私が、宇宙の女王になるわ!だから、貴方は私を守りなさい!
もう咲良には近づかないで!
「!!!アツゥゥゥィイ」
錬太郎は背中を押さえながらのたうち回っている。理由は、この間、咲良に飲まされた黒炎が刺青のように背中に浮かび上がって、熱を発っしているのだ。
「咲良、違うんだ!これはっ!ギャァァァ」
「私がいない隙に、良い度胸ねぇ」
背中を熱がる錬太郎を抱き止めたのは、さっきの美少女だ。
「錬太郎様、大丈夫ですか?」
レイカ位の大きな胸に顔を埋められた錬太郎は、だらしなく顔が緩んでいる。
「錬太郎!何してるのよ、こっちに来なさい」
更に温度を上げると、錬太郎の悲鳴があがる。
「乱暴な娘ですね、錬太郎様は私の方が合ってますわ」
美少女はチラりと咲良の可愛らしい胸を見ると、不敵に笑みを浮かべ、錬太郎の顔を強く胸に押し当てた。
咲良の温度が急上昇した。髪型がロングのツインテールになり、黒炎の衣装をまとった。すると、錬太郎の黒炎の刺青が実体となり、体を包んだ。
美少女は自分に黒炎が移る前に、錬太郎から離れると、冷や汗を拭った。
ビックリしたわ、あの黒炎、かなりヤバイわね、でもあの能力は使えるわ、作戦変更して、あの貧乳娘を連れて帰るか
「あれぇ、逃げられちゃった、エヘヘヘヘ」
「じゃ、今度のは逃げれるかな?」
咲良は炎の玉を2つ作り出すと、槍に変形させた。
1つは、アッサルの槍、光りの神・ルーの槍で、呪文を唱えれば手元に召還でき、必ず的に命中すると言われている。
もう1つは、ゲイ・ボルグ、投げれば30の鏃となって降り注ぎ、突けば30の棘となって破裂する、傷は治らないと言われている。
「嘘でしょ・・、あれは、あの武器は本物なの?・・・なんで貴女が召還出来るの⁉」
「もっとあるよぉ、これから逃げれたら見せてあげる、アハハハハハハ」
あの2本の槍から逃げれることは絶対に出来ない事を、少女は遥か昔に嫌というほど見ていた。
少女はあの2本の槍が投げられる前に、攻撃に移った。
右手の人差し指を空に向け、左手は咲良に向けて水平に空間を切った。
人差し指からは稲妻が上空に放出され、誘導され咲良の真上から襲い掛かった、左手から放たれた真空鎌は咲良の首を狙った。
少女の異なる攻撃が咲良に直撃する瞬間 、咲良が纏う黒炎が頭の上で布のように広がり咲良を包んだ。
「天の羽衣!!」
羽織っている者に危害を加える攻撃をすべて無効化する。
「もう、なりふり構ってられないわ」
少女は気を失っている錬太郎の元に行き、錬太郎を起こした。
「錬太郎様!助けてください、あの娘が私を苛めるんです」
「イテテテテ、あの娘って・・」
上空に浮かんでいる黒炎の繭があった。
あの黒炎には見覚えがあった。
「げっ!あの黒炎は・・咲良か」
少女が攻撃を止めると、繭が開いて咲良が姿を表した。
「錬太郎、こっちに来て、その子は危険よ」
咲良は、地上に降りると少女に盾にされている錬太郎を呼んだ。
「錬太郎様!貴方がいなくなったら 、私はあの槍で叩かれてしまいます」
少女は錬太郎の背に隠れ怯えながら、錬太郎の体にしがみついた。
咲良は黒炎を纏い、空中には2本の槍が少女に狙いを定めている。
状況から、錬太郎は少女を庇った。
「咲良!いい加減にしろ!怖がってるじゃないか」
「でも錬太郎、その娘は・・・・分かったわ」
悔しいとも悲しいともとれる表情をして、咲良は黒炎を解除し、槍を消した。
その隙を見逃さなかった、少女は錬太郎の前方に出ると、両腕を前に突き出し特大の衝撃波を咲良に飛ばした。
咲良は後ろに吹き飛んで気絶してしまった。
「咲良っ!!!」
少女は咲良を背負うと、森の奥へ飛んでいってしまった。
――――――
ティラノサウルス・アドベンチャーに高級車が着くと、レイカ達が降りてきた。
「もう!あなた達が食べ過ぎるから時間取っちゃったじゃない!お馬鹿!」
《旨かったニャ、帰りにまた行くニャ》
《まだまだ食えたぜ、レイカはケチだな》
「何ですって!店の肉を全部食べちゃったのよ!」
レイカ達が煩く口論していたが、周りの人達の関心はある場所に集中していた。
「やけに騒がしいわね、どうしたのかしら?」
乱丸が突然、人だかりをすり抜けて行ってしまった。
レイカは胸騒ぎを感じたが、この胸騒ぎと咲良達が関係ないと思いたかった。
人だかりをかけ分けた先には・・・・
錬太郎が救急隊員に手当を受けていたが、咲良の姿が見えない。
レイカは錬太郎に駆け寄ると、声を荒げて問い詰めた。
「咲良は!?どこっ!!!!」
「・・・・連れてかれた」
「誰にっ!!」
「知らない同い年位の女の子だ、しかも能力者だった」
「錬太郎!ただ見てたの!?信じられない、見損なったわ」
「・・・・・すまない」
「私に謝られても仕方ないの!乱丸!匂いで追える?」
《ああ!そう遠くにはまだ行ってない!今なら追い付けるぞ》
乱丸は両足を踏ん張ると、人一人乗れる位の大きさになり、レイカとトラ吉を乗せた。
《レイカ、咲良以外の匂いだが 、恐らく恐竜達の高位種族の可能性があるニャ》
「高位種族って何によ!?とりあえず話しは追いながら聞くわ!」
レイカは錬太郎に冷たい視線を送ると
「咲良に何かあったら許さない 、もう咲良には近づかないで」
「俺も一緒にっ!」
「足手まといよ!来ないでっ!」
レイカの声を遮るようにして、乱丸は錬太郎に近付いた。
《ここにいるんだ、心配するな咲良は必ず連れて帰る》
乱丸は錬太郎の顔をを舐めると、猛スピードで森の中へ入っていった。
錬太郎は地面に拳を叩き付け、ゆっくり立ち上がると、森へ駆けていった。
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