの方を向いて互いの顔を見合わせて頷き合うも、そのままの体勢を崩すことはなかった。

 一つため息をついてから腰に手を当てたアレックスは、順繰りに二人を見た。

「まあ、それは良いか……念のため確認だが、お前たちはプレイヤーか?」

「……ぷ、ぷれいやーとは、何でしょうか?」

 ラヴィーナは、一瞬考えるように視線を上に向けていたが、結局、知らないのだろう。青の双眸を何度か瞬きさせてからアレックスの言葉を繰り返した。

「いや、わからんなら別に構わん」

 アイコンの色からプレイヤーを期待したが、やはり違う……か。

 NPCであれば、頭上に表示されるアイコンの色が白となる。

 シルファたちの頭上に表示されているアイコンが黄色であることから、その少ない可能性に期待したアレックスだった。それでも、ラヴィーナの反応で違うと判明したため、かぶりを振って腕組をし、更に考え込む。

 そんなアレックスの様子を見たシルファは、慌てたように口を開くのだが、それがより一層アレックスを混乱させる。

「そ、それは試練のことでしょうか?」

「試練?」

「あっ、はい、わたくしたちは、そのぷれいやーというものになれば良いのでしょうか?」

 真面目な表情でそんなことをシルファが必死になって言うもんだから、アレックスは訳がわからなくなる。

「え?」

 はっ、何を言ってんだこの子は?

 シルファは、両手を顎の下で組み、懇願するような上目遣いでアレックスを見つめていた。そのガラス玉のように透き通った青い双眸には、涙を湛えており、アレックスの庇護欲を刺激する。

 ああ、頼むからそんな目で俺を見ないでくれよ、とアレックスはどう答えて良いか悩んでいると――シルファが尚も続けた。

「ほ、本来はそれがわたくしたちの目的なんです!」

「目的? そんなにボロボロになってまでも成し遂げないといけないのか?」

「そうでございます!」

 力強く断言するシルファ。

 おかしい……

 それはあまりにもおかしな話だった。

 アレックスたちがこの場所に転移したのはつい一、二時間ほど前なのだ。それでも、シルファの金髪は土汚れ、頬もすすけたように汚れていた。おそらく、純白のドレスだったであろう服は、泥だらけで至る所が裂け、その縁は血で滲んでいた。怪我をしているのだろう。

 特にラヴィーナの方は、ビキニアーマのように露出が激しい服装で、火魔法や電撃魔法によると思われる火傷の痕が生々しかった。それは、何とも痛々しい姿だった。

 本来は、すぐにでも治療を施してあげたいところだが、素性がしれないため如何ともし難いアレックスだった。

 ただ、この短時間でそうなったのではないことだけは、明らかだった。

 うーん、やはりあの魔人族たちは、彼女たちの仲間だったのか?
 ここで待ち受けていた仲間たちと合流すべく向かっていたとか……

 いやっ、それだったらガサラムの話を聞いた時点で、敵対関係の赤色にアイコンが変わってもよさそうだが、そうはならなかった。

 考えても答えが出ず、アレックスは骸と成り果てたその者たちの方をちらりと一瞥し、嘆息した。

「あっ、わたくしとしたことが――ま、先ずは、あのヴェルダ兵たちを討伐していただき、なんとお礼を申し上げてよいやら、感謝の言葉もございません」

 言下、シルファが跪いたまま頭を下げると、それに倣うようにラヴィーナも頭を下げた。

 何のことやらさっぱりのアレックスは、ガサラムとイザベルを見た。両手の平を上げて肩を竦めるガサラムとは違い、イザベルがその理由を説明してくれた。

「つまりは、あのヴェルダ兵とかいう魔人族に追われていたということだろうな、我が君」

「ああ、なるほど……」

「はい、ご察しの通り、わたくしたちは、かの者たちに追われる身と申しますか、裏切られたのでございますわ」

「裏切られた?」

 いやいや、ご察しの通りとか言われても知らんし!
 しっかし、裏切られたとかこれまた物騒な話だな、おい。

 とどのつまり、逃亡者という訳か……通りでこんなにも傷だらけなんだな。

 シルファとの会話が上手く噛み合わないながらも、次第に事情が掴めてきた。

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