私が、宇宙の女王になるわ!だから、貴方は私を守りなさい!
一つ眼の巨人(サイクロプス)
咲良達がいる反対方角から、銃声と空気が震えるような雄叫びが聞こえる。
こっちに配置されている兵士がほとんどいなくなった!錬太郎上手くやってくれてるみたいね。でも、あの雷鳴ような叫び声・・
咲良は少し前とは違う破壊音と、空気が震えるほどの声が気になっていた。
「・・・・錬太郎」
音の方角を心配そうに見つめる咲良は、自分を落ち着かせる為に、目を閉じて深く深呼吸をした。
「よしっ!ティア行くよ!」
咲良とティアは、敷地中央にある研究施設に向かって走った。
――――――――
「ぐっぁ!」
凪ぎ払ったサイクロプスの金砕棒が錬太郎を捕らえた。錬太郎の体は野球ボールのように地面を、バウンドしながら転がった。
まだ起き上がれない錬太郎へ、サイクロプスは追い討ちをかける。倒れている錬太郎の位置まで大ジャンプし金砕棒を振り被ると、思い切り叩き付けた。叩き付けられた地面は粉々に飛び散ったが。錬太郎の姿はない。
錬太郎を探すサイクロプスの後頭部に現れた錬太郎は、体を高速回転させ、その勢いのまま、回し蹴りをサイクロプスの後頭部へ叩き込んだ。不意を突かれたサイクロプスは、顔面を地面に擦りながら吹き飛んだ。しばらく、めが回っていたサイクロプスは意識がはっきりすると、姿勢を落とし突撃姿勢を取った。
「ハァハァハァ、タフなヤツだな」息が上がる錬太郎。
サイクロプスがスタートを切った。
「!!くっ!」
錬太郎の反応が僅かに遅れた!すでにサイクロプスは、宙に浮いている錬太郎の背後を取って、巨木のような太い脚が錬太郎を捕えた。
クリーンヒットされた錬太郎は、地面に叩きつけられ大きくバウンドして芝生の上に転がった。
サイクロプスは地面に着地すると、その反動を利用して大ジャンプし、落下の威力も利用した金砕棒で止めを刺そうと襲い掛かった。
「くそっ!・・・か、体が動かねぇ」
サイクロプスは、ありったけの力を両腕に絞りだし、金砕棒を錬太郎に振り下ろした!
振り下ろされた金砕棒による風圧で、木々が大きく揺れ動いた。静寂が辺りを包み、振り下ろした姿勢のまま動かないサイクロプス。
錬太郎がゆっくり瞼を開くと、見覚えのある形の良い綺麗なお尻があった。
「ウフフフフ、ミーシャ参上!」
サイクロプスの金砕棒はミーシャが受け止めていた。
サイクロプスは、自分の渾身の一撃を、片腕一本で受け止められ、何が起こったのか分からなかった。金砕棒を取り戻そうとするが、ピクリとも動かない!
サイクロプスとミーシャの力比べが行われている隣で、錬太郎に3つの影が近付いた。
《これじゃ遊園地はないな》
《家で留守番してるニャ》
「まったく、だらしないわね!」
倒れてる錬太郎を見下ろすように、両手を腰に当て立っていたのはレイカだった。
(あっ・・・パンツ見えてるって言ったら、絶対殺されるだろうな)
「ミーシャ!遊んでないで、行くわよ」
「えーー、田吾作と遊びたかった!」
遊ぶ気満々だったミーシャは、サイクロプスに名前まで付けていた。
つまらなそうなミーシャは、紐を食わえて放さない犬のようなサイクロプスを、紐ごとぶん投げた。
「そんなのに名前付けないで!懐いたらどうするのよ!それに、そいつは・・・・錬太郎が何とかするんでしょ?」
錬太郎は名残惜しそうに起き上がった。
「ああ、先に行ってくれ・・・ちょっと考えがある」
錬太郎はサイクロプスと戦っていて気になった事があった。
「・・まったくバカなんだから、でも・・上手くいくと良いわね」
レイカ達は、敷地中央にある施設に向かって走っていった。
「・・さてと、鬼が出るか蛇が出るか」
錬太郎は深呼吸すると、パチンッ!っと指を鳴らした。
錬太郎の瞳が青に変わった。
セルフィーとの修業以来、使った事がない力を解放した。サイクロプスには、圧倒的な力の差をみせる必要があると思ったからだ。
ただ、この力は体力を全て使いきるので、解除後はしばらく動けなくなる。
「さぁ、かかってきな」
――――――――――
「グォォォォォ」
傷だらけのサイクロプスは雄叫びを上げると、地面に腰を下ろして、大の字になった。
あらゆる攻撃を跳ね返され、自分が勝てる相手ではないと分かったのだ。
「良く頑張った、こっちも制限時間は限界だったよ」
錬太郎はサイクロプスの隣で寝そべると、瞳の色は元に戻っていた。
巨体だったサイクロプスの姿は、ティアと同じ位の背丈になり、肌は薄い茶色、髪は短い白髪、目には黒色の眼帯をした少年に変わっていた。
「・・・やっぱりな」
錬太郎はティアの話と、ショッピングセンターで人が熊に変化したことや、サイクロプスの戦い方が無垢な子供と遊んでいるように感じたため、もしかしたらと考えてた。
どうやら、敵意が無くなると、元の姿に戻るみたいだな。
「今なら誰もいない、ここから逃げるん・・だ・」言い切ると、錬太郎は意識を失って、寝息をたてた。
「ガゥ!ガゥ!」 少年は錬太郎の身体を揺すったが、起きる気配がなかった。
しかし、少年は錬太郎の言葉が分からなかったのか、錬太郎の近くで体育座りをし、そばを離れようとしなかった。
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